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第二章 第五話
54 媚薬の熱*
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目の前の橘が嬉しそうにしている。一ヶ月の出入り禁止だと言ったのに、彼は嬉しそうに笑った。
「セイがこれから、私にあられもなく羞恥も忘れて善がり狂うと思うと出禁も悪くないな」
「…っ」
聖月は、ぞっと身の毛がよだった。橘は、こういう男だということをすっかり忘れていた。自身の快楽のためなら、なんでもする男だった。前から、初めから、そういう男だった。嫌だと言っている聖月を無視して、屈辱的な格好を強いて一日中放置されたときは、人間の所業ではないと思ったものだ。橘は、息をあげている聖月に、こういった。
「ほら…触って」
聖月は、体の熱さを感じながらそれに従う。そこには、自分でも馬鹿みたいだと思うほどそそり立った自身の熱。
初めの頃は、死にたくなるほどの羞恥を感じていたが、もう何度も何度も繰り返しやっているので何も感じなくなった。橘は聖月が嫌がることをした。それが、彼のきっと生きがいではないかと思うほど、彼はやった。
手で自身の熱を高めるが、何にも気持ちよくもない。だが、薬が効いているのだろう、すぐに白濁した液体を吐き出した。吐き出した瞬間、びくびくと聖月は体を震わせた。小さく喘ぐという、演技も忘れてはいない。
――身体が、熱い。
熱い。聖月の頭の中は、熱で充満していた。身体は熱く火照っている。どれだけ強い薬を選んだのだろう。これを、感覚がもどった自分が味わったら、どんなに酷い有様になったのだろうか。考えただけで、頭が煮えたぎりそうだ。
「…っ、はぁ…」
熱い息を吐き出した体が気だるい。脳内がぼうっとする。感覚が戻ってきたみたいな――そんな錯覚があった。聖月がいつもと違う反応になっているのを見て、橘はご満悦そうに微笑んだ。
「強いものにして正解だったよ。前も後ろもグチャグチャだ」
その言葉で聖月は、自分の姿を見て唖然とした。
自身の雄の部分は、液でたっぷりと濡れていた。まだ足りないといって勃起し、まだ液が流れ続けている。それが、なんとも淫猥な雰囲気が漂っている。身体は正直だった。だが、気持ちがついていかない。
身体と頭は別物ようだ。身体は快楽を求め、何もかもが欲情している。なのに、身体は、心は何も思わないなんて。やはり自分は、人じゃないのかもしてないと自嘲気味に聖月は笑った。
橘は、聖月を四つんばいにさせた。この屈辱的な格好はもう慣れっこだ。秘部に指を入れ、いつもより熱くなった中を確かめている。
聖月は、熱さに震えていた。橘の指が、焦らすように動いている。橘の指が、冷たくて腰が引けた。無意識に腰が揺れる。橘は、そんな聖月を嬲るように笑った。
「いつもより腰が動いているね」
「…っ、…はっぁ」
薬でもっと快楽を求める身体は、限界を知らない。心を裏切るように、小さく熟れたそこから、液がいつも以上に溢れ出ていた。
それを練りこむように、指が段々と増やしていく。感覚がないから、何も苦痛も感じなかった。自身からは、触ってくれといわんばかりに蜜が溢れている。橘は窪みを刺激していた。
「とろとろじゃないか」
「うぅ…」
云われると恥かしい。だが、それが橘の狙いだと知っていた。聖月が恥かしそうにすると、橘はいつも上機嫌になる。
熱い体が、もっと欲しいといっている。なのに、心は何も欲しがっていなかった。早く終わって欲しいとだけ願っていた。身体はもっと気持ちよくなりたいと叫んでいた。口から唾液が出て、止まらない。その唾液がシーツに落ち、染みをつくっている。
橘は、指をもっと奥に入れてくる。普通の人だったら、絶叫してしまうところだっただろう。だが、聖月の身体は薬によって高められていたし、身体の感覚はもとよりない。聖月は、身体を逸らして、熱を吐き出した。
