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蒼編
2 蒼とシモン
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結局俺は蒼とシモンに連れられ『親指姫』に入店していた。
嫌だと抵抗したが、無理やり連れてこられた。
男性でも入れるのか、という疑問に蒼は「ここは男も事前に連絡すれば入れて貰えるホストクラブだぜ? 男が入店禁止の所もあるけどな」と言った。
そうだったのか…
と、店内を見渡すと男性客が1人来ていて「本当だ」と驚く。
煌びやかな店内をまじまじと見てしまう。
確かに蒼がホストをやっていることは聞いていたが、実際店に入ると別世界が広がっていた。
綺麗な女性がホストと談笑し、楽しそうにシャンパンなどの酒を飲んでいる。
収納ボックスの入った袋を持った自分が場違いだ。
この親指姫では、蒼はディメントと同じソウと名乗りナンバー3として活躍しているらしい。ちなみにシモンはナンバー5だということだった。
席に案内され、聖月の両隣に蒼とシモンが配置され座っていても全く落ち着かない。距離感が近いのも気になった。
「あの。俺…お金持ってないんだけど…」
イメージとしてホストクラブで酒を呑んだら大金を支払うイメージがある。今日は買い物する分の金しか持ってきていない。
「心配すんなって。今日は俺の奢りだから」
「マジですか?! ゴチです~」
「誰がお前の分を奢ると言った」
「ソウが奢るとか怪しすぎる…」
タダよりも怖いものはない。
特に蒼からの提案なんて余計に何かあるのではないかと考えてしまう。
訝しげに蒼を見詰めてしまう。蒼はそんな俺の視線を物ともせず、肩を組んでくる。急な密着に驚いた。
「で? お前は何でここに居てシモンと話してたんだよ」
「何でって…。シモンくんに声をかけられて…そのまま連れてかれてここまで来たんだよ」
「可愛かったんで声かけちゃいましたぁ~」
「ふぅん、モテモテじゃねぇか。聖月ちゃん?」
ニヤニヤとしながら言われて居心地が悪い。
一刻もここから離れたい。酒は弱く飲めないので、オレンジジュースをちびちびと飲みながらどうやって逃げようか思考する。
だが全くいい案は出てこない。
「まあ、楽しめよ。ここは見ていて面白い場所だぞ?」
「…はぁ…」
「ディメントと同様に欲望に忠実だ。ワタシを見て!って女共がホスト共に媚びてる。一時の快楽で大枚をはたくのは見ていて見ものだよなぁ」
「っ、ここでディメントの事言うなよ!」
失礼な蒼の言葉と共にディメントの事を言われ俺は思わず叫ぶ。
ここにはディメントのことは何も知らないシモンが居るのだ。簡単にその言葉を使わないで欲しかった。
怒る俺の隣でシモンが驚く声を上げた。
「ええ?! 聖月さんって、ディメントで働いているのぉ?!」
身を乗り出して言うシモンに蒼が自慢げに答える。
「あぁ。コイツこう見えてもナンバー3。俺より売り上げが上だよ」
「蒼っ!」
俺は思わず蒼の口を覆いそうになる。
こんなにあっさりと言ってしまうのにも驚いたが、それよりもシモンがディメントの事を知っている事の方も気になった。
「何で、シモンくんがディメントの事知っているの…?」
気になったことを俺はつい聞いてしまっていた。
「それは、ソウさんに男娼館で働いているって教えて貰ったからだねぇ~。他業種の話って聞いてて楽しいよね~」
間延びした言い方に俺は毒気を抜かれてしまう。
こうはっきりと言われると怒る気持ちもみるみると無くなってくる。こんなことで怒る自分が馬鹿のように思えた。
それから俺は3人と会話を続けた。
隣のテーブルでシャンパンタワーをしていて、初めてシャンパンコールを見た。実際に見ていて、ホストクラブにハマる女性が居るのがよく分かった。
シャンパンタワーを頼んだ女性はまるでこの場の主役だ。ホストたちに名前をコールされ、初めにシャンパングラスを渡されて口をつけた瞬間に歓声が上がる。
