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1D-窯業と産業
1D-12 *サルタンの奔走
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数日が経ち、ホーミィー村から連絡が入った。進捗があれば金をかけても知らせるよう村長に頼んでいたのだ。報告によれば、ポーション百本の作成に成功したという。レッドはさらに改良を重ね、別の薬草の試験や研究にも没頭しているらしい。あいつはまるで人が変わったように研究に打ち込み始めた。あの拉致事件がよほど堪えたのだろう。魔術を本気で習得しようとする意欲が伝わってくる。
城郭都市でパラケル爺と落ち合い、今後の対策を協議した。
「ワシが知っているのは、大甕と磁器瓶の作成までだ。紙を使って釉薬を転写し、ワシが教えた回路を瓶に焼き付けていた。鮮やかな青色が特徴的だったぞ」
「……聞いていません。それに何やら別の研究もしているようですが」
「研究か? 村長の発案で薬草採取をしているだろう。一緒に行ったのではないか? 鎮守の森の群生地で何か見つけたのだろうよ」
「アルテミ草以外に……?」
爺は頷いた。
「ワシが確保していた魔力ポーションの元になる植物がある。ほかにも薬草や毒草があって持て余していた」
「毒草まで……大丈夫でしょうか」
「おそらく【物質鑑定】を使いながら採取しているはずだ。無理はするなと伝えてある。毒草には手を出すまい。魔力ポーションの試行錯誤でもしているのだろう」
「魔力ポーション……魔素が抜けやすくて扱いづらい代物ですよね」
「ああ、以前まではな。だが今回は磁器瓶がある。一変するかもしれん」
「……なるほど。利用価値が増すわけですね」
爺は肩をすくめた。
「ここで茶を飲んでいても進まん。お互い急かされているようだな」
「陶石の確保と磁器瓶の量産化を急がねばなりませんね」
「やれやれ、引退した身だというのに」
爺は各村担当の商人や領主付きの魔導師と共に馬車で出立した。これから各村で技術指導を行うのだろう。
俺は一人、冒険者ギルドへ向かった。ギルド長との面会を申し込み、薬草の採取と処理について話をする。
「御前会議でのご協力、感謝します」
「マルガリタ商会に協力する以上、ギルドとしても出資する。有事に備えてポーションを確保したい。他のギルドにも融通できる」
「ありがとうございます。代行に伝えておきます」
「冒険者ギルドとしては、生存率が上がるなら当然協力する」
エリス様の言葉に安堵する。
「魔導師ギルドが賛同するかが鍵でした。エリス様のおかげで一致できてよかった」
「彼はパラケルとの確執がある。素直に賛同するとは思えない」
「うまく誘導していただき助かりました」
「奴のわがままでこちらが被害を受けるのは御免だからな」
実務の話に移る。
「冒険者への依頼は全草納入でよろしいですか?」
「部位限定などすれば混乱する。粗雑な連中だ、今まで通りでいい」
「了解です。ただし根は残すよう周知を。根こそぎでは群生地が枯渇します。改良ポーションには根は不要です」
「わかった、周知しよう」
さらに処理工程について詰める。洗浄、乾燥、分別は冒険者ギルドで可能か確認した。
「駆け出しの冒険者魔術師でもできる仕事だ。新人教育にもなる」
「うちの息子でもすぐにできました。新米でも問題ないでしょう」
「……駆け出しとお前の息子を比べるな。話を聞く限り、中堅並みの理解力があるのではないか?」
「とんでもない。まだ習って二ヶ月の初心者です」
「常識にとらわれない魔術師は稀に出る。伊達に三百年生きていない。今度人相を見てみます。連れてきなさい」
「ハイエルフのギルド長のお目に適うなら。城郭都市に行く際に連れて参ります」
「よろしく頼む。城郭都市の未来もある」
その後、採取後の乾燥、部位ごとの分別、荒粉砕、大甕単位での売買など細部を詰め、依頼はすんなり決まった。
続いて魔導師ギルドへ。小規模な都市ゆえ移動は楽だ。ギルド長と副ギルド長に面会する。
「御前会議でのご協力、感謝します」
「賛同しなければ魔導師ギルドの店主たちが路頭に迷う。俺は乗り気ではない」
「いえ、後から聞けば英断です。新手法は素晴らしい。パラケル爺が勧めるなら間違いない」
副ギルド長エラスムスが口を挟む。彼が主導してくれれば楽なのに、と心で思う。
「……あいつとは昔から合わん。それにしても、こんな方法があったとは。常識が覆ったわ」
「聞いただけで研究したくなりますね」
俺は説明を続ける。
「魔導師ギルドの役割はポーション液の作成です。冒険者ギルドから大甕で納入されます。葉と頭花の選定済みのものを使い、通常通り抽出してください。魔力を使わずとも普及品+が作れるとのことです」
「加工を変えるだけで本当に品質が出るのか?」
「開発者の資料をお渡しします。パラケル爺の検証済みです」
レッドが作った資料を渡す。
「魔術を使わず普及品+が……信じられん」
「パラケル師からも聞いていましたが、具体的なデータは初めてです。これなら従来通りの抽出で一級品が作れる。まずは試作を確認しましょう、ギルド長」
副ギルド長がフォローを入れる。彼以下の者たちはパラケル爺に好意的だ。
「ああ、仕方ない。まずは確認だ」
その後は実務の話。磁器瓶は商人ギルドが搬入し、抽出から充填、封印までを行う。納品はマルガリタ商会へ。ガラス瓶を使ったものは魔導師ギルド主導で販売してよいことも伝えた。
「わかった。領主の仕事だ。魔導師ギルドとして責任を持とう」
