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第三章 第十三話
137 変わりゆく日常
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◇◇◇
小向にも神山にも誰にも「外泊」許可をとってないことに気付きビクビクしながら、寮に戻ったが別に何も言われなかった。以前だったら、連絡もせずに泊まるなんてと怒られていただろう。あと残り3か月でディメントから自分は消える人間だと実感する。
聖月は自分がディメントから縛られなくなった事に喜んだ。
ケイに「どこに行ってたの?」と寮へ帰った時廊下で会い、開口一番でそう心配されて、申し訳なくなった。聖月は正直に「羽山様のところに泊った」と言うと、ケイはビックリした様子だった。
「あれ?昨日予約入ってたっけ?」
「…ううん」
「…そうなんだぁ」
ケイは、それ以上は言わなかった。何だか不思議だった。いつもだったら「どうして?」と追及しそうな場面だ。
それが不思議で仕方がなかったが、ケイに聞かれて全部話していいのか分からなかったのでケイとはただそれだけ話してケイと別れた。
ケイは段々と離れていく聖月の背中を見詰めた。そしてため息をつくと、ケイもその場から離れたのだった。
それからは、時があっという間に過ぎていった。
ディメントナンバースリー、セイが2月いっぱいで辞める。その通達がディメント全体に回ったのは、2月の後半に差し掛かった時だった。急な事に、ディメントの客、蝶たちは皆噂していた。何かあったのか。「身請け」をされたのか。だが、それは語られることはなくディメントナンバースリーが辞める、その事実だけが公表された。
セイの客は、DVDを買った客が多く、回収された時に一足早く説明がされたらしい。その客たちにはわかっていただろう。
セイが、誰かのモノになったのだと。『身請け』をされたのだと。
それからディメントを辞めるため、挨拶回りをしなくていけなかった。これが聖月にとって本当に大変だった。『身請け』をされた男娼は辞めるまでの間客と『性行為』は出来ない。そういう事になっているらしい。聖月にとっては有難かったが、お得意様はそうではなかった。どうしてヤれないんだ、と怒る者もたくさんいた。
ヤれない代わりに、相手の事―――宗祐の話を聞き出そうとする客もいた。それが一番聖月にとって苦痛だった。その時の客の目が怖かったから。聖月はただ何も言えないんです、と謝ることしかできない。
辞めます、と言った時のお客様は皆驚いていた。理由を聞き出してくる客もいたし、そうか、と受け入れてくれる客もいた。
それから―――橘はあれから来なかった。橘から貰い部屋で捨てた時計だが、ごみを捨てる際に神山に見つかって「こんなところで時計を捨てるな」と怒られてしまった。それもその通りだ。結局あの時計は聖月の手元にある。
一番ディメントを辞めるに至って意外な反応をしたのは蒼だった。なぜか蒼に、ディメントを辞めると言う事が速攻でばれてしまっていたのも驚いた。DVDを回収され、キレていたので、その時に調べていたのかもしれない。
蒼が一番大きな反応をすると身構えていたのに、言われた言葉は簡潔としたものだった。
「へえ。羽山様に買って貰ったのか」
馬鹿にしたニヤニヤとした顔をされた。聖月を見下した顔だった。お前もディメントに染まったんだよ―――。そう言われている気がした。いや、実際そう思っているのだろう。その時されたゴミのようなものを見る瞳は今思い出しても背筋が凍る。
「ちゃあんと可愛がってもらえよ?」
高笑いをしながら、肩を叩かれた。ねっとりとした含みのある言い方をされ、欲望を混ぜ込んだ目をされ、さらに寒気がする。
―――蒼はとても愉しそうだった。
もっと怒るかと思っていた。もっと、怒り狂い、襲われるか殴られると思っていた。いつもの蒼を見ていたからこそ、聖月はそう思っていた。だが、蒼は何もせずただ高笑いをしながらその場を去っていったのだ。今の彼は人生が幸福で、今にも踊りだしそうに愉しげだった。
