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イリダルルート
25.時系列なんてものを気にしても未来の時間に関係はない
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「⋯えっ、それは本気ですの?」
大切な話があるから、とアリスに呼ばれた王宮。
洗濯メイドであるアリスが王宮でお茶会を開くというのは、それはつまりヴァレリー殿下と何かしらの進展があったからこそ出来る事で。
婚約が決まったのだろうと、半ば確信は持っていた。
“メイドという身分のアリスがこの王宮で、公爵令嬢である私を呼んでお茶会をする⋯それはつまり『それなりの身分が与えられた』事を意味するわ”
そしてその予想は当たり、アリスから殿下との婚約を聞かされた。
そこまでは想定通りだったのだが。
「えぇ、本気です!セリ様に私の妃教育の先生をしていただきたいんですっ」
“流石にコレは予想外ね⋯?”
この世界のヒロインであるアリスと、メインルートのヴァレリー殿下が婚約することは予言書にもしっかり書かれていたが、書かれていたのは『そこまで』だった。
“⋯そもそも、二人が結ばれた時には悪役である私はもう破滅を迎えこの世界から退場しているはずでー⋯”
だからこそ、ここにきてまさかこのような重要なポジションに指名されるとは思わなかったのだ。
「けれど、先生ならもっと適任がいるんじゃ⋯」
「もちろん全ての先生になって欲しいなんて⋯言いませんけど⋯私、ほら、元がただのメイドですから!」
「そんなの⋯」
『関係ない』と言おうとして思わず口ごもる。
元メイドが、愛妾ではなく正妃として迎えられるなんてことは異例中の異例。
周りの貴族は当然いい顔をするはずもなく、もしかしたら教育係を引き受ける家がなかったのかもしれない。
そして今まで親しくしていた仕事仲間のメイド達とは身分という壁が出来てしまった。
“アリスがこうやって頼れるのは私だけー⋯”
「⋯わかったわ、私も一応高位貴族の令嬢ですもの。一通りのマナーは学んでおります。厳しくてもついてきなさいよ!?」
「きゃあ!セリ様格好いいです!これで私も公爵家の後ろ盾ゲットですねっ」
「貴女思ったより図太いですわね!?」
場を和ませようとしたのか本気なのかわからない事を笑いながら言い放つアリスに思わずツッコむが。
“ーーまぁ、これが本心ならそれはそれで悪くないわね”
ゆくゆくはこの国の母となるのだ。
図太いくらいで丁度いいと考え、私もアリスと一緒に笑い飛ばした。
そんなお茶会から数日。
「問題は、ここからよねぇ⋯」
久々にレオとのデートを前にして私は思わずため息を吐いた。
“レオは絶対いい顔しないわよね⋯”
また周りの温度を下げるような視線を投げられる事を想像し項垂れる。
「どうしてセリが?とか、僕との時間を減らしたいということですか?とか言われそう⋯」
何気なく呟いたその発言がやけに現実味を持っていて、いやもう絶対言うわよね!?なんて頭を抱えたのだが⋯
「それは良かったですね」
「えっ、怒らないの!?」
さらっと受け入れたレオに思わず唖然とした。
「私、絶対僕との時間を減らしてあの女と過ごすとかうんたらかんたら言われるものだと思っていたわ⋯」
「まぁ、まさにそんな風に思わなくもないんですけどね」
「やっぱり!?」
“って、不快に思ってる事に安心してどうするのよ、私⋯っ!”
いつの間にかレオの独占欲に慣れてしまったのか、嫉妬されないと逆に焦るようになった自分に動揺しそうになるがー⋯
先に気にすべきはそこではなくて。
「でも、だったらなんでー⋯」
「だって、僕は殿下の護衛ですから。セリが殿下の婚約者になったあの女の側にいると言うことは、必然的に殿下に連れられ仕事中もセリに会えるという事でしょう」
「⋯あ、なるほど」
「ご安心ください、いざという時はセリを優先してお守りしますから」
「そこは殿下を優先して!?」
なんて、レオらしい言い分を聞いて安心する。
そしてレオからの許可がおりたのならば、もう私に懸念点はもうなくて。
「ま、私が完璧な令嬢にしてみせるわ⋯!」
と、気合いを入れた。
“それに、二人の婚約後の話が予言書の先の出来事だとしたら⋯”
レフ様のような、『別ルートの乱入』なんて事にはならないだろう。
平行してルートがあったレフ様の時とは違い、全てのイベントの時期が終わった今なら、新しい攻略キャラが現れる事もない。
そしてルートが進まないということは。
“悪役令嬢セシリス・フローチェの破滅も、その代わりに悪役にさせられてしまったレオの破滅ももうないということで⋯”
「ふふ、良いことばかりだわ⋯っ!」
なんて、その時の私は浮かれていた。
ついこの間、予言書の強制力で人格が変わってしまったと言っても過言ではないレフ様を見たばかりだと言うのにーー⋯。
「ーーーお兄様の婚約者がただのメイド?あり得ないよね」
ヴァレリー殿下よりも濃い金髪に、同じくモスグリーンの瞳が妖しく揺れる。
「でも一番気に入らないのは、君だよ。セシリス・フローチェ⋯」
ハッという蔑みを混ぜたような笑いを残し、彼は王宮の自室へ帰っていった。
あの時私が浮かれず、もっと予言書の強制力を警戒していれば⋯
そうすれば、時系列なんていう要素に流されず何かしらの対策が取れていたのだろう。
少なくとも、『新しいルート』が動き出したという事には気付けたはずだったのにー⋯
大切な話があるから、とアリスに呼ばれた王宮。
洗濯メイドであるアリスが王宮でお茶会を開くというのは、それはつまりヴァレリー殿下と何かしらの進展があったからこそ出来る事で。
婚約が決まったのだろうと、半ば確信は持っていた。
“メイドという身分のアリスがこの王宮で、公爵令嬢である私を呼んでお茶会をする⋯それはつまり『それなりの身分が与えられた』事を意味するわ”
そしてその予想は当たり、アリスから殿下との婚約を聞かされた。
そこまでは想定通りだったのだが。
「えぇ、本気です!セリ様に私の妃教育の先生をしていただきたいんですっ」
“流石にコレは予想外ね⋯?”
この世界のヒロインであるアリスと、メインルートのヴァレリー殿下が婚約することは予言書にもしっかり書かれていたが、書かれていたのは『そこまで』だった。
“⋯そもそも、二人が結ばれた時には悪役である私はもう破滅を迎えこの世界から退場しているはずでー⋯”
だからこそ、ここにきてまさかこのような重要なポジションに指名されるとは思わなかったのだ。
「けれど、先生ならもっと適任がいるんじゃ⋯」
「もちろん全ての先生になって欲しいなんて⋯言いませんけど⋯私、ほら、元がただのメイドですから!」
「そんなの⋯」
『関係ない』と言おうとして思わず口ごもる。
元メイドが、愛妾ではなく正妃として迎えられるなんてことは異例中の異例。
周りの貴族は当然いい顔をするはずもなく、もしかしたら教育係を引き受ける家がなかったのかもしれない。
そして今まで親しくしていた仕事仲間のメイド達とは身分という壁が出来てしまった。
“アリスがこうやって頼れるのは私だけー⋯”
「⋯わかったわ、私も一応高位貴族の令嬢ですもの。一通りのマナーは学んでおります。厳しくてもついてきなさいよ!?」
「きゃあ!セリ様格好いいです!これで私も公爵家の後ろ盾ゲットですねっ」
「貴女思ったより図太いですわね!?」
場を和ませようとしたのか本気なのかわからない事を笑いながら言い放つアリスに思わずツッコむが。
“ーーまぁ、これが本心ならそれはそれで悪くないわね”
ゆくゆくはこの国の母となるのだ。
図太いくらいで丁度いいと考え、私もアリスと一緒に笑い飛ばした。
そんなお茶会から数日。
「問題は、ここからよねぇ⋯」
久々にレオとのデートを前にして私は思わずため息を吐いた。
“レオは絶対いい顔しないわよね⋯”
また周りの温度を下げるような視線を投げられる事を想像し項垂れる。
「どうしてセリが?とか、僕との時間を減らしたいということですか?とか言われそう⋯」
何気なく呟いたその発言がやけに現実味を持っていて、いやもう絶対言うわよね!?なんて頭を抱えたのだが⋯
「それは良かったですね」
「えっ、怒らないの!?」
さらっと受け入れたレオに思わず唖然とした。
「私、絶対僕との時間を減らしてあの女と過ごすとかうんたらかんたら言われるものだと思っていたわ⋯」
「まぁ、まさにそんな風に思わなくもないんですけどね」
「やっぱり!?」
“って、不快に思ってる事に安心してどうするのよ、私⋯っ!”
いつの間にかレオの独占欲に慣れてしまったのか、嫉妬されないと逆に焦るようになった自分に動揺しそうになるがー⋯
先に気にすべきはそこではなくて。
「でも、だったらなんでー⋯」
「だって、僕は殿下の護衛ですから。セリが殿下の婚約者になったあの女の側にいると言うことは、必然的に殿下に連れられ仕事中もセリに会えるという事でしょう」
「⋯あ、なるほど」
「ご安心ください、いざという時はセリを優先してお守りしますから」
「そこは殿下を優先して!?」
なんて、レオらしい言い分を聞いて安心する。
そしてレオからの許可がおりたのならば、もう私に懸念点はもうなくて。
「ま、私が完璧な令嬢にしてみせるわ⋯!」
と、気合いを入れた。
“それに、二人の婚約後の話が予言書の先の出来事だとしたら⋯”
レフ様のような、『別ルートの乱入』なんて事にはならないだろう。
平行してルートがあったレフ様の時とは違い、全てのイベントの時期が終わった今なら、新しい攻略キャラが現れる事もない。
そしてルートが進まないということは。
“悪役令嬢セシリス・フローチェの破滅も、その代わりに悪役にさせられてしまったレオの破滅ももうないということで⋯”
「ふふ、良いことばかりだわ⋯っ!」
なんて、その時の私は浮かれていた。
ついこの間、予言書の強制力で人格が変わってしまったと言っても過言ではないレフ様を見たばかりだと言うのにーー⋯。
「ーーーお兄様の婚約者がただのメイド?あり得ないよね」
ヴァレリー殿下よりも濃い金髪に、同じくモスグリーンの瞳が妖しく揺れる。
「でも一番気に入らないのは、君だよ。セシリス・フローチェ⋯」
ハッという蔑みを混ぜたような笑いを残し、彼は王宮の自室へ帰っていった。
あの時私が浮かれず、もっと予言書の強制力を警戒していれば⋯
そうすれば、時系列なんていう要素に流されず何かしらの対策が取れていたのだろう。
少なくとも、『新しいルート』が動き出したという事には気付けたはずだったのにー⋯
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