思ったよりすんなり話は終わった。磁器瓶と陶石は商人ギルドが押さえている。魔導師ギルド単独では動けない。パラケル爺が副ギルド長に根回ししていたのだろう。現場では歓迎されていたようだ。
これで当面の陶石搬入と磁器瓶の量産体制は整う。
二、三日の間に複数の用事をこなし、俺はホーミィー村へ帰還した。
城郭都市でパラケル爺と落ち合い、今後の対策を協議した。
「ワシが知っているのは、大甕と磁器瓶の作成までだ。紙を使って釉薬を転写し、ワシが教えた回路を瓶に焼き付けていた。鮮やかな青色が特徴的だったぞ」
「……聞いていません。それに何やら別の研究もしているようですが」
「研究か? 村長の発案で薬草採取をしているだろう。一緒に行ったのではないか? 鎮守の森の群生地で何か見つけたのだろうよ」
「アルテミ草以外に……?」
爺は頷いた。
「ワシが確保していた魔力ポーションの元になる植物がある。ほかにも薬草や毒草があって持て余していた」
「毒草まで……大丈夫でしょうか」
「おそらく【物質鑑定】を使いながら採取しているはずだ。無理はするなと伝えてある。毒草には手を出すまい。魔力ポーションの試行錯誤でもしているのだろう」
「魔力ポーション……魔素が抜けやすくて扱いづらい代物ですよね」
「ああ、以前まではな。だが今回は磁器瓶がある。一変するかもしれん」
「……なるほど。利用価値が増すわけですね」
爺は肩をすくめた。
「ここで茶を飲んでいても進まん。お互い急かされているようだな」
「陶石の確保と磁器瓶の量産化を急がねばなりませんね」
「やれやれ、引退した身だというのに」
爺は各村担当の商人や領主付きの魔導師と共に馬車で出立した。これから各村で技術指導を行うのだろう。
俺は一人、冒険者ギルドへ向かった。ギルド長との面会を申し込み、薬草の採取と処理について話をする。
「御前会議でのご協力、感謝します」
「マルガリタ商会に協力する以上、ギルドとしても出資する。有事に備えてポーションを確保したい。他のギルドにも融通できる」
「ありがとうございます。代行に伝えておきます」
「冒険者ギルドとしては、生存率が上がるなら当然協力する」
エリス様の言葉に安堵する。
「魔導師ギルドが賛同するかが鍵でした。エリス様のおかげで一致できてよかった」
「彼はパラケルとの確執がある。素直に賛同するとは思えない」
「うまく誘導していただき助かりました」
「奴のわがままでこちらが被害を受けるのは御免だからな」
実務の話に移る。
「冒険者への依頼は全草納入でよろしいですか?」
「部位限定などすれば混乱する。粗雑な連中だ、今まで通りでいい」
「了解です。ただし根は残すよう周知を。根こそぎでは群生地が枯渇します。改良ポーションには根は不要です」
「わかった、周知しよう」
さらに処理工程について詰める。洗浄、乾燥、分別は冒険者ギルドで可能か確認した。
「駆け出しの冒険者魔術師でもできる仕事だ。新人教育にもなる」
「うちの息子でもすぐにできました。新米でも問題ないでしょう」
「……駆け出しとお前の息子を比べるな。話を聞く限り、中堅並みの理解力があるのではないか?」
「とんでもない。まだ習って二ヶ月の初心者です」
「常識にとらわれない魔術師は稀に出る。伊達に三百年生きていない。今度人相を見てみます。連れてきなさい」
「ハイエルフのギルド長のお目に適うなら。城郭都市に行く際に連れて参ります」
「よろしく頼む。城郭都市の未来もある」
その後、採取後の乾燥、部位ごとの分別、荒粉砕、大甕単位での売買など細部を詰め、依頼はすんなり決まった。
続いて魔導師ギルドへ。小規模な都市ゆえ移動は楽だ。ギルド長と副ギルド長に面会する。
「御前会議でのご協力、感謝します」
「賛同しなければ魔導師ギルドの店主たちが路頭に迷う。俺は乗り気ではない」
「いえ、後から聞けば英断です。新手法は素晴らしい。パラケル爺が勧めるなら間違いない」
副ギルド長エラスムスが口を挟む。彼が主導してくれれば楽なのに、と心で思う。
「……あいつとは昔から合わん。それにしても、こんな方法があったとは。常識が覆ったわ」
「聞いただけで研究したくなりますね」
俺は説明を続ける。
「魔導師ギルドの役割はポーション液の作成です。冒険者ギルドから大甕で納入されます。葉と頭花の選定済みのものを使い、通常通り抽出してください。魔力を使わずとも普及品+が作れるとのことです」
「加工を変えるだけで本当に品質が出るのか?」
「開発者の資料をお渡しします。パラケル爺の検証済みです」
レッドが作った資料を渡す。
「魔術を使わず普及品+が……信じられん」
「パラケル師からも聞いていましたが、具体的なデータは初めてです。これなら従来通りの抽出で一級品が作れる。まずは試作を確認しましょう、ギルド長」
副ギルド長がフォローを入れる。彼以下の者たちはパラケル爺に好意的だ。
「ああ、仕方ない。まずは確認だ」
その後は実務の話。磁器瓶は商人ギルドが搬入し、抽出から充填、封印までを行う。納品はマルガリタ商会へ。ガラス瓶を使ったものは魔導師ギルド主導で販売してよいことも伝えた。
「わかった。領主の仕事だ。魔導師ギルドとして責任を持とう」
思ったよりすんなり話は終わった。磁器瓶と陶石は商人ギルドが押さえている。魔導師ギルド単独では動けない。パラケル爺が副ギルド長に根回ししていたのだろう。現場では歓迎されていたようだ。
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二、三日の間に複数の用事をこなし、俺はホーミィー村へ帰還した。
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