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第二章 第八話
83 講習会
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清十郎に泊まっていけばいいといわれたが、断った。
兄は残念そうにしていたが、聖月は心を鬼にして丁重にお断りした。本当なら、清十郎のマンションに泊まっていきたい。できればそのまま住んでしまいたい。だが、そんなことは大学を考慮しても無理なことだったし、聖月はそんな考えをそっと振り払う。
兄に甘えたら、いけない。
甘えたら、一度でも甘えてしまったらもう戻れない。
それが、自分でも分かったから聖月は断ったのだ。
――――憂鬱。
聖月の心はそんな感情で埋め尽くされていた。ディメントの寮に戻る足もいつもよりのろのろしい。電車を乗り継いで1時間以上かけていって兄に久しぶりに会ったからだろうか、両親の写真を線香の匂いのする畳の部屋で見てしまったからなのか。
答えが出ないまま、聖月はディメントのドアを開けた。
靴をぬいで、廊下を歩き、部屋に戻ると息をつく。なんだかどっと疲れが出てきた気がする。それは気のせいではなく、実際に身体に気だるげな重さが圧し掛かる。
「……」
聖月は部屋の床に置いてあった便箋を拾う。
きっとドアの間から投げ込まれたのだろう。たまにあるその便箋は、聖月が好まないものだった。
できれば見たくはない。だが、見なければならない。
聖月はそれを自身で持ち、ベットまで行くとそのままスーツで寝転んだ。
その白い便箋から中身を出すと、予想していた通りの文面が書かれていた。小向の趣味なのか、気品ある字体で記載されていた。
「講習会のお知らせ…ね」
一枚の紙を広げると、聖月はため息をつく。
講習会のお知らせ。
そんな文面が書かれているそれは、一般的な「講習会のお知らせ」なのではないと聖月は知っていた。
ディメントには一か月に一度はあるかない頻度で不定期に講習会が開かれる。それはただの講習会ではない。
ある意味、見せしめの意味合いが強い講習会だ。
ディメントで働いている男娼のなかで、客に暴言をいったり、逆らったりした蝶をその講習会という名目で裁くのだ。講習会なんてそんな教えてもらうものではなく、もう結果が決まった粗相をした蝶を、大勢の前で凌辱するのだ。
かなり悪趣味なもので、小向の趣味なのだろう。
聖月はまだ講習会の被験者になったことはないから、どんなことをされるかはわからない。
だが、聖月はナンバースリーという称号を持っているので、講習会を「見る」権利が与えられる。
その講習会を見られるのは、ディメントの上位ナンバーファイブ以上、それ相応の立場にいる小向、神山や、客がいけることになっている。だが、その人が望まなければいかなくてもいい。
これはゲームなのだろう。
客や関係者たちは、生意気なディメントの蝶を虐める姿が見られるし、メンバーになってしまった下位の蝶はそれ以降悔い改めるという名目でやっているが、そんなのはただの暴力と変わりはない。その講習会で、心を病み、自殺をしてしまった蝶もいる。
それだけ、その講習会はあまりに残忍なものだと想像できる。
だから、蝶たちは客に従わなければならない。
「胸糞わり…」
ここの関係者は腐っている。
非人道的で、この世のなかで一番恐ろしいのはこいつらだ。
聖月は、今回も行かないことを決意してその紙を握り潰そうとしたが、ある一点が目に入って身体を停止する。
「メンバー:コウ…?」
聖月は目を疑った。
その紙には、その被験者に選ばれたのはコウと書いてある。聖月の頭のなかで、見知った顔が思い浮かんだ。それ以外にも悲運なメンバーが書かれていたが、聖月はその『コウ』という名前をじっとみていた。
ディメントでは、同じ源氏名が使われることはない。きちんと被らないようになっているはずだ。
だから、コウという人物はあのコウしかあり得ない。
「なんで……?」
聖月は震えながら、その紙を見つめた。
その紙には『本日 24時から開催 場所:8階』とだけ書いてある。
聖月はすぐに時計を確認し、部屋を飛び出した。23時45分。まだ間に合う。間に合う――――!
