巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1D-窯業と産業

1D-13 *学院を超える少年

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♢♢

サルタンと別れたあと、儂はパール家お抱えの魔導師ダミアンと、その護衛騎士と共にピレネ村へ向かった。
領主案件ゆえ、馬車での移動である。
ダミアンは元弟子であり、城郭都市での仕事を共にした仲間でもある。
儂がホーミィー村へ隠居するとき、すべてを押し付けた男だ。
人当たりがよく、良い奴なのだが、おしゃべりなのが玉に瑕。
だがその性格ゆえに貴族から声がかかり、学院にも進めた。
結果として、儂にとっても充実した生活をもたらしてくれた恩人でもある。

「ホーミィー村で隠遁生活を楽しんでいたのに、随分精力的に動くようになったのですね。忙しいのが嫌で城郭都市を離れたのに」
「鍛えがいのある弟子を取ったのでな。師匠として負けてはおれんと思った結果だ。商会の代表にされたのは予想外だったが」
「数少ない弟子の一人になれるとは。その子はよほど優秀なのですね。兄弟子としては評価が気になります」
「四属性魔法を使いこなし、一日中行使しても枯れぬ魔力器官と精神力を持つ。加えて発想が斜めに飛んでいて面白い」

「その結果が、師匠の今の行動ですか。彼は磁器の皿を作ったとか」
「初めは陶器の皿だった。庭先でさらりと作ったらしい。四属性の修練の一環でな。百枚も作ったそうだ。それに反応してサルタンが商人として動いた」
「ああ、なるほど。商人ギルド長の息子さんでしたね。領地内の特性を知る立場ですから、ギルドを動かして利益と息子の欲しいものを取り寄せたと」
「結果として貴族の興味を引き、商会まで作ることになった。儂は代表として担がされたがな」

「パール家も、引退には早いと思っていたのですよ。で、修練とどう関係が?」
「最初は普通にポーションを作っていた。だが一か月しか持たないことに驚愕していた。商店でも売っているだろうに」
「当然ですね。そのくらい持てば十分でしょう?」
「儂もそう思っていた。だが小僧は違った。ガラス瓶の弱点を問題視したのだ。気軽に課題を与えたら、原因と対策を立ててしまった。修練で作った陶器を応用し、品質期限を延ばした。さらにガラスより硬い磁器を作り上げた。遺跡から発掘されるあの磁器だ。面白いのは、そこで終わらず、さらに機能を追加したことだ」


「追加機能?」
「磁器瓶への魔法陣の付与だ。儂が魔導具作りを教えていたのを応用した」
「学院生なら最優を与えたいですね」
「さらに古代文字の教本も渡した。儂の魔法陣を理解しているようだ。遮光箱なる実験道具まで作った。理解の速さは尋常ではない」
「いよいよ学院に行って欲しい人材ですね」
「だろう? この前の会議では、報酬の一部に進学が組み込まれていた」
「両親も喜ぶでしょう。推薦されれば」
「アゼルは学院出だ。レッドはその孫だからな」
「学院進学を推すのは自然な流れですね」

馬車の窓からの景色は、森から岩肌の見える山岳地帯へと変わっていった。
ピレネ村はもうすぐだ。
「それにしても、魔導具作りの第一人者の教えを受けられるのは羨ましい」
「あいつは知らんぞ? 儂の本を渡したから感づいていると思うが」
「ちなみに何を渡したのですか?」
「『魔導文字列解析』と『パラケル流魔道具作成法』だ」
「!? それは学院卒業者が扱う教本ではないですか! また無茶を」
「あいつは普通に読んでいたぞ」
「知らないことは怖いですね。学院を出ていない少年が理解するとは。今や学院の基礎教本ですらあるのに。卒業資格である魔導師の資格に必須の書です。参考書も多数あるのに……。評価を上方修正するよう領主に申し伝えておきます」


「お前に指摘されると、小僧の異常さがよく分かる。注意せねばな。小僧は昔から魔導具を見ていたから身近に感じているのだろう。それと……小僧は儂と同等の一級品ポーションを作れるが、多分特級も作れる。不自然な手抜きがあった」
「まさか!? もうそこまで……やはり異常ですよ。その少年は。師匠が現役を思い出したのも納得です」
「だろう。こき使われる未来しか見えてこん」

そう言い合いながら、儂らはピレネ村へと近づいていった。
陶器関連では二度目の訪問となる。
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