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さようならの魔法
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月が高く登る。
あんなに分厚かった雲は、いつの間にか過ぎ去り、満点の星空が夜を彩る。
今は丁度、時計の針がてっぺんに登った頃。
ミネアの隣では、すうすうと寝息を立てるヴィルエイムの姿があった。
「……。」
ミネアはヴィルエイムが起きないようにゆっくり身体を起こす。
気持ちよさそうに夢の中に誘われているヴィルエイムの顔をじっと見つめたミネアは、静かに微笑んだ。
彼はきっと、明日も何気ない日常の中で生きていく。
その隣には、ミネアの姿は無くとも。
ヴィルエイムは強い人だから、きっと真っ直ぐに生きていくだろう。
そんな未来を想像したら、ミネアは少し嬉しくなった。
彼の逞しく生きるその背中を思い描いて、ミネアはくすりと笑う。
ああ、今から自分はこの部屋から、この屋敷から、彼の前から姿を消すと言うのに。
ミネアという存在を、世界から消し去ろうとしているのに。
どうしてこんなにも清々しく、晴れ晴れしい気持ちなのだろう。
今のミネアに不安や、恐怖は無い。
ただ、後悔があるとすればそれは彼に、自分の全てを話せなかった事だろう。
ツィーピアの力。ミネアの父親が犯した罪。きっとその秘密を話した所でヴィルエイムはいつもと変わらずミネアを受け入れてくれる。
「それは、君の罪では無いよ」
とそう言ってミネアを抱きしめてくれる。
けれどミネアはその優しさに甘えて生きる事に、罪悪感を抱くだろう。
ミネアはヴィルエイムが好きだ。心の底から愛している。
でも、彼の優しさに漬け込んで、目を逸らして幸せを手にするのは違う。
本当に愛しているなら、それはしてはいけない事なのだ。
だからこそ、彼の重荷になる前に、足枷になる前に、この関係を終わらせなくてはいけないのだ。
——私は最後まで、我儘な人間だから。
ふかふかのベット。暖かな部屋。煌びやかなドレス。溢れんばかりの宝石。お腹いっぱい食べられる料理。
半年前のミネアだったら、想像もつかないような夢の日々。
この屋敷でミネアは沢山のものを貰った。陽だまりを、優しさを、勇気を、希望を、友情を、笑顔を、愛を。
いくつ貰ったのか数え切れないくらい沢山のものを。
返しきれない恩を。
それらを胸に秘めて、その扉に鍵をかけて。
ミネアもまた、歩き出す。ヴィルエイムやシトラ、シーラと同じように。
「ヴィル……。——ヴィル。」
最後にその名前を呼ぶ。
もう二度と呼ぶ事の無い、彼の名前。愛おしくて堪らない、ミネアの好きな人。
もしも、この終わりが定められていた結末なのだとしたら。
ミネアはあの日、ヴィルエイムの手を取ったのは間違いだったのだろうか。
もし、彼と関わりを持たなければ未来は変わっていたのだろうか。
……たとえそれが神の悪戯で、滑稽な傀儡の物語だとしても。
それでもやっぱり、ミネアはヴィルエイムを好きになっていただろう。
運命というものが残酷で、無情にミネアとヴィルエイムを引き離しても。
ミネアはそれでもヴィルエイムを好きになる。
過去も今も、そしてこの先の未来でも。
——ずっと、私は貴方を愛し続ける。
だから、ヴィルエイムとの出会いが間違いだったなんて誰にも言わせない。
たとえ神であろうとも。
それを証明する為にも、ミネアは優しく目を閉じた。
「……もう、行かなくちゃ。」
ミネアはヴィルエイムの額にそっと自分の額を当てる。
夢の中で教えて貰った、たった一つの魔法。
ミネアが居なくなったとヴィルエイムが知れば、きっと彼はなりふり構わずミネアの事を探してしまう。
それこそがヴィルエイムの弱みに繋がり、やがては綻びが生まれるかもしれない。
そして、そうなる事がジルライムの想定通りだとしたら?
