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2.楽しい時間こそ一気に過ぎるが本当は嫌な時間こそ過ぎて欲しい
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一曲、なんて言いながらお互い満足するまで踊り、流石に疲れて近くのベンチに腰かける。
日々騎士として訓練するカイルはやはり私よりも体力があるらしく⋯
「ほら」
「ありがとう、悪かったわね」
「別に」
屋台で買ってきてくれた果実水を手渡され思わずすぐに飛び付いた。
こくりと喉を通る爽やかな甘さにホッとし一気に全部飲んでしまって。
“やだ、はしたなかったかしら!?”
ハッとしてちらりと横目でカイルの様子を窺うが。
「はは、そんな喉渇いてたのか?ほら俺のも飲んでいいぞ」
気にしていないどころかむしろ好感度が上がったかのような笑顔に意表を突かれた。
「あ、ありがとう⋯」
“流石は国のマッチングね⋯!?”
「流石国のマッチングだなぁ⋯」
「!!?」
ふと思ったことをしみじみと言われ思わず肩が跳ねる。
勢いよくカイルの方を見ると、少し目を丸くした彼と目が合って⋯
「あ、いや⋯今のはだな、あー⋯その。必死に飲む姿が可愛いな、と思ってだな⋯」
「は、はしたないじゃなくて!?」
“か、可愛いの⋯!?”
いや私は確かに伯爵家として磨かれてきたし割と可愛い方だと自負してたりしますけど!?
なんて思わず脳内でパニックを起こすが。
「魔獣の赤ちゃんみたいで、つい」
「それ誉めてる?」
「いや見た目の話だ!」
「見た目の話ですって!?」
想像していた可愛さじゃなかったことに物凄く苛立った。
“まさか魔獣なんて言われるなんて⋯!”
とイライラする私のご機嫌を取ろうと慌てて買ってきた串焼きを見てため息を吐く。
「⋯私、空腹で苛立ってるんじゃないんだけど?」
「魔獣の赤ちゃんって見た目は本当に可愛⋯いや、俺の失言でしたスミマセン」
気まずそうに少ししゅんとしながら謝罪され、なんだか胸の奥がくすぐられる。
仕方ないわね、なんて言いながら彼の持っている串焼きを受け取った。
「へぇ、花とかも売ってるのね」
休憩した私達は散策がてらお祭りを堪能していると、鮮やかな花達が目に入り思わずそう呟く。
それはてっきり食べ物や飲み物を売っているお店ばかりが出店していると思っていたからの感想であり、別におねだりとかではなかったのだが⋯
「その花一本」
「え!?」
私の視線の先の花をさらっと買ったカイルに焦る。
そんな私とは反対に、代金を支払い花を一本受け取ったカイルは⋯
「高価な装飾じゃなくて悪いな」
なんて微笑みながら、私の髪にそっとその花を挿してくれて。
思わず顔が赤くなったのを自覚した。
「に、似合うかしら⋯?」
なんて少し照れながら聞くと、そのままこくりと頷かれる。
近くの窓に反射し写った自分の姿をこっそり盗み見て、自身の淡いレモンイエローの髪にカイルが選んでくれた赤い花が映えると小さく笑みが溢れた。
“それにこの赤、カイルの赤髪に似てるわね”
なんて考え思わず足を止めてしまう。
その考えはまるで自分とカイルが並んだ時を想像したように感じ、また頬が熱くなった。
「どうかしたのか?」
「え?あ、別に⋯」
慌てて誤魔化そうとするが、誤魔化されてくれない彼は少し怪訝な顔をしていて。
「つ、次!どこに行くのかなって思っただけよ!」
苦し紛れにそう言ってみると、案外簡単に納得してくれたカイルは空を見上げた。
「俺は問題ないが、結構暗くなってきてる。レイラは帰らないといけないんじゃないか?」
「え?」
言われて気付き、カイルに倣って空を見上げると確かに結構暮れてきていて⋯
「なんかあっという間だった。ちょっと名残惜しいけど帰してやんなきゃだからな」
なんてカラッと笑われる。
“名残惜しいだなんて⋯そんなの⋯”
私もだと思った。
私も今日はあっという間に感じて、それはカイルといるのが心地よく楽しかったからで⋯
そして、もう少し一緒にいたいとそう思った。
「⋯夜がまだ、あるわよ」
「はぁ?何言ってんだよ、そんなこと男に言うと変に解釈されても知らねぇぞ」
「ばか、私だってもう⋯とっくに成人してるのよ?」
「⋯⋯え、え?」
『マッチング貴族』は心も、そして“体”の相性もピタリと合致した相手と出会わせてくれるもので。
カイルがごくりと唾を呑むのがわかった。
そっと手を引かれ、その手を握るとカイルからもしっかりと握り返されて。
そのまま連れられ、着いたのは“そういう”時に使う宿だった。
入る前に「いいのか」と確認され小さく頷く。
それ以上何も聞かないカイルに並び、しっかりと手を繋ぎながら私は彼についていった。
日々騎士として訓練するカイルはやはり私よりも体力があるらしく⋯
「ほら」
「ありがとう、悪かったわね」
「別に」
屋台で買ってきてくれた果実水を手渡され思わずすぐに飛び付いた。
こくりと喉を通る爽やかな甘さにホッとし一気に全部飲んでしまって。
“やだ、はしたなかったかしら!?”
