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3C-分取と教育
3C-01 *正位との交信
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♢♢
私はベンベルクへの道を急いでおりました。トーマス領主はとてもお忙しい方でいらっしゃいますし、領主様が長くお留守となるのは領内にとっても決して望ましくありません。私もできるだけ早く目的を果たし、アクティアの森へ戻らなければならないのです。同行する騎士に、現在の状況を尋ねました。
「イアン。城郭都市までは、あとどのくらいかしら。森を抜ければ、もう近いと思うのだけれど」
「ルーナ様! ただいま鎮守の森を通過し、緩衝地帯の草原に入りました。あと少しで到着いたします!」
窓の外に目を向けますと、騎士の言葉どおり、遠くに大きな城壁が見えてまいりました。ベンベルクを守る兵士たちが厳しく警戒をしております。私たちの馬車は順番待ちの列を抜け、先頭に進み出ました。申し訳なく思いながらも、今回は優先させていただきます。
「ここはパール領ベンベルク南門です。貴族馬車とお見受けいたします。所属をお示しください!」
「神殿騎士イアンと申す。この馬車はヘルメス教団本部の所有である」
「教団関係でございますか。許可証などはございますか?」
「御領主トーマス辺境伯より頂いた書簡がある。ご確認を」
ディーンが手紙を差し出すと、兵士は丁寧に目を通し、深く頷きました。
「確かに領主の直筆でございます。兵士レオンが先導いたします。しばしお待ちください」
兵士に導かれ、馬車は街中へと進みます。ベンベルクは迷路のように入り組んだ都市と聞いておりましたが、広場までは一直線の道でした。
「ルーナ様。迷路は外敵防衛のためでございます。お聞きになったのは北の町域でしょう。南門から広場までは直線でございます」
侍女のフェデリカが説明してくれました。彼女はカンティア出身で、何度もベンベルクを訪れたことがあるそうです。
人口一万ほどの都市は、思ったより大きくはありません。商店が並ぶ道を抜け、広場に出ますと、領主邸が姿を現しました。さらに城壁に囲まれ、要塞のような威容を誇っております。先導のおかげで、私たちはすんなりと通されました。
「教団本部からのお客様です。後の対応をお願いいたします。私は門へ戻ります」
「おお、レオン君、ありがとう」
屋敷の人々に案内され、談話室へと通されました。
「おお、これはルーナ様」
「お久しゅうございます、トーマス様、ホフマン様。御言葉に甘え、参上いたしました」
「わざわざ辺境まで。ご職務も大変でございましょう」
「いえ、アクティフォーリア様とヘルメス様の御心のままに。ホーミィー村への伝手を頂きたく存じます」
「屋敷に一泊してからでもよいのでは? 強行軍と聞いております」
「お気遣い感謝いたします。ですが直接のご厄介はできません。我ら教団は世俗と隔たるのが習わし。教会に寄宿いたします」
「そうか、残念だ。では明朝、教会に向かえばよいか?」
「恐れ入りますが、ご同行いただけると助かります」
「トーマス、今回は私が出よう。ホーミィー村なら私と村長が近い」
「父上、よろしくお願いします」
「では明日、ご足労願おう」
広場には教会が設けられておりました。領主邸の向かいに立つその教会の責任者はマティアス。本部で親しく語らった仲でございます。
「マティアス司祭。厄介になります」
「ルーナ様。アクティアの森からご足労とは……我が信仰力の不足を悔やみます」
「この距離では仕方ありません。これからもヘルメス様との繋がりを高めなさい。正位様との交信は私の役目。ここは神域が狭く、像の出力もごく最小限なのです」
「魔の森の恵みと共に生きるのが領主の代々の指示。近くに迷宮もあり、抑えるには御鎮座が必要かと」
「そうですね。各正位から最も遠い位置。迷宮の干渉もあります。新しい像が乱れを生まねばよいのですが」
「同僚シュリッター司祭とテトラフィーラ様の関係は良好。今のところ異変はございません」
「明日、直接ホーミィー村へ参ります。禊所を使わせてください。身を清めます」
「はっ。教団騎士より先触れがあり、準備は整っております」
旅の穢れを祓い、神像の前に座しました。アクティフォーリア様に到着を報告せねばなりません。術紙を挟み、両手を合わせ、祈りを捧げます。
「デウス・ネクスゥム・アンゲロス」
魔素を神力へと変換し、ヘルメス様の御力を借りる。神聖魔法の奥義。ここベンベルクにある像を経由し、アクティフォーリア様へと繋がります。
『おお、ルーナか』
『アクティフォーリア様。ご無沙汰しております』
『北の都市に到着したか』
『はい。明日、対峙いたします。ご準備をお願いいたします』
『うむ。明日、体を借り受けるぞ。テトラフィーラの像とやら、見てやろう。体は万全か?』
『はい。今晩で旅の疲れを癒し、御降臨に備えます』
『うむ、それならよい』
繋がりが途切れ、私は片手を床につき息を整えました。汗が止まりません。神域への繋がりは、自らの魔素を消費して為されるのです。魔力ポーションを含み、補わなければなりません。
「ルーナ様、大丈夫ですか?」
「ええ、落ち着きました」
「マティアス司祭。魔力ポーションを補充したいのです。もちろん寄進はいたします」
「いくらでも可能でございます。領の案件にてご足労を願っておりますから、金銭は不要。補給は潤沢にございます。これは魔導師ギルドの改善の成果によるものです」