橘の目に映るのは、自身がやった背中の鞭のあとと、穢している聖月の秘部。いつもと違う、汗まみれで欲情している彼の身体。それに興奮して、聖月の中に入れていた指引き抜き、思い切り背中の傷に爪を立てた。
「ウゥッ!」
痛みこそ感じなかったが、違和感で聖月は悲鳴をあげた。
「勝手にイッてはダメだといっただろう?」
そんなこと聞いていない。非難の目を向けると、聖月は橘の目を見てぞっとした。いつも以上に、目のぎらつきがおかしい。
聖月は、自分のした反応を恥じた。自分は、橘を興奮させてしまう行為をしてしまった。聖月は今まで橘を興奮させないように勤めていた。こんな目をしたときほど、興奮しているときほど、聖月は橘から酷い仕打ちを受けていたからだ。
浣腸をされ、非情に何十分もガマンしろと言われた時もあった。道具を入れられ、3時間ほど放置されたことだってあった。聖月は、身体を硬くして次に起こることを待った。
「…お仕置き、するね?」
橘の興奮した低い声。死刑宣告を受けた気分だった。
「……は、はい」
ここで抵抗すれば、彼を喜ばせるだけだ。
「気持ちよくなるだけだから、大丈夫。気持ちいいこと好きでしょう、セイは」
「……はい。橘さま」
最悪だ――…聖月は橘のキスを受け止めた瞬間、死神が見えた。
―――――愉しかったよ、セイ。また、1ヵ月後ね
「死ねばいいんじゃねえの、アイツ」
先ほどの帰りの橘の言葉を思い出して、聖月は車内で悪態をついた。隣には、迎えに来てくれたコウがいる。普段は帰りは一人でタクシーで帰っていた聖月だったが、今回ばかりは無理だった。
行為が終わった瞬間体が重くて、とてもじゃないが一人では帰れない。電話をして、コウに来てもらうことにした。コウは、お金貰えるのだったらいつでもOKだといってくれたので助かった。
「大丈夫っすか、セイさん。今日電話きてあせったっすよ」
「ごめん、とてもじゃないけど帰れる気がしなくて」
「なんかあったんすか」
コウは、人懐っこい顔を歪ませて心配そうに聞いてくる。こういう優しい子がどうして、ディメントで働かなければいけないのだろうと、聖月はいつも思う。
「…NG事項をやられて。身体が…だるくて」
「うわー…最悪ですね」
「これで1ヶ月出禁になると思うとすっきりするけどね」
本当にそう思う。嬉しさで思わず笑いが出た。
薬の副作用なのか、身体が重くて、頭痛がする。橘が、聖月以外で蝶をとっていなくて本当によかったと思う。こんなの健常人がされたらひとたまりもないだろう。よくおかしくならなかったと、今日の仕打ちを思い出す。
あの後3、4時間かけて、秘部を弄った後達する寸前で指を抜き、背中の傷に爪を立てられた。それを交互に繰り返され、素面だったらきっと発狂寸前だったところだろう。焦らされ、焦らされ続けられた。その間に、橘の奉仕をしなければいけなかったから、頭痛がしてしょうがなかった。
一回だけ身体が制御できず、達してしまったが、そのときは尻を思い切り平手打ちされた。
散々焦らした後、橘の自身を入れられ、頭が真っ白になるまで突かれた。何度意識を飛ばしたことだろう。感覚がなくてもおかしくなりそうだったのに、感覚があったらもっと悲惨だっただろう。
身体が熱く、意識も朦朧としたなか、キツイ体勢を維持しなくてはいけなかったので、今でも腰が痛い。しかもまだ薬が残っているので、体がまだ熱い。
「あっ、…これ今日のお礼」
「え、こんなに」
聖月は、ズボンのポケットに入れてあった一万円札を何枚か出し、それをコウに握りさせた。このお金は、先ほど「今日は頑張ったね」と耳を疑うようなことをいって橘が置いていったチップの一部だ。バカみたいなチップの量だったので、減ったって何の問題もない。
「でも、こんな大金…」
「貰ってよ。コウくんに貰ってもらったほうが俺には嬉しいな」
「セイさん…」
嬉しそうにコウは、その一万円札を大切そうに握り締めた。聖月は、コウの借金が早く返して欲しいと願う。早くここをやめさせたかった。優しい彼にこんな狂気に満ち溢れたところで、これ以上働かせたくはない。
