巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1C-試行と結果

1C-11 報告と展望

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パラケル爺さんは、ふぅ、と息をついた。
長旅ではないが、少し疲れた様子。
鞄を作業台に置きながら、こちらに声をかけてくる。

「久しぶりに城郭都市を訪問した。同業者に捕まり、元パーティーメンバーに捕まり、領主一族に捕まり…結局、一週間もかかってしまった」

「確かに。ずいぶん長かったですね」

「最初は三日の予定だったんだがな。さて、進捗はどうだ?」
「留守中に進めていたことは二つあります。ひとつは両親の依頼で陶器の皿を作成。
もうひとつは、課題のポーション保存について、光による劣化試験を行いました」

磁器と陶器の現物、そして光過酷試験のレポートを手渡す。
爺さんは現物を手に取り、遮光箱をちらりと見た後、レポートに目を通す。
読み終えると、磁器をピィーンと弾いた。

「これは…やはり磁器だな。白度もかなり良い。白磁、青磁と呼ばれるものに違いない。魔導具と共に失われた技術だ。どうやってこの物に行き着いた?」

「陶石は近隣の村から。両親が探してきました。骨は自宅に捨ててあったものを【物質鑑定】した結果です。最近は、鑑定項目の精度が上がってきていて、詳細な情報が出るようになっています」

「そうか。【物質鑑定】で出るなら間違いない。あれは人によって結果が違うからな。陶器のことを考えながら鑑定したのだろう?…たまたま出たのかもしれんが」

ぶつぶつと考え込む爺さん。
「失われた技術」という言葉に、胸が少しざわついた。


「ポーション保存の件ですが、ポーション瓶を基本に、磁器と陶器を使って条件を振りました。容器の形状はこちらです」

食品流通の観点から、光・熱・湿気などの保存条件に触れ、ポーションの工程から光に焦点を当てた理由を説明。
磁器瓶・陶器瓶の薄・厚の現物も並べる。

爺さんは「なるほど」と頷き、レポートに集中。
読み終えると、ばさっとテーブルに置いた。


「ポーション瓶は、土から抽出されたガラス質。ガラスは魔素の拡散を防ぐ働きがあるのは分かっていた。だが、効果の劣化が中身ではなく外部要因――光だったとはな。初めての事実だ」

「太陽光に模した光魔法で試験しました」
(実際には可視光のみだが、ここでは伏せておく)

「それでも同じことだ。透明な容器が仇となったわけだ。このレポートによると、陶磁器には釉薬を塗布し、ポーション瓶に使われていたガラスを釉薬に転用した。つまり、内外にガラス層を作ることで、魔素の拡散を防げたということか」

「はい。実験結果からそのように読み取れます」

「さらに、容器を陶磁器に変更することで、光による劣化も防げる。より薄い方が良く、陶器より磁器が適している、と」
「はい。ただ、弱点もあります。ガラスよりは強くなりましたが、割れやすさは解決できていません」


「ほう。そこまで考えているのか。…それで、どうする?」
爺さんの片眉が上がる。

「そこを相談したかったのですが――魔導回路を絵付けすることは可能ですか?」

「なるほど。ガラスではインクが弾かれて魔導回路が書けない。陶磁器ならではの発想だな」

「絵付けで機能を付与し、弱点を補強できるかと」

「確かに、陶磁器なら容易に書ける。規格品として作れば、同じ紋様が使える。
木彫からインクを転写すれば、筆も不要。人手もかからん。…魔導具店ならではの案件だな」
爺さんはニヤリと笑った。
どうやら、仕事として面白くなってきたらしい。



それにしても、一言でこちらの意図を読み取るとは――
長年の勘か、魔導師としての直感か。

爺さんの思考誘導に乗りながら、さらに作成案を絞り出す。
二人での討議が始まった。

陶磁器ポーション瓶の魔導具化――
新たな技術の夜明けが、静かに始まろうとしていた。
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