英雄の一族の末裔ですが公爵様の復讐の為に婚約する事になりました

桜部遥

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貴方と過ごすたわいのない日

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「おはようございます、ヴィル。」
「…………おはよう、ミネア」

朝起きて、何も変わっていなかった事に安心した。
出迎えに来てくれるシトラとシーラ。挨拶をしてくれるヨーベル。
視界から見える景色は、昨日と何も変わらない。
こうして、朝食を一緒に食べてくれるヴィルエイムも。
そんな景色を前にしてミネアは思う。

——今、ちゃんと笑えてるかな

大丈夫、今は何も考えずにいよう。
口角を上げて、いつもみたいに笑顔を作っていれば誰にも気付かれない。
「ヴィルは今日もパーティーの準備ですか?後二週間ですもんね。」
なんて事ない雑談をして、ヴィルエイムと楽しいひと時を過ごす。
大丈夫、おかしなところなんて無い。今のミネアは、ちゃんと公爵家当主の婚約者でいられている。
「……いや、今日は久しぶりに街に行こうと思ってね。ミネアも一緒に行こう。」
「私も、ですか?」
「ああ。前にミネアの作った菓子が食べてみたいと言った事を覚えているかい?折角だしその買い出しでも、と思ってね。」
ヴィルエイムの瞳が、一瞬ミネアの様子を伺っているようにみえた。
そんなはずは無い。ミネアは普段のミネアを演じている。
だから、これはきっとミネアが今疑心暗鬼になっているせいだ。
……きっと、そうに違いない。
「分かりました。ヴィルに美味しいって言って貰えるように、私頑張りますね!」
ヴィルエイムと二人で出かける。
昨日までだったらきっと宙に浮かぶくらい心が踊ったはずなのに、今はこんなにも心が重い。
考えないようにしていてもどうしても、頭の中で夢の出来事が思い浮かんでしまう。
脳裏に焼き付いて離れない。
悟られないように、ミネアは笑った。
笑う事しか出来なかった。

朝食を終えたミネアは、シトラとシーラに外へ出る支度を手伝って貰う。
「出来ましたー!どうですか、ミネア!」
「とても良くお似合いです。」
「ありがとう、二人とも!凄く気に入ったわ」
ミネアは嬉しそうに、くるりと回る。ドレスが円を描き、花を咲かせているようだった。
ヴィルエイムと出かけるのは、彼にクケルを渡した日以来だ。
あの日、ミネアはヴィルエイムがずっと隠していた過去を知った。
そしてヴィルエイムの為に傍に居たいと願った。
ミネアは今、その願いを叶えられている。
ヴィルエイムの隣で、彼の手を繋いでいられている。
それは幸せな事だ。幸福な事だ。
だから何も怖がらなくていい。
「ミネア様、馬車の用意が整いました。」
「ありがとうございます、ヨーベルさん。それじゃあ行ってきます!」
ノックの音と共に部屋に入ってきたヨーベルは凛とした姿でミネアを迎えた。
大丈夫、いつもの私だ。
何度も心の中でそう言い聞かせる。今の自分は普通なのだと。変な所なんてないと。
何度も何度も自分に言い聞かせながら、ミネアは階段を降りた。

「お待たせしました、ヴィル。」

玄関に着くと、先に準備を済ませていたヴィルエイムが待っていた。
ヴィルエイムはミネアに気付くと、ぱっと振り返り笑顔を零す。
紫色の髪を美しく結い上げ、水色の華やかなドレスがミネアを包む。
水色と言っても悪目立ちしそうな派手な色では無く、雨上がりの水溜まりのような心が落ち着くドレスだった。
「今日も相変わらず綺麗だね、ミネア。これじゃあ街で他の男に拐かされないか心配だよ」
「か、ど……!?もう!冗談はやめてください!」
ぷくと頬を膨らませるミネアの愛らしい姿に、ヴィルエイムは楽しげに笑う。
そんな彼の姿を見てミネアは、ほっと一安心した。
どうやらヴィルエイムにも、普段と変わらないミネアに見えているようだ。
そんな甘い時間を過ごしていると、ヴィルエイムはミネアに手をさし出す。
「さ、そろそろ行こうか」
「はい!」
ヴィルエイムの手を取り、ミネア達は馬車に乗り込む。
こうして二人の二回目のデートは始まったのだった。