ミネアはヴィルエイムと別れた事を後悔するだろう。
ジルライムの思い通りになんて、絶対にさせない。
これは最後の悪あがきだ。
夢の中で、彼女から聞いた特別な魔法。
この魔法を使えば、本当に全てが終わると知りながら。
不思議と怖くは無い。きっとそれは既にミネアは、溢れんばかりの幸福を知ることが出来たから。
だから大丈夫と、ミネアは自分自身に言い聞かせる。
「我が名と真理の意向に置いて、世界の扉を閉ざさん。——サブリネージュ」
青白い光が、ヴィルエイムの全身を包んでいく。
これこそが、ミネアの最後の魔法。
この光が、ミネアと関わりを持った人達から、ミネアの存在とその記憶を奪い去る。
そう。もうこの世界にミネアを知る人物は一人も居ない。
それでいいのだと、ミネアは思った。
自分はツィーピアとしてこの先、ひっそりと誰の目も届かない場所で暮らして、そのまま息絶える。
それがミネアに与えられた、ツィーピアとしての最後の使命。
青白い光は、ヴィルエイムの身体の中に吸い込まれ、その輝きを失った。
——これで、本当にさようならですヴィル。
月明かりが窓から差し込む。
世界中の誰も知らないこの夜の出来事を、唯一見届ける観測者のように、月はその場で輝きを見せる。
「さようなら、ヴィル。——ヴィルエイム・ライ・グレーラビス公爵。」
さようなら、私の愛した人。さようなら、私の愛する人。
ミネアはゆっくりと立ち上がり、部屋の隅に隠していたバックを持ち上げる。
もう立ち止まる事は許されない。
違えた道を歩くのだから、心残りを置いていってはいけない。
ミネアは静かに息を吐く。
不安も後悔も、恐怖もないのに、ああ、どうしてだろう。
胸が刺されたように痛い。
もうこの人生には、ヴィルエイムという人物は存在しない。
分かっている。ミネアにはもう、彼に触れる資格は無い。
それでも胸が酷く苦しくて、涙が零れ落ちそうになる。
音もなく、雫はミネアの頬を伝う。彼女はそうして、その一歩を踏みしめた。
これが、全ての終わりでそして始まりの瞬間。
扉の前で、ミネアはくるりと振り返りもう一度ヴィルエイムを見る。
そこには、静かに寝息を立てて気持ちよさそうに眠りについている彼の姿。
ふと、ミネアは思う。
もし私達が出会っていなければ、と。
あの時彼の手を取っていなければ、この結末は変わっていたのだろうか。
今となっては全て過去の話だ。
だからミネアは前を向いた。
全てからヴィルエイムを守る為に。ツィーピアとしての使命を果たす為に。
これはミネアが自分自身で選んだ、決別の道。
ミネアは扉をくぐる。
この先、この屋敷に戻ることは無いと知りながら。
沢山の宝石のような思い出を胸に閉まって、大切に鍵をかけて、歩き出す。
この半年間の間に積もった、大きな大きな宝箱を抱えて。
その先の道が、どこに繋がっているのか分からないけれど。
音もなく、ミネアは屋敷を後にする。
そうして、長い長い一日は終わりを告げ、朝日は静かに登る。
誰かにとっては、世界が変わった日。
誰かにとっては、いつも通りの日。
誰かにとっては、特別な日。
時間はいつだって、人の心など関係なく過ぎていく。
一人の少女が迎えた朝は、小鳥の囀りがよく響き、朝日が眩しすぎて涙が出てしまったような、そんな朝だった。
あんなに分厚かった雲は、いつの間にか過ぎ去り、満点の星空が夜を彩る。
今は丁度、時計の針がてっぺんに登った頃。
ミネアの隣では、すうすうと寝息を立てるヴィルエイムの姿があった。
「……。」
ミネアはヴィルエイムが起きないようにゆっくり身体を起こす。
気持ちよさそうに夢の中に誘われているヴィルエイムの顔をじっと見つめたミネアは、静かに微笑んだ。
彼はきっと、明日も何気ない日常の中で生きていく。
その隣には、ミネアの姿は無くとも。
ヴィルエイムは強い人だから、きっと真っ直ぐに生きていくだろう。
そんな未来を想像したら、ミネアは少し嬉しくなった。
彼の逞しく生きるその背中を思い描いて、ミネアはくすりと笑う。
ああ、今から自分はこの部屋から、この屋敷から、彼の前から姿を消すと言うのに。
ミネアという存在を、世界から消し去ろうとしているのに。
どうしてこんなにも清々しく、晴れ晴れしい気持ちなのだろう。
今のミネアに不安や、恐怖は無い。
ただ、後悔があるとすればそれは彼に、自分の全てを話せなかった事だろう。
ツィーピアの力。ミネアの父親が犯した罪。きっとその秘密を話した所でヴィルエイムはいつもと変わらずミネアを受け入れてくれる。
「それは、君の罪では無いよ」
とそう言ってミネアを抱きしめてくれる。
けれどミネアはその優しさに甘えて生きる事に、罪悪感を抱くだろう。
ミネアはヴィルエイムが好きだ。心の底から愛している。
でも、彼の優しさに漬け込んで、目を逸らして幸せを手にするのは違う。
本当に愛しているなら、それはしてはいけない事なのだ。
だからこそ、彼の重荷になる前に、足枷になる前に、この関係を終わらせなくてはいけないのだ。
——私は最後まで、我儘な人間だから。