そんな事、人生で中々体験出来るものではない。
実際女性の顔は恍惚としていた。酔っていた。この場所と自分に。
それを楽しそうに蒼とシモンは見ていた。それが何よりも恐ろしかった。
蒼は馬鹿にしたようにその女性客を見詰めていた。まるでゴミのように――。
会話術に長けているシモンと蒼の話は聞いていて面白かった。
ホストはコミュニケーションのスペシャリストだと聞いたことがあるが、それは本当の事だった。
が何をして喜び、優越感を感じるのか熟知している。人の話を聞き出すのもお手の物だった。
どうして女性たちがいけないと思いつつ、ホストクラブに通ってしまうのか分からなかったが彼らと話していると自分が特別な人間だと思えてくるのだ。
こんな美形のホストと喋れる自分は凄い、ホストに甘い言葉を貰える――彼を夢中にしているのは自分だと、勘違いしてしまう。
そしてホストに会うためにお金を払ってしまう。喜んでもらうため高いブランド品をプレゼントしてしまう。
「人が堕ちるのは見ているのは気持ちいいぜ?」
他のテーブルを見ていた聖月に投げられた言葉。何人もの男女を狂わせてきた悪魔のような男が言う言葉には、説得力があった。
俺は店内に充満する欲望の匂いと、酒の香りに酔いそうになりながら答える。
「お前の趣味が最悪なんだよ」
「え~? 酷い事言うなぁ、シモンもそう思うよな?」
「ん~…どうですかね~…。堕ちる人って弱くて見ててつまんないからなぁ~」
「へぇ。いい趣味じゃん」
「…っ」
つまんないからなぁ、と言ったシモンは明らかにディメント側の人間だった。そんな恐ろしい事を明るく笑顔で言っている事に驚き、恐れ慄く。
蒼と仲いい人でまともな人は居ないのか?とつい考えてしまう。
俺が早く終われ、早く終われ…と考えている内にラストオーダーの時間になった。
時間を見ると深夜0時になって驚いた。
どうやら5時間はこの場所にいたらしい。帰る際「また来てねえ~」とシモンに言われたが、遠慮したい。
もう一生ここには来ることがないだろう。こんな所通っていたら、金銭感覚が狂ってしまう。
そんな事を考えながら、俺は店を後にしたのだった。
嫌だと抵抗したが、無理やり連れてこられた。
男性でも入れるのか、という疑問に蒼は「ここは男も事前に連絡すれば入れて貰えるホストクラブだぜ? 男が入店禁止の所もあるけどな」と言った。
そうだったのか…
と、店内を見渡すと男性客が1人来ていて「本当だ」と驚く。
煌びやかな店内をまじまじと見てしまう。
確かに蒼がホストをやっていることは聞いていたが、実際店に入ると別世界が広がっていた。
綺麗な女性がホストと談笑し、楽しそうにシャンパンなどの酒を飲んでいる。
収納ボックスの入った袋を持った自分が場違いだ。
この親指姫では、蒼はディメントと同じソウと名乗りナンバー3として活躍しているらしい。ちなみにシモンはナンバー5だということだった。
席に案内され、聖月の両隣に蒼とシモンが配置され座っていても全く落ち着かない。距離感が近いのも気になった。
「あの。俺…お金持ってないんだけど…」
イメージとしてホストクラブで酒を呑んだら大金を支払うイメージがある。今日は買い物する分の金しか持ってきていない。
「心配すんなって。今日は俺の奢りだから」
「マジですか?! ゴチです~」
「誰がお前の分を奢ると言った」
「ソウが奢るとか怪しすぎる…」
タダよりも怖いものはない。
特に蒼からの提案なんて余計に何かあるのではないかと考えてしまう。
訝しげに蒼を見詰めてしまう。蒼はそんな俺の視線を物ともせず、肩を組んでくる。急な密着に驚いた。
「で? お前は何でここに居てシモンと話してたんだよ」
「何でって…。シモンくんに声をかけられて…そのまま連れてかれてここまで来たんだよ」
「可愛かったんで声かけちゃいましたぁ~」
「ふぅん、モテモテじゃねぇか。聖月ちゃん?」
ニヤニヤとしながら言われて居心地が悪い。
一刻もここから離れたい。酒は弱く飲めないので、オレンジジュースをちびちびと飲みながらどうやって逃げようか思考する。