今回は、食材や必要な物を買い揃える為特に遠出をする必要も無い。
ミネア達は近くの一番栄えている街にやってきた。
今日の天気は快晴。ギラりと輝く太陽が顔を覗かせる。
「さて……ミネアはどこに行きたい?」
「えーっと……ヴィルは甘い物が好きなんですよね……。それなら——」
前に庭園でお昼を食べた時に、ヴィルエイムは色々な事話してくれた。
その中でヴィルエイムは甘党なのだとミネアに打ち明けてくれたのだ。
クッキーやマカロンなどの焼き菓子やケーキなど、甘い物全般が好きでこれといった嫌いな物は無い。
ミネアは馬車の中でも、ヴィルエイムに何を振舞おうかと頭を悩ませていた。
そして、たどり着いた結論は……。
「凄いですね!植物を置いているお店なのにこんなものまで取り扱っているんですか!?」
ミネア達が訪れたのは花や薬草などの植物を主に取り扱っている店だった。
隅の方の小さなスペースに置かれていたある物に、ミネアは思わず目を奪われる。
「ドライフラワーってあるだろ?それをよく頼む常連からの注文でね、同じドライつったって、製法は全然違うって言うのに。本当、参ったもんだよ。」
店主である目元が柔らかなおじさんが、苦笑いをしながらそう教えてくれた。
ミネアがその店で見つけたのは、ドライフルーツだった。
種類こそ多くは無いものの、メジャーなドライフルーツが置いてある。
「果物屋でも見つけられなかったのに、まさかこんな所で売られていたとは……。」
ヴィルエイムは思わず目を丸くさせ、関心している。
ミネア達はドライフルーツを求めて果物屋をいくつか回った。
新鮮なフルーツは沢山見かけたが、肝心のドライフルーツはどこの果物屋でも取り扱っていなかったのだ。
すると、最後に訪れた果物屋の店主がこの店を教えてくれた。
最初は植物の店なのだから、ドライフルーツがあるわけないと決めつけていたが、実際に足を踏み入れてみると、ヴィルエイムは自分の考えの浅はかさを思い知らされる。
客の要望に答えるその姿勢が、もしかしたら店を経営する上で大切な事なのかもしれない。
ヴィルエイムはそういった経営学を学んで来なかった事もあり、かなり面食らった顔をしていた。
「ヴィル!これで作りたいものが作れます!」
「ああ。良かったね、ミネア」
はい、とミネアは買ったばかりのドライフルーツが入った袋を嬉しそうに持った。
そんな彼女を見て思う。

