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1.マッチングは条件だけでするべきではない
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政略結婚なんてものがあったのは遠い過去。
今では王族が国同士の親交の為にする時くらいしかなく、貴族に生まれたとしても何も不自由なく自由恋愛が楽しめるようになった、そんな時代。
“ご自由にどうぞ”なんてご時世になった結果逆に婚約者が出来ず、恋愛から遠ざかる人が増えた。
結婚したいけど相手がいない、自分に合う人がわからないーー⋯
下がる結婚率、進む少子化。
困り果てた国が出した新しい政策、それが『マッチング貴族』⋯!!!
「マッチング貴族って、ほんっとふざけた名前よね⋯」
なんて思わず呟くのは私こと、メイデン伯爵家の次女・レイラである。
魔法学園での成績が良かったせいで、やたらと喧嘩を売られことごとく返り討ちにしたせいか、花盛りの18歳を4年も過ぎた今もしれっと相手が出来ず⋯⋯
ふざけた名前だなんて思いながら、この『マッチング貴族』に登録した1人だ。
このマッチング貴族、名前こそパッパラパー感あるものの実情は国が管理している“ちゃんと身元が判明している”人限定で登録でき、しかも事前に出してあった希望に基づいて相性ピッタリの相手と出会わせてくれるというもので。
“しかも魔法で相性確認まで事前にしてくれるから、心も体も相性100%の相手と出会えるって評判なのよね⋯!”
結婚率の低下による少子化という、国にとってかなり厳しい問題を打破する為にふんだんに予算が充てられた結果のこの信頼性。
名前は本当にふざけているが、それでも期待に胸が膨らむのも仕方ないってもので。
そして記念すべき今日、マッチングしたと連絡を貰い王城へ来ている訳で⋯!
「ど、どんな人かしら⋯!?」
少しそわそわしつつ、王宮メイドに案内された部屋で運命の彼が来るのを待っていた。
そして叩かれる運命の扉、開かれた先にいたのは⋯⋯⋯!
短めの赤い髪に濃い灰色がかった瞳は散々見てきた⋯⋯
「な、ん、で、アンタなのよ!?」
「それは俺のセリフなんだが!」
魔法学園時代、やたらと喧嘩を売ってきたまさにその人、カザムージ伯爵家の三男、カイルだった。
“「いやいやいや!こいつと相性ピッタリとかないから!世界が終わってもないから!」”
「心の声のつもりか!?がっつり聞こえてんだよオブラートに包め!」
「あえてよ!」
「あえてかよ!」
いがみ合うようににらみ合い、そしてどちらともなくため息を吐いた。
どう考えてもまさに“犬猿の仲”だった私達の相性がいいなんてはずはなく⋯
「俺は優しくて聡明で、それでいて騎士という職業に最低限理解のある長子以外を依頼したのに⋯」
「優しくて聡明⋯?アンタに売られた喧嘩を全部買ってあげる優しさに返り討ちにするだけの聡明さ⋯。まさしく私じゃない!」
「はぁ!?」
「ついでに兄も騎士だからそこの理解もある次女よ」
「お前だな」
思わず納得し顔を見合せぽかんとする。
「アンタからはバッチリでも私は違うわ、私は真面目なのにちょっとお茶目なところもあって、あと兄が騎士だから最低限体を鍛えている人が良いって依頼したのに⋯」
「真面目なのにお茶目⋯?真面目に努力したのに勝てなくて勝負を挑んで負けちゃうお茶目さを持ってる、まさしく俺の事じゃないか!」
「はぁ!?」
「ついでにお兄様にはいつも世話になってる後輩騎士だ!」
「アンタだわ」
今度はお互い納得して、やはりまたぽかんと顔を見合せた。
「「⋯⋯⋯。」」
どうやら性格は置いておいて、条件はまさにお互いピッタリ合致しているようで⋯
“それに、マッチング貴族は事前に魔法調査で心も体も相性ピッタリ、なの⋯よね?”
犬猿の仲だったのは魔法学園時代。
つまり4年前⋯。
もしかしたらあの頃よりもお互い大人になり、性格も実は合うなんて事も⋯?
