8 / 8
お家デートという概念
しおりを挟む
「お家デートをしましょう」
「え?」
案の定というか、もはやロベルトらしいというか。
流石に初夜を過ごした次の日に朝から乗馬なんていう鬼畜なデートは成立しなかったものの、相変わらずロベルトの提案するデートは予定が詰め詰め。
“休みは1ヶ月しかないって言うけどさぁっ!?”
私のために必死に取ってくれた連休というのは嬉しいが、一日にこなすデートは一日分にして欲しいと思うのは私がワガママなのだろうか。
“絶対違うはずよ!!”
一緒に過ごす時間の一分一秒を大切にしようと思ってくれているのは嬉しいし、その気持ちは正直くすぐったくて心地良い。
だが、だてにぐうたらして生きてきた訳ではないのだ。
体力の限界値が違う。もう、ほんとに。
だが、私とて今は立派な愛され妻だし、何よりも私だってロベルトと一緒にいるのが嫌な訳などなく――
「だからここで、お家デートよ!」
「な、なんだ? それは」
「リルクヴィスト家の祖先から受け継がれているぐうたらデートのことよ」
「そ、祖先から……」
流石チョロベルト。
真っ直ぐ見つめて伝えると、彼もド真面目な顔をしごくりと唾を呑んだ。
「で、そのデートは何をするんだ?」
「何もしないわ」
「何もしない?」
「そう。何もしないということをするデートよ」
「は、はぁ……?」
“考える時間を与えてはダメよ、リネア! ぐうたらを守らなきゃ!”
「ただのんびりと、一緒にいることを楽しむの」
「一緒に……」
「そう。そういうデートは、夫婦でしか許されないわ」
「え」
「付き合いたての恋人同士がそんな隠居なことをしてどうするの? いわばこれば夫婦にのみ許された特別なデートよ」
「夫婦に、のみ……」
わざわざどこかに行かなくても一緒にいれるだけでいい。
ついでに惰眠を貪れたら尚いい。
そんな本音と下心が少しだけ恥ずかしかった私は、そのちょっとした部分を誤魔化すようにそう言い繕った……結果。
「……つまり、恋人ではなく夫婦にだけ許された行為をしようって、ことか?」
「えぇ、そう…………、え?」
「いや、こんなことリネアから言わせて悪かった。思えばはじめての夜もリネアに連れ込まれたんだったな」
「ま、待って。嫌な予感がするから待って」
「あぁ、ちゃんとわかっている。今日は二人だけでベッドで過ごそう、つまりお家デートだな」
「それベッドデートじゃない!?」
ふわりと微笑むロベルトの笑顔はどこまでも純粋で、だからこそ本気でそう思っているのだと察した私は一気に青ざめた。
理由はもちろん、つい先日も体がピクリとも動かないくらい求められたばかりだったからで――
「ごめん! 違う、違うから、そうじゃないの、いい? 私はデートの内容を小刻みにして欲しいってことで!」
「小刻みに動いて欲しいってことか?」
「なんで!? どうしてそうなるの!? デートよ、デートの内容を」
「お家デートで、小刻みだろ?」
「違う違うちがぁぁぁう!!」
「大丈夫だ、妻の願いは叶えよう」
にこにことしながら私を抱き上げたロベルトが向かうのは部屋の奥。
どう考えてもベッドの方で――……
“叶わない! これ絶対叶わないやつだ!”
私は今日も、明日くるだろう筋肉痛のことを思い項垂れたのだった。
「え?」
案の定というか、もはやロベルトらしいというか。
流石に初夜を過ごした次の日に朝から乗馬なんていう鬼畜なデートは成立しなかったものの、相変わらずロベルトの提案するデートは予定が詰め詰め。
“休みは1ヶ月しかないって言うけどさぁっ!?”
私のために必死に取ってくれた連休というのは嬉しいが、一日にこなすデートは一日分にして欲しいと思うのは私がワガママなのだろうか。
“絶対違うはずよ!!”
