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第三章 第十話
97 あの夜から初めての指名
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衛と別れた後聖月は家路についた。寮に向かう足が重くなるのはいつものことだ。でも今日は少しだけ身軽になったような気がした。十夜と前と同じように話せたからだろうか。
バスに乗り、大正ロマンを感じさせるような西洋風な建物に聖月は向かっていく。周りは森に囲まれていて、まるで隔離されているような空間だな、と何度も思う。門に入って、しばらく歩くと玄関がみえる。きゃっきゃ、と楽しそうな笑い声が聞こえた。このディメントの寮に住む、幼い子供の声だろう。
その声にドキリとしつつ聖月は、大きな玄関に入りそのままエントランスを抜け、階段を上る。
赤い絨毯のひかれた廊下を進み小向の部屋の隣にある自分の部屋のドアを開ける。
はあ、とやっと息が吸えた気がした。聖月は乱暴に鞄を投げ捨てるように置くと、ベットに横になる。
そうしてしばらく休んでいると部屋にノックの音が響いた。
『聖月~、俺だけど』
可愛らしい声に聖月は慌てて玄関に向かいドアを開けた。
「今あけるか、らっ」
「わぁ、びっくりした~」
勢いよく開けたら、ビックリした様子の安楽城 ケイ (あらき けい)が立っていた。相変わらずくせっけのミルクティーみたいな色素の薄い髪が天使の容姿を引き立てている。大きな目、睫毛がバサバサと効果音を鳴らしそうなほど長く、陶器のような白い肌、桃色の頬―――。赤い美味しそうな唇を持っている彼は一歩間違えれば美少女に見える。
その美少女すぎる容姿に甘い香りもするし、聖月は会うたびにビクついてしまう。しかも今日の服装がブラウスにリボンのタイ、ピンク色のチノパンツという女性にしか思えない服装だったのでドキドキがいつもの倍だ。
「あっ、ご、ごめん。どうしたの? 急に…」
つい顔を反らしたのは、恥ずかしさからだった。聖月の表情はいつもの通り無表情だったが実際内心はドキドキとしている。
「ちょっとだけ話があるんだけど…中に入っていい?」
「え? あ、いいけど…どうぞ…」
上目使いで言われて、聖月は照れながらケイを招き入れた。断る理由はなかったからだ。ケイはスルスルと自分の部屋のように進み、聖月のベットに座る。聖月はそれに追いかけるのに精一杯だった。
何の話だろう?―――そう聖月もベットに彼の隣に座ったときだった。
「…蒼、どう?」
「え?」
突然の問いに聖月は首をかしげる。蒼―――入山蒼(いりやま あおい)がどうかしたんだろうか。
「あんま言わないほうがいいんだけど、蒼が最近機嫌いいんだよね…」
いつも明るい神妙な面持ちで言うケイが珍しくて話の内容よりそっちのほうが気になってしまう。
「……そうなんだ」
頷きつつもだからなんなんだ、という聖月の気持ちが透けて見えたんだろう。ケイが詳しく説明する。
「機嫌がいいときは気を付けたほうがいいよ」
「…アイツって機嫌が良くなくてもやばいじゃん」
「まあそれはそうなんだけどね…」
それは普通じゃん、とケイが言う。聖月は蒼が機嫌が悪いときのことを思い出して気分が滅入ってきた。蒼はどこか十夜らしい顔立ちの美形だ。だが性格は十夜のような優しさは一切持ち合わせていない、生粋のサディストだ。
十夜のような顔立ちに、クールを加えて冷たさを与えたような顔立ちなのもその性格をよく表している。髪は黒髪で前髪は目にかかるぐらい長いが、蒼にはよく似合っていた。
頭はいいが人のことをなんとも思っていない冷たい人間なのだ。聖月のことをまるで道具のようにしか考えていない。たとえ、人を傷つけてもなんとも思わない。人に興味がないのに、虐めるのは得意な最低な人種である。
人を助けようという概念がない人物で、どれだけ聖月が酷い目に遭ったかは数知れない。
―――どーでもいいんだよ、そんなことは。あぁ、何だ? 俺の誘いは断わっておいて、ソイツとはヨロシクやってんのかよ?
