201 / 259
3A-街道と魔物
3A-16 ベルナル商会の血脈
しおりを挟む
学院への準備期間が過ぎていく。父から託された要件を片付けるため、パラケル師に相談し、王都の商業地区へ出向く時間を作ってもらった。庭に出ると、ルンフとベーガは兵士と共に剣を振るい、コカルスは土魔法で造形の修練をしていた。彼は下宿を引き払い、兵士らと同じ別棟に移ったらしい。
「コカルス。ベルに頼んで馬を用意してこい。馬車はあるが、馬が足りない
」
「外出ですか?」
「レッドが親戚の店に行く。ワシも言付がある」
「それなら私も護衛としてお供します。ルンフ、ベーガ、役目だぞ」
馬車はパラケル師のアイテムボックスから出されたものだった。
「よく入りますね」
「ため込んだ魔銀を放出しただけだ。防犯にもなる。蒸留小屋も丸ごと覆っておいた。S級の魔導師でも来ない限り盗めまい」
くっくっくっと笑う師。相変わらず規格外だ。
御者はベーガが務め、北門へ。兵士が怪訝そうに馬車を見やる。
「見慣れぬ馬車だな。登録がない」
「アウレオール一代男爵所有の馬車だ」
パラケル師がチャームを示すと、兵士は慌てて敬礼した。
「パール家の寄子様でしたか。記録しておきます。今後は各門に通知します」
検問を抜け、アクト通りから中央広場へ。さらにカンティア通りを北上し、目的の商店に到着した。
「ベーガ、馬の世話を頼むぞ」
「了解です。ルンフ、途中で交代しろよ。俺も中に入りたい」
「……わかった」
パラケル師、リンネ、ルンフ、コカルスと共に店内へ。王都店はやはり規模が違った。各領の特産品が並び、パール領の棚は特に広い。魔石、魔物骨、獣皮、鉱物、植物。石鹸に使ったシナンジュもある。古い魔導具や、パラケル師の作品も並んでいた。最上段には「話題のPVポーション 在庫は奥にあります」と大きく掲示されている。もうここまで広まっているのか。
「団体さんのお入りか?……おお、パラケル師! そしてレッドも! 大きくなったな!」
声をかけてきたのは父の兄、バルト叔父だった。ふくよかな体格、朗らかな笑顔。記憶の中ではぼんやりしていたが、今は確かに血縁を感じる。
リズ叔母、ネスタ兄、リオナ姉も現れ、久しぶりの再会に賑やかになる。ネスタ兄は手代に昇格し、全国の買い付けに出られるようになったと誇らしげだ。リオナ姉は王都を離れることを嘆いていたが、ベンベルクでの磁器産業の話をすると、少し気持ちが和らいだようだった。パラケル師も「磁器皿はこれから席巻する」と太鼓判を押す。
やがて本題に入る。
「ところでレッド。今日は親戚に会いに来ただけではないだろう?」
「はい。父から手紙を託されています」
叔父が手紙を開き、読み進める。そこには学院での自分の立場、研究生としての在籍、そして自分が開発した品々のことが記されていた。さらに王都での支援を依頼する内容だ。
「ふう……これを読む限り、随分と好き勝手にやってきたようだな。お前が王都にいる分、忙しくなりそうだ!」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」
「よいよい。商人は利益を求めるもの。お前の行動が利をもたらすなら、協力は惜しまぬ」
手紙にあったロセアスティルを出そうとしたが、叔父に肩を掴まれて止められる。
「店頭ではまずい。休憩室で詳しく話そう。特に新商品についてな……」
残念ながら、皆とゆっくり商品を眺める時間はなくなった。
作者注:)サルタン→バルト宛ての手紙の中身。消さずに追記しておきます。ご参考までに。
#######
ベルナル商会王都店 筆頭バルトへ
レッドが学院に入学する。王都にいる間のレッドの世話を頼みたい。前に親父経由で相談していた部屋の融通は、不要となった。学院へはパール家から登校する。学院では生徒ではなく、破格の研究生として在籍することになったためだ。
ベンベルク発の磁器、ポーションに加えて、サナーレウンゲンは、そちらの貴族で噂となっているであろう。実をいうとレッドの仕業だ。お前の所に卸しているPVポーションも、レッドによる開発品となる。魔導師令も有るので、パラケル師の指揮下において作成した事となっている。学院の入学は、これらの評価が大きかったと聞いている。
