離婚活

詩織

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恋人となって3ヶ月。

まだ期間は浅いけど、それでもずっと一緒にいたらいいなーと思えるようになっていた。


「えっ!?」

な、なに?

急に腕を引っ張られた。

会社から出て駅に向かおうとひたときのことだった。

振り向くと

「!?」

元夫…

「なぁ…」

「…な、なにっ!?」

「かくまってくれないか?」

はぁ!?

「色々考えたら、やっぱりお前といた時間って大事だったなーと思えるようになって」

「何言ってるの?離婚したいって言ったのは貴方でしょう?」

「それは、アイツに言わされて…」

アイツって今の奥さんのことだろう。

「どっちにしても私には関係無い。それに振り込みだって4ヶ月遅れてるし、一回分は振り込んでくれたようだけど」

「なぁ、あのさ聞いてくれよ」

何を聞くの?今更

「話すことはない!」

腕を振りほどき駅に向かおうとした。

「おい!」

またついてきて

「なに!?もう関係無い!」

今度は半強制的に引っ張られ、ズルズルと駅から離れ裏道に入った。

不安になり急いで電話して

「助けて!M駅の西口の花屋の裏路地に引っ張られて…」

と言うとスマホを取られて

「何処に連絡してる!?」

「ちょっと返しなさいよ!」

というと、スマホを遠くに投げらるた。

遠くで落ちた音が聞こえる

「俺とやり直さないか?」

はぁー!?

「…自分勝手すぎない?」

「いや、俺たち上手くいってたよな?お前も俺と一緒にいて…」

「そうよ!ずっと夫婦としてやっていけると思ったわよ!そっちが潰したんでしょう!」

「だからもう一度…」

「はい!とでも言うと思う?未練があるとでも?」

「麻衣!」

叫ばれてビクッとする。

結婚してたときそんな大声叫ばれたことなんて多くなかった。

平穏で静かな夫婦生活だった。

「お前なら、俺についてきてくれると思った」

「な、なにを…」

「麻衣、俺と一緒に逝ってくれないか?」

ナイフをだした。

「ちょっ!」

「もう、行くところがないんだ!あっちで一緒に過ごさないか?」

「や、やめて!!」

ジリジリと近づいてくる。

に、逃げ場が…

「ひっー!」

ナイフで襲ってきた。

必死に押さえて抵抗する。

「や、やめて!!」

また刺そうとして、ナイフをこっちに向けた。

横に避けて逃げる。

「麻衣!すぐ逝くから」

「勝手に一緒にとかやめて!」

壁に当たって今度こそ逃げ場が…

「麻衣!愛してるから」

や、やめて!!

「!?」

身体が一気に脱力する。見ると腹部が刺され、血が染まってる。

あっ、動けない。た、たすけてーー!!

「た、た、」

「今度はちゃんと楽にするから」

と、また私にナイフを向ける。

「拓海!!!」

大声で叫んで目の前が暗くなった。

拓海ともっともっと一緒にいたかった。拓海に愛してるって伝えたかった。

拓海、短い期間だったけど幸せだったよ!ありがとう…






「あっ…」

…天国に…きたの?

「…い、麻衣!」

「目が覚めました!」

「ちょっと失礼」

白衣の人がみて

「もう、大丈夫でしょう」

周りをみると、拓海がいて両親がいて姉がいてそして看護婦さんと先生らしき人が…

病院!?