だからその時、聖月は全然身体に力が入らなかった。拍子抜けした、と言った方がいいのだろうか。馬鹿にされたのだと分かっていたけれど、怒りさえ湧かなかった。
反対にケイは、聖月のディメントを辞める話を聞いた時悲しそうだった。
もっと軽く「そっかぁ」とか言いそうだったのに。
聖月が告げると、しばらく間が開いてから「そうなんだ」と言って、「寂しいな」と俯いた。
それから、彼は何も言わなかった。聖月も何も言わなかった。言えはしなかった。ケイがこんなに落ち込んでしまうとは思っていなかったからだ。「どうして辞めるの?」と、理由を聞かないケイは、いつものケイじゃない気がした。それでこそ、追及しそうなのに。
聖月の予想とは違う反応に、聖月はつい
「ねえ、メールアドレス教えて。あと、電話番号も…また連絡したいから」
と、言ってしまった。
本当は、聞くつもりはなかった。ディメントを出ていったら、会わないつもりだった。
それが、ディメントを辞める聖月のケジメのはずだった。
だが目の前でもう会えなくなるのか、と寂しそうに顔を俯かれるともう会わないと思った自分が急に嫌になったのだ。
ケイと聖月の二人はケータイの番号さえ知らない仲だった。そのぐらいの距離感がある『仲』だった。当たり前だけど、聖月は蒼の電話番号も知らない。だって、この二人は聖月にとって『ディメント』での関係性しかなかったのだ。
聖月の言葉に目を見開き驚き、そしてケイは笑みを浮かべた。
「―――うんっ」
その時、大きく頷いてくれた、ケイは天使のように可愛らしかった。メールアドレスと、電話番号を教えてくれたケイは楽しそうで…嬉しそうで…キラキラと輝いているように見えた。ケイは表情がくるくると変わる。先程までの悲しい顔がなくなって本当に良かったとほっとする。
ケイは快楽に染まった顔じゃなくて、笑顔で居てほしいと心の底から聖月は思う。
それから、コウにもディメントを辞めるということを報告をした。コウは聖月の予想通りに自分の事のように喜んでくれた。
おめでとうございます、と涙ぐんでくれた。それは本当に、嬉しくて。心が温かく、満たされていく。聖月も「ありがとう」と言う他なかった。
宗祐とはそれから―――キス止まりの清い関係を貫いてる。ディメントを完全に辞めるまで「そうするのだ」と、次に家に行ったときに宗祐に宣言された。
「お前がここに来たら抱く」
彼は、そうサディストの笑みを浮かべながら言った。宗祐がいった「ここ」とは彼の家の事だ。聖月がディメントを辞めて寮から出ていくが、まだ住む家を決めていないと告げると「うちに来ればいい」と軽く言った。聖月が驚いていると「合鍵も渡してるし簡単な事だ」と横暴な言い方をして聖月を説き伏せる。
「部屋も空いてるから好きにすればいい」
好きな人と一緒に住む。
それは、聖月にとって願ってやまないことだった。
大企業の社長と住むなんて―――――。そんな事、いいのだろうか?自分はまだ大学生。しかも、身体を売っていた。身分違いも甚だしい。そう迷う気持ちも思ったが、聖月は覚悟を決め宗祐の言葉を受け入れる。
横暴で、自分勝手な部分も確かにあったが宗祐は紳士的なところがあった。演技をしていた、と言っていたが本当の彼も紳士なのだ。好きにすればいい、と言ってくれる。
ディメントを辞め、寮を出ていくその日から―――聖月は宗祐と同棲する。
そしてその日に、聖月は宗祐に抱かれる。
やはり彼はサディストなのだろう。そんな宣言をされたら、カレンダーを見るたびに顔が熱くなる。まるで、待てをされている犬のようだった。忘れよう、と思ってもやはりその宣言は聖月の頭に残っていた。ドキドキ、ソワソワ、そんな感情が混じり合う。そんな気持ちのまま、時間は過ぎていった。
大学の講義、ディメントを辞める準備、引っ越しの準備…そんな事をしていたらあっという間にその日は来てしまった。
「…明日か、」
聖月は寮の自室で呟く。明日がディメントを辞める日となっていた。