ハッとしてちらりと横目でカイルの様子を窺うが。
「はは、そんな喉渇いてたのか?ほら俺のも飲んでいいぞ」
気にしていないどころかむしろ好感度が上がったかのような笑顔に意表を突かれた。
「あ、ありがとう⋯」
“流石は国のマッチングね⋯!?”
「流石国のマッチングだなぁ⋯」
「!!?」
ふと思ったことをしみじみと言われ思わず肩が跳ねる。
勢いよくカイルの方を見ると、少し目を丸くした彼と目が合って⋯
「あ、いや⋯今のはだな、あー⋯その。必死に飲む姿が可愛いな、と思ってだな⋯」
「は、はしたないじゃなくて!?」
“か、可愛いの⋯!?”
いや私は確かに伯爵家として磨かれてきたし割と可愛い方だと自負してたりしますけど!?
なんて思わず脳内でパニックを起こすが。
「魔獣の赤ちゃんみたいで、つい」
「それ誉めてる?」
「いや見た目の話だ!」
「見た目の話ですって!?」
想像していた可愛さじゃなかったことに物凄く苛立った。
“まさか魔獣なんて言われるなんて⋯!”
とイライラする私のご機嫌を取ろうと慌てて買ってきた串焼きを見てため息を吐く。
「⋯私、空腹で苛立ってるんじゃないんだけど?」
「魔獣の赤ちゃんって見た目は本当に可愛⋯いや、俺の失言でしたスミマセン」
気まずそうに少ししゅんとしながら謝罪され、なんだか胸の奥がくすぐられる。
仕方ないわね、なんて言いながら彼の持っている串焼きを受け取った。
「へぇ、花とかも売ってるのね」
休憩した私達は散策がてらお祭りを堪能していると、鮮やかな花達が目に入り思わずそう呟く。
それはてっきり食べ物や飲み物を売っているお店ばかりが出店していると思っていたからの感想であり、別におねだりとかではなかったのだが⋯
「その花一本」
「え!?」
私の視線の先の花をさらっと買ったカイルに焦る。
そんな私とは反対に、代金を支払い花を一本受け取ったカイルは⋯
「高価な装飾じゃなくて悪いな」
なんて微笑みながら、私の髪にそっとその花を挿してくれて。
思わず顔が赤くなったのを自覚した。
「に、似合うかしら⋯?」
なんて少し照れながら聞くと、そのままこくりと頷かれる。
近くの窓に反射し写った自分の姿をこっそり盗み見て、自身の淡いレモンイエローの髪にカイルが選んでくれた赤い花が映えると小さく笑みが溢れた。
“それにこの赤、カイルの赤髪に似てるわね”
なんて考え思わず足を止めてしまう。
その考えはまるで自分とカイルが並んだ時を想像したように感じ、また頬が熱くなった。
「どうかしたのか?」
「え?あ、別に⋯」
慌てて誤魔化そうとするが、誤魔化されてくれない彼は少し怪訝な顔をしていて。
「つ、次!どこに行くのかなって思っただけよ!」
苦し紛れにそう言ってみると、案外簡単に納得してくれたカイルは空を見上げた。
「俺は問題ないが、結構暗くなってきてる。レイラは帰らないといけないんじゃないか?」
「え?」
言われて気付き、カイルに倣って空を見上げると確かに結構暮れてきていて⋯
「なんかあっという間だった。ちょっと名残惜しいけど帰してやんなきゃだからな」
なんてカラッと笑われる。
“名残惜しいだなんて⋯そんなの⋯”
私もだと思った。
私も今日はあっという間に感じて、それはカイルといるのが心地よく楽しかったからで⋯
そして、もう少し一緒にいたいとそう思った。
「⋯夜がまだ、あるわよ」
「はぁ?何言ってんだよ、そんなこと男に言うと変に解釈されても知らねぇぞ」
「ばか、私だってもう⋯とっくに成人してるのよ?」
「⋯⋯え、え?」
『マッチング貴族』は心も、そして“体”の相性もピタリと合致した相手と出会わせてくれるもので。
カイルがごくりと唾を呑むのがわかった。
そっと手を引かれ、その手を握るとカイルからもしっかりと握り返されて。
そのまま連れられ、着いたのは“そういう”時に使う宿だった。
入る前に「いいのか」と確認され小さく頷く。
それ以上何も聞かないカイルに並び、しっかりと手を繋ぎながら私は彼についていった。
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