「セイさん…セイさんは何でここで働いているんですか?」
「…え?」
真剣な顔で問われた問いに、聖月は瞠目した。急すぎる質問に、ふいをつかれる。この話は、云っていいのか自分でも分からなかった。コウは新人なので、聖月が何故働いているかを知らない。
「…ここではちょっと」
「あっ…そうですよね」
ここはディメントが用意した車内で、運転手が乗っている。その運転手の彼に聞かれては、彼も迷惑だろう。運転手と目があって、彼が気まずそうに目を逸らした。聖月は複雑な気持ちになった。
「今度話すよ」
「はいっ」
笑顔で、コウは返事をしてくれた。コウの笑顔は癒される。彼の笑顔を見ていると、疲れがなくなってしまうような、そんな効用を感じてしまう。コウは普通の優しい、青年だ。そんな彼が、ここで働くのは黒いものを白いというような、嘘のように感じられる。やがて寮に着き、門の前で車が止まった。
「ありがとうございました」
「ありがとうございまーす」
「いえいえ」
聖月たちは運転手にお礼をいって、車から降りようとした――が。
「うわっ」
「セイさん!」
立ちくらみがして、身体がよろついた。危険を察してくれたコウが、咄嗟に腕を掴んでくれ、最悪の事態にはならないですんだ。
「大丈夫ですか?!」
「う、うん…。ご、ごめんね」
「俺、部屋まで送りますよ」
暗くて彼の顔は見えないが、笑って優しく云ってくれた。
「…ありがとう。ごめんね、迷惑ばっかりかけて」
「いいんですよ、それが同伴の仕事ですし。…掴まっていてくださいね」
二人は、ゆっくりと歩き出した。コウが聖月の肩を持ってくれ、先程より安定感があった。後輩にここまでされるのは恥かしかったが、今はそんなことを云っていられる立場ではない。コウが聖月に歩幅を合わせてくれた。寮に着いたときも靴を脱ぐ際も手伝ってくれた。コウは全てが優しかった。
部屋のドアの前まで時間をかけて着き、鍵を探す。
「あれ……? どこやったっけ」
「ポケットの中じゃないすか、ズボンとかの」
「あっ、あった」
鍵が見つかりほっとしていると、後ろから黒い影が伸びてきた。
「何やってんだ、お前ら」
「――ッヒ!」
コウが、声を突然かけられ悲鳴をあげた。聖月も同じように、声を上げる。怒りの混じった低い声。もしかしてなくても、この声は。
「蒼」
スーツを着ている、蒼が後ろに立っていた。彼が着ているスーツは、高級感に溢れており、威圧感がある。誰をも受け付けぬ、冷たいオーラが蒼の周りはあった。彼は眉を顰め、美形の顔が酷く歪んでいる。怒っている―――いやイラついている表情になっている。コウは彼の威圧感や絶対的オーラに慄き一歩後ろへ下がった。
「何やってんだお前らって、聞いてんだろうが」
「蒼、なんでここにいるんだ?」
「質問に答えろっていってんだろ、クソミツキ!」
ドンッ、とドアの壁が蒼の拳がぶつかる音で反響している。聖月と、コウは突然の事にビクリと体を震わせた。完全に、怒っている。蒼から発せられるビリビリ、と感じる怒りのオーラにコウは体を震わせている。聖月はこんな状態の蒼を見たことがあるから平気だが、コウはまず蒼を見たことも少ないだろうし、突然のことでどうしていいのか分からないようだった。
実際聖月もどうしていいのかよく分からない。
「…名前いってるんだけど」
聖月がそう非難すると、もっと顔を般若のようにさせた。聖月はここで話すべき言葉を間違えたようだ。
「どーでもいいんだよ、そんなことは。あぁ、何だ? 俺の誘いは断わっておいて、ソイツとはヨロシクやってんのかよ?」
「コウくんは、俺の同伴だから部屋まで送ってもらっただけだから」
怒り心頭の男は聖月の言葉を聞き、コウのほうを向いた。コウは、体を固まらせる。そのまま蒼は、美しい顔で最低なことを歌うように云った。
「コウくんー? そういって、ヤッてんだろどーせ。なぁ? セイちゃんは淫乱野朗だもんなぁ~? 同伴だから分かるよなぁ~、腰振ってるところみたんだろぉ~? なぁ、アンアンよがってるところ見たんだろ?」