部屋を大きく見渡す。聖月の部屋はもう段ボールとベットだけになっていた。荷物が置いてあった時より広く、別の部屋に思えた。この部屋は愛着があったので出ていくのは少し寂しいが、それ以上に未来への期待があった。
様々なディメントの思い出が蘇り、首を振る。センチメンタルになってどうするのだと、頬を叩く。
――――寂しいな。
ケイの言葉が蘇り、ベットから飛び降りる。
「ケイ…」
物悲しい気持ちで、聖月は出ていかないでと悲しそうな顔をした彼の名前を呼ぶ。そして、同時に蒼の顔が浮かんだ。明日は、ケイとコウとイチと神山が最後に見送ってくれると言ってくれていたが、蒼は来るのだろうか。最近話してもいないし、会ってもいないので聖月は判断ができないが―――。
来なければそれでいいと思った。蒼がどんな顔で見送るかなんて想像ができるから。
「――――」
聖月はふとすっかり暗くなった窓の外を見上げる。森に囲まれたこの場所。初めてここに来た時聖月は緊張していた。こんな大きな古い洋館のような場所で、一人でやっていけるのだろうか…と不安で仕方がなかった。両親が死んですぐのことだったから余計にそう思っていた。
蓋を開けてみれば、ここは悪魔のような場所だった。蒼、ケイ、クミヤ、コウ、イチ、神山、小向、キダ。様々な出会いがあったのも、遠い昔のように思えた。ここの真実を知り、子供たちの泣き叫ぶ声が上から聞こえてくると何もできない自分が嫌でしょうがなかった。
今日はその声が聞こえない。それにほっとしながら、聖月はベットに入った。
ここから出ていけば、もうこうやって自分を責める日々はなくなるのだろう。
「……」
聖月は深く息を吐いた。
明日は土曜日。2月の終わりの日。そして、Demento(ディメント)を辞める日だ。聖月の新しく生まれ変わる日でもあった。
じっと聖月は自身の手を見詰める。ちっぽけな手だと思った。あの時と変わらない手。だが、聖月は強く握りしめ身体を丸くし目を瞑る。震えている聖月の身体を、確かに優しく誰かが触っているような気がした。聖月は自分と同じような人がどうかいなくなりますように、と神様に儚く願いながら眠りについた―――。
小向にも神山にも誰にも「外泊」許可をとってないことに気付きビクビクしながら、寮に戻ったが別に何も言われなかった。以前だったら、連絡もせずに泊まるなんてと怒られていただろう。あと残り3か月でディメントから自分は消える人間だと実感する。
聖月は自分がディメントから縛られなくなった事に喜んだ。
ケイに「どこに行ってたの?」と寮へ帰った時廊下で会い、開口一番でそう心配されて、申し訳なくなった。聖月は正直に「羽山様のところに泊った」と言うと、ケイはビックリした様子だった。
「あれ?昨日予約入ってたっけ?」
「…ううん」
「…そうなんだぁ」
ケイは、それ以上は言わなかった。何だか不思議だった。いつもだったら「どうして?」と追及しそうな場面だ。
それが不思議で仕方がなかったが、ケイに聞かれて全部話していいのか分からなかったのでケイとはただそれだけ話してケイと別れた。
ケイは段々と離れていく聖月の背中を見詰めた。そしてため息をつくと、ケイもその場から離れたのだった。
それからは、時があっという間に過ぎていった。
ディメントナンバースリー、セイが2月いっぱいで辞める。その通達がディメント全体に回ったのは、2月の後半に差し掛かった時だった。急な事に、ディメントの客、蝶たちは皆噂していた。何かあったのか。「身請け」をされたのか。だが、それは語られることはなくディメントナンバースリーが辞める、その事実だけが公表された。
セイの客は、DVDを買った客が多く、回収された時に一足早く説明がされたらしい。その客たちにはわかっていただろう。
セイが、誰かのモノになったのだと。『身請け』をされたのだと。
それからディメントを辞めるため、挨拶回りをしなくていけなかった。これが聖月にとって本当に大変だった。『身請け』をされた男娼は辞めるまでの間客と『性行為』は出来ない。そういう事になっているらしい。聖月にとっては有難かったが、お得意様はそうではなかった。どうしてヤれないんだ、と怒る者もたくさんいた。
