巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1G-酒精と層菓

1G-08 辺境の盟約

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 妖精のルプラとローセア、そしてパラケル爺さんと自分。気づけばパラケル家は一気に女子率が高くなった。妖精たちはもう姿を隠すのをやめたのか、ソファーに優雅に寝そべりながら小さなグラスで酒を嗜んでいる。聞けばすでに成人しているという。

 パラケル爺さんは、自分が造ったアクアヴィーテ《ロセアスティル》をロックでちびりとやりながら、ゆったりと語り始めた。

「これはエリスから聞いた話だ。城郭都市の前身、建築当時の話だな」

 百年ほど前、冒険者上がりの英雄アルブム・パールが王に認められ、一代男爵となった。だが辺境伯の承認を経ずに領地を拝命したため、政治的には微妙な立場に置かれた。王命に逆らえず、彼は魔の森の外縁部を切り開き、仲間や農民と共に都市を築き始めた。氾濫に襲われても最強の冒険者パーティーが撃退し、土塁を築いて守りを固めた。やがて集落は村から町、都市へと発展し、パール家は辺境伯へと昇格にまで昇格した。

 だが建築の最中、隣接する東の森に異変が起きた。強力な魔物が居座ったと噂されたが、実際は北から移ってきたエルフの部族だった。討伐に向かった冒険者たちは命こそ助かったものの、精神魔法で言動を封じられて帰還した。領主アルブムは戦いではなく交渉を選び、東の森を不可侵領域とする代わりに、魔の森への共同戦線を提案した。エルフはそれを受け入れ、対等の証として一人の協力者をヒト族に派遣した。それがエリスである。

 以後、東の森は「鎮守の森」と呼ばれ、不可侵の掟が敷かれた。ホーミィー村はその窓口として建てられ、村長は代々パール家の遠縁が務め、交易はベルナル商店が担ってきた。

「だからお前が拉致された時、村もギルドも領主一族も慌てたのだ。鎮守の森の近くでの事件は、エルフを刺激しかねないからな」

 ここでルプラが口を挟んだ。
「エルフは警報魔導具を設置している。ヒト族は結界と呼んでいるけど、実際は迷いと混乱を誘う精神魔法だよ。迷い込んだ人はエルフがそっと人里に返す。ヒト族がエルフを売買してきたから、昔から対策しているんだ」

 さらに話は続き、族長ヒスビートゥスがハイエルフであり、妖精化に近い存在であること、そして「主」と呼ばれる存在――主位テトラフィーラが魔の森と鎮守の森を統べていることが明かされた。

 自分は族長と主が同一人物だと思っていたが、どうやら違うらしい。エルフの政治的な顔と森そのものを律する存在。二つの権威が重なり合って、この地を守っているのだ。


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