関係のないコウを巻き込んで怒りをぶつけられたこともあった。
―――ははっ、無表情のてめえが感じているのってホント興奮するわぁ
何度も何度も襲われてきた。それを聖月は何度も何度も逃げてきた。ディメントから出ていくあと1年程はずっと彼の手から逃げなくてはいけないと思うとまいってしまう。
「いつも蒼って触るな危険って感じからな…」
機嫌のよい悪いに限らず、蒼には近づかないほうが吉だ。ケイは聖月の蒼への≪毒薬≫のような扱い方に、苦笑した。
「まあ、分かってるならいいんだけど…とりあえず忠告はしたよ?」
ケイはそう言ってからはあ、とため息をついている。
「…どうして急に忠告してくれたわけ?」
そのことに不思議に思って問うと、ケイは少し顔を歪める。そして少しだけ考えた後、小さく呟くように話す。
「今までよりずっと蒼が愉しそうだから、聖月に飛び火しないか心配になったんだよね。―――だから極力今はできるかぎり蒼に近づかないで、逃げてほしい」
ケイの逃げて、という言葉にゾクッと背中が震える。ケイの言葉たちは普段よりも真剣で、本気の声だった。思わず聖月がごくりと唾をのむと、そんな聖月の様子にはっとなったケイは明るい笑みを浮かべた。
「まあ、蒼ずっと聖月のこと追っかけてるのにヤレてないからそろそろ本気出すんじゃないかなって思ってさ~」
さっきの表情とは打って変わってからっといつものように笑うケイに聖月はほっとする。先ほどのケイはいつもとは違ったような見えたから。聖月は蒼には近づかないから大丈夫、とケイに決意をかためた答えを言った。
ケイはならよかった、と笑って「話はそれだけだから」と聖月の部屋を出ていった。
聖月はケイがあんな風にまで言うのだからよく分からないけど気をつけよう―――そう決意して、明日の学校の準備を始めたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この前のことが全て夢なのかもしれない、と聖月は思う。
今も夢のような状況だしなぁ―――。聖月は周りを見渡してその想いを強くする。キラキラなシャンデリア、赤い絨毯、この場所に流れる雰囲気はすべてが現実味がない。まるでテレビドラマや小説に出てくる一流階級の人ばかりと共に聖月が食べているコース料理を食べているのだ。
自分に不相応な高級な味付けをされた料理はいつまでたっても慣れるはずもない。
それはこの状況も、全く―――慣れない。
「セイくん、美味しい?」
完璧な美貌を持ったスーツ姿の男性が同じテーブル席に2人で座り聖月を見て、微笑んでいる状況には未だに慣れない。瞳が合うたびに心臓が飛び出そうになる。いつもそうだ。この黒髪のオールバックの羽山宗佑(はやま そうすけ)に会うたび、聖月は緊張しっぱなしだった。
「あっ…、お、美味しいです」
そして毎度ながら「それ以上に喋ることあるだろ」と言われても仕方がない受け答えをしてしまう自分は相変わらずだった。もしコウなら、きっともっと上手に相手を持ち上げられるだろうから、今だけでも交換してほしい、と毎度のこと思う。
聖月のお子様な舌には合わない、とは言えず嘘を言ってしまうのも何も変わらない。
本当に、何もかも。
宗祐に指名されて今回はレストランで会うことを指定され、向かった場所は所謂聖月にとって格式が高すぎて味がよく分からない部類のレストランだった。たまに出る料理以外は高すぎて分からない、という前に彼とたべた同じような感じのレストランで、ドレスコードに身を包んだ聖月は咀嚼するのに精一杯であった。
「ならよかったよ」
にこやかに笑う宗祐に、前に起きたことは夢だったのかと思う。
―――気持ちよかった?
