非モテ男は轢いてもOK! ~トラックを避けた先にあったのは、リア充ハーレム状態の学園生活…そして俺を異世界に転生させたいクソ女神の殺人計画~

本多凱音

文字の大きさ
2 / 40

1.即席ダンジョン

しおりを挟む
 木の根っこに絡まって身動きが取れない。
 でも、引っかからなかったら穴の底にあるだろう地面に叩き付けられていた。

 下を見た俺は胸を撫で下ろした。

 クッション代わりに根が落ちる速度を徐々に弱め、根を崩しながら穴をゆっくり下りた。

 足場を壊したから、もはや引き返せない。

「……地下鉄?」

 線路に足が着いたし。プラットホームらしき地面の隆起もあった。

 だがなんというか。真っ暗で静かで。
 全体的にこう……すたれていた。

 でもなんか、来たことがあるような。

「ああそうだ!」

 ホームに上がって、駅名が見えてやっと気付いた。

 高校に通うのに使った施設からの最寄り駅じゃないか。

 となれば当然。
 
 地上に通じる出口までの道順は足が覚えていた。

 記憶力がいいとか、お世辞にも言えない。
 学生時代を忘れるような、ニート生活にいい思い出も悪い思い出もなかっただけ。

「俺、落とし穴に落ちたよな……? だいたい」

 ここ、本当にあの地下か?
 
 見知ったデパ地下なのは見れば記憶と合っているけど、どこもシャッターが閉まり明かりが失せている。

「……あった! 出口!」

 階段を発見。

 人が下ってきたから階段があるのがわかった。

 しかしこれが。どう見てもデパ地下で買い物とか、通勤とかの感じではなかった。

 ブロンド髪の若い女性。白い甲冑に碧のマントを羽織った。
 それが、全身鎧を纏った小隊を率いて登場した。

「いました、遭難者です!」 

 俺が強張っている間に、騎士達に一瞬で取り囲まれた。

 全員が剣を握り……まあ鎧姿だし。そこは敢えて目をつぶった。

 でも。
 全身血まみれ。ブロンド髪の女性騎士の剣に犬の首が突き刺さっているのは。

 さすがに怖すぎるだろ!?

「よかったぁあ。無事で」

 いや無事じゃない。確かに三秒前はそうだったかもしれないが。

 犬の頭ぶら下げた状態で、ほっとしたように笑われると余計背中が寒くなった。

 顔が見えるのはこの人だけで。残る全員は頭から足の先まで完全武装だし。

「ケガは……ないようですね。モンスターに襲われたとかは、ありませんか?」
「は、はい……。ってはい? モンスター?」

 俺が通学路に使っていた地下、モンスターとか湧く危険な場所だったの?

 高校入試のパンフレットにそんな紹介なかったけど。

「一見、現実世界のように見えるこの場所ですが。ここは、女神が魔法で創った即席の地下迷宮ダンジョンなんです」

 ダンジョン!?
 ダンジョンってあの……冒険者とか勇者がモンスターと戦う。

「異世界の女神から勇者の資質に目を付けられてしまった人が、定期的に迷い込んでくるんです」

 あの糞発光ビカビカ女神!
『ぜったい殺す』とか笑っていたのって、こういうことかよ。

 落とし穴で無事とわかった時、ホッとしちゃったのがくやしぃ!

「私達が安全な地上に着くまで護衛します。もう安心でッ……ふぎゃ!?」
「隊長……!?」

 ほかの騎士達から『隊長』と呼ばれたブロンド髪の騎士は、俺に握手しようと手を出してきて。

 自分のマントを踏んで転んだ。

「ああ鼻血が!」
「はやく止血を……!」
「ポケットティッシュ! 常備しているやつがあるだろう!」

 鼻を押さえて、うずくまる『隊長』。
 介抱する騎士達であっという間にそれも見えなくなった。

 兜の隙から聞こえた声に耳を澄ませば。

 隊長の部下と思しき連中も、全員女性らしかった。

 まあ大丈夫そうだし。なんか慣れているみたいだし。

 俺は別の出口を探るため、元来た道を引き返すことにした。
 動物の首を串刺しにした血まみれ姿に、笑顔で『守ってやる』と言われて、信用できるわけがない!

