俺のせいでえっちな呪いにかけられた同僚騎士に責任を取りに行ったら、与えられたは夜通しの⋯説教!?泣いた

春瀬湖子

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番外編

それは在りし日の-3

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地面に叩きつけられた音と衝撃は本物だったが、何故かどこも痛くなく⋯

“致命傷を負った時は逆に脳が痛みを感じないようにするとは聞いた事があるから、それか⋯?”

なんて考えてみるが。


「動く、な⋯?」

先輩を体に乗せたまま地面に寝転がっている俺はそっと手を動かして唖然とする。

“衝撃は確かにあったんだがー⋯”

「う、わ、ぁぁあ!?」
「魔獣かッ!?」
「ぐえっ」

完全に意識を持っていかれていた俺は、頭上からの叫び声にハッとするが避ける時間はなく。
俺に覆い被さるようにして意識を失っていた先輩の上にナニカが落下した。


――そして、そのナニカの正体は⋯


「ロッカ⋯!!?」
「あ、良かった無事だった!?俺の強化魔法間に合ったんだね⋯っ」

“強化魔法⋯?”

言われてぽかんとロッカを見た俺は、彼の瞳が赤紫色であることに初めて気付く。


「炎と⋯強化の適性⋯」
「あ、うん。炎はこの間失敗しちゃったけど、強化は成功して本当に良かったや!」

にひっ、と笑ったロッカをぼんやりと眺めていた俺は、すぐにハッとした。


「おい、どけ⋯!お前先輩に刺さってるぞ!」
「ひょえっ!」
「というかその強化魔法とやらは俺だけか!?先輩にもかけてるのか!?」
「うぇっ、先輩には⋯かけて、ないけど⋯その、漏れた分がかかってる、かも⋯?」

“漏れた分ってなんだ!?”

と思ったがそこはツッコまないでおく。
慌てておりたロッカと一緒に先輩の様子を確認すると、どうやら意識を失っているだけで呼吸の乱れなどもないようだった。


「漏れてたか、良かった⋯!」

なんて真剣な顔で言うロッカがなんだか可笑しく、くすりと笑いが込み上げるが⋯
もちろん今笑っている場合などではなく。


「お前上から降ってきたよな、魔獣はどうした!?」
「あ、うん。叫び声が聞こえて走ってったら落ちていく二人が見えて強化魔法をかけたんだ。魔獣は、今俺の相方になってくれている先輩が戦ってくれてる」
「相方のお前がここにいるってことは、今先輩は1人なのか⋯!?」


きっと今までの俺ならばそんな言葉は出なかっただろうが、ついさっきその自分の考えや驕りのせいで先輩に庇われロッカの強化魔法で命を救われたばかりだった為かそんな言葉が出る。


「⋯ッ、ん?」

丁度そのタイミングで目を醒ました先輩は、俺と、そしてロッカを見て目を見開いた。


「なんっでお前がここにいるんだ!」
「すみません、これは俺のミスで⋯」
「まさかこれも全部エイベルのせいなのか?」
「⋯は?」

苛立った視線は俺ではなくロッカに向けられる。

“こいつのせい⋯?”

何言ってるんだと呆然とした俺は、目醒めたばかりで興奮している先輩とビクリと肩を跳ねさせたロッカを一瞬眺めてしまいー⋯


「す、すみませ⋯」
「やっぱりお前のせいなのか!?この疫病神!その運の悪さのせいか知らんが、そもそも魔獣が他の魔獣を使ったり協力したりとかしないんだ!それなのに⋯」
「ちょ、ちょっと待ってください!あれは俺のミスでしたしこいつは助けに来てくれただけで⋯」
「助け!?エイベルが近くにいたせいで巻き込まれてこうなったんじゃないのか!?だってこいつは、何も出来ない厄介者なんだからな⋯ッ」
「ッ!」


怒鳴るように叫んだ先輩は、そのままロッカをドンッと押す。
バランスを崩したロッカはそのまま後ろにひっくり返――った時に無意識に掴んでしまったのか、近くにいた俺のズボンごと転がりずるりと俺の下半身が露出した。