なんて考えたのはカイルも同じだったようで。
「とりあえず試しにデートでもしてみるか?」
「そうね、試しにデートするのも悪くないわね」
なんて私達はひとまず王都に出ることになった、のだが⋯。
「あー、とりあえずオペラでも行くか?」
それは貴族のデートには定番過ぎるほど定番、まさしく安牌という提案なのだが。
「却下よ、好みの演目じゃないわ」
「おまっ、人が折角⋯!」
「じゃあカイルはこれ観たいの?『お馬鹿な男爵とトイレの砂の50連想』」
「正直興味はねぇな⋯」
「でしょ」
“とはいえ⋯”
ザクッと却下したものの、代案があるわけでもなかったので思わず口を閉じた。
代案もなく、折角提案してくれたものを却下だけするって私もしかして最低⋯?
なんて気付き、少し居心地の悪さを感じていると。
「つか、レイラ相手に貴族の畏まったデートとか勿体ねぇな!お前なんてこっちで十分だろ」
なんて突然手を繋がれて。
繋がれた手が思ったよりも優しくて思わずドキリと胸が高鳴った。
“な、なによ、流石は国のマッチングって事⋯!?”
なんて動揺している間に着いたのは王都の広場で。
「今日小さな祭やってるって聞いてたんだが、思ったよりちゃんとしてるんだな」
そこには屋台が何軒も並び、噴水近くでは色んな音楽家達が思い思いに楽器を鳴らしていて。
「折角なので、一曲いかがですかお嬢様?」
「折角だから、一曲踊ってあげますわ騎士様」
恭しくお辞儀をし、差し伸べられた手に自身の手を重ねるとすぐに中央近くまで引っ張られて。
「ちょ、こんなダンス知らないわよっ」
「適当でいいんだよ、音楽だって1つじゃないんだし楽しければそれで!」
なんてニカッと笑顔を向けられる。
ステップも何もかもめちゃくちゃなのに、自由に動きくるりと回されそれがなんだか面白くて。
「ふふっ」
「ははっ」
私達はどちらともなく笑い合った。
今では王族が国同士の親交の為にする時くらいしかなく、貴族に生まれたとしても何も不自由なく自由恋愛が楽しめるようになった、そんな時代。
“ご自由にどうぞ”なんてご時世になった結果逆に婚約者が出来ず、恋愛から遠ざかる人が増えた。
結婚したいけど相手がいない、自分に合う人がわからないーー⋯
下がる結婚率、進む少子化。
困り果てた国が出した新しい政策、それが『マッチング貴族』⋯!!!
「マッチング貴族って、ほんっとふざけた名前よね⋯」
なんて思わず呟くのは私こと、メイデン伯爵家の次女・レイラである。
魔法学園での成績が良かったせいで、やたらと喧嘩を売られことごとく返り討ちにしたせいか、花盛りの18歳を4年も過ぎた今もしれっと相手が出来ず⋯⋯
ふざけた名前だなんて思いながら、この『マッチング貴族』に登録した1人だ。
このマッチング貴族、名前こそパッパラパー感あるものの実情は国が管理している“ちゃんと身元が判明している”人限定で登録でき、しかも事前に出してあった希望に基づいて相性ピッタリの相手と出会わせてくれるというもので。
“しかも魔法で相性確認まで事前にしてくれるから、心も体も相性100%の相手と出会えるって評判なのよね⋯!”
結婚率の低下による少子化という、国にとってかなり厳しい問題を打破する為にふんだんに予算が充てられた結果のこの信頼性。
名前は本当にふざけているが、それでも期待に胸が膨らむのも仕方ないってもので。
そして記念すべき今日、マッチングしたと連絡を貰い王城へ来ている訳で⋯!
「ど、どんな人かしら⋯!?」
少しそわそわしつつ、王宮メイドに案内された部屋で運命の彼が来るのを待っていた。
そして叩かれる運命の扉、開かれた先にいたのは⋯⋯⋯!
