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1H-鎮守と毒性
1H-20 置き土産と新たな旅路
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里を出るときには、思いもよらぬ大事となっていた。
到着したときは門番だけの素っ気ない対応だったのに、帰りは族長をはじめ、里の総出での見送りとなった。
「我だけでなく、里全員がレッドの行動に感謝しきれないほどの恩がある。薬草や鉱石、醸造酒を集めておいた。この方がお主は喜ぶだろう? これからは森に自由に入って素材を回収できるように計らおう。改めてこの指輪を渡す。我の名が刻んであるので全域での採取が可能だ。さらに発掘した古代の魔導具も報酬として渡す。これはパラケルと相談せよ。手紙も用意した。辺境伯家と学院への推薦状だ。学院へは我の力は及ばぬが、多いに越したことはない。主様の分も含んである」
族長の言葉は重くも温かく、胸に深く響いた。
「レッドよ。然る方からの言葉は覚えているな? まずは力をつけるのだ。理想を語るにも、この地では力が必要だ。武でも魔でもよい。身を守る術を学び、装備を整えよ。王都に行くまで半年はある。パラケルよ、頼んだぞ」
「了解しました。ワシは武はからっきしだが、魔術と魔力操作は教えられる。帰ったら教授を再開しよう」
そのとき、杖を通じてテトラフィーラ様の声が響いた。
『レッドよ。何かあったときは連絡をしろ。アレの範囲なら、この王国全域は届くはずだ。距離に応じて魔素の対価はあるがな』
自分は小さくうなずき、了承を示した。
エリスさんは族長と抱擁を交わし、パラケル爺さんは門のエルフや加工所の者たちと何やら話している。
「それでは皆さん、お元気で」
振り返れば、エルフたちの見送りは、自分たちの姿が森に消えるまで続いていた。
♢♢
レッドを見送った後も、里の者たちはしばらくその場に立ち尽くし、胸に感謝の念を抱いたまま動けずにいた。
「見送りはここまでで良いだろう。さあ、仕事を再開しよう。彼らの置き土産もある。今日の労働が終わったら、一家ごとに集会所に来てくれ」
ヒスビートゥスの声に従い、村人たちは散っていく。残ったのはヒスビートゥス、テトラフィーラ、フォミトリアの三人だった。
「レッド君には、どんな試練が待っているのでしょうか?」
「スキルを活かして各地を底上げすると聞く。すでにアドミスタ、ドミナルへの神託は下っている。小僧の素質を疑う者もいるだろうが、主神の意向に逆らうことはない。妾も少しでも手助けできればよいが」
「エルフ族にとっては十分な働きをしてくれた。置き土産まで残していくとは……まるで次世代を育めと言っているようではないか」
「人数分を揃えているあたりが、レッド君らしいわね。しかも効果が大層なものばかり」
「偶然ではなく、思考の根底にあったのだろう。クリスプスの効果が体力と強精とはな」
「メディカターリで胃腸を癒し、クリスプスで滋養と強壮。すでに魔術師というより、一端の薬師だ」
「ふふ。レッド君の心遣いが見えるようだわ。娘は十分な経験を積めそうね」
彼らは笑みを交わし、次なる作業――サゴの発酵の解析へと向かった。
新たな酒。サゴ酒への期待が上向く。
♢♢
ホーミィー村に戻ってからは慌ただしかった。従者として同行したリンネは、自分と同室を主張したが、両親とマリンに却下され、結局はマリンと同室となった。ベルナル家で一泊し、翌日は城郭都市でパール家との報酬の話が待っている。族長とテトラフィーラ様からの手紙も携えていた。
「また私は置いて行かれるの? たまには城郭都市に一緒に行きたい」
マリンは涙目で両親に懇願し、折衷案として城郭都市までは同行し、ギルドの叔父のもとで待機することになった。
翌朝、馬車置き場に行くと、エリスさんとパラケル師が待っていた。二人は腐れ縁だと言うが、ただの仲間以上の絆を感じさせる。豪華な護衛付きの旅に、マリンは大喜びだった。
両親は御者席、パラケル師とエリスさんは後部に控え、自分とリンネ、マリンは馬車の中央に座る。
「なんか旅行みたいだね。ベンベルクは久しぶりだし、楽しみ」
「マリン様。今回は仕事の行事ですよ」
「リンネ、硬いわよ。昨日までの話で、マリンでいいって言ったじゃない」
「リンネ。自分たちは地位の高い人間じゃないよ」
「ですが、レッド様はエルフの里の恩人です。それを敬わずしてどうするのですか」
「でも、こんな調子は続かないよ。仲間
として、もっと対等にしてほしい」
「……レッド少年もそう言っているわ。通常の調子でいいのよ」
「エリス様……では、レッド。これでよいかしら」
「まだ硬いけど、まあいいか」
馬車はゆっくりと城郭都市へ進みだした。
