-私のせいでヒーローが闇落ち!?-悪役令息を救え!

春瀬湖子

文字の大きさ
28 / 51
イリダルルート

25.時系列なんてものを気にしても未来の時間に関係はない

しおりを挟む
「⋯えっ、それは本気ですの?」


大切な話があるから、とアリスに呼ばれた王宮。
洗濯メイドであるアリスが王宮でお茶会を開くというのは、それはつまりヴァレリー殿下と何かしらの進展があったからこそ出来る事で。

婚約が決まったのだろうと、半ば確信は持っていた。

“メイドという身分のアリスがこの王宮で、公爵令嬢である私を呼んでお茶会をする⋯それはつまり『それなりの身分が与えられた』事を意味するわ”


そしてその予想は当たり、アリスから殿下との婚約を聞かされた。
そこまでは想定通りだったのだが。



「えぇ、本気です!セリ様に私の妃教育の先生をしていただきたいんですっ」

“流石にコレは予想外ね⋯?”

この世界のヒロインであるアリスと、メインルートのヴァレリー殿下が婚約することは予言書にもしっかり書かれていたが、書かれていたのは『そこまで』だった。

“⋯そもそも、二人が結ばれた時には悪役である私はもう破滅を迎えこの世界から退場しているはずでー⋯”

だからこそ、ここにきてまさかこのような重要なポジションに指名されるとは思わなかったのだ。


「けれど、先生ならもっと適任がいるんじゃ⋯」
「もちろん全ての先生になって欲しいなんて⋯言いませんけど⋯私、ほら、元がただのメイドですから!」
「そんなの⋯」

『関係ない』と言おうとして思わず口ごもる。
元メイドが、愛妾ではなく正妃として迎えられるなんてことは異例中の異例。

周りの貴族は当然いい顔をするはずもなく、もしかしたら教育係を引き受ける家がなかったのかもしれない。
そして今まで親しくしていた仕事仲間のメイド達とは身分という壁が出来てしまった。


“アリスがこうやって頼れるのは私だけー⋯”


「⋯わかったわ、私も一応高位貴族の令嬢ですもの。一通りのマナーは学んでおります。厳しくてもついてきなさいよ!?」
「きゃあ!セリ様格好いいです!これで私も公爵家の後ろ盾ゲットですねっ」
「貴女思ったより図太いですわね!?」


場を和ませようとしたのか本気なのかわからない事を笑いながら言い放つアリスに思わずツッコむが。

“ーーまぁ、これが本心ならそれはそれで悪くないわね”


ゆくゆくはこの国の母となるのだ。
図太いくらいで丁度いいと考え、私もアリスと一緒に笑い飛ばした。






そんなお茶会から数日。

「問題は、ここからよねぇ⋯」
久々にレオとのデートを前にして私は思わずため息を吐いた。

“レオは絶対いい顔しないわよね⋯”
また周りの温度を下げるような視線を投げられる事を想像し項垂れる。

「どうしてセリが?とか、僕との時間を減らしたいということですか?とか言われそう⋯」

何気なく呟いたその発言がやけに現実味を持っていて、いやもう絶対言うわよね!?なんて頭を抱えたのだが⋯


「それは良かったですね」
「えっ、怒らないの!?」

さらっと受け入れたレオに思わず唖然とした。

「私、絶対僕との時間を減らしてあの女と過ごすとかうんたらかんたら言われるものだと思っていたわ⋯」
「まぁ、まさにそんな風に思わなくもないんですけどね」
「やっぱり!?」

“って、不快に思ってる事に安心してどうするのよ、私⋯っ!”

いつの間にかレオの独占欲に慣れてしまったのか、嫉妬されないと逆に焦るようになった自分に動揺しそうになるがー⋯
先に気にすべきはそこではなくて。


「でも、だったらなんでー⋯」
「だって、僕は殿下の護衛ですから。セリが殿下の婚約者になったあの女の側にいると言うことは、必然的に殿下に連れられ仕事中もセリに会えるという事でしょう」
「⋯あ、なるほど」
「ご安心ください、いざという時はセリを優先してお守りしますから」
「そこは殿下を優先して!?」

なんて、レオらしい言い分を聞いて安心する。
そしてレオからの許可がおりたのならば、もう私に懸念点はもうなくて。


「ま、私が完璧な令嬢にしてみせるわ⋯!」

と、気合いを入れた。



“それに、二人の婚約後の話が予言書の先の出来事だとしたら⋯”

レフ様のような、『別ルートの乱入』なんて事にはならないだろう。
平行してルートがあったレフ様の時とは違い、全てのイベントの時期が終わった今なら、新しい攻略キャラが現れる事もない。

そしてルートが進まないということは。

“悪役令嬢セシリス・フローチェの破滅も、その代わりに悪役にさせられてしまったレオの破滅ももうないということで⋯”

「ふふ、良いことばかりだわ⋯っ!」

なんて、その時の私は浮かれていた。
ついこの間、予言書の強制力で人格が変わってしまったと言っても過言ではないレフ様を見たばかりだと言うのにーー⋯。






「ーーーお兄様の婚約者がただのメイド?あり得ないよね」

ヴァレリー殿下よりも濃い金髪に、同じくモスグリーンの瞳が妖しく揺れる。

「でも一番気に入らないのは、君だよ。セシリス・フローチェ⋯」

ハッという蔑みを混ぜたような笑いを残し、彼は王宮の自室へ帰っていった。




あの時私が浮かれず、もっと予言書の強制力を警戒していれば⋯
そうすれば、時系列なんていう要素に流されず何かしらの対策が取れていたのだろう。

少なくとも、『新しいルート』が動き出したという事には気付けたはずだったのにー⋯
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

処理中です...