「疫病神のお前のせいで⋯⋯、ぶっ」


怒りの収まらない先輩は尚も怒鳴ろうとし⋯ぶらぶらとさせている俺を5度見くらいの勢いで股間と顔を見比べ吹き出した。

「あの、お言葉ですが今回の件は俺に責任があると思います。それにロッカが強化魔法をかけてくれたからこそ、今俺達は無事でいられるのでは?」
「⋯そもそもの原因がそいつじゃないのかって言ってるんだがとりあえずお前はズボンを履け」
「そもそもの原因は俺だと言ってるんですが」
「俺は先にズボンを履けと言ってるんだがな」

暫く謎の言い合いをした俺と先輩を呆然と見ていたロッカが突然慌てたように立ち上がり俺の下半身の前にしゃがみこんだ。

「ご、ごめん⋯っ!すぐ履かせるから!」
「は?ちょ、待ていい、履かせなくていい!」
「えっ!?は、履かないの⋯っ!?」
「いや違う、露出趣味とかがある訳じゃない、頼む俺の股間の前にしゃがんで上目遣いで俺を見るな⋯っ!」

俺は普通に女が好きだし男に対して何かを感じるわけではない⋯はずなのだが、流石に至近距離で見られながら、少し潤んだような上目遣いを向けられると何かしら感じるものもある訳で。

「?」

“そこで小首を傾げるな⋯!”

俺のズボンを掴んだまま履かせていいのか履かせない方がいいのか迷っているらしいロッカに俺も戸惑っているとー⋯


「ぶっは、⋯くくっ、え!?な、なに、何これどういうことだ!?」
「副団長!」
「崖から落ちたって聞いたんだが、え!?お前ら3人そういう関係だったのか!?」
「え?えっ!?」
「そういう関係、とは?」
「ま、待ってください副団長!3人って俺も入ってるんですか?どのポジションで入ってるんですか!?」


助けに来てくれただろう副団長の登場でこの場の雰囲気がとうとう崩壊してしまった。



その後は状況を確認したい、と言われ団長室へ連れられた俺達は一人一人話を聞くという事で扉の外で並ばされていて。

先に呼ばれた先輩が団長室に入った為に俺とロッカが隣に並ぶ。


「⋯その、ごめんね」
「?何の謝罪だ?ズボンの事か?」

少し気まずそうに俯いているロッカを見ていると、ぽつりと溢すように話し始めた。

「ズボンもその、そうなんだけど⋯先輩も言ってたでしょ?疫病神って⋯」
「はぁ?」
「俺のせいであんなことになったのかも⋯」
「んな訳ないだろう」


何をどう考えたらそんな結論になるかわからない俺は思わず怪訝な顔を向けてしまう。

「あれはどう考えても俺のミスだった。お前は助けに来てくれただけだろう。現に俺は助かってるよ、ありがとう」
「――っ!」
「ズボンの件はただの事故だろ?脱げたなら履けばいいだけだ。ロッカが気にする事ではない」
「あ、ありがと⋯」
「お礼を言ったのは俺のはずなんだがな」


何故お礼を言われたのか理解できず、思わず眉をひそめた俺はロッカをじっと見ているとー⋯


「⋯でも、その、嬉しかったんだ!」
「どこがだ」
「どこがだ!?⋯え、えっと、だってその⋯疫病神って言われなかったから?」
「はぁ?」

“なんだそれ、疫病神って言われなかったって”

そんなアホらしい理由を言われた俺は何故だか無性に苛立って。


「そもそもだな、何故疫病神だなんて言われて何も言い返さないんだ?」
「だってその、本当の事かな⋯って」
「つまりお前は神なのか?」
「神!?なんかランクアップした!?違うよ!?俺は神じゃないよ!?」
「⋯ふ、知ってる」
「⋯!」

“⋯っと”

