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1A-遭難と保護
1A-02能力の理解
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自分の頭は外見上、正常に見える。だが、記憶はどうだろう。
昔の出来事を思い出してみる。
名前は北 二郎。2が付くその名の通り、次男だ。
「キタジロウ、変な名前だね」
家は自営業で、長男が跡を継いだ。自分は継ぐ必要がなかった。
地元では進学校と呼ばれる高校を卒業し、薬科大学へ進学。
「学校?大学?学院と違うの?」
大学卒業後、大学院を二年経て製薬会社に就職。
4、5年働いたのち薬局へ転職し、数年が経過したはずだ。
「薬局?」
趣味はゲーム。かつては狂ったようにプレイしていたが、社会人になってからは飽きてしまった。
「ゲーム?」
製作者の意図が見えてしまった。お使いばかりに思えてやめてしまった。
記憶はおおむね正常だ。靄がかかったような感覚はあるが、時間をかければ思い出せる。
ただ、たまに幻聴が聞こえるのが気になる。
植生、空気の匂い、散らばる木製の造形物。――あらゆるものに違和感がある。
薬学を学ぶ上で当然植物を習う。だが、シダ植物やキノコがなぜ日向で育っている?
空気は澄み切り、排ガスの匂いは皆無。大気が濃いように感じるのは森の中だからか。
馬車や櫛などの造形物がある。ある程度、文化は進んでいるようだ。
着ている服から察するに、自分の身分は奴隷か、それに準ずる者。
手枷の痕跡はあるが今は外れている。体に違和感はない。
亡くなっていた御者らしき人物は、商人にも見えた。
体を洗ったとき全身を確認したが「あざ」や「刻印」はなかった。
だが奴隷として扱われていた可能性は高い。
社会的最底辺で生きるのは、今後かなり厳しいだろう。
気になっていた黒い石を思い出し、握りしめてみる。
「一緒にやってみるよ」
念じると、胸に違和感が走り、脳内に文字が浮かび上がった。
=====
【*name】red・bernard【age】12 【sex】male 【job】chemist・merchant 【skill】 pharma:”{P{{_ ,storyteller,rlrrvtto construction ,ftobrt,item box,another language
=====
なぜ英語?
もう一度念じると、日本語に変わった。
=====
【*名前】レッド=ベルナル【年齢】12 【性別】男 【職業】薬師・商人 【スキル】 薬:”{P{{_ ,話術,rlrrvtto 建築 ,Ftobrt, アイテムボックス,異世界言語
=====
一部の文字は判別しづらい。異世界言語か?
この世界の言語体系にないものが文字化けしているのだろう。
chemist…薬師か。『剤』が抜けているようだが。
この少年の名前はレッド=ベルナルらしい。
「ねえ」
『…』
『聞こえてるよね』
『…』
『ねえってば…』
『…幻聴が聞こえてくるな』
『いや、幻聴じゃなくて、レッドだよ』
『うぉ!? 声が脳内に響く?』
『そうだよ。さっきから話しかけてるのに、無視はひどい』
『…ああ、ごめんな。ようやく理解した』
『さっき鑑定したでしょ? それで少し現状が見えてきたみたいだけど』
『ああ、理解した。そして察した。この体…君の体に、自分が入り込んだみたいだな』
職業とスキルに違和感があった。
幻聴がレッド君だと認識したのは、その違和感からだ。
この少年と自分、二人の意識が合わさっているのだろう。
薬師は自分。商人はレッド君。
話術やアイテムボックスは、どちらのものかは不明だ。
『もともとボクは、商人・話術・アイテムボックスを持ってたよ。違うスキルは全部ジロウのものか、重なって持ってると思う』
文字化けしている三種のスキルと異世界言語は、自分のものらしい。
今の体の支配権は自分。レッド君の体を乗っ取ってしまったようだ。
頭を打った痕跡もある。あの時、乗り移ったのか?
