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もちろん私も望みます!婚約破棄からはじめた溺愛婚(待望)
エピローグ:これから産まれてくる君たちへ
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「バルフは男の子と女の子、どっちがいい?」
もちろん一般的に考えれば長子は男の子がいいだろう。
しかし私たちの住むマーテリルアは長子が家を継がなくてはならないという決まりも無ければ、男子しか爵位を継げないというようなこともない。
“それに私たちはあくまでも一領主の肩書きしかない”
ビスター公爵家は兄の子供が継ぐだろうし、そうなればもちろん私たちの子供は他の貴族の子供よりも融通がきく。
それに、どうしてもという場合は私のように婿を拐う――ではなく、貰うのもいいだろう。
“となれば、やっぱり最初は……”
「私はバルフに似た可愛い男の子が欲しいわ!」
「俺はシエラに似た可愛い女の子がいいな」
同時にそう口にし、きょとんと顔を見合わせてしまう。
「あら、バルフに似た方が絶対可愛いわよ?」
「そう思ってるのは絶対シエラだけで、シエラに似たら天使のように可愛いと思うけど」
珍しく意見の合わない私たちがそんな風に言い合っていると、後ろから思い切り大きなため息が聞こえた。
「どうせいつかどっちも産まれますって。こんなに仲睦まじい上にバルフ様の家はご兄弟も多いですし」
「も、もうっ、クラリスってば……っ」
「そうだよ、からかわないでくれると嬉しいな」
「二人して照れないで貰えます? 甘すぎて私が吐きそうです」
元々そこまで重い悪阻じゃなかったお陰か、クラリスの言っていた『ピークの二ヶ月』を待つことなく私の悪阻はおさまってくれて。
「今ではこんなに大きくなったなんて」
「うん、スクスクと育ってくれてるんだな。ありがとう、シエラ」
「あら、お礼を言うのは早いんだから!」
すっかり大きくなったお腹をそっと撫でるバルフを見ながらくすりと笑みが溢れる。
まだ出産までは時間があるが、それでもいつ産まれてもおかしくないくらい大きくて。
“本当に赤ちゃんがいるのね”
そうしみじみと実感し、心が熱くなる。
王太子の婚約者候補筆頭として冷遇されていたあの頃。
まだ『候補』のうちに、と父を説得し、拐うようにしてバルフと結婚して。
“本当に色んなことがあったわ”
喧嘩したこともあった。
すれ違ったこともあった。
バルフの実家に突撃したこともあった。
「思えばバルフの実家に行ったあの時に、子供って存在を強く意識したのかも」
「そうなの?」
少し不思議そうにするバルフにゆっくりと頷いて答える。
心配したり振り回されたり遊んだり。
無邪気で、そして生命力溢れる子供たちが可愛くて、そしてそんな中に混ぜて貰えたことで私はこんな温かい家族を作りたいと心の底から思ったのだ。
「――私の家は、母の体があまり強くないから」
かなり愛され甘やかされて育てられた自覚はある。
けれど、療養する母に付き添う父。
早くに結婚し、自分の家族を持っていた兄。
大事にされ愛されているとわかっていても、心の中では寂しさだって感じていたから。
「私も、やっと守るべき家族を持てるのね」
「あぁ。シエラのことも、産まれてくる子供のことも絶対守るよ」
そっと肩を抱き寄せられ、バルフの肩に頭を寄せる。
「んっ」
そのままどちらともなく唇が重なって。
「ふふ、バルフに似た女の子も捨てがたいわ」
「シエラに似た男の子ってのもいいなぁ」
なんて。
少し苦笑するクラリスも、その顔には穏やかさを滲ませていた。
婚約破棄から始まった私たちの結婚生活は、そんな始まりだと思えないほど幸せで温かくて。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
これから続くだろう幸せな日々を夢見て目を瞑る。
「早く会いたいわ、バルフに似た赤ちゃん」
「俺も早く会いたいな、シエラに似た赤ちゃん」
そんな二人の望みをまるで神様が叶えてくれたように、私が男女の双子を出産するまであと少し――……
もちろん一般的に考えれば長子は男の子がいいだろう。
しかし私たちの住むマーテリルアは長子が家を継がなくてはならないという決まりも無ければ、男子しか爵位を継げないというようなこともない。
“それに私たちはあくまでも一領主の肩書きしかない”
ビスター公爵家は兄の子供が継ぐだろうし、そうなればもちろん私たちの子供は他の貴族の子供よりも融通がきく。
それに、どうしてもという場合は私のように婿を拐う――ではなく、貰うのもいいだろう。
“となれば、やっぱり最初は……”
「私はバルフに似た可愛い男の子が欲しいわ!」
「俺はシエラに似た可愛い女の子がいいな」
同時にそう口にし、きょとんと顔を見合わせてしまう。
「あら、バルフに似た方が絶対可愛いわよ?」
「そう思ってるのは絶対シエラだけで、シエラに似たら天使のように可愛いと思うけど」
珍しく意見の合わない私たちがそんな風に言い合っていると、後ろから思い切り大きなため息が聞こえた。
「どうせいつかどっちも産まれますって。こんなに仲睦まじい上にバルフ様の家はご兄弟も多いですし」
「も、もうっ、クラリスってば……っ」
「そうだよ、からかわないでくれると嬉しいな」