「あっぅ」
ガチャンッ―――ナイフが聖月の指からすり抜けて皿の上に落ちる。大きな音が静かで優雅な時間が流れるレストラン内では響いたのだろう。聖月に人々の注目が集まり、思わず赤面する。
「大丈夫?」
心配した声に我に返り、慌ててナイフを拾う。
「大丈夫です、手が滑っちゃっ、って、っぁ…」
「あっ…」
慌ててとったナイフがすり抜け、また手から零れ落ちた。今回はテーブルに落ち、派手な音はしなかったが、聖月は羞恥で顔を赤くする。2度目の落ちた理由は慌てたからだけではない。目の前の宗祐と目が合って、驚いたからだ。
「す、すみません…」
もう一度握り、胸の前に持っていくと聖月はゆっくりと息を吐いた。それは自分を落ち着かせるためだ。
「気を付けてね」
そうやって優しそうに笑う人物の顔を聖月は見れなかった。今日はあのことが起こってから初めて会う日。聖月は落ち着け、落ち着けと自分に向けて気を震い立たせる。そうしないと目の前のお客様に粗相をしてしまう―――そう自分に言い聞かせて。
バスに乗り、大正ロマンを感じさせるような西洋風な建物に聖月は向かっていく。周りは森に囲まれていて、まるで隔離されているような空間だな、と何度も思う。門に入って、しばらく歩くと玄関がみえる。きゃっきゃ、と楽しそうな笑い声が聞こえた。このディメントの寮に住む、幼い子供の声だろう。
その声にドキリとしつつ聖月は、大きな玄関に入りそのままエントランスを抜け、階段を上る。
赤い絨毯のひかれた廊下を進み小向の部屋の隣にある自分の部屋のドアを開ける。
はあ、とやっと息が吸えた気がした。聖月は乱暴に鞄を投げ捨てるように置くと、ベットに横になる。
そうしてしばらく休んでいると部屋にノックの音が響いた。
『聖月~、俺だけど』
可愛らしい声に聖月は慌てて玄関に向かいドアを開けた。
「今あけるか、らっ」
「わぁ、びっくりした~」
勢いよく開けたら、ビックリした様子の安楽城 ケイ (あらき けい)が立っていた。相変わらずくせっけのミルクティーみたいな色素の薄い髪が天使の容姿を引き立てている。大きな目、睫毛がバサバサと効果音を鳴らしそうなほど長く、陶器のような白い肌、桃色の頬―――。赤い美味しそうな唇を持っている彼は一歩間違えれば美少女に見える。
その美少女すぎる容姿に甘い香りもするし、聖月は会うたびにビクついてしまう。しかも今日の服装がブラウスにリボンのタイ、ピンク色のチノパンツという女性にしか思えない服装だったのでドキドキがいつもの倍だ。
「あっ、ご、ごめん。どうしたの? 急に…」
つい顔を反らしたのは、恥ずかしさからだった。聖月の表情はいつもの通り無表情だったが実際内心はドキドキとしている。
「ちょっとだけ話があるんだけど…中に入っていい?」
「え? あ、いいけど…どうぞ…」
上目使いで言われて、聖月は照れながらケイを招き入れた。断る理由はなかったからだ。ケイはスルスルと自分の部屋のように進み、聖月のベットに座る。聖月はそれに追いかけるのに精一杯だった。
何の話だろう?―――そう聖月もベットに彼の隣に座ったときだった。
「…蒼、どう?」
「え?」
突然の問いに聖月は首をかしげる。蒼―――入山蒼(いりやま あおい)がどうかしたんだろうか。
「あんま言わないほうがいいんだけど、蒼が最近機嫌いいんだよね…」
いつも明るい神妙な面持ちで言うケイが珍しくて話の内容よりそっちのほうが気になってしまう。
「……そうなんだ」
頷きつつもだからなんなんだ、という聖月の気持ちが透けて見えたんだろう。ケイが詳しく説明する。
「機嫌がいいときは気を付けたほうがいいよ」
「…アイツって機嫌が良くなくてもやばいじゃん」
「まあそれはそうなんだけどね…」
それは普通じゃん、とケイが言う。聖月は蒼が機嫌が悪いときのことを思い出して気分が滅入ってきた。蒼はどこか十夜らしい顔立ちの美形だ。だが性格は十夜のような優しさは一切持ち合わせていない、生粋のサディストだ。
十夜のような顔立ちに、クールを加えて冷たさを与えたような顔立ちなのもその性格をよく表している。髪は黒髪で前髪は目にかかるぐらい長いが、蒼にはよく似合っていた。
頭はいいが人のことをなんとも思っていない冷たい人間なのだ。聖月のことをまるで道具のようにしか考えていない。たとえ、人を傷つけてもなんとも思わない。人に興味がないのに、虐めるのは得意な最低な人種である。
人を助けようという概念がない人物で、どれだけ聖月が酷い目に遭ったかは数知れない。
―――どーでもいいんだよ、そんなことは。あぁ、何だ? 俺の誘いは断わっておいて、ソイツとはヨロシクやってんのかよ?