『言っておくけど、キミが脳内で考えていることは、こっちに伝わっているからね。岩にぶつかった時に入り込んだと思う。そこから記憶がないんだ』
『なんでこんなことになったんだ?』
『わからない。ただ、ボクの意識が薄くなって、一人じゃ支えられなかった。キミがいなかったら、ボクは死んでいた』
『このまま自分が主でいいということか…』
『うん。でも、こうして会話すると少し疲れるから、長くは続かないかも。でも、見たり聞いたりすることはわかるよ』
『それは…すまないとしか言えないな』
『気にしないで。今は安全を確認するために、早くスキルを見ようよ』
言われた通り、スキルの確認を優先する。
戦闘系のスキルはない。かなり商人に特化している。
前職が頭脳系・職人系だったことが反映されているようだ。
この初期状況では、戦闘の素質は期待できない。
『そうだね。ボクも剣術・体術は苦手。訓練もしていないし。でも商人だから、収納には自信あるよ』
――アイテムボックス!
そうだ、脳内の文字にあった。荷物にならないなら、必要そうなものは入れておこう。
『そう、今はだいぶ少ないけどね…』
黒い石も一緒に。これは鍵か?重要アイテムに違いない。
『それは身分石だよ。都市に入るときに使うんだ』
重要アイテムだった!
他に使えるものはないかと、馬車の周辺を一緒に捜索する。生き残ることが最優先だ。
亡くなった御者の懐を確認すると、金属貨の入った袋が見つかった。
『お金は持っておいていいと思う。森で亡くなった場合や、身分が不明なときは特にね。放っておけば野盗に漁られるし。家族の名乗りがあるなら、しばらく保管しておくといいよ』
金・銀・銅の硬貨が確認できた。刻印もある。
金貨2枚、銀貨10枚、銅貨15枚。
それぞれ外国の硬貨のように人物の刻印がある。
ありがたく頂戴しておこう。価値は後で確認する必要がある。紛失しないようにしなくては。
人里に向かい、安全を確保したい。
相棒を含め、この精神、体では自己防衛の手段が少ない。
脳内での相棒との連携が、不安を和らげた。
心細さが消え、少し安堵した自分がいる。
昔の出来事を思い出してみる。
名前は北 二郎。2が付くその名の通り、次男だ。
「キタジロウ、変な名前だね」
家は自営業で、長男が跡を継いだ。自分は継ぐ必要がなかった。
地元では進学校と呼ばれる高校を卒業し、薬科大学へ進学。
「学校?大学?学院と違うの?」
大学卒業後、大学院を二年経て製薬会社に就職。
4、5年働いたのち薬局へ転職し、数年が経過したはずだ。
「薬局?」
趣味はゲーム。かつては狂ったようにプレイしていたが、社会人になってからは飽きてしまった。
「ゲーム?」
製作者の意図が見えてしまった。お使いばかりに思えてやめてしまった。
記憶はおおむね正常だ。靄がかかったような感覚はあるが、時間をかければ思い出せる。
ただ、たまに幻聴が聞こえるのが気になる。
植生、空気の匂い、散らばる木製の造形物。――あらゆるものに違和感がある。
薬学を学ぶ上で当然植物を習う。だが、シダ植物やキノコがなぜ日向で育っている?
空気は澄み切り、排ガスの匂いは皆無。大気が濃いように感じるのは森の中だからか。
馬車や櫛などの造形物がある。ある程度、文化は進んでいるようだ。
着ている服から察するに、自分の身分は奴隷か、それに準ずる者。
手枷の痕跡はあるが今は外れている。体に違和感はない。
亡くなっていた御者らしき人物は、商人にも見えた。
体を洗ったとき全身を確認したが「あざ」や「刻印」はなかった。
だが奴隷として扱われていた可能性は高い。
社会的最底辺で生きるのは、今後かなり厳しいだろう。
気になっていた黒い石を思い出し、握りしめてみる。
「一緒にやってみるよ」
念じると、胸に違和感が走り、脳内に文字が浮かび上がった。
=====
【*name】red・bernard【age】12 【sex】male 【job】chemist・merchant 【skill】 pharma:”{P{{_ ,storyteller,rlrrvtto construction ,ftobrt,item box,another language
=====
なぜ英語?