ふかふかのベット。暖かな部屋。煌びやかなドレス。溢れんばかりの宝石。お腹いっぱい食べられる料理。
半年前のミネアだったら、想像もつかないような夢の日々。
この屋敷でミネアは沢山のものを貰った。陽だまりを、優しさを、勇気を、希望を、友情を、笑顔を、愛を。
いくつ貰ったのか数え切れないくらい沢山のものを。
返しきれない恩を。
それらを胸に秘めて、その扉に鍵をかけて。
ミネアもまた、歩き出す。ヴィルエイムやシトラ、シーラと同じように。
「ヴィル……。——ヴィル。」
最後にその名前を呼ぶ。
もう二度と呼ぶ事の無い、彼の名前。愛おしくて堪らない、ミネアの好きな人。
もしも、この終わりが定められていた結末なのだとしたら。
ミネアはあの日、ヴィルエイムの手を取ったのは間違いだったのだろうか。
もし、彼と関わりを持たなければ未来は変わっていたのだろうか。
……たとえそれが神の悪戯で、滑稽な傀儡の物語だとしても。
それでもやっぱり、ミネアはヴィルエイムを好きになっていただろう。
運命というものが残酷で、無情にミネアとヴィルエイムを引き離しても。
ミネアはそれでもヴィルエイムを好きになる。
過去も今も、そしてこの先の未来でも。
——ずっと、私は貴方を愛し続ける。
だから、ヴィルエイムとの出会いが間違いだったなんて誰にも言わせない。
たとえ神であろうとも。
それを証明する為にも、ミネアは優しく目を閉じた。
「……もう、行かなくちゃ。」
ミネアはヴィルエイムの額にそっと自分の額を当てる。
夢の中で教えて貰った、たった一つの魔法。
ミネアが居なくなったとヴィルエイムが知れば、きっと彼はなりふり構わずミネアの事を探してしまう。
それこそがヴィルエイムの弱みに繋がり、やがては綻びが生まれるかもしれない。
そして、そうなる事がジルライムの想定通りだとしたら?
ミネアはヴィルエイムと別れた事を後悔するだろう。
ジルライムの思い通りになんて、絶対にさせない。
これは最後の悪あがきだ。
夢の中で、彼女から聞いた特別な魔法。
この魔法を使えば、本当に全てが終わると知りながら。
不思議と怖くは無い。きっとそれは既にミネアは、溢れんばかりの幸福を知ることが出来たから。
だから大丈夫と、ミネアは自分自身に言い聞かせる。
「我が名と真理の意向に置いて、世界の扉を閉ざさん。——サブリネージュ」
青白い光が、ヴィルエイムの全身を包んでいく。
これこそが、ミネアの最後の魔法。
この光が、ミネアと関わりを持った人達から、ミネアの存在とその記憶を奪い去る。
そう。もうこの世界にミネアを知る人物は一人も居ない。
それでいいのだと、ミネアは思った。
自分はツィーピアとしてこの先、ひっそりと誰の目も届かない場所で暮らして、そのまま息絶える。
それがミネアに与えられた、ツィーピアとしての最後の使命。
青白い光は、ヴィルエイムの身体の中に吸い込まれ、その輝きを失った。
——これで、本当にさようならですヴィル。
月明かりが窓から差し込む。
世界中の誰も知らないこの夜の出来事を、唯一見届ける観測者のように、月はその場で輝きを見せる。
「さようなら、ヴィル。——ヴィルエイム・ライ・グレーラビス公爵。」
さようなら、私の愛した人。さようなら、私の愛する人。
ミネアはゆっくりと立ち上がり、部屋の隅に隠していたバックを持ち上げる。
もう立ち止まる事は許されない。
違えた道を歩くのだから、心残りを置いていってはいけない。
ミネアは静かに息を吐く。
不安も後悔も、恐怖もないのに、ああ、どうしてだろう。
胸が刺されたように痛い。
もうこの人生には、ヴィルエイムという人物は存在しない。
分かっている。ミネアにはもう、彼に触れる資格は無い。
それでも胸が酷く苦しくて、涙が零れ落ちそうになる。
音もなく、雫はミネアの頬を伝う。彼女はそうして、その一歩を踏みしめた。
これが、全ての終わりでそして始まりの瞬間。
扉の前で、ミネアはくるりと振り返りもう一度ヴィルエイムを見る。
そこには、静かに寝息を立てて気持ちよさそうに眠りについている彼の姿。
ふと、ミネアは思う。
もし私達が出会っていなければ、と。
あの時彼の手を取っていなければ、この結末は変わっていたのだろうか。
今となっては全て過去の話だ。
だからミネアは前を向いた。
全てからヴィルエイムを守る為に。ツィーピアとしての使命を果たす為に。
これはミネアが自分自身で選んだ、決別の道。
ミネアは扉をくぐる。
この先、この屋敷に戻ることは無いと知りながら。
沢山の宝石のような思い出を胸に閉まって、大切に鍵をかけて、歩き出す。
この半年間の間に積もった、大きな大きな宝箱を抱えて。
その先の道が、どこに繋がっているのか分からないけれど。
音もなく、ミネアは屋敷を後にする。
そうして、長い長い一日は終わりを告げ、朝日は静かに登る。
誰かにとっては、世界が変わった日。
誰かにとっては、いつも通りの日。
誰かにとっては、特別な日。
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