一緒に過ごす時間の一分一秒を大切にしようと思ってくれているのは嬉しいし、その気持ちは正直くすぐったくて心地良い。
だが、だてにぐうたらして生きてきた訳ではないのだ。
体力の限界値が違う。もう、ほんとに。
だが、私とて今は立派な愛され妻だし、何よりも私だってロベルトと一緒にいるのが嫌な訳などなく――
「だからここで、お家デートよ!」
「な、なんだ? それは」
「リルクヴィスト家の祖先から受け継がれているぐうたらデートのことよ」
「そ、祖先から……」
流石チョロベルト。
真っ直ぐ見つめて伝えると、彼もド真面目な顔をしごくりと唾を呑んだ。
「で、そのデートは何をするんだ?」
「何もしないわ」
「何もしない?」
「そう。何もしないということをするデートよ」
「は、はぁ……?」
“考える時間を与えてはダメよ、リネア! ぐうたらを守らなきゃ!”
「ただのんびりと、一緒にいることを楽しむの」
「一緒に……」
「そう。そういうデートは、夫婦でしか許されないわ」
「え」
「付き合いたての恋人同士がそんな隠居なことをしてどうするの? いわばこれば夫婦にのみ許された特別なデートよ」
「夫婦に、のみ……」
わざわざどこかに行かなくても一緒にいれるだけでいい。
ついでに惰眠を貪れたら尚いい。
そんな本音と下心が少しだけ恥ずかしかった私は、そのちょっとした部分を誤魔化すようにそう言い繕った……結果。
「……つまり、恋人ではなく夫婦にだけ許された行為をしようって、ことか?」
「えぇ、そう…………、え?」
「いや、こんなことリネアから言わせて悪かった。思えばはじめての夜もリネアに連れ込まれたんだったな」
「ま、待って。嫌な予感がするから待って」
「あぁ、ちゃんとわかっている。今日は二人だけでベッドで過ごそう、つまりお家デートだな」
「それベッドデートじゃない!?」
ふわりと微笑むロベルトの笑顔はどこまでも純粋で、だからこそ本気でそう思っているのだと察した私は一気に青ざめた。
理由はもちろん、つい先日も体がピクリとも動かないくらい求められたばかりだったからで――
「ごめん! 違う、違うから、そうじゃないの、いい? 私はデートの内容を小刻みにして欲しいってことで!」
「小刻みに動いて欲しいってことか?」
「なんで!? どうしてそうなるの!? デートよ、デートの内容を」
「お家デートで、小刻みだろ?」
「違う違うちがぁぁぁう!!」
「大丈夫だ、妻の願いは叶えよう」
にこにことしながら私を抱き上げたロベルトが向かうのは部屋の奥。
どう考えてもベッドの方で――……
“叶わない! これ絶対叶わないやつだ!”
私は今日も、明日くるだろう筋肉痛のことを思い項垂れたのだった。
74
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
(完結保証)大好きなお兄様の親友は、大嫌いな幼馴染なので罠に嵌めようとしたら逆にハマった話
のま
恋愛
大好きなお兄様が好きになった令嬢の意中の相手は、お兄様の親友である幼馴染だった。
お兄様の恋を成就させる為と、お兄様の前からにっくき親友を排除する為にある罠に嵌めようと頑張るのだが、、、
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました
えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。
同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。
聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。
ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。
相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。
けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。
女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。
いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。
――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。
彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。
元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。
騎士団長の幼なじみ
入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。
あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。
ある日、マールに縁談が来て……。
歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
楽しかったです🤭
ekuku様
お読みくださりありがとうございます!
わぁ、楽しんでいただけたようで嬉しいです(*^^*)
うっかり面倒くさいこ⋯げふんごふん、大変なことになっちゃうリネアですが、無事(?)両想いになってもきっとこの詰め込みデートは終わらないと思うので、これからはバカップルとして体力をつけつつ昼寝も挟んでロベルトと過ごしていって欲しいです笑
いや、きっとそんな毎日を過ごすはず⋯!
そんなちょっと残念な二人を見守ってくださりありがとうございました!