エルフの里から託された素材と魔導具の話をしながら、自分はこれからの展開に思いを馳せていた。
一章 ポーションの万能性 完
到着したときは門番だけの素っ気ない対応だったのに、帰りは族長をはじめ、里の総出での見送りとなった。
「我だけでなく、里全員がレッドの行動に感謝しきれないほどの恩がある。薬草や鉱石、醸造酒を集めておいた。この方がお主は喜ぶだろう? これからは森に自由に入って素材を回収できるように計らおう。改めてこの指輪を渡す。我の名が刻んであるので全域での採取が可能だ。さらに発掘した古代の魔導具も報酬として渡す。これはパラケルと相談せよ。手紙も用意した。辺境伯家と学院への推薦状だ。学院へは我の力は及ばぬが、多いに越したことはない。主様の分も含んである」
族長の言葉は重くも温かく、胸に深く響いた。
「レッドよ。然る方からの言葉は覚えているな? まずは力をつけるのだ。理想を語るにも、この地では力が必要だ。武でも魔でもよい。身を守る術を学び、装備を整えよ。王都に行くまで半年はある。パラケルよ、頼んだぞ」
「了解しました。ワシは武はからっきしだが、魔術と魔力操作は教えられる。帰ったら教授を再開しよう」
そのとき、杖を通じてテトラフィーラ様の声が響いた。
『レッドよ。何かあったときは連絡をしろ。アレの範囲なら、この王国全域は届くはずだ。距離に応じて魔素の対価はあるがな』
自分は小さくうなずき、了承を示した。
エリスさんは族長と抱擁を交わし、パラケル爺さんは門のエルフや加工所の者たちと何やら話している。
「それでは皆さん、お元気で」
振り返れば、エルフたちの見送りは、自分たちの姿が森に消えるまで続いていた。
♢♢
レッドを見送った後も、里の者たちはしばらくその場に立ち尽くし、胸に感謝の念を抱いたまま動けずにいた。
「見送りはここまでで良いだろう。さあ、仕事を再開しよう。彼らの置き土産もある。今日の労働が終わったら、一家ごとに集会所に来てくれ」
ヒスビートゥスの声に従い、村人たちは散っていく。残ったのはヒスビートゥス、テトラフィーラ、フォミトリアの三人だった。
「レッド君には、どんな試練が待っているのでしょうか?」
「スキルを活かして各地を底上げすると聞く。すでにアドミスタ、ドミナルへの神託は下っている。小僧の素質を疑う者もいるだろうが、主神の意向に逆らうことはない。妾も少しでも手助けできればよいが」
「エルフ族にとっては十分な働きをしてくれた。置き土産まで残していくとは……まるで次世代を育めと言っているようではないか」
「人数分を揃えているあたりが、レッド君らしいわね。しかも効果が大層なものばかり」
「偶然ではなく、思考の根底にあったのだろう。クリスプスの効果が体力と強精とはな」
「メディカターリで胃腸を癒し、クリスプスで滋養と強壮。すでに魔術師というより、一端の薬師だ」
「ふふ。レッド君の心遣いが見えるようだわ。娘は十分な経験を積めそうね」
彼らは笑みを交わし、次なる作業――サゴの発酵の解析へと向かった。
新たな酒。サゴ酒への期待が上向く。
♢♢
ホーミィー村に戻ってからは慌ただしかった。従者として同行したリンネは、自分と同室を主張したが、両親とマリンに却下され、結局はマリンと同室となった。ベルナル家で一泊し、翌日は城郭都市でパール家との報酬の話が待っている。族長とテトラフィーラ様からの手紙も携えていた。
「また私は置いて行かれるの? たまには城郭都市に一緒に行きたい」
マリンは涙目で両親に懇願し、折衷案として城郭都市までは同行し、ギルドの叔父のもとで待機することになった。
翌朝、馬車置き場に行くと、エリスさんとパラケル師が待っていた。二人は腐れ縁だと言うが、ただの仲間以上の絆を感じさせる。豪華な護衛付きの旅に、マリンは大喜びだった。
両親は御者席、パラケル師とエリスさんは後部に控え、自分とリンネ、マリンは馬車の中央に座る。
「なんか旅行みたいだね。ベンベルクは久しぶりだし、楽しみ」
「マリン様。今回は仕事の行事ですよ」
「リンネ、硬いわよ。昨日までの話で、マリンでいいって言ったじゃない」
「リンネ。自分たちは地位の高い人間じゃないよ」
「ですが、レッド様はエルフの里の恩人です。それを敬わずしてどうするのですか」
「でも、こんな調子は続かないよ。仲間
として、もっと対等にしてほしい」
「……レッド少年もそう言っているわ。通常の調子でいいのよ」
「エリス様……では、レッド。これでよいかしら」
「まだ硬いけど、まあいいか」
馬車はゆっくりと城郭都市へ進みだした。
エルフの里から託された素材と魔導具の話をしながら、自分はこれからの展開に思いを馳せていた。
一章 ポーションの万能性 完
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