学院に通い始めの最初は静かにしているだろう。俺からの要望は、彼が学院で使用する各種商品の融通、素材の手配、希望する商人の斡旋を依頼したい。対価は、新商品の優先的手配としよう。俺がこの手紙書かなくても、レッドが対価を出し、頼み込んでくると思うけどな。
一つの例として、[ロセアスティル]と呼ばれる、ホーミィー村で作成されたアクアヴィーテを提供しよう。レッドが現物を呈示するはずだ。味見をして品質を確認してくれ。その味に唸ることは間違いないだろう。これもレッドの開発品だ。王都に来る前に、村の醸造所にて5年経過品を作成してもらった。順次出荷の目途も立っている。定期的に王都に輸送しても良いだろう。
それらを踏まえ、こちらから一つ頼み事がある。王冠と専用瓶を手配したい。できるだけ多くの量を。兄さんはペインター商会への伝手があると聞く。優先して確保できるようによろしく頼む。目下、1万本の入手を目安にしてくれ。もしかすると、別にレッドも欲しがるかもしれぬ。
その他、研究に必要なものを手配してくれると助かる。行動が行き過ぎるのでは無いか非常に心配だ。売り出す際には、必ず間を取り持ち、他の貴族の商人が入らないように気を使ってくれ。バルト兄なら問題なく、常識ある見解を引き出すに違いないと思っている。ボローニャ・アカシア学院の元教授のパラケル師に付き、修練した結果だ。ベンベルクに居る時よりも、影響力を増してくるだろう。開発する商品は、必ずベルナル商会の利益となろう。
後記)息子は5年物だけでなく、50年物の『ロセアスティル』を持っている。ペインター商会への説得、その他、貴族らの取引にうまく使ってくれ。使い方によっては上位貴族に食い込めると見込んでいる。
この内容については入学まで秘するよう、対策をお願いしたい。
ベルナル商会 筆頭 サルタン
#######
。
「コカルス。ベルに頼んで馬を用意してこい。馬車はあるが、馬が足りない
」
「外出ですか?」
「レッドが親戚の店に行く。ワシも言付がある」
「それなら私も護衛としてお供します。ルンフ、ベーガ、役目だぞ」
馬車はパラケル師のアイテムボックスから出されたものだった。
「よく入りますね」
「ため込んだ魔銀を放出しただけだ。防犯にもなる。蒸留小屋も丸ごと覆っておいた。S級の魔導師でも来ない限り盗めまい」
くっくっくっと笑う師。相変わらず規格外だ。
御者はベーガが務め、北門へ。兵士が怪訝そうに馬車を見やる。
「見慣れぬ馬車だな。登録がない」
「アウレオール一代男爵所有の馬車だ」
パラケル師がチャームを示すと、兵士は慌てて敬礼した。
「パール家の寄子様でしたか。記録しておきます。今後は各門に通知します」
検問を抜け、アクト通りから中央広場へ。さらにカンティア通りを北上し、目的の商店に到着した。
「ベーガ、馬の世話を頼むぞ」
「了解です。ルンフ、途中で交代しろよ。俺も中に入りたい」
「……わかった」
パラケル師、リンネ、ルンフ、コカルスと共に店内へ。王都店はやはり規模が違った。各領の特産品が並び、パール領の棚は特に広い。魔石、魔物骨、獣皮、鉱物、植物。石鹸に使ったシナンジュもある。古い魔導具や、パラケル師の作品も並んでいた。最上段には「話題のPVポーション 在庫は奥にあります」と大きく掲示されている。もうここまで広まっているのか。
「団体さんのお入りか?……おお、パラケル師! そしてレッドも! 大きくなったな!」
声をかけてきたのは父の兄、バルト叔父だった。ふくよかな体格、朗らかな笑顔。記憶の中ではぼんやりしていたが、今は確かに血縁を感じる。
リズ叔母、ネスタ兄、リオナ姉も現れ、久しぶりの再会に賑やかになる。ネスタ兄は手代に昇格し、全国の買い付けに出られるようになったと誇らしげだ。リオナ姉は王都を離れることを嘆いていたが、ベンベルクでの磁器産業の話をすると、少し気持ちが和らいだようだった。パラケル師も「磁器皿はこれから席巻する」と太鼓判を押す。
やがて本題に入る。
「ところでレッド。今日は親戚に会いに来ただけではないだろう?」