ヤれない代わりに、相手の事―――宗祐の話を聞き出そうとする客もいた。それが一番聖月にとって苦痛だった。その時の客の目が怖かったから。聖月はただ何も言えないんです、と謝ることしかできない。
辞めます、と言った時のお客様は皆驚いていた。理由を聞き出してくる客もいたし、そうか、と受け入れてくれる客もいた。
それから―――橘はあれから来なかった。橘から貰い部屋で捨てた時計だが、ごみを捨てる際に神山に見つかって「こんなところで時計を捨てるな」と怒られてしまった。それもその通りだ。結局あの時計は聖月の手元にある。
一番ディメントを辞めるに至って意外な反応をしたのは蒼だった。なぜか蒼に、ディメントを辞めると言う事が速攻でばれてしまっていたのも驚いた。DVDを回収され、キレていたので、その時に調べていたのかもしれない。
蒼が一番大きな反応をすると身構えていたのに、言われた言葉は簡潔としたものだった。
「へえ。羽山様に買って貰ったのか」
馬鹿にしたニヤニヤとした顔をされた。聖月を見下した顔だった。お前もディメントに染まったんだよ―――。そう言われている気がした。いや、実際そう思っているのだろう。その時されたゴミのようなものを見る瞳は今思い出しても背筋が凍る。
「ちゃあんと可愛がってもらえよ?」
高笑いをしながら、肩を叩かれた。ねっとりとした含みのある言い方をされ、欲望を混ぜ込んだ目をされ、さらに寒気がする。
―――蒼はとても愉しそうだった。
もっと怒るかと思っていた。もっと、怒り狂い、襲われるか殴られると思っていた。いつもの蒼を見ていたからこそ、聖月はそう思っていた。だが、蒼は何もせずただ高笑いをしながらその場を去っていったのだ。今の彼は人生が幸福で、今にも踊りだしそうに愉しげだった。
だからその時、聖月は全然身体に力が入らなかった。拍子抜けした、と言った方がいいのだろうか。馬鹿にされたのだと分かっていたけれど、怒りさえ湧かなかった。
反対にケイは、聖月のディメントを辞める話を聞いた時悲しそうだった。
もっと軽く「そっかぁ」とか言いそうだったのに。
聖月が告げると、しばらく間が開いてから「そうなんだ」と言って、「寂しいな」と俯いた。
それから、彼は何も言わなかった。聖月も何も言わなかった。言えはしなかった。ケイがこんなに落ち込んでしまうとは思っていなかったからだ。「どうして辞めるの?」と、理由を聞かないケイは、いつものケイじゃない気がした。それでこそ、追及しそうなのに。
聖月の予想とは違う反応に、聖月はつい
「ねえ、メールアドレス教えて。あと、電話番号も…また連絡したいから」
と、言ってしまった。
本当は、聞くつもりはなかった。ディメントを出ていったら、会わないつもりだった。
それが、ディメントを辞める聖月のケジメのはずだった。
だが目の前でもう会えなくなるのか、と寂しそうに顔を俯かれるともう会わないと思った自分が急に嫌になったのだ。
ケイと聖月の二人はケータイの番号さえ知らない仲だった。そのぐらいの距離感がある『仲』だった。当たり前だけど、聖月は蒼の電話番号も知らない。だって、この二人は聖月にとって『ディメント』での関係性しかなかったのだ。
聖月の言葉に目を見開き驚き、そしてケイは笑みを浮かべた。
「―――うんっ」
その時、大きく頷いてくれた、ケイは天使のように可愛らしかった。メールアドレスと、電話番号を教えてくれたケイは楽しそうで…嬉しそうで…キラキラと輝いているように見えた。ケイは表情がくるくると変わる。先程までの悲しい顔がなくなって本当に良かったとほっとする。
ケイは快楽に染まった顔じゃなくて、笑顔で居てほしいと心の底から聖月は思う。
それから、コウにもディメントを辞めるということを報告をした。コウは聖月の予想通りに自分の事のように喜んでくれた。
おめでとうございます、と涙ぐんでくれた。それは本当に、嬉しくて。心が温かく、満たされていく。聖月も「ありがとう」と言う他なかった。