焦る気持ちから、何度も転びそうになった。
その会場は、階段をあがってしばらくしたところにあった。中世ヨーロッパを感じさせるドアで、中から微かに声が聞こえた気がした。聖月はそっと、急かす気持ちでドアを開ける。ドアをあけても、光は溢れてこない。薄暗くなった部屋には、豪勢な椅子がおいてあった。
真ん中にはステージのような丸い円形のもりあがった場所があって、それを取り囲むように椅子が置いてあり、そこには20人ほどの客が座っていた。だいたいの客はスーツで、顔には仮面をつけている。ひょっとこの仮面をつけた客は、まさしく『仮面』だ。
聖月はまだ開かれていないことにほっとしたものの、その部屋の空気の異様さに息を詰まらせる。
ドアが開かれた瞬間、客が一斉にこちらを見る。だが、暗い部屋では聖月の顔は見えないのか、興味なさそうに客は前をむいた。
聖月の心臓は跳ねあがり、硬直する。
粘ついた気色の悪い目線だった。ここにいると、息が、出来なくなるみたいだ。自分を落ち着かせながら聖月は、ディメントナンバーファイブ用の椅子を探す。
一周ぐるりとまわって、聖月はそれを見つけ、腰を掛ける。
そこにはご丁寧に小さな机と、セイとかかれたナンバープレートとひょっところの仮面があった。セイが座ったところで、聖月の周りは騒ぎ立てた。客の声が聞こえてきて、聖月は思わず耳を塞ぐ。
――――――セイがきた。ナンバースリーのセイだ。どうしてきたんだ。初めてじゃないかこんなこと。珍しい。
ひそひそ話は聖月の塞いだ耳にも入ってくる。
ぎゅっと目を瞑ると、頭上から思わぬ声が降ってきた。
「あれ、聖月じゃん」
「ケイ?!…なんでここに…」
思わず声をあげてしまい、口を抑える。ケイもスーツで、顔にはひょっとこの仮面をつけている。なんともシュールだったが、薄暗い部屋ではむしろ恐怖だ。ケイは小声で、聖月にいった。
「つけたほうがいいよ、それ」
「あ…うん」
ケイは、聖月の一個あけた席にいた。この席順は、どう見てもランキング順なので、つけたところで変わらないんじゃないかと思ってしまう。
だが言われたとおりに、聖月もひょっところの仮面をつけこの悪趣味な『仮面講習会』の仲間入りだ。
聖月は、息をつき前を向く。聖月の隣にいるはずの蒼は不参加のようだった。ケイがどうして来ているか気になったが、聞いて意味があるとは思えない。聖月はふいに、ケイと居るほうと逆方向を向いた。
「……え?」
なんで――――?
聖月は自身の目を疑った。さっきまで誰もいなかった席には、着席したスーツ姿の男がいた。仮面はつけてなく、あますことなくその美貌を披露している。ただそこにいるだけだったのに、足組みした圧倒的オーラは、聖月を混乱させた。
ディメントナンバーツーのクミヤ――――本名、九条美也(くじょう みや)がそこにはいた。その隣の席は空席で、神山は来ていない。
暗闇のなか浮かび上がる美貌に、聖月は目をうぼわれていた。
「…なんで…」
聖月の声は、ひどくしゃがれたものだった。
美也は、ただ前を向いて、聖月の声をまるで興味がないように無視した。
「…なんで、貴方がここに…」
聖月は答えはないだろうとわかっていても、言葉を続けていた。
「………コウくんのこと見に来たんですか」
美也の顔が、少しだけこちらを向いていた。薄暗い照明の中の彼の瞳は、無表情で、聖月はまるで知らない世界を見ているようだった。宇宙の片隅のような、二つの黒い瞳は聖月を射抜くように見ている。
「…アイツは俺の同伴だから」
それだけいって、美也は口を閉ざす。
同伴。
確かに、美也の同伴をコウは務めていた。だが、そこに込められている彼の感情はいったい何なのだろう。興味なのか、それとも同情なのか。それとも、また違った何かなのだろうか。
「皆さまお待たせしました。これより講習会を始めさせていただきます。司会はこの私…―――」
聖月は、始まった狂気の合図で、その思考をやめた。
司会者の声は若くて、爽やかで、この空間にはあまりにも不自然だった。客たちが嬉しそうに声をあげて、拍手を繰り返す。聖月は拍手をする気が起きずに、ただ照明があてられた舞台をみていた。両隣からも拍手は聞こえない。
聖月は仮面をつけたまま、その光景を見ていた。
初めに入ってきたのは二人の青年。適当に難癖をつけたような内容の≪罰≫が司会者の爽やかな声で会場に響き渡る。そして、青年二人の登場する。その身体は全裸で、よく見れば無数の痕が刻まれていた。
その後は、もう目を防ぎたくなる行為が繰り広げた。
青年たちの悲鳴、スーツ姿の男たちに嬲られる身体、凌辱をつくすほど湧く客の下品な歓声、愉しそうな司会者の声。
どれをとっても、ここは狂っていた。聖月はここにはコウがいない、と思い始めていた。こんな場所に、あんな優しいコウは似合わない。太陽のようなコウに、こんな場所は似合わない。
「―――続きましての登場は、サツくん、コウくんのようです。この二人はどんなことをしでかしたのでしょうか?!」
コウ―――…?
聖月は司会者の声をぼうっと聞いた。この司会者はきっと『あちら側』の人間だ。そうじゃなきゃこんな嬉々として、こんな場所の司会なんてやらないだろう。
客の歓声が響いた。
「こ…っ!」
聖月の息がとまった。小さく声をあげて、世界が回るような感覚がする。
舞台のうえには、全裸の青年が二人いた。スーツの男たちにつられられて来た二人は、一人は知らないかわいらしい容姿の青年だったが、もう一人は何度も見たことのある青年がいる。聖月は信じられない気持ちだった。
じゃらん…と鎖につながれた手は、まるで商品のようだった。
そんな―――――…。
聖月はその現実を直視できなかった。
いや、信じたくなかった。
「………嘘だろ…」
聖月の声は、司会者の声に紛れて消えた。始めは爽やかだけだった声音も、どこか狂気をはらんでいる。
「こちらの右側にいるコウくんは、客の見ていない場所で嘔吐する、奉仕中の身勝手な行動、行為中の嫌悪感のある表情…などなどさまざまなNGをやらかしたようですね。今までの子たちよりも、かなりの常習犯のようです。そのほかにも、ここでは言えないことを何度もやらかしているとか…」
「……っ」
聖月は、身体の底から震えが来た。
コウがそこにいる。いつもの彼の明るさはそこにはない。ただ震えているコウは、とても哀しそうな顔をして舞台を見下ろしていた。その虚ろな目は全てを諦めきった顔だった。
兄は残念そうにしていたが、聖月は心を鬼にして丁重にお断りした。本当なら、清十郎のマンションに泊まっていきたい。できればそのまま住んでしまいたい。だが、そんなことは大学を考慮しても無理なことだったし、聖月はそんな考えをそっと振り払う。
兄に甘えたら、いけない。
甘えたら、一度でも甘えてしまったらもう戻れない。
それが、自分でも分かったから聖月は断ったのだ。
――――憂鬱。
聖月の心はそんな感情で埋め尽くされていた。ディメントの寮に戻る足もいつもよりのろのろしい。電車を乗り継いで1時間以上かけていって兄に久しぶりに会ったからだろうか、両親の写真を線香の匂いのする畳の部屋で見てしまったからなのか。
答えが出ないまま、聖月はディメントのドアを開けた。
靴をぬいで、廊下を歩き、部屋に戻ると息をつく。なんだかどっと疲れが出てきた気がする。それは気のせいではなく、実際に身体に気だるげな重さが圧し掛かる。
「……」
聖月は部屋の床に置いてあった便箋を拾う。
きっとドアの間から投げ込まれたのだろう。たまにあるその便箋は、聖月が好まないものだった。
できれば見たくはない。だが、見なければならない。
聖月はそれを自身で持ち、ベットまで行くとそのままスーツで寝転んだ。
その白い便箋から中身を出すと、予想していた通りの文面が書かれていた。小向の趣味なのか、気品ある字体で記載されていた。
「講習会のお知らせ…ね」
一枚の紙を広げると、聖月はため息をつく。
講習会のお知らせ。
そんな文面が書かれているそれは、一般的な「講習会のお知らせ」なのではないと聖月は知っていた。
ディメントには一か月に一度はあるかない頻度で不定期に講習会が開かれる。それはただの講習会ではない。
ある意味、見せしめの意味合いが強い講習会だ。
ディメントで働いている男娼のなかで、客に暴言をいったり、逆らったりした蝶をその講習会という名目で裁くのだ。講習会なんてそんな教えてもらうものではなく、もう結果が決まった粗相をした蝶を、大勢の前で凌辱するのだ。
かなり悪趣味なもので、小向の趣味なのだろう。
聖月はまだ講習会の被験者になったことはないから、どんなことをされるかはわからない。
だが、聖月はナンバースリーという称号を持っているので、講習会を「見る」権利が与えられる。
その講習会を見られるのは、ディメントの上位ナンバーファイブ以上、それ相応の立場にいる小向、神山や、客がいけることになっている。だが、その人が望まなければいかなくてもいい。
これはゲームなのだろう。
客や関係者たちは、生意気なディメントの蝶を虐める姿が見られるし、メンバーになってしまった下位の蝶はそれ以降悔い改めるという名目でやっているが、そんなのはただの暴力と変わりはない。その講習会で、心を病み、自殺をしてしまった蝶もいる。
それだけ、その講習会はあまりに残忍なものだと想像できる。
だから、蝶たちは客に従わなければならない。
「胸糞わり…」
ここの関係者は腐っている。
非人道的で、この世のなかで一番恐ろしいのはこいつらだ。
聖月は、今回も行かないことを決意してその紙を握り潰そうとしたが、ある一点が目に入って身体を停止する。
「メンバー:コウ…?」
聖月は目を疑った。
その紙には、その被験者に選ばれたのはコウと書いてある。聖月の頭のなかで、見知った顔が思い浮かんだ。それ以外にも悲運なメンバーが書かれていたが、聖月はその『コウ』という名前をじっとみていた。
ディメントでは、同じ源氏名が使われることはない。きちんと被らないようになっているはずだ。
だから、コウという人物はあのコウしかあり得ない。
「なんで……?」
聖月は震えながら、その紙を見つめた。
その紙には『本日 24時から開催 場所:8階』とだけ書いてある。
聖月はすぐに時計を確認し、部屋を飛び出した。23時45分。まだ間に合う。間に合う――――!
焦る気持ちから、何度も転びそうになった。
その会場は、階段をあがってしばらくしたところにあった。中世ヨーロッパを感じさせるドアで、中から微かに声が聞こえた気がした。聖月はそっと、急かす気持ちでドアを開ける。ドアをあけても、光は溢れてこない。薄暗くなった部屋には、豪勢な椅子がおいてあった。
真ん中にはステージのような丸い円形のもりあがった場所があって、それを取り囲むように椅子が置いてあり、そこには20人ほどの客が座っていた。だいたいの客はスーツで、顔には仮面をつけている。ひょっとこの仮面をつけた客は、まさしく『仮面』だ。
聖月はまだ開かれていないことにほっとしたものの、その部屋の空気の異様さに息を詰まらせる。
ドアが開かれた瞬間、客が一斉にこちらを見る。だが、暗い部屋では聖月の顔は見えないのか、興味なさそうに客は前をむいた。
聖月の心臓は跳ねあがり、硬直する。
粘ついた気色の悪い目線だった。ここにいると、息が、出来なくなるみたいだ。自分を落ち着かせながら聖月は、ディメントナンバーファイブ用の椅子を探す。
一周ぐるりとまわって、聖月はそれを見つけ、腰を掛ける。
そこにはご丁寧に小さな机と、セイとかかれたナンバープレートとひょっところの仮面があった。セイが座ったところで、聖月の周りは騒ぎ立てた。客の声が聞こえてきて、聖月は思わず耳を塞ぐ。
――――――セイがきた。ナンバースリーのセイだ。どうしてきたんだ。初めてじゃないかこんなこと。珍しい。
ひそひそ話は聖月の塞いだ耳にも入ってくる。
ぎゅっと目を瞑ると、頭上から思わぬ声が降ってきた。
「あれ、聖月じゃん」
「ケイ?!…なんでここに…」
思わず声をあげてしまい、口を抑える。ケイもスーツで、顔にはひょっとこの仮面をつけている。なんともシュールだったが、薄暗い部屋ではむしろ恐怖だ。ケイは小声で、聖月にいった。
「つけたほうがいいよ、それ」
「あ…うん」
ケイは、聖月の一個あけた席にいた。この席順は、どう見てもランキング順なので、つけたところで変わらないんじゃないかと思ってしまう。
だが言われたとおりに、聖月もひょっところの仮面をつけこの悪趣味な『仮面講習会』の仲間入りだ。
聖月は、息をつき前を向く。聖月の隣にいるはずの蒼は不参加のようだった。ケイがどうして来ているか気になったが、聞いて意味があるとは思えない。聖月はふいに、ケイと居るほうと逆方向を向いた。
「……え?」
なんで――――?