「私…たすかったの?」

酸素マスクから聞こえた声に

「麻衣!」

拓海が心配そうにみて私の手を握った。

数日は集中治療室に入り、それから一般病室に移された。その間も拓海と両親がよく来てくれた。

「びっくりしたわよ!刺されて危篤って言われたときは、頭真っ白になったわよ」

母がそういって胸をなでおろす。

意識が戻るまで一週間かかってた。

意識が戻り、あのときのあのあとのことを聞きたいと言ったが落ち着いたら話すって拓海から言われていた。

今の時間は平日の昼間だから拓海は会社にいっている。

「梶木さんから連絡もらってね、駅についたら迎えにも来てくれて、麻衣さんと真剣にお付き合いさせて頂いてますって言われていて驚いたわよ!離婚してまだ1年足らずだしねー、でもずっと麻衣のこと心配して会社にも連絡してくれて、警察も対応してくれて…、若いのにしっかりした方ね」

会社にも…、そか傷害事件だから警察にも…

そしてその夜、拓海が来てくれたと同時にスーツ姿の男性2人がきた。

「警察のものです。梶木さんから松川さんに事情を伺いたいときは同席したいと申し出がありまして、遅くにお邪魔しました」

拓海が心配そうに私をみる。

「確認ですが中田勇斗さんとは婚姻関係であったことは事実ですか?」

「はい、1年ちょっと前になりますが夫婦でした」

「弁護士の山伏さんからも事情はだいたい伺ってます。旦那さんにお子さんも居たことも知らず、そして突然離婚したいと言われて、強制的に追い出されたと」

「はい」

「その後お会いになったことはありますか?」

「追い出されてからはなかったのですのが…」

「ですが?」

「電話がありまして」

それは拓海にも言ってなかったので、えっ!?という顔になった。

「いつですか?」

「半年?くらいですかね、たしか」

「どのようなお話ですか?」

「和解金の振込が遅れると」

「あっ!それは弁護士さんから伺ってます。その後弁護士さんにご連絡したんですよ?」

「そうです!それで確認とってもらったら行方不明になってると…」

「なるほど。それ以外は?」

「電話も何もありません。」

「では事件当時こことをお伺いします。どんな状況で会ったか何を言われたか教えてください」

「はい」

私は淡々とその時のことを話しだした。

「なるほど、途中で梶木さんに助けてと電話したんですね」

「はい」

そう。私は拓海に助けて!と電話した。けど…

「かくまってくれないなら、一緒に死ぬということですか」

「…はい」

2人だけの出来事なので拓海も刑事さんも新たな情報のようで、驚きながら聞いてる。

「そして、刺されたあとに梶木さんの名前を叫び」

「はい。もう最後だと思ったので…」

「そして、梶木さんはその声が聞こえて向かったと」

「はい」

!!

