巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1F-氾濫と供給

1F-08 戦場の回遊

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 嫌悪感を抱きつつも、地面に転がるオークをアイテムボックスに収め、荷馬車へと戻す。今回の任務はあくまで荷馬車の試験。第一優先を忘れてはいけない。人型魔獣は素材が少なく、魔石の回収が主だ。

 その時、パラケル爺が感知で呟いた。
「大物がいるな」
「ええ、オークの長ね。戦っているのは副ギルド長のバスタよ」

 バスタは大剣を振るい、長と対峙していたが、取り巻きに阻まれて追撃ができない。裂傷も増えている。
「しょうがないわね。ラピスラスタ!」
 エリス様の石槍が取り巻きを牽制する。遠距離からの重量攻撃は威力こそ十分だが、敵の動きを鈍らせる程度にとどまった。

「自分も援護します。ラピスバレット!」
 石弾を銃弾のように回転させ、取り巻きの顔面を撃ち抜く。即死。
「魔力制御もイメージも完璧ね。本気で冒険者を目指さない?」
 そう言い残し、エリス様は剣を抜き、バスタの支援へと駆けていった。

 やがて決着は冒険者側の勝利。バスタは軽傷で済んだが、同行していた若手パーティー「スリースターズ」は重傷者を出していた。パラケル爺がハイポーションを使い、骨折も癒える。彼らは研修中に大群に遭遇し、引き際を誤ったらしい。

 補給を済ませ、魔物を回収。荷馬車は満杯となり、残りは自分のアイテムボックスに収めた。午後はエリス様の声掛けで補給支援に回り、戦線は安定を取り戻した。

「今日は楽しかったわ。レッド君の力量は十分。冒険者としてならランクA相当ね」
「まあ、ワシが鍛えたからな。学院に行くことを勧めている」
「商人としても魔術師としても大成できるわ。学院は合う合わないがあるけど」
「自分は魔術師兼商人としてやっていきたいです」

 夕刻、北門でエリス様と別れ、西の大門から帰還。祖父アゼル、叔父ノルバが出迎えてくれた。
「試運転どころではなかったな。だが良い経験だったろう」
「はい。魔術師でも体を鍛える重要性を痛感しました」

 クロウが荷馬車の報告をする。
「振動も少なく、安定して走れます。ただし陶器を運ぶには荒道では危険です」
「街道の整備を領主に進言しよう」
「ええ、流通は命綱ですから」

 そこで、つい口を滑らせた。
「こちら側の対策としては、陶器の間に充填材を敷くのも良いかもしれませんね」
 何気ない一言のつもりだった。だが祖父も叔父もクロウも、一斉にギラリとこちらを見た。梱包の工夫など、この世界ではまだ一般的ではない。不用意な発言が、また新たな波紋を呼びそうだった。
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