「……そういえば、震源地はここでしたわね」
私はベンベルクへの道を急いでおりました。トーマス領主はとてもお忙しい方でいらっしゃいますし、領主様が長くお留守となるのは領内にとっても決して望ましくありません。私もできるだけ早く目的を果たし、アクティアの森へ戻らなければならないのです。同行する騎士に、現在の状況を尋ねました。
「イアン。城郭都市までは、あとどのくらいかしら。森を抜ければ、もう近いと思うのだけれど」
「ルーナ様! ただいま鎮守の森を通過し、緩衝地帯の草原に入りました。あと少しで到着いたします!」
窓の外に目を向けますと、騎士の言葉どおり、遠くに大きな城壁が見えてまいりました。ベンベルクを守る兵士たちが厳しく警戒をしております。私たちの馬車は順番待ちの列を抜け、先頭に進み出ました。申し訳なく思いながらも、今回は優先させていただきます。
「ここはパール領ベンベルク南門です。貴族馬車とお見受けいたします。所属をお示しください!」
「神殿騎士イアンと申す。この馬車はヘルメス教団本部の所有である」
「教団関係でございますか。許可証などはございますか?」
「御領主トーマス辺境伯より頂いた書簡がある。ご確認を」
ディーンが手紙を差し出すと、兵士は丁寧に目を通し、深く頷きました。
「確かに領主の直筆でございます。兵士レオンが先導いたします。しばしお待ちください」
兵士に導かれ、馬車は街中へと進みます。ベンベルクは迷路のように入り組んだ都市と聞いておりましたが、広場までは一直線の道でした。
「ルーナ様。迷路は外敵防衛のためでございます。お聞きになったのは北の町域でしょう。南門から広場までは直線でございます」
侍女のフェデリカが説明してくれました。彼女はカンティア出身で、何度もベンベルクを訪れたことがあるそうです。
人口一万ほどの都市は、思ったより大きくはありません。商店が並ぶ道を抜け、広場に出ますと、領主邸が姿を現しました。さらに城壁に囲まれ、要塞のような威容を誇っております。先導のおかげで、私たちはすんなりと通されました。
「教団本部からのお客様です。後の対応をお願いいたします。私は門へ戻ります」
「おお、レオン君、ありがとう」
屋敷の人々に案内され、談話室へと通されました。
「おお、これはルーナ様」
「お久しゅうございます、トーマス様、ホフマン様。御言葉に甘え、参上いたしました」
「わざわざ辺境まで。ご職務も大変でございましょう」
「いえ、アクティフォーリア様とヘルメス様の御心のままに。ホーミィー村への伝手を頂きたく存じます」
「屋敷に一泊してからでもよいのでは? 強行軍と聞いております」
「お気遣い感謝いたします。ですが直接のご厄介はできません。我ら教団は世俗と隔たるのが習わし。教会に寄宿いたします」
「そうか、残念だ。では明朝、教会に向かえばよいか?」
「恐れ入りますが、ご同行いただけると助かります」
「トーマス、今回は私が出よう。ホーミィー村なら私と村長が近い」
「父上、よろしくお願いします」
「では明日、ご足労願おう」
広場には教会が設けられておりました。領主邸の向かいに立つその教会の責任者はマティアス。本部で親しく語らった仲でございます。
「マティアス司祭。厄介になります」
「ルーナ様。アクティアの森からご足労とは……我が信仰力の不足を悔やみます」
「この距離では仕方ありません。これからもヘルメス様との繋がりを高めなさい。正位様との交信は私の役目。ここは神域が狭く、像の出力もごく最小限なのです」
「魔の森の恵みと共に生きるのが領主の代々の指示。近くに迷宮もあり、抑えるには御鎮座が必要かと」
「そうですね。各正位から最も遠い位置。迷宮の干渉もあります。新しい像が乱れを生まねばよいのですが」
「同僚シュリッター司祭とテトラフィーラ様の関係は良好。今のところ異変はございません」
「明日、直接ホーミィー村へ参ります。禊所を使わせてください。身を清めます」
「はっ。教団騎士より先触れがあり、準備は整っております」
旅の穢れを祓い、神像の前に座しました。アクティフォーリア様に到着を報告せねばなりません。術紙を挟み、両手を合わせ、祈りを捧げます。
「デウス・ネクスゥム・アンゲロス」
魔素を神力へと変換し、ヘルメス様の御力を借りる。神聖魔法の奥義。ここベンベルクにある像を経由し、アクティフォーリア様へと繋がります。
『おお、ルーナか』
『アクティフォーリア様。ご無沙汰しております』
『北の都市に到着したか』
『はい。明日、対峙いたします。ご準備をお願いいたします』
『うむ。明日、体を借り受けるぞ。テトラフィーラの像とやら、見てやろう。体は万全か?』
『はい。今晩で旅の疲れを癒し、御降臨に備えます』
『うむ、それならよい』
繋がりが途切れ、私は片手を床につき息を整えました。汗が止まりません。神域への繋がりは、自らの魔素を消費して為されるのです。魔力ポーションを含み、補わなければなりません。
「ルーナ様、大丈夫ですか?」
「ええ、落ち着きました」
「マティアス司祭。魔力ポーションを補充したいのです。もちろん寄進はいたします」
「いくらでも可能でございます。領の案件にてご足労を願っておりますから、金銭は不要。補給は潤沢にございます。これは魔導師ギルドの改善の成果によるものです」
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