「せっ、セイさんはそんなことしません!」
コウは、怯えながら否定する。コウに、こんな顔をさせたくなかった。
「蒼、いい加減にしろよ…」
変な風に煽ってくる蒼に、聖月は怒りの目線を送った。
「セイがこれから、私にあられもなく羞恥も忘れて善がり狂うと思うと出禁も悪くないな」
「…っ」
聖月は、ぞっと身の毛がよだった。橘は、こういう男だということをすっかり忘れていた。自身の快楽のためなら、なんでもする男だった。前から、初めから、そういう男だった。嫌だと言っている聖月を無視して、屈辱的な格好を強いて一日中放置されたときは、人間の所業ではないと思ったものだ。橘は、息をあげている聖月に、こういった。
「ほら…触って」
聖月は、体の熱さを感じながらそれに従う。そこには、自分でも馬鹿みたいだと思うほどそそり立った自身の熱。
初めの頃は、死にたくなるほどの羞恥を感じていたが、もう何度も何度も繰り返しやっているので何も感じなくなった。橘は聖月が嫌がることをした。それが、彼のきっと生きがいではないかと思うほど、彼はやった。
手で自身の熱を高めるが、何にも気持ちよくもない。だが、薬が効いているのだろう、すぐに白濁した液体を吐き出した。吐き出した瞬間、びくびくと聖月は体を震わせた。小さく喘ぐという、演技も忘れてはいない。
――身体が、熱い。
熱い。聖月の頭の中は、熱で充満していた。身体は熱く火照っている。どれだけ強い薬を選んだのだろう。これを、感覚がもどった自分が味わったら、どんなに酷い有様になったのだろうか。考えただけで、頭が煮えたぎりそうだ。
「…っ、はぁ…」
熱い息を吐き出した体が気だるい。脳内がぼうっとする。感覚が戻ってきたみたいな――そんな錯覚があった。聖月がいつもと違う反応になっているのを見て、橘はご満悦そうに微笑んだ。
「強いものにして正解だったよ。前も後ろもグチャグチャだ」
その言葉で聖月は、自分の姿を見て唖然とした。
自身の雄の部分は、液でたっぷりと濡れていた。まだ足りないといって勃起し、まだ液が流れ続けている。それが、なんとも淫猥な雰囲気が漂っている。身体は正直だった。だが、気持ちがついていかない。
身体と頭は別物ようだ。身体は快楽を求め、何もかもが欲情している。なのに、身体は、心は何も思わないなんて。やはり自分は、人じゃないのかもしてないと自嘲気味に聖月は笑った。
橘は、聖月を四つんばいにさせた。この屈辱的な格好はもう慣れっこだ。秘部に指を入れ、いつもより熱くなった中を確かめている。
聖月は、熱さに震えていた。橘の指が、焦らすように動いている。橘の指が、冷たくて腰が引けた。無意識に腰が揺れる。橘は、そんな聖月を嬲るように笑った。
「いつもより腰が動いているね」
「…っ、…はっぁ」
薬でもっと快楽を求める身体は、限界を知らない。心を裏切るように、小さく熟れたそこから、液がいつも以上に溢れ出ていた。
それを練りこむように、指が段々と増やしていく。感覚がないから、何も苦痛も感じなかった。自身からは、触ってくれといわんばかりに蜜が溢れている。橘は窪みを刺激していた。
「とろとろじゃないか」
「うぅ…」
云われると恥かしい。だが、それが橘の狙いだと知っていた。聖月が恥かしそうにすると、橘はいつも上機嫌になる。
熱い体が、もっと欲しいといっている。なのに、心は何も欲しがっていなかった。早く終わって欲しいとだけ願っていた。身体はもっと気持ちよくなりたいと叫んでいた。口から唾液が出て、止まらない。その唾液がシーツに落ち、染みをつくっている。
橘は、指をもっと奥に入れてくる。普通の人だったら、絶叫してしまうところだっただろう。だが、聖月の身体は薬によって高められていたし、身体の感覚はもとよりない。聖月は、身体を逸らして、熱を吐き出した。
橘の目に映るのは、自身がやった背中の鞭のあとと、穢している聖月の秘部。いつもと違う、汗まみれで欲情している彼の身体。それに興奮して、聖月の中に入れていた指引き抜き、思い切り背中の傷に爪を立てた。
