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 今思えば、杏にとって俺のぱんつとは精神安定剤みたいな役割もしていたのかもしれない。


「……ん、ぁ……?」

 夜中、ベッドで寝ていると何か下半身に違和感を感じる。

“なんだ?”

 半分寝惚けながら部屋を見渡すが俺しかいない。
 杏は今頃リビングのソファで寝ているはず。

 ぼんやりしながら、そっと布団を捲った俺の目に飛び込んできたのは。


「触手っ!?」

 ギョッとし一気に覚醒する。
 ハッとして扉を見ると、少しだけ開いた隙間から確かに杏の触手が伸びていて。

「な、こいつ……っ」

 グリグリと触手の先端で俺の股間がぱんつの上から刺激される。
 あり得ないのに、やはり俺も男だからだろうか。

 執拗にそこを刺激されるとどうしても質量を増してしまうのは仕方ない訳で。

“くそ、5日何もなかったから油断してた……っ”

 ぐちぐちとぱんつの上から粘り気のある音が響く。

「っ、ぅあ……っ」

 まるで竿を擦るように動く触手は、的確にカリを刺激して。

 ぢゅう、とぱんつの上から強く吸われる感覚に体が跳ねた。

“そんなことも出来んのか……!?”

 冷静に考えてみれば、伸びたり掴んだりが出来るのだ。
 形状を自在に変えられるならそういった使い方が出来てもおかしくない、おかしくないんだが――


「……っ、ぁ、そこ、ひゃ……!」

 ぱんつの上から俺の先端を吸い、尿道をグリグリと強く擦る触手とは別の触手が、今度はぱんつの隙間からスルリと入り俺の肛孔を軽くつついた。

“そこは……!”

 形状変化し、まるで口のように吸ったりグリグリと刺激出来るのだ。
 ならば謎の体液を出すことも可能だったのだろう。


「ぅああ……ッ!?」

 熱い何かがトロリと塗りつけられ腰がビクビクと震える。
 なんとか引き剥がそうと触手を精一杯掴んでみるが、力が入らず軽く握るしか出来なくて。

“体に無害な成分なんだろうな……っ!?”


「やぁっ」
 
 何かわからない粘液を塗りたくられ、そのままぐちゅぐちゅと音を出した触手は、俺の肛孔を抉じ開けるようにぬぷりとゆっくり入ってきた。


“そこは入れるとこじゃ……!”

 苦しいほどの圧迫感に息を詰める。
 塗りたくられた粘液に痛みを抑える効果でもあるのか、痛みはなくて。

「ふ、ぅ……っ!」

 こうなってくると、ぱんつの上からしか刺激されない竿の方がもどかしくもあり――

“って、何を考えてるんだ俺は!”

 直接刺激されたい、だなんてことが一瞬でも頭を過ったことにカアッと一気に顔が熱くなるのを感じた。

 その間も、後ろを弄る触手は止まることはなく、ぬぷぬぷと抽挿されナカを擦られる度にゾクゾクとした快感が体を駆け巡る。


“媚薬成分も入ってんのか……!?”

 ぢゅぷぢゅぷと卑猥な音を響かせながら前も後ろも刺激された俺は、挿入された触手が奥をグリッと抉られ呆気なく吐精してしまって。

「ぁ、あ……っ」

 前を弄っていた触手は、ぱんつ越しに精液を出されたことを察したのだろうか。
 その時はじめてぱんつの中に侵入し、ちゅうちゅうと噂に聞くお掃除フェラのようなことをしてからスルスルと部屋から触手が出ていった。


「……さいっあく」

 最後の一滴まで吸われたとしても、ぱんつの中で出してしまったせいでぬちぬちとして気持ち悪く、そして後ろを弄りながら塗りたくられた粘液は未だに残ったまま。

“掃除すんならピカピカにしてけ”

 なんて、どこか放心しながらそんなことを考えていた。

 


「……は? 覚えてない?」
「え?」

 何を考えているのだと翌朝詰めよった俺に返ってきたのは、きょとんと戸惑ったような顔だった。

“本当に記憶にないのか?”

 あんだけ弄くり回されたのだ。
 嘘つけと言ってやりたいところだが、ここで嘘をつくメリットは杏にはなくて。

“まさか昨日脱ぎたてぱんつを取り上げたせいで……”

 脱ぎたてぱんつがこの5日間の平穏な睡眠を守っていたのかと気付いた俺は思わず項垂れる。

「雅乃?」
「あー、いい。わかんねぇならなんでもないわ」

 流石に昨晩の情事を口にするのは憚られた俺は曖昧に流して。

「今日は、その触手でどんなことが出来るのか実験させてくれ」
「うん、わかったよ!」

“くそ、にこにこすんなよ”

 まるで花が綻ぶような可愛い笑顔を向けられドキリとする。
 
 杏の主張通りなら番らしい俺。
 そんな俺の好みの顔で現れたというのなら、この笑顔に弱いことも仕方ないのかもしれないと無理やり納得したのだった。

 

“今日も洗濯してきたが……”

 昨晩色々されたからと言って、なら脱ぎたてぱんつを献上することができるはずもなく。

「鍵閉めておけば大丈夫、だよな?」

 然り気無く昼間に確認した、触手で出来ることを思い出す。

 杏によれば、触手は体の一部だから痛覚があるというのと、その『体の部位を真似れる』ということだった。

「手と同じように皿が掴めるように、口と同じで吸えるってことな」

 昨晩ちゅうちゅうと吸われたことを思い出す。
 じゃあ吸いながら尿道をグリグリ押したのは舌もどきだったということか、と考え尻に突っ込まれたものは。

 そこまで想像し、ぶるりと体を震わせた。

「考えんのやめとこ……」

 世の中知らぬが仏って本当だと思う。


“あの意味わかんねぇ粘液は”

 エイリアンなら当たり前のように作れるのかもしれないし、もしかしたら何か特殊なことが起こっているのかもしれないが、残念ながら聞くのが憚られたため聞けず仕舞いだった。

 だがまぁ、酸でもないんだ。
 鍵さえかけていれば、と考えた俺は寝室の鍵がちゃんとかかっているのを確認し今晩こそ寝れると思って――


 ――ガチャン、と鍵が開いた音に気付く。

“は? なんで……”

 想定外の出来事に唖然とした俺は、ゆっくり開く扉にビクッと肩を跳ねさせ、そして部屋に入ってきた触手の先端が鍵の形に変化していることに気付いて。

「う、嘘つき野郎……! 出来るのは体の部位を真似る、だったろっ」

 だがまぁ、舌にも指にもなるのだ、形状を変えれば鍵の形を保つことくらいできるか? なんてどこか冷静に考えて。
 
 
「……ぅん、ぁあっ」


 その晩もまた、ぱんつの上からぐちゃぐちゃにされたのだった。
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