「はい。父から手紙を託されています」
叔父が手紙を開き、読み進める。そこには学院での自分の立場、研究生としての在籍、そして自分が開発した品々のことが記されていた。さらに王都での支援を依頼する内容だ。
「ふう……これを読む限り、随分と好き勝手にやってきたようだな。お前が王都にいる分、忙しくなりそうだ!」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」
「よいよい。商人は利益を求めるもの。お前の行動が利をもたらすなら、協力は惜しまぬ」
手紙にあったロセアスティルを出そうとしたが、叔父に肩を掴まれて止められる。
「店頭ではまずい。休憩室で詳しく話そう。特に新商品についてな……」
残念ながら、皆とゆっくり商品を眺める時間はなくなった。
作者注:)サルタン→バルト宛ての手紙の中身。消さずに追記しておきます。ご参考までに。
#######
ベルナル商会王都店 筆頭バルトへ
レッドが学院に入学する。王都にいる間のレッドの世話を頼みたい。前に親父経由で相談していた部屋の融通は、不要となった。学院へはパール家から登校する。学院では生徒ではなく、破格の研究生として在籍することになったためだ。
ベンベルク発の磁器、ポーションに加えて、サナーレウンゲンは、そちらの貴族で噂となっているであろう。実をいうとレッドの仕業だ。お前の所に卸しているPVポーションも、レッドによる開発品となる。魔導師令も有るので、パラケル師の指揮下において作成した事となっている。学院の入学は、これらの評価が大きかったと聞いている。
学院に通い始めの最初は静かにしているだろう。俺からの要望は、彼が学院で使用する各種商品の融通、素材の手配、希望する商人の斡旋を依頼したい。対価は、新商品の優先的手配としよう。俺がこの手紙書かなくても、レッドが対価を出し、頼み込んでくると思うけどな。
一つの例として、[ロセアスティル]と呼ばれる、ホーミィー村で作成されたアクアヴィーテを提供しよう。レッドが現物を呈示するはずだ。味見をして品質を確認してくれ。その味に唸ることは間違いないだろう。これもレッドの開発品だ。王都に来る前に、村の醸造所にて5年経過品を作成してもらった。順次出荷の目途も立っている。定期的に王都に輸送しても良いだろう。
それらを踏まえ、こちらから一つ頼み事がある。王冠と専用瓶を手配したい。できるだけ多くの量を。兄さんはペインター商会への伝手があると聞く。優先して確保できるようによろしく頼む。目下、1万本の入手を目安にしてくれ。もしかすると、別にレッドも欲しがるかもしれぬ。
その他、研究に必要なものを手配してくれると助かる。行動が行き過ぎるのでは無いか非常に心配だ。売り出す際には、必ず間を取り持ち、他の貴族の商人が入らないように気を使ってくれ。バルト兄なら問題なく、常識ある見解を引き出すに違いないと思っている。ボローニャ・アカシア学院の元教授のパラケル師に付き、修練した結果だ。ベンベルクに居る時よりも、影響力を増してくるだろう。開発する商品は、必ずベルナル商会の利益となろう。
後記)息子は5年物だけでなく、50年物の『ロセアスティル』を持っている。ペインター商会への説得、その他、貴族らの取引にうまく使ってくれ。使い方によっては上位貴族に食い込めると見込んでいる。
この内容については入学まで秘するよう、対策をお願いしたい。
ベルナル商会 筆頭 サルタン
#######
。
41
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~
夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。
「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。
だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに!
サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる