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レフルート
18.選択肢は誰が決めても共通ルート
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ハッとした時にはもう遅く、気付けばすぐ後ろに立っていたのはレフ様で。
“着飾ってない質素な服で身分差を突きつけるつもりが殿下がアリスを着飾って来てるし、しかも仮にも恋の相談を受けた私の招待で来たお茶会で恋敵と鉢合わせとか⋯”
そのタイミングの悪さに頭を抱えた。
「アリス嬢と殿下はそういう仲なのですか⋯?まさかそれを知っていてセシリス嬢はこのメンバーを⋯」
唖然とした表情でこちらを見るレフ様。
わざとではないとはいえ、アリスと殿下が良い感じなのを知っていたのは事実だった為、私はレフ様の質問に答えられなくて。
「⋯知って、おられたんですね。あーー、そうですか、そうなんですか。なるほどね⋯」
「れ、レフ様?あの」
「楽しかったですか、滑稽でしたか?」
「違ッ、そんなつもりでは⋯っ!」
「ハッ、ではどういうつもりで?」
いつもの知的な雰囲気とは違う、相手を追い詰めるような笑みを見せるレフ様に思わず怯む。
目だけが笑っていないその表情は、まるで黒いもやを出していると錯覚するほど異様な雰囲気で⋯
“私が最初に説明しなかったから、いえ、そもそも断っていれば⋯”
焦点が合わないその瞳は、闇落ちしたかのようにヒロインに対し黒い発言をするレオと似ているようで、それでいてもっと恐ろしく感じた。
痛いほどのその視線から逃れたくて、でもどうすればいいのかわからず視線を足元に落とす私の前を、フッと大きな影が庇うように私とレフ様の間に割り込んできて。
「僕の婚約者に随分と不躾な態度ですね。言いがかりはやめて貰えますか?」
「レオン・ネストル⋯!」
抜く素振りはないがわざとらしく腰の鞘をカチャリと鳴らしたレオは、それ以上何も言わずにただ私をレフ様の視線から守ってくれた。
“レオ⋯”
目の前にレオがいる。
それだけで何故か安心してしまった私は、すがるように服の裾を掴み、そっと彼の背中におでこを寄せる。
「⋯⋯ふむ。レフ様、度を過ぎたら消しますがまたお願いします」
「なんでそうなるのよっ!?」
「二人して私を馬鹿にしているのか⋯!?」
「ちょっ、ほら!もっと怒っちゃったじゃない!」
「焦るセリも可愛いです⋯早く二人きりになりたいなぁ⋯」
ぎゃいぎゃい騒ぎ、そういえばアリスと殿下は!?と慌ててキョロキョロ見渡すと、しれっとテーブルにつき二人でお茶している殿下と目が合った。
「あぁ、暫くかかりそうだから先に楽しませて貰ってるよ」
「セリ様!このクッキーとても美味しいですっ」
「ふふ、俺のもほら、食べて良いよ」
楽しそうな二人にある意味愉しそうな私達。
「ここに天国と地獄の境目があったなんて⋯」
世界観の温度差に私はガクリと項垂れた。
「この件については、後日改めて。」
と強い口調で言い残しレフ様は席に座ることなく帰ってしまった。
「どこから間違えたのかしら⋯、ドレス?そもそも着飾ったのが⋯いえ、私がさっさとワインをかければ良かったの⋯?でもそうすると私が破滅⋯」
「セリ?」
お茶を楽しんでいた殿下達と合流したものの、当然私の気は晴れなくて。
「セリ様、そんなに悩まないでください。きっと大丈夫ですよ!」
「根拠なく言うのやめてくれます?腹立たしい。ですがセリ、僕がいるから大丈夫ですよ、いつでも全てゼロに戻しましょう」
「ゼロへの戻し方は聞かないからね⋯」
「まずはやり直しがてらこの女にワインをかけますか?」
「あはは、レオンってば、今はそれ要らないからね?王宮で頼むよ、俺の部屋があるからさ」
相変わらずな様子のレオと、さらりと聞き逃せない希望を伝える殿下。
ふと黒い雰囲気を出していたレフ様を思い出し、まさか殿下まで闇落ちなのかと不安になった私はそっと殿下の表情を窺うが⋯
「どうかしたのかい?」
「あ、いえ⋯なんでもございませんわ」
にこりと微笑んだ殿下の表情におかしな部分はなかった。
“殿下なりのジョークなのかしら⋯”
私はそんな風に自分を納得させ、深く考えるのをやめる。
アリスも笑っているし、何より今考えないといけないのはレフ様の事で。
はぁ、と思わずため息を吐いた私は、これからどうすればいいのか頭を悩ませるのだった。
そんな悪夢のお茶会が終わり、殿下達を見送ると慌てて私は予言書を開く。
ちなみに3人は同じ王宮の馬車で帰っていった。
アリスのエスコートをする殿下、殿下の護衛をするレオ⋯という事らしいが、その面子に囲まれる御者が少し可哀想になったのは内緒だ。
「表紙に描かれているのだから、どこかにレフ様の事も書いてあるのよね?」
パラパラと予言書を捲ると、「レオンルート」の次のページにやはりというかなんなのか。
「やっぱりあるのね、『レフルート』⋯」
知ってた、と思いながら内容を確認する。
「出会いイベントは、王宮の廊下⋯?レフ様は夜会で一目惚れしたんだから、このイベントは起きてない⋯わね」
予言書が外れたのかと思ったが、そもそもこの世界は今“メインルート”だ。
だったらレフルートのイベントが起きないのは当たり前だとも言えて。
「夜会でも、パーティーに出席したアリスはレオのイベントである“メイドとして”は会ってないし、同時刻のイベントはメインルートのイベントが優先されるのかしら⋯?」
ーーもしくは、選択肢を誰かが選んだら。
“夜会イベントは私がアリスとメインルートのイベントを起こすことを選んだ⋯とも言えるわね?”