短めの赤い髪に濃い灰色がかった瞳は散々見てきた⋯⋯
「な、ん、で、アンタなのよ!?」
「それは俺のセリフなんだが!」
魔法学園時代、やたらと喧嘩を売ってきたまさにその人、カザムージ伯爵家の三男、カイルだった。
“「いやいやいや!こいつと相性ピッタリとかないから!世界が終わってもないから!」”
「心の声のつもりか!?がっつり聞こえてんだよオブラートに包め!」
「あえてよ!」
「あえてかよ!」
いがみ合うようににらみ合い、そしてどちらともなくため息を吐いた。
どう考えてもまさに“犬猿の仲”だった私達の相性がいいなんてはずはなく⋯
「俺は優しくて聡明で、それでいて騎士という職業に最低限理解のある長子以外を依頼したのに⋯」
「優しくて聡明⋯?アンタに売られた喧嘩を全部買ってあげる優しさに返り討ちにするだけの聡明さ⋯。まさしく私じゃない!」
「はぁ!?」
「ついでに兄も騎士だからそこの理解もある次女よ」
「お前だな」
思わず納得し顔を見合せぽかんとする。
「アンタからはバッチリでも私は違うわ、私は真面目なのにちょっとお茶目なところもあって、あと兄が騎士だから最低限体を鍛えている人が良いって依頼したのに⋯」
「真面目なのにお茶目⋯?真面目に努力したのに勝てなくて勝負を挑んで負けちゃうお茶目さを持ってる、まさしく俺の事じゃないか!」
「はぁ!?」
「ついでにお兄様にはいつも世話になってる後輩騎士だ!」
「アンタだわ」
今度はお互い納得して、やはりまたぽかんと顔を見合せた。
「「⋯⋯⋯。」」
どうやら性格は置いておいて、条件はまさにお互いピッタリ合致しているようで⋯
“それに、マッチング貴族は事前に魔法調査で心も体も相性ピッタリ、なの⋯よね?”
犬猿の仲だったのは魔法学園時代。
つまり4年前⋯。
もしかしたらあの頃よりもお互い大人になり、性格も実は合うなんて事も⋯?
なんて考えたのはカイルも同じだったようで。
「とりあえず試しにデートでもしてみるか?」
「そうね、試しにデートするのも悪くないわね」
なんて私達はひとまず王都に出ることになった、のだが⋯。
「あー、とりあえずオペラでも行くか?」
それは貴族のデートには定番過ぎるほど定番、まさしく安牌という提案なのだが。
「却下よ、好みの演目じゃないわ」
「おまっ、人が折角⋯!」
「じゃあカイルはこれ観たいの?『お馬鹿な男爵とトイレの砂の50連想』」
「正直興味はねぇな⋯」
「でしょ」
“とはいえ⋯”
ザクッと却下したものの、代案があるわけでもなかったので思わず口を閉じた。
代案もなく、折角提案してくれたものを却下だけするって私もしかして最低⋯?
なんて気付き、少し居心地の悪さを感じていると。
「つか、レイラ相手に貴族の畏まったデートとか勿体ねぇな!お前なんてこっちで十分だろ」
なんて突然手を繋がれて。
繋がれた手が思ったよりも優しくて思わずドキリと胸が高鳴った。
“な、なによ、流石は国のマッチングって事⋯!?”
なんて動揺している間に着いたのは王都の広場で。
「今日小さな祭やってるって聞いてたんだが、思ったよりちゃんとしてるんだな」
そこには屋台が何軒も並び、噴水近くでは色んな音楽家達が思い思いに楽器を鳴らしていて。
「折角なので、一曲いかがですかお嬢様?」
「折角だから、一曲踊ってあげますわ騎士様」
恭しくお辞儀をし、差し伸べられた手に自身の手を重ねるとすぐに中央近くまで引っ張られて。
「ちょ、こんなダンス知らないわよっ」
「適当でいいんだよ、音楽だって1つじゃないんだし楽しければそれで!」
なんてニカッと笑顔を向けられる。
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「ふふっ」
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私達はどちらともなく笑い合った。
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