「ウゥッ!」
痛みこそ感じなかったが、違和感で聖月は悲鳴をあげた。
「勝手にイッてはダメだといっただろう?」
そんなこと聞いていない。非難の目を向けると、聖月は橘の目を見てぞっとした。いつも以上に、目のぎらつきがおかしい。
聖月は、自分のした反応を恥じた。自分は、橘を興奮させてしまう行為をしてしまった。聖月は今まで橘を興奮させないように勤めていた。こんな目をしたときほど、興奮しているときほど、聖月は橘から酷い仕打ちを受けていたからだ。
浣腸をされ、非情に何十分もガマンしろと言われた時もあった。道具を入れられ、3時間ほど放置されたことだってあった。聖月は、身体を硬くして次に起こることを待った。
「…お仕置き、するね?」
橘の興奮した低い声。死刑宣告を受けた気分だった。
「……は、はい」
ここで抵抗すれば、彼を喜ばせるだけだ。
「気持ちよくなるだけだから、大丈夫。気持ちいいこと好きでしょう、セイは」
「……はい。橘さま」
最悪だ――…聖月は橘のキスを受け止めた瞬間、死神が見えた。
―――――愉しかったよ、セイ。また、1ヵ月後ね
「死ねばいいんじゃねえの、アイツ」
先ほどの帰りの橘の言葉を思い出して、聖月は車内で悪態をついた。隣には、迎えに来てくれたコウがいる。普段は帰りは一人でタクシーで帰っていた聖月だったが、今回ばかりは無理だった。
行為が終わった瞬間体が重くて、とてもじゃないが一人では帰れない。電話をして、コウに来てもらうことにした。コウは、お金貰えるのだったらいつでもOKだといってくれたので助かった。
「大丈夫っすか、セイさん。今日電話きてあせったっすよ」
「ごめん、とてもじゃないけど帰れる気がしなくて」
「なんかあったんすか」
コウは、人懐っこい顔を歪ませて心配そうに聞いてくる。こういう優しい子がどうして、ディメントで働かなければいけないのだろうと、聖月はいつも思う。
「…NG事項をやられて。身体が…だるくて」
「うわー…最悪ですね」
「これで1ヶ月出禁になると思うとすっきりするけどね」
本当にそう思う。嬉しさで思わず笑いが出た。
薬の副作用なのか、身体が重くて、頭痛がする。橘が、聖月以外で蝶をとっていなくて本当によかったと思う。こんなの健常人がされたらひとたまりもないだろう。よくおかしくならなかったと、今日の仕打ちを思い出す。
あの後3、4時間かけて、秘部を弄った後達する寸前で指を抜き、背中の傷に爪を立てられた。それを交互に繰り返され、素面だったらきっと発狂寸前だったところだろう。焦らされ、焦らされ続けられた。その間に、橘の奉仕をしなければいけなかったから、頭痛がしてしょうがなかった。
一回だけ身体が制御できず、達してしまったが、そのときは尻を思い切り平手打ちされた。
散々焦らした後、橘の自身を入れられ、頭が真っ白になるまで突かれた。何度意識を飛ばしたことだろう。感覚がなくてもおかしくなりそうだったのに、感覚があったらもっと悲惨だっただろう。
身体が熱く、意識も朦朧としたなか、キツイ体勢を維持しなくてはいけなかったので、今でも腰が痛い。しかもまだ薬が残っているので、体がまだ熱い。
「あっ、…これ今日のお礼」
「え、こんなに」
聖月は、ズボンのポケットに入れてあった一万円札を何枚か出し、それをコウに握りさせた。このお金は、先ほど「今日は頑張ったね」と耳を疑うようなことをいって橘が置いていったチップの一部だ。バカみたいなチップの量だったので、減ったって何の問題もない。
「でも、こんな大金…」
「貰ってよ。コウくんに貰ってもらったほうが俺には嬉しいな」
「セイさん…」
嬉しそうにコウは、その一万円札を大切そうに握り締めた。聖月は、コウの借金が早く返して欲しいと願う。早くここをやめさせたかった。優しい彼にこんな狂気に満ち溢れたところで、これ以上働かせたくはない。
「セイさん…セイさんは何でここで働いているんですか?」
「…え?」