だが全くいい案は出てこない。
「まあ、楽しめよ。ここは見ていて面白い場所だぞ?」
「…はぁ…」
「ディメントと同様に欲望に忠実だ。ワタシを見て!って女共がホスト共に媚びてる。一時の快楽で大枚をはたくのは見ていて見ものだよなぁ」
「っ、ここでディメントの事言うなよ!」
失礼な蒼の言葉と共にディメントの事を言われ俺は思わず叫ぶ。
ここにはディメントのことは何も知らないシモンが居るのだ。簡単にその言葉を使わないで欲しかった。
怒る俺の隣でシモンが驚く声を上げた。
「ええ?! 聖月さんって、ディメントで働いているのぉ?!」
身を乗り出して言うシモンに蒼が自慢げに答える。
「あぁ。コイツこう見えてもナンバー3。俺より売り上げが上だよ」
「蒼っ!」
俺は思わず蒼の口を覆いそうになる。
こんなにあっさりと言ってしまうのにも驚いたが、それよりもシモンがディメントの事を知っている事の方も気になった。
「何で、シモンくんがディメントの事知っているの…?」
気になったことを俺はつい聞いてしまっていた。
「それは、ソウさんに男娼館で働いているって教えて貰ったからだねぇ~。他業種の話って聞いてて楽しいよね~」
間延びした言い方に俺は毒気を抜かれてしまう。
こうはっきりと言われると怒る気持ちもみるみると無くなってくる。こんなことで怒る自分が馬鹿のように思えた。
それから俺は3人と会話を続けた。
隣のテーブルでシャンパンタワーをしていて、初めてシャンパンコールを見た。実際に見ていて、ホストクラブにハマる女性が居るのがよく分かった。
シャンパンタワーを頼んだ女性はまるでこの場の主役だ。ホストたちに名前をコールされ、初めにシャンパングラスを渡されて口をつけた瞬間に歓声が上がる。
そんな事、人生で中々体験出来るものではない。
実際女性の顔は恍惚としていた。酔っていた。この場所と自分に。
それを楽しそうに蒼とシモンは見ていた。それが何よりも恐ろしかった。
蒼は馬鹿にしたようにその女性客を見詰めていた。まるでゴミのように――。
会話術に長けているシモンと蒼の話は聞いていて面白かった。
ホストはコミュニケーションのスペシャリストだと聞いたことがあるが、それは本当の事だった。
が何をして喜び、優越感を感じるのか熟知している。人の話を聞き出すのもお手の物だった。
どうして女性たちがいけないと思いつつ、ホストクラブに通ってしまうのか分からなかったが彼らと話していると自分が特別な人間だと思えてくるのだ。
こんな美形のホストと喋れる自分は凄い、ホストに甘い言葉を貰える――彼を夢中にしているのは自分だと、勘違いしてしまう。
そしてホストに会うためにお金を払ってしまう。喜んでもらうため高いブランド品をプレゼントしてしまう。
「人が堕ちるのは見ているのは気持ちいいぜ?」
他のテーブルを見ていた聖月に投げられた言葉。何人もの男女を狂わせてきた悪魔のような男が言う言葉には、説得力があった。
俺は店内に充満する欲望の匂いと、酒の香りに酔いそうになりながら答える。
「お前の趣味が最悪なんだよ」
「え~? 酷い事言うなぁ、シモンもそう思うよな?」
「ん~…どうですかね~…。堕ちる人って弱くて見ててつまんないからなぁ~」
「へぇ。いい趣味じゃん」
「…っ」
つまんないからなぁ、と言ったシモンは明らかにディメント側の人間だった。そんな恐ろしい事を明るく笑顔で言っている事に驚き、恐れ慄く。
蒼と仲いい人でまともな人は居ないのか?とつい考えてしまう。
俺が早く終われ、早く終われ…と考えている内にラストオーダーの時間になった。
時間を見ると深夜0時になって驚いた。
どうやら5時間はこの場所にいたらしい。帰る際「また来てねえ~」とシモンに言われたが、遠慮したい。
もう一生ここには来ることがないだろう。こんな所通っていたら、金銭感覚が狂ってしまう。
そんな事を考えながら、俺は店を後にしたのだった。
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