 地下中央には広場があって。噴水を突っ切ると街の反対側に出られた。

「なんだ。ダンジョンとか言って、ただの無人の地下じゃん」

 そういや。こうして無事に地上に出られるから気が失せていたけど。

 女神と別勢力みたいな、あの口ぶりをした騎士は、何者だったんだろう?

「……よく来たな。勇者よ」

 俺が越えようとした噴水の裏側、そこに。

 二足歩行の犬型モンスターが群れで固まっていた。

 なかでも。大理石の縁に腰を下ろす個体は一際に大きく。立てば天井に届きそう。

 あの女騎士が持っていた首はこの怪物達の一匹だったのか……。

「おいなにをグズグズしている! あの餓鬼を俺様の足許まで連れてこい!」

 陣取っていた首領と思しき一際大きなモンスターは吼えて、手下に命じ俺を捕らえさせた。

 騎士達とは全く違う荒々しさで首領の前に引き立てられた。
 凄まじい迫力。関節部に限るが武装し、刀身が錆びた巨大な鉈まで装備していた。

「あの女神には感謝しねえとな。捌くのもいいが、これが粋ってやつだぜ! てめぇらよく見てろ!」

 俺は必死に抵抗したけど。
 大鉈を顔に当てられながら、足を掴まれ、逆さのまま頭から丸のみにされた。

「親分の人間の踊り食いだ!」
「異世界の勇者を食べる貫禄、くぅぅぅ痺れます!!」
「俺様こそが、このダンジョンの支配者! 勇者なにするものぞ! 女神になど臆するものか!」
 
 とまあ、そんなことを嗤いながら盛り上がっていた気がする。

 胃袋の中にいても眩い光に目を焼かれた。

「隊長が〈コボルト=グレート〉を討伐された!」
「我々は残敵処理に当たるぞ! 犬一匹逃がすな!」

 真っ二つになった胸部から、真っ赤な俺が顔が出すと。
 さらに返り血を浴びたブロンドの女騎士が手を伸ばしていた。

 部下は手下のモンスター掃討の真っ最中。

「ご無事でなによりです」

 俺は今度こそ、差し出された手を掴んだ。

「申し遅れました。私、とある方の下で騎士の任を任されている……アイスと申します」
「あ、ええと。開陽です。虎孔開陽」

 名乗る女騎士、アイスに俺も名乗り返した。
 そばには、二つに斬り分かれた巨大な人型モンスター……だった肉塊。なにが起きたかわからないと言った様子で白目を剥いていた。

 俺が丸のみにされたとわかって、その上で鞘に仕舞ったあの剣で、不意打ちでしかも一刀両断したのか……?

 この人も、周りでモンスターと戦っている連中も人間のようにしか見えないが。
 
 一度ならず二度までも。俺は、訳のわからない状況や連中に、騙されようとしているんじゃ。

「カイヒさん、ですね。カイヒ……カイヒ……?」

 まるで、そう。

 俺の名前にピンときたように、アイスはどこかに電話をかけ出した。

「ちょっと待ってください……もしかしたら……!」

 なにをそんなに動揺するのか、電話が繋がったようで教えてくれなかった。

 だけど。
 甲冑に仕舞っていたスマホ。
 
 引きこもりでも情報が入手できるほど話題になっていた、最新機種ではないか。

 まだ状況が把握できないのは相変わらずだったが。推測は辛うじてできるらしい。

 騎士達が異世界の人間ではなかった。
 
 そして、一番大事なこと。血でべっとり汚れていた俺はまだ。

 気持ち悪さを感じるくらい、元気よく生きていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...