もしこの仮説が合っているとしたならば。
ドクン、と心臓が跳ねる。
じっとり嫌な汗が私の背中を流れて。
「レフルートのイベントを、レフ様が起こしたとしたら⋯」
“レオルートからメインルートに変更出来たように、レフルートへの変更もあり得るって事かしら”
私とレオは、私達が嫌がらせをせず破滅しなければそれで構わない。
でも、じゃあアリスは⋯?
「お茶会、殿下と楽しそうだったわよね⋯」
殿下がアリスを見る瞳もとても穏やかで。
そしてそれをアリスも受け入れていて。
キッカケはルートの改変だったが、それでも育み始めた二人には幸せになって貰いたい。
振り回してしまった責任から、というのももちろんあるが、私にとってもアリスは大切な存在になっていてー⋯
「レフルート、阻止するしかないわね⋯」
ふと瞳だけ笑っていないレフ様を思い出しゾクリと身震いする。
しかし、私は私と、そして私の大切な人の為にも頑張る事を決意した。
“着飾ってない質素な服で身分差を突きつけるつもりが殿下がアリスを着飾って来てるし、しかも仮にも恋の相談を受けた私の招待で来たお茶会で恋敵と鉢合わせとか⋯”
そのタイミングの悪さに頭を抱えた。
「アリス嬢と殿下はそういう仲なのですか⋯?まさかそれを知っていてセシリス嬢はこのメンバーを⋯」
唖然とした表情でこちらを見るレフ様。
わざとではないとはいえ、アリスと殿下が良い感じなのを知っていたのは事実だった為、私はレフ様の質問に答えられなくて。
「⋯知って、おられたんですね。あーー、そうですか、そうなんですか。なるほどね⋯」
「れ、レフ様?あの」
「楽しかったですか、滑稽でしたか?」
「違ッ、そんなつもりでは⋯っ!」
「ハッ、ではどういうつもりで?」
いつもの知的な雰囲気とは違う、相手を追い詰めるような笑みを見せるレフ様に思わず怯む。
目だけが笑っていないその表情は、まるで黒いもやを出していると錯覚するほど異様な雰囲気で⋯
“私が最初に説明しなかったから、いえ、そもそも断っていれば⋯”
焦点が合わないその瞳は、闇落ちしたかのようにヒロインに対し黒い発言をするレオと似ているようで、それでいてもっと恐ろしく感じた。
痛いほどのその視線から逃れたくて、でもどうすればいいのかわからず視線を足元に落とす私の前を、フッと大きな影が庇うように私とレフ様の間に割り込んできて。
「僕の婚約者に随分と不躾な態度ですね。言いがかりはやめて貰えますか?」
「レオン・ネストル⋯!」
抜く素振りはないがわざとらしく腰の鞘をカチャリと鳴らしたレオは、それ以上何も言わずにただ私をレフ様の視線から守ってくれた。
“レオ⋯”
目の前にレオがいる。
それだけで何故か安心してしまった私は、すがるように服の裾を掴み、そっと彼の背中におでこを寄せる。
「⋯⋯ふむ。レフ様、度を過ぎたら消しますがまたお願いします」
「なんでそうなるのよっ!?」
「二人して私を馬鹿にしているのか⋯!?」
「ちょっ、ほら!もっと怒っちゃったじゃない!」
「焦るセリも可愛いです⋯早く二人きりになりたいなぁ⋯」
ぎゃいぎゃい騒ぎ、そういえばアリスと殿下は!?と慌ててキョロキョロ見渡すと、しれっとテーブルにつき二人でお茶している殿下と目が合った。
「あぁ、暫くかかりそうだから先に楽しませて貰ってるよ」
「セリ様!このクッキーとても美味しいですっ」
「ふふ、俺のもほら、食べて良いよ」
楽しそうな二人にある意味愉しそうな私達。
「ここに天国と地獄の境目があったなんて⋯」
世界観の温度差に私はガクリと項垂れた。
「この件については、後日改めて。」
と強い口調で言い残しレフ様は席に座ることなく帰ってしまった。