もう一度念じると、日本語に変わった。
=====
【*名前】レッド=ベルナル【年齢】12 【性別】男 【職業】薬師・商人 【スキル】 薬:”{P{{_ ,話術,rlrrvtto 建築 ,Ftobrt, アイテムボックス,異世界言語
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一部の文字は判別しづらい。異世界言語か?
この世界の言語体系にないものが文字化けしているのだろう。
chemist…薬師か。『剤』が抜けているようだが。
この少年の名前はレッド=ベルナルらしい。
「ねえ」
『…』
『聞こえてるよね』
『…』
『ねえってば…』
『…幻聴が聞こえてくるな』
『いや、幻聴じゃなくて、レッドだよ』
『うぉ!? 声が脳内に響く?』
『そうだよ。さっきから話しかけてるのに、無視はひどい』
『…ああ、ごめんな。ようやく理解した』
『さっき鑑定したでしょ? それで少し現状が見えてきたみたいだけど』
『ああ、理解した。そして察した。この体…君の体に、自分が入り込んだみたいだな』
職業とスキルに違和感があった。
幻聴がレッド君だと認識したのは、その違和感からだ。
この少年と自分、二人の意識が合わさっているのだろう。
薬師は自分。商人はレッド君。
話術やアイテムボックスは、どちらのものかは不明だ。
『もともとボクは、商人・話術・アイテムボックスを持ってたよ。違うスキルは全部ジロウのものか、重なって持ってると思う』
文字化けしている三種のスキルと異世界言語は、自分のものらしい。
今の体の支配権は自分。レッド君の体を乗っ取ってしまったようだ。
頭を打った痕跡もある。あの時、乗り移ったのか?
『言っておくけど、キミが脳内で考えていることは、こっちに伝わっているからね。岩にぶつかった時に入り込んだと思う。そこから記憶がないんだ』
『なんでこんなことになったんだ?』
『わからない。ただ、ボクの意識が薄くなって、一人じゃ支えられなかった。キミがいなかったら、ボクは死んでいた』
『このまま自分が主でいいということか…』
『うん。でも、こうして会話すると少し疲れるから、長くは続かないかも。でも、見たり聞いたりすることはわかるよ』
『それは…すまないとしか言えないな』
『気にしないで。今は安全を確認するために、早くスキルを見ようよ』
言われた通り、スキルの確認を優先する。
戦闘系のスキルはない。かなり商人に特化している。
前職が頭脳系・職人系だったことが反映されているようだ。
この初期状況では、戦闘の素質は期待できない。
『そうだね。ボクも剣術・体術は苦手。訓練もしていないし。でも商人だから、収納には自信あるよ』
――アイテムボックス!
そうだ、脳内の文字にあった。荷物にならないなら、必要そうなものは入れておこう。
『そう、今はだいぶ少ないけどね…』
黒い石も一緒に。これは鍵か?重要アイテムに違いない。
『それは身分石だよ。都市に入るときに使うんだ』
重要アイテムだった!
他に使えるものはないかと、馬車の周辺を一緒に捜索する。生き残ることが最優先だ。
亡くなった御者の懐を確認すると、金属貨の入った袋が見つかった。
『お金は持っておいていいと思う。森で亡くなった場合や、身分が不明なときは特にね。放っておけば野盗に漁られるし。家族の名乗りがあるなら、しばらく保管しておくといいよ』
金・銀・銅の硬貨が確認できた。刻印もある。
金貨2枚、銀貨10枚、銅貨15枚。
それぞれ外国の硬貨のように人物の刻印がある。
ありがたく頂戴しておこう。価値は後で確認する必要がある。紛失しないようにしなくては。
人里に向かい、安全を確保したい。
相棒を含め、この精神、体では自己防衛の手段が少ない。
脳内での相棒との連携が、不安を和らげた。
心細さが消え、少し安堵した自分がいる。
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