あの後、拓海は来てくれたんだ。

「その後は梶木さんが抑えて救急車をよんでます。そこからは梶木さんからは伺ってます」

「あの…、元夫は今は…」

「警察の方で身柄は確保してますが、正直話せる状況ではありません」

「えっ!?」

「ブツブツと独り言をいい、我々の質問にも答えてくれません。」

「…どういうことですか?」

「精神鑑定が必要になってます」

「そ、そうなんですか?」

「俺が取り抑えたとき、既に笑いだしてた。ケラケラと笑ってた。」

そ、そんな…

「貴方のときは、そのような行動はなかったんですか?」

「はい。確かに疲れてるのは解りましたが、そういうのは…」

その後ももう少し話し、刑事さんは帰っていった。

「俺がもう少し早く来てれば…」

「でも、拓海は来てくれた。私は知らなかったけど、でも来てくれたんだよね?」

「ああ」

「じゃ、それでいい」

拓海が探してきてくれた。それだけで嬉しかった。

会社の状況も気になってた。

会社の方は拓海の方から両親にお願いして連絡して貰うように頼んだらしい。

事故に巻き込まれて入院したと言ったようだ。

明日にでも電話だけでもしないと…

「…麻衣」

「うん」

「俺、麻衣がもし…と思ったら生きた気がしなかった。麻衣が居ない世界なんか考えられない」

「た、拓海?」

手を握りしめて

「まだ付き合ってる期間短いし、まだお互い色々知らないとかもだけど、麻衣…俺の嫁さんになって」

「!?」

「麻衣がまだ再婚考えてないのも解ってる。予約だけでもいいからしたい」

「…拓海」

涙が一気に出てきた。

「私みたいなバツイチで前の夫に刺されるような訳あり…拓海からしたら」

「そんなんで居なくなってたら、とっくに居なくなってるよ!俺の麻衣への愛舐めるな!」

「拓海…、一緒にいたい!私もずっと一緒にいたい!」

拓海が抱きしめてくれてその中で涙がどんどん溢れてきた。

翌日会社に連絡し1ヶ月は入院することを伝えた。

別日に警察の方が再度見えて話をすると、元夫側の状況も教えてくれた。

同僚にはしつこい女がいると言ってたようで、その後その女が一度だけでいいからと何度も言われ…それで一度だけ身体の関係になったら、その後ズルズルと…、そして妊娠し出産。

その後は、彼女を愛してると言い出し、マインドコントロールされてるようで怖かったという感想をあったとか。

「私には全く解りませんでした。普段と変わらずでした」

その後彼女に言われるがまま私と離婚をするように言われ、それでも何年もの月日がかかり、そしてあの日になった。

その後すぐに入籍したが、あまりうまくは行ってないようだったことも…

家に帰りたくないと洩らしてたという話もあったとか。

「そこからは追い込まれて…になるんでしょうけど、まだ何ともいえません」

「…はい」

「…ですが、これは私個人の意見です」

と、一人の刑事さんが静かに言った。

「松川さんとの結婚生活は決して刺激のあったものではなかったかもしれない。凄い裕福でもなかったかもしれない。でも彼にとって心を休まるところは貴方だったのかもしれませんね」

「…えっ?」

「最後は松川さんのところに来たわけですから」

「…」



勇斗は…、きっと精神鑑定が必要になるようにしてるだけであって、実際は…

もう逃げ道がそれしかないと判断しての行動だろう。

そしてそれを死ぬまで続けるしかない…

老後の話もしたよな。



月末に退院をし、再来週には仕事に復帰予定。

マンションにいるときは毎日拓海が帰ってきてくれて、泊まってくれてた。

「大丈夫?」

寝るときはいつも心配そうに言ってくれる。

あの恐怖を思い出すと心配なんだろうと理解。でも私はそれよりもあそこまでしっかり意思があったのに、精神鑑定の方にもっていったということに何とも言えない気持ちでいた。


「長らくご迷惑おかけしました」

みんなの前で深々頭を下げた。

「もう大丈夫なんですか?」

「ビックリしましたよー」

と、みんなから声をかけてくれた。

「色々すいません。」

事故ということで思ってるようで、それはそれで助かったけど、上司の方からは

「警察の方から連絡きてね、大変だったね」

と、上の人間は知ってるようだ。

それは仕方ないか…

病み上がりもあり、しばらくは定時で帰り少しずつ身体をならしていた。

そんなときに、警察から電話があり

「中田勇斗は判断能力がないという判断になりました」



なんとなく解ってた結果な気がして驚きはしなかった。

そして、私の和解金は元夫の両親と、彼女の両親が一括で振り込んでくれた。




「さて、そろそろ…」

と言って出したのは婚姻届。

「もう離婚して2年。そろそろいいだろ?」

あの事件から半年がたっていた。

その間、マンションを引っ越し、今は拓海と同棲してる。

お互いの両親にも既に会っている。

「指輪は用意してないけど、その代わりコレね!」

と言って渡されたのがネックレスだった。

「拓海、ありがとう」

笑顔で答える拓海が嬉しって抱きしめる。

「早く結婚したかったぁー!!」

と言うので笑ってしまった。

「拓海、ごめんね」

「いっぱい愛してもらうから大丈夫」

そんなこというのも愛らしい。

自分からキスをして

「愛してる」

「俺もだよ」

離婚してから再婚まで様々なことがありすぎたけど、こうして新しい家庭を手に入れた。
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