巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1E-蒸留と羊油

1E-04 美容と治癒

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 村長から頼まれていたスライム浄水タンクの設置作業を二日ほどかけて終えた。これで雨の後でも濁った川から水を採れるようになり、村人たちに感謝された。ようやく自分の開発に時間を割ける。考えていた方法を試す時が来た。

 エシプスを使った作業は家族に嫌がられたので、自宅の納屋を作業場にする。まずは遠心分離機を作った。木の軸とギアを組み合わせ、枝に金具をつけて器を取り付ける。回転すれば器が水平になる仕組みだ。容量は高々200gほど。

 加熱して液状にしたエシプスを麻布で濾し、遠心器にかける。風魔法で補助しながら回転数は500回転/分ほど。沈殿物と液体に分け、液体に草木灰を溶かした液を混ぜてアルカリ処理を二度繰り返す。石鹸化した下層は捨てずに後で利用することにし、上層の油を回収。さらに蒸留装置にかけ、200度前後で分取した。

 得られたのは黄色がかった透明な液体。収率は七割ほど。

【*精製ランナ。一級品。各種基剤に使用可。少しの匂い】

 酸処理を省いたためか、精製度はまだ甘い。だが魔力を通すと格段に操作しやすくなり、不純物を分離できた。

【*精製ランナ。特級品。各種基剤に使用可。無臭】

 匂いも消え、理想的なラノリンに近い。これで基剤として使える。

 アルテミオイルを少量ずつ混ぜていくと、0.1%ほどで鑑定結果が変わった。

【*サナーレウンゲン。特級品。治癒効果1。保湿シミ改善効果小】

 治癒軟膏――皮膚に特化した効果を持つらしい。さらにブラックメンタオイルを加えると、0.02%で変化した。

【*ハイサナーレウンゲン。特級品。治癒効果6。外傷修復効果・微かなメンタの芳香】

 ポーションと同等の治癒効果を持つ軟膏。だが魔素が拡散してしまうため、急ぎ磁器容器を作り、保冷と封印の魔法陣を刻んで保存した。

 一方で、一級品のランナを使った軟膏も作成。アルテミだけでは匂いが残るが、メンタを加えると覆い隠せる。色は青緑に傾き、爽やかな香りが広がる。まるで治療効果のあるハンドクリームだ。

 実際に腕に塗布すると、切り傷が徐々に塞がっていく。特級品はさらに雑味がなく、メンタの清涼感が際立った。
 ――『ハイサナーレウンゲン』。高治癒軟膏。これは危ういほどの効果を秘めている。女性にとっては強すぎる。封印しておくべきだろう。


 夕食時、母と妹に匂いを指摘された。
「レッド、今度は何を作ったの?」
「いい匂いする」
「……エシプスを加工してたわね」
「ポーションの効果を落とし込んだ軟膏だよ。手荒れやあかぎれを治す程度のものさ」

 一級品のサナーレウンゲンを渡すと、母は手に塗り、あかぎれが修復していくのを見て驚いた。シミまで薄くなった気がする。父サルタンの目が見開かれ、母の手を取り確認する。

「レッド、これは特産品になる。商人として絶対に手放すな」
「そうよ、これは売れるわ!」

「パール家に渡す手土産用に作ったんだけど?」
「量産化してから渡せ。必ず騒動になる」

 父と母は真剣な顔で言った。女性は美容に敏感だ。特に貴族となれば。ポーションに満足しない層に売れるだろう。

 明日、父とパラケル爺さんが話し合う場に同席することになった。
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