真剣な顔で問われた問いに、聖月は瞠目した。急すぎる質問に、ふいをつかれる。この話は、云っていいのか自分でも分からなかった。コウは新人なので、聖月が何故働いているかを知らない。
「…ここではちょっと」
「あっ…そうですよね」
ここはディメントが用意した車内で、運転手が乗っている。その運転手の彼に聞かれては、彼も迷惑だろう。運転手と目があって、彼が気まずそうに目を逸らした。聖月は複雑な気持ちになった。
「今度話すよ」
「はいっ」
笑顔で、コウは返事をしてくれた。コウの笑顔は癒される。彼の笑顔を見ていると、疲れがなくなってしまうような、そんな効用を感じてしまう。コウは普通の優しい、青年だ。そんな彼が、ここで働くのは黒いものを白いというような、嘘のように感じられる。やがて寮に着き、門の前で車が止まった。
「ありがとうございました」
「ありがとうございまーす」
「いえいえ」
聖月たちは運転手にお礼をいって、車から降りようとした――が。
「うわっ」
「セイさん!」
立ちくらみがして、身体がよろついた。危険を察してくれたコウが、咄嗟に腕を掴んでくれ、最悪の事態にはならないですんだ。
「大丈夫ですか?!」
「う、うん…。ご、ごめんね」
「俺、部屋まで送りますよ」
暗くて彼の顔は見えないが、笑って優しく云ってくれた。
「…ありがとう。ごめんね、迷惑ばっかりかけて」
「いいんですよ、それが同伴の仕事ですし。…掴まっていてくださいね」
二人は、ゆっくりと歩き出した。コウが聖月の肩を持ってくれ、先程より安定感があった。後輩にここまでされるのは恥かしかったが、今はそんなことを云っていられる立場ではない。コウが聖月に歩幅を合わせてくれた。寮に着いたときも靴を脱ぐ際も手伝ってくれた。コウは全てが優しかった。
部屋のドアの前まで時間をかけて着き、鍵を探す。
「あれ……? どこやったっけ」
「ポケットの中じゃないすか、ズボンとかの」
「あっ、あった」
鍵が見つかりほっとしていると、後ろから黒い影が伸びてきた。
「何やってんだ、お前ら」
「――ッヒ!」
コウが、声を突然かけられ悲鳴をあげた。聖月も同じように、声を上げる。怒りの混じった低い声。もしかしてなくても、この声は。
「蒼」
スーツを着ている、蒼が後ろに立っていた。彼が着ているスーツは、高級感に溢れており、威圧感がある。誰をも受け付けぬ、冷たいオーラが蒼の周りはあった。彼は眉を顰め、美形の顔が酷く歪んでいる。怒っている―――いやイラついている表情になっている。コウは彼の威圧感や絶対的オーラに慄き一歩後ろへ下がった。
「何やってんだお前らって、聞いてんだろうが」
「蒼、なんでここにいるんだ?」
「質問に答えろっていってんだろ、クソミツキ!」
ドンッ、とドアの壁が蒼の拳がぶつかる音で反響している。聖月と、コウは突然の事にビクリと体を震わせた。完全に、怒っている。蒼から発せられるビリビリ、と感じる怒りのオーラにコウは体を震わせている。聖月はこんな状態の蒼を見たことがあるから平気だが、コウはまず蒼を見たことも少ないだろうし、突然のことでどうしていいのか分からないようだった。
実際聖月もどうしていいのかよく分からない。
「…名前いってるんだけど」
聖月がそう非難すると、もっと顔を般若のようにさせた。聖月はここで話すべき言葉を間違えたようだ。
「どーでもいいんだよ、そんなことは。あぁ、何だ? 俺の誘いは断わっておいて、ソイツとはヨロシクやってんのかよ?」
「コウくんは、俺の同伴だから部屋まで送ってもらっただけだから」
怒り心頭の男は聖月の言葉を聞き、コウのほうを向いた。コウは、体を固まらせる。そのまま蒼は、美しい顔で最低なことを歌うように云った。
「コウくんー? そういって、ヤッてんだろどーせ。なぁ? セイちゃんは淫乱野朗だもんなぁ~? 同伴だから分かるよなぁ~、腰振ってるところみたんだろぉ~? なぁ、アンアンよがってるところ見たんだろ?」
「せっ、セイさんはそんなことしません!」
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