関係のないコウを巻き込んで怒りをぶつけられたこともあった。
―――ははっ、無表情のてめえが感じているのってホント興奮するわぁ
何度も何度も襲われてきた。それを聖月は何度も何度も逃げてきた。ディメントから出ていくあと1年程はずっと彼の手から逃げなくてはいけないと思うとまいってしまう。
「いつも蒼って触るな危険って感じからな…」
機嫌のよい悪いに限らず、蒼には近づかないほうが吉だ。ケイは聖月の蒼への≪毒薬≫のような扱い方に、苦笑した。
「まあ、分かってるならいいんだけど…とりあえず忠告はしたよ?」
ケイはそう言ってからはあ、とため息をついている。
「…どうして急に忠告してくれたわけ?」
そのことに不思議に思って問うと、ケイは少し顔を歪める。そして少しだけ考えた後、小さく呟くように話す。
「今までよりずっと蒼が愉しそうだから、聖月に飛び火しないか心配になったんだよね。―――だから極力今はできるかぎり蒼に近づかないで、逃げてほしい」
ケイの逃げて、という言葉にゾクッと背中が震える。ケイの言葉たちは普段よりも真剣で、本気の声だった。思わず聖月がごくりと唾をのむと、そんな聖月の様子にはっとなったケイは明るい笑みを浮かべた。
「まあ、蒼ずっと聖月のこと追っかけてるのにヤレてないからそろそろ本気出すんじゃないかなって思ってさ~」
さっきの表情とは打って変わってからっといつものように笑うケイに聖月はほっとする。先ほどのケイはいつもとは違ったような見えたから。聖月は蒼には近づかないから大丈夫、とケイに決意をかためた答えを言った。
ケイはならよかった、と笑って「話はそれだけだから」と聖月の部屋を出ていった。
聖月はケイがあんな風にまで言うのだからよく分からないけど気をつけよう―――そう決意して、明日の学校の準備を始めたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この前のことが全て夢なのかもしれない、と聖月は思う。
今も夢のような状況だしなぁ―――。聖月は周りを見渡してその想いを強くする。キラキラなシャンデリア、赤い絨毯、この場所に流れる雰囲気はすべてが現実味がない。まるでテレビドラマや小説に出てくる一流階級の人ばかりと共に聖月が食べているコース料理を食べているのだ。
自分に不相応な高級な味付けをされた料理はいつまでたっても慣れるはずもない。
それはこの状況も、全く―――慣れない。
「セイくん、美味しい?」
完璧な美貌を持ったスーツ姿の男性が同じテーブル席に2人で座り聖月を見て、微笑んでいる状況には未だに慣れない。瞳が合うたびに心臓が飛び出そうになる。いつもそうだ。この黒髪のオールバックの羽山宗佑(はやま そうすけ)に会うたび、聖月は緊張しっぱなしだった。
「あっ…、お、美味しいです」
そして毎度ながら「それ以上に喋ることあるだろ」と言われても仕方がない受け答えをしてしまう自分は相変わらずだった。もしコウなら、きっともっと上手に相手を持ち上げられるだろうから、今だけでも交換してほしい、と毎度のこと思う。
聖月のお子様な舌には合わない、とは言えず嘘を言ってしまうのも何も変わらない。
本当に、何もかも。
宗祐に指名されて今回はレストランで会うことを指定され、向かった場所は所謂聖月にとって格式が高すぎて味がよく分からない部類のレストランだった。たまに出る料理以外は高すぎて分からない、という前に彼とたべた同じような感じのレストランで、ドレスコードに身を包んだ聖月は咀嚼するのに精一杯であった。
「ならよかったよ」
にこやかに笑う宗祐に、前に起きたことは夢だったのかと思う。
―――気持ちよかった?
「あっぅ」
ガチャンッ―――ナイフが聖月の指からすり抜けて皿の上に落ちる。大きな音が静かで優雅な時間が流れるレストラン内では響いたのだろう。聖月に人々の注目が集まり、思わず赤面する。
「大丈夫?」
心配した声に我に返り、慌ててナイフを拾う。
「大丈夫です、手が滑っちゃっ、って、っぁ…」
「あっ…」
慌ててとったナイフがすり抜け、また手から零れ落ちた。今回はテーブルに落ち、派手な音はしなかったが、聖月は羞恥で顔を赤くする。2度目の落ちた理由は慌てたからだけではない。目の前の宗祐と目が合って、驚いたからだ。
「す、すみません…」
もう一度握り、胸の前に持っていくと聖月はゆっくりと息を吐いた。それは自分を落ち着かせるためだ。
「気を付けてね」
そうやって優しそうに笑う人物の顔を聖月は見れなかった。今日はあのことが起こってから初めて会う日。聖月は落ち着け、落ち着けと自分に向けて気を震い立たせる。そうしないと目の前のお客様に粗相をしてしまう―――そう自分に言い聞かせて。
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