「二人して照れないで貰えます? 甘すぎて私が吐きそうです」
元々そこまで重い悪阻じゃなかったお陰か、クラリスの言っていた『ピークの二ヶ月』を待つことなく私の悪阻はおさまってくれて。
「今ではこんなに大きくなったなんて」
「うん、スクスクと育ってくれてるんだな。ありがとう、シエラ」
「あら、お礼を言うのは早いんだから!」
すっかり大きくなったお腹をそっと撫でるバルフを見ながらくすりと笑みが溢れる。
まだ出産までは時間があるが、それでもいつ産まれてもおかしくないくらい大きくて。
“本当に赤ちゃんがいるのね”
そうしみじみと実感し、心が熱くなる。
王太子の婚約者候補筆頭として冷遇されていたあの頃。
まだ『候補』のうちに、と父を説得し、拐うようにしてバルフと結婚して。
“本当に色んなことがあったわ”
喧嘩したこともあった。
すれ違ったこともあった。
バルフの実家に突撃したこともあった。
「思えばバルフの実家に行ったあの時に、子供って存在を強く意識したのかも」
「そうなの?」
少し不思議そうにするバルフにゆっくりと頷いて答える。
心配したり振り回されたり遊んだり。
無邪気で、そして生命力溢れる子供たちが可愛くて、そしてそんな中に混ぜて貰えたことで私はこんな温かい家族を作りたいと心の底から思ったのだ。
「――私の家は、母の体があまり強くないから」
かなり愛され甘やかされて育てられた自覚はある。
けれど、療養する母に付き添う父。
早くに結婚し、自分の家族を持っていた兄。
大事にされ愛されているとわかっていても、心の中では寂しさだって感じていたから。
「私も、やっと守るべき家族を持てるのね」
「あぁ。シエラのことも、産まれてくる子供のことも絶対守るよ」
そっと肩を抱き寄せられ、バルフの肩に頭を寄せる。
「んっ」
そのままどちらともなく唇が重なって。
「ふふ、バルフに似た女の子も捨てがたいわ」
「シエラに似た男の子ってのもいいなぁ」
なんて。
少し苦笑するクラリスも、その顔には穏やかさを滲ませていた。
婚約破棄から始まった私たちの結婚生活は、そんな始まりだと思えないほど幸せで温かくて。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
これから続くだろう幸せな日々を夢見て目を瞑る。
「早く会いたいわ、バルフに似た赤ちゃん」
「俺も早く会いたいな、シエラに似た赤ちゃん」
そんな二人の望みをまるで神様が叶えてくれたように、私が男女の双子を出産するまであと少し――……
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(24件)
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完結!おめでとうございます🎉幸せに暮らすんだろうなと……暴走を上手にいなせるように頑張れバルフ!これからも沢山の幸福に恵まれますように!いつも素敵なお話をありがとうございます💕
朝倉真琴様
お読みくださりありがとうございます!
わぁ、完結までお付き合いありがとうございます~~!!!
無事にエピローグまで公開出来ました⋯(*^^*)
これにて本当に一区切りです♪
なんだかんだで振り回されるのも好きそうですが、子供が産まれたらきっと子供にも振り回されつつシエラ含めみんながバルフに抱き付いているのかな、なんて⋯笑
きっと振り回されるのも幸せのはず⋯!!
こちらこそいつも温かいコメントありがとうございます( ;∀;)
本当に凄く凄く力になってます~~!!!
また次のお話でもお会いできるよう、これからも頑張って書きますので、どうぞよろしくお願いいたします~!
感想ありがとうございました(((UωU` *)(* ´UωU)))
悪い予感(笑)暴走についてしっかりしっかり把握している発言ですね(笑)辛い思いもした分、あまーいやわらかーい御褒美も!よかったね!バルフ!
朝倉真琴様
お読みくださりありがとうございます!
予感がやっと的中(?)したものの、結局シエラの方が強いので最終的には身構えつつもやはり振り回される、そんな未来になるかと⋯笑
甘くてやわらかいご褒美、確かに⋯!!( *´艸`)
やっとご褒美のターン、散々振り回されたのでバルフにはしっかりとこの余韻に浸って欲しいところですね(((UωU` *)(* ´UωU)))
そしてそんなご褒美があったということは、なんと次で最終話となっております~!!
あと一話、どうぞお付き合いくださると嬉しいです(*^^*)
感想ありがとうございました!
バルフの鋼の精神、鍛え上げられ過ぎてて笑うw
あそこまでされて、普通に寝られるとかどんだけ!
サラサ様
お読みくださりありがとうございます!
何しろシエラとの結婚生活も長くなってきましたから⋯!笑
彼もだいぶ図太く育ちました、元々しれっと家からペットのウサギを連れて狩猟会に参加する時点でそこまで繊細ではありませんでしたが⋯
かなりシエラのお陰で鍛えられたかと⋯!
本人的にいいのかは⋯わかりませんが笑←
完全にいつの間にかシエラの暴走に慣れきったゆえの睡眠ですね、あときっと謎の達成感も感じているかもしれません(ФωФ)
色々気付いてないの、シエラだけなので⋯!!
そんな彼にもきっと最後には少しだけご褒美が⋯ある、かも⋯?です笑
どうぞよろしくお願いします~!
感想ありがとうございました!