「どこから間違えたのかしら⋯、ドレス?そもそも着飾ったのが⋯いえ、私がさっさとワインをかければ良かったの⋯?でもそうすると私が破滅⋯」
「セリ?」
お茶を楽しんでいた殿下達と合流したものの、当然私の気は晴れなくて。
「セリ様、そんなに悩まないでください。きっと大丈夫ですよ!」
「根拠なく言うのやめてくれます?腹立たしい。ですがセリ、僕がいるから大丈夫ですよ、いつでも全てゼロに戻しましょう」
「ゼロへの戻し方は聞かないからね⋯」
「まずはやり直しがてらこの女にワインをかけますか?」
「あはは、レオンってば、今はそれ要らないからね?王宮で頼むよ、俺の部屋があるからさ」
相変わらずな様子のレオと、さらりと聞き逃せない希望を伝える殿下。
ふと黒い雰囲気を出していたレフ様を思い出し、まさか殿下まで闇落ちなのかと不安になった私はそっと殿下の表情を窺うが⋯
「どうかしたのかい?」
「あ、いえ⋯なんでもございませんわ」
にこりと微笑んだ殿下の表情におかしな部分はなかった。
“殿下なりのジョークなのかしら⋯”
私はそんな風に自分を納得させ、深く考えるのをやめる。
アリスも笑っているし、何より今考えないといけないのはレフ様の事で。
はぁ、と思わずため息を吐いた私は、これからどうすればいいのか頭を悩ませるのだった。
そんな悪夢のお茶会が終わり、殿下達を見送ると慌てて私は予言書を開く。
ちなみに3人は同じ王宮の馬車で帰っていった。
アリスのエスコートをする殿下、殿下の護衛をするレオ⋯という事らしいが、その面子に囲まれる御者が少し可哀想になったのは内緒だ。
「表紙に描かれているのだから、どこかにレフ様の事も書いてあるのよね?」
パラパラと予言書を捲ると、「レオンルート」の次のページにやはりというかなんなのか。
「やっぱりあるのね、『レフルート』⋯」
知ってた、と思いながら内容を確認する。
「出会いイベントは、王宮の廊下⋯?レフ様は夜会で一目惚れしたんだから、このイベントは起きてない⋯わね」
予言書が外れたのかと思ったが、そもそもこの世界は今“メインルート”だ。
だったらレフルートのイベントが起きないのは当たり前だとも言えて。
「夜会でも、パーティーに出席したアリスはレオのイベントである“メイドとして”は会ってないし、同時刻のイベントはメインルートのイベントが優先されるのかしら⋯?」
ーーもしくは、選択肢を誰かが選んだら。
“夜会イベントは私がアリスとメインルートのイベントを起こすことを選んだ⋯とも言えるわね?”
もしこの仮説が合っているとしたならば。
ドクン、と心臓が跳ねる。
じっとり嫌な汗が私の背中を流れて。
「レフルートのイベントを、レフ様が起こしたとしたら⋯」
“レオルートからメインルートに変更出来たように、レフルートへの変更もあり得るって事かしら”
私とレオは、私達が嫌がらせをせず破滅しなければそれで構わない。
でも、じゃあアリスは⋯?
「お茶会、殿下と楽しそうだったわよね⋯」
殿下がアリスを見る瞳もとても穏やかで。
そしてそれをアリスも受け入れていて。
キッカケはルートの改変だったが、それでも育み始めた二人には幸せになって貰いたい。
振り回してしまった責任から、というのももちろんあるが、私にとってもアリスは大切な存在になっていてー⋯
「レフルート、阻止するしかないわね⋯」
ふと瞳だけ笑っていないレフ様を思い出しゾクリと身震いする。
しかし、私は私と、そして私の大切な人の為にも頑張る事を決意した。
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