思わずロッカの反応で笑ってしまった俺は、咳払いで誤魔化しながら話を続けた。


「助けに来たのに、疫病神だなんて言われたならば怒ればいいだろ」
「でも⋯」
「でもじゃない。何故そんなに自信がないんだ?お前がいなかったら俺は死んでたかもしれないんだぞ」
「⋯⋯⋯」
「助けたお前がそんなに不安げだとこちらも困るだろう。そんな態度だから周りからもバカにされるんじゃないのか?魔法師とはいえ騎士団に入ったならだなー⋯、ッ」

ついいつもの癖で説教じみた事を口走っていた俺に、ズズッと鼻をすする音が聞こえて。

「な、何故泣く⋯!」

気付けば鼻水を垂らして泣いているロッカがそこにいた。


“な、なんでこうなった!?俺が泣かせたのか?威圧的だったのか!?説教がうざかったのか!?”

内心焦るが、そんな俺にお構い無しに泣いているロッカは俺を見上げて泣きながら笑って。


「お説教も嬉しい!」
「⋯説教が?」

“俺の言い方や説教は、先輩や同僚に煙たがられることばかりだったんだがな⋯”

嬉しい、と笑うロッカに戸惑う。


「⋯何もしなくていいとか、しても無駄とか。こっちに来るなとかさ」
「⋯俺は、来てくれて助かったけどな」
「ほらっ、すぐまた俺を喜ばせる⋯!」


正直どこがどうこいつを喜ばせたのかはちゃんと理解した訳ではなかったが。


「俺のダメなところを指摘してくれるって、俺に改善のチャンスをくれてるって事だろ⋯?それをわざわざ教えてくれるなんて、クラレンスくんって親切なんだね」
「親切⋯?」


それでも嬉しそうに顔を綻ばせられると、そんなつもりじゃないとか言えなくなってしまって。


「⋯俺、せめて一人前になれるように頑張るよ⋯!」
「そうか」


気の利いたこと1つ言えず、ただ俺は頷いた。


“こいつは、優しいんだな”

それはお人好しとも取れるし、愚かでもあると感じたがー⋯
不思議と不快ではなくて。


俺もお前みたいになれるだろうか。
優しく包める人になれるだろうか。


いや、なれないな。
この性格は直らないし直さない。

“だが、俺は俺として⋯もっと周りも見れるようになるべきだな⋯”


亡くなった父も、片腕を失った兄も相方の不満は言わなかった。

それは『言う価値がない』のではないのかもしれないと少し思い直して。

“⋯もし俺の相方がこいつで、そして俺が致命傷を負ったとしたら⋯”


魔獣から逃げるために崖から飛び降りるしかなかった俺とは違い、俺に強化魔法をかけるために崖から飛び降りたロッカ。

もしこいつなら、仇を取る為に単身でも乗り込むかもしれない。



――仇は取った、と言った父の相方だった魔法師の顔を、何故かその時の俺は思い出したような気がした。



それから間もなくして、ロッカは相方の騎士のお尻に杖を突き刺したとかなんとか、よくわからないような理由で解消された。

“どうやったら尻に⋯?”
と思わなくもないが、その頃の俺は今までの考えを改めて魔法師との協力戦闘の仕方を学んでいて。


「おいキャロン!俺は待機と言っただろう!?」
「聞こえてましたが、突撃する方が効率的だと判断しました」
「なんで!?ねぇなんでまた勝手な判断しちゃったの!?」
「俺に危険が迫ったら、先輩の攻撃魔法でフォローして貰えると信じたからです」
「信じ⋯っ!?あ、そ、そぉ⋯?ならいいんだけどぉ⋯」


“効率のいい連携の仕方を学んで、早く先輩の相方を卒業しなくてはな”

ちゃんと実力をつけて、経験も積んで。
そしていつか俺があいつの相方になる為に。


「⋯俺の考えを根本からかえた責任、とってもらわなくてはな」




――そんな俺が、ロッカを『エイベル』と呼ぶようになるのも、唯一無二の相方になるのも⋯

そう遠くない、未来の話――
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