——良かった、いつも通りのミネアだ。

朝、おはようと挨拶を交わした時から感じていた妙な違和感。
笑顔はいつもと変わらないのに、どうしてだかその笑みにヴィルエイムは疑問を感じていた。
まるで化粧で無理矢理作り上げたような笑顔。ミネアはそんな顔をするような子じゃない。
でもミネアは、普段通りを演じていた。
彼女が自分から切り出さないのに、こちらから無理に事情を聞き出すものでは無い。
それにミネアは、ヴィルエイムの傍にいてくれると言っていた。
なら、ヴィルエイムにとって不利益になるような悩みでは無いのだろう。
ミネアの気晴らしになればと、外へ誘ったがどうやら当たりのようだった。
今のミネアは、屈託のない笑顔を見せている。
本当の意味で、いつも通りのミネアだ。
どうやらヴィルエイムの心配は杞憂に終わったらしい。
ミネアの買い物が終わり、次はヴィルエイムの用事を済ませる。
とは言っても、簡単な用事だったので昼を回る頃にはあらかた全ての仕事は終わっていた。
少し遅めの昼食を摂りながら、ヴィルエイムはミネアに質問をする。
「そろそろ、教えて欲しいな。ミネア、何を作るんだい?」
近くにあったレストラン。
丁度混雑する時間を避ける事が出来たらしく、ミネア達の他に客はちらほらいる程度だ。
デザートを食べながら、ヴィルエイムの質問にミネアは少し恥ずかしそうに答える。
「今回はマドレーヌにしようかなって……。厨房に形があるのを見かけたので……。」
「マドレーヌ?マドレーヌを作るのに、ドライフルーツを買ったのかい?」
ヴィルエイムは首を傾げる。
彼のきょとんとした顔は、いつもより幼く見えてなんだか可愛らしい。
ミネアは、ヴィルエイムでも知らない事があるんだなと微笑みながら、ドライフルーツの使い方を話した。

確かに普通のマドレーヌはドライフルーツを使わない。
焼き菓子の中でも手軽に作れるという事もあって、マドレーヌは様々な店で出されている。
ミネアが前に働いていた、バーサムの店でもよく振る舞われていた。
ただ、毎回普通のマドレーヌでは味気ないと言い出したバーサムは、どうにか改良出来ないかと考える。
ミネアと二人で、新しいマドレーヌを作り出す方法を模索していた時に、持ち出されたのがドライフルーツだった。
普通のフルーツとは違い、水分が無く乾燥されているドライフルーツは、オーブンで焼いても問題は無い。
ドライフルーツを入れたマドレーヌを店で出してみるて、客にとても好評だったのだ。
それ以来、定期的に色々なドライフルーツを入れたマドレーヌを提供している。
レーズン入りのマドレーヌが一番人気だが、ミネアが個人的に好きなのはオレンジのマドレーヌだった。
爽やかな風味とバターのコクが混ざりあって、しつこくない甘さを引き立てている。
今回作るのも、オレンジのドライフルーツを使ったマドレーヌだ。
その事をヴィルエイムに教えると、彼はミネアの話を真剣に聞いていた。
「マドレーヌでもそんなふうに色々な味を作ることが出来るのか……!」
「マドレーヌだけじゃありませんよ?クッキーも最近はチョコレート以外に、紅茶の茶葉を使ったものもあるんです。」
「紅茶のクッキー……!?そんなものまで……。」
ヴィルエイムはミネアの話に興味津々だった。
彼にとって料理、それもお菓子作りなんて縁遠いものだ。
貴族ならば、専用のシェフが料理を振舞ってくれる。
だからこうした料理の知識を身につけているミネアは、ヴィルエイムにとって珍しいのだ。
「今度は紅茶のクッキーを作りましょう!」
「それは嬉しい!その時はぜひ、私にも手伝わせてくれないか?ミネアの話を聞いていたら、自分でも作ってみたくなってきたよ」
それはたわいのない未来の話。
昨日までならそれを軽々と答えられたのに、今は少し喉に答えが詰まる。
その時が、本当に訪れるのだろうか。
もしかしたら、それよりも前にツィーピアとしての責任を果たす日が来るのかもしれない。
そんな事が頭をよぎる。
分かっている。こんな事は考えても仕方がない事だと。
それでも考えれば考えるほど、底なしの沼にハマったように身動きがとれなくなる。
ヴィルエイムには今はまだ、ツィーピアについて何も話す事が出来ない。
でもいつか。いつかは話せる日が来るのかもしれない。
それがどれほど先になるのかは分からないけれど、少なくともミネアが今もなおヴィルエイムと一緒に居たいと願っているのは事実だ。
だから……。

「——はい!その時は一緒に作りましょう!」

一つくらい、未来に約束を残してもいいのかもしれない。
ミネアは心の中にあるモヤを隠したまま、日が差し込む窓辺で笑った。
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