聖月は自身の目を疑った。さっきまで誰もいなかった席には、着席したスーツ姿の男がいた。仮面はつけてなく、あますことなくその美貌を披露している。ただそこにいるだけだったのに、足組みした圧倒的オーラは、聖月を混乱させた。
ディメントナンバーツーのクミヤ――――本名、九条美也(くじょう みや)がそこにはいた。その隣の席は空席で、神山は来ていない。
暗闇のなか浮かび上がる美貌に、聖月は目をうぼわれていた。
「…なんで…」
聖月の声は、ひどくしゃがれたものだった。
美也は、ただ前を向いて、聖月の声をまるで興味がないように無視した。
「…なんで、貴方がここに…」
聖月は答えはないだろうとわかっていても、言葉を続けていた。
「………コウくんのこと見に来たんですか」
美也の顔が、少しだけこちらを向いていた。薄暗い照明の中の彼の瞳は、無表情で、聖月はまるで知らない世界を見ているようだった。宇宙の片隅のような、二つの黒い瞳は聖月を射抜くように見ている。
「…アイツは俺の同伴だから」
それだけいって、美也は口を閉ざす。
同伴。
確かに、美也の同伴をコウは務めていた。だが、そこに込められている彼の感情はいったい何なのだろう。興味なのか、それとも同情なのか。それとも、また違った何かなのだろうか。
「皆さまお待たせしました。これより講習会を始めさせていただきます。司会はこの私…―――」
聖月は、始まった狂気の合図で、その思考をやめた。
司会者の声は若くて、爽やかで、この空間にはあまりにも不自然だった。客たちが嬉しそうに声をあげて、拍手を繰り返す。聖月は拍手をする気が起きずに、ただ照明があてられた舞台をみていた。両隣からも拍手は聞こえない。
聖月は仮面をつけたまま、その光景を見ていた。
初めに入ってきたのは二人の青年。適当に難癖をつけたような内容の≪罰≫が司会者の爽やかな声で会場に響き渡る。そして、青年二人の登場する。その身体は全裸で、よく見れば無数の痕が刻まれていた。
その後は、もう目を防ぎたくなる行為が繰り広げた。
青年たちの悲鳴、スーツ姿の男たちに嬲られる身体、凌辱をつくすほど湧く客の下品な歓声、愉しそうな司会者の声。
どれをとっても、ここは狂っていた。聖月はここにはコウがいない、と思い始めていた。こんな場所に、あんな優しいコウは似合わない。太陽のようなコウに、こんな場所は似合わない。
「―――続きましての登場は、サツくん、コウくんのようです。この二人はどんなことをしでかしたのでしょうか?!」
コウ―――…?
聖月は司会者の声をぼうっと聞いた。この司会者はきっと『あちら側』の人間だ。そうじゃなきゃこんな嬉々として、こんな場所の司会なんてやらないだろう。
客の歓声が響いた。
「こ…っ!」
聖月の息がとまった。小さく声をあげて、世界が回るような感覚がする。
舞台のうえには、全裸の青年が二人いた。スーツの男たちにつられられて来た二人は、一人は知らないかわいらしい容姿の青年だったが、もう一人は何度も見たことのある青年がいる。聖月は信じられない気持ちだった。
じゃらん…と鎖につながれた手は、まるで商品のようだった。
そんな―――――…。
聖月はその現実を直視できなかった。
いや、信じたくなかった。
「………嘘だろ…」
聖月の声は、司会者の声に紛れて消えた。始めは爽やかだけだった声音も、どこか狂気をはらんでいる。
「こちらの右側にいるコウくんは、客の見ていない場所で嘔吐する、奉仕中の身勝手な行動、行為中の嫌悪感のある表情…などなどさまざまなNGをやらかしたようですね。今までの子たちよりも、かなりの常習犯のようです。そのほかにも、ここでは言えないことを何度もやらかしているとか…」
「……っ」
聖月は、身体の底から震えが来た。
コウがそこにいる。いつもの彼の明るさはそこにはない。ただ震えているコウは、とても哀しそうな顔をして舞台を見下ろしていた。その虚ろな目は全てを諦めきった顔だった。
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