巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1G-酒精と層菓

1G-07 主の手紙

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 アゼルとサルタンが迎えに来たのは、二日も家に帰っていなかったためだ。夕食に呼びに来たらしい。昨日はパラケル家に泊まり、今日は昼食も忘れて作業に没頭していた。

「パラケル爺さん、もう夕方です。今日はここまでにしましょう」
「……まあ、キリは良いか。だが帰る前に反省会だ」

 そう言って爺さんはアクアヴィーテのミニ瓶をちらつかせ、父と祖父をあっさり籠絡した。二人は嬉々として帰っていったが、後で女性陣に叱られる未来が待っているのは明らかだった。

 夕食を済ませ、体を清めた後、爺さんは真顔になった。
「実は今日中に片付けるべきことがある」

 エールの流通樽を取り出し、十年物のアクアヴィーテを注ぐ。すると酒の周囲がキラキラと輝き始めた。液体だけでなく空気まで光を帯びていた。

「やれやれ……また来たか。レッドよ、目に魔力を込めて見てみろ」
 爺さんは声を潜めて話し、グラスに視線を向けた。

 魔力を強めると、小さな人影が見えた。羽を持つ人形のような存在――妖精だ。酒の周りを飛び回り、まるで取り分をせっせと集めているかのようだった。

「ローセア! はしたない、挨拶くらいしなさい」
 パラケル爺さんの肩にも別の妖精が座っていた。

「ルプラだ。久しぶり。この人、主が言っていたケチな人だよ」
「ケチとは失礼な!」

 どうやら、火酒を造ると妖精にお裾分けするのが常識らしい。魔法で熟成を進めていたため、今まで彼女たちは取り分を得られなかったのだという。

「気に入った初めての火酒には命名をして差し上げます。この酒の名は――アクアヴィーテ《ロセアスティル》。そして祝福を授けましょう」

 体に微かな違和感が走る。妖精の祝福とは、専属扱いとなりパスが繋がることらしい。パラケル爺さんのルプラは錬金術好き、そして自分には酒好きのローセアがついた。

「まあ、主への繋ぎとなるだろう」
「そうそう、それそれ。主からの手紙を持ってきたの」

 ローセアが差し出した手紙には、鎮守の森の主からの言葉が記されていた。

 ――弟子と共に訪問せよ。作り出した物をすべて持参せよ。酒は必須だ。蒸留も試作ではなく、しっかりとしたものを。

 主もまた酒好きらしい。だが、森の中にいながらこちらの動向を把握していることに、背筋がくりと冷える思いがした。


 ****** 
 鎮守の森の手紙の内容です。
 #######
 ホーミィー村の相談役パラケルへ
 ルプラとマジャリスから話は聞いた。早急にローセアを使いによこす。両者の今後のことを考慮し、弟子と共に訪問されたし。この領域を任される主位格として、一度その面や考えを確認する必要があるだろう。
 お前も、弟子と共に新たな創造もしているようだな。研究も進んでいることはなによりだ。弟子が酒を造っているようだ、とお前付きのルプラから聞いた。使いに出した彼女《ローセア》は類もなく酒が好きだ。新しい酒なら祝福をするだろう。ローセアの判断にもよるが、弟子への付妖精として、使役も許可としておく。
 マジャリスの報告では弟子が色々とやらかしているようだな。影響が大きくなる前に、判断を下そう。こちらに来訪する時は、弟子が作成した物の全てを持ってくるように。その影響力を考える必要があるだろう。その中で酒は必須だ。マジャリスからは城郭都市で葡萄酒も入手していると聞く。蒸留もするであろう?試作ではなくしっかりとしたものをな。来訪は出来てからで良い。手土産とするがよい。
 鎮守の森を統べる者より
 #######


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