宗祐とはそれから―――キス止まりの清い関係を貫いてる。ディメントを完全に辞めるまで「そうするのだ」と、次に家に行ったときに宗祐に宣言された。
「お前がここに来たら抱く」
彼は、そうサディストの笑みを浮かべながら言った。宗祐がいった「ここ」とは彼の家の事だ。聖月がディメントを辞めて寮から出ていくが、まだ住む家を決めていないと告げると「うちに来ればいい」と軽く言った。聖月が驚いていると「合鍵も渡してるし簡単な事だ」と横暴な言い方をして聖月を説き伏せる。
「部屋も空いてるから好きにすればいい」
好きな人と一緒に住む。
それは、聖月にとって願ってやまないことだった。
大企業の社長と住むなんて―――――。そんな事、いいのだろうか?自分はまだ大学生。しかも、身体を売っていた。身分違いも甚だしい。そう迷う気持ちも思ったが、聖月は覚悟を決め宗祐の言葉を受け入れる。
横暴で、自分勝手な部分も確かにあったが宗祐は紳士的なところがあった。演技をしていた、と言っていたが本当の彼も紳士なのだ。好きにすればいい、と言ってくれる。
ディメントを辞め、寮を出ていくその日から―――聖月は宗祐と同棲する。
そしてその日に、聖月は宗祐に抱かれる。
やはり彼はサディストなのだろう。そんな宣言をされたら、カレンダーを見るたびに顔が熱くなる。まるで、待てをされている犬のようだった。忘れよう、と思ってもやはりその宣言は聖月の頭に残っていた。ドキドキ、ソワソワ、そんな感情が混じり合う。そんな気持ちのまま、時間は過ぎていった。
大学の講義、ディメントを辞める準備、引っ越しの準備…そんな事をしていたらあっという間にその日は来てしまった。
「…明日か、」
聖月は寮の自室で呟く。明日がディメントを辞める日となっていた。
部屋を大きく見渡す。聖月の部屋はもう段ボールとベットだけになっていた。荷物が置いてあった時より広く、別の部屋に思えた。この部屋は愛着があったので出ていくのは少し寂しいが、それ以上に未来への期待があった。
様々なディメントの思い出が蘇り、首を振る。センチメンタルになってどうするのだと、頬を叩く。
――――寂しいな。
ケイの言葉が蘇り、ベットから飛び降りる。
「ケイ…」
物悲しい気持ちで、聖月は出ていかないでと悲しそうな顔をした彼の名前を呼ぶ。そして、同時に蒼の顔が浮かんだ。明日は、ケイとコウとイチと神山が最後に見送ってくれると言ってくれていたが、蒼は来るのだろうか。最近話してもいないし、会ってもいないので聖月は判断ができないが―――。
来なければそれでいいと思った。蒼がどんな顔で見送るかなんて想像ができるから。
「――――」
聖月はふとすっかり暗くなった窓の外を見上げる。森に囲まれたこの場所。初めてここに来た時聖月は緊張していた。こんな大きな古い洋館のような場所で、一人でやっていけるのだろうか…と不安で仕方がなかった。両親が死んですぐのことだったから余計にそう思っていた。
蓋を開けてみれば、ここは悪魔のような場所だった。蒼、ケイ、クミヤ、コウ、イチ、神山、小向、キダ。様々な出会いがあったのも、遠い昔のように思えた。ここの真実を知り、子供たちの泣き叫ぶ声が上から聞こえてくると何もできない自分が嫌でしょうがなかった。
今日はその声が聞こえない。それにほっとしながら、聖月はベットに入った。
ここから出ていけば、もうこうやって自分を責める日々はなくなるのだろう。
「……」
聖月は深く息を吐いた。
明日は土曜日。2月の終わりの日。そして、Demento(ディメント)を辞める日だ。聖月の新しく生まれ変わる日でもあった。
じっと聖月は自身の手を見詰める。ちっぽけな手だと思った。あの時と変わらない手。だが、聖月は強く握りしめ身体を丸くし目を瞑る。震えている聖月の身体を、確かに優しく誰かが触っているような気がした。聖月は自分と同じような人がどうかいなくなりますように、と神様に儚く願いながら眠りについた―――。
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