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第2話「始動する運命」
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血と鉄が焦げる匂い
そんな風に戦場の場というのは表現されるが、やはり表現と現実は違うようだ。
血の匂いも何かが焦げるような匂いもしない
ただただ「聴こえる」のだ。
悲鳴や怒号なんてちゃちなものなんかではなく、もっと確実でどんな者であろうと恐れる音・・・「死」の足音がはっきりと聴こえてくる。
そんな薄れた感覚でも戦う者の声がうっすらと拾い出せた。
『医療班!僧侶たちはどうしたんだ!?見当たらんぞ!』
『それが・・・魔物の最初の一発で大半の兵が命を落としました。』
『な...にぃ?』
そう聞こえた後「バスン!」という切断音を境に兵士たちの声が聞こえなくなった。
人間の決死の攻め込み・・・それは突撃から3分足らずで全滅の最後を迎え入れた。
...........................
.....................
...............
..........
「ということがあったんだよ20年前に、どうだ 常識を知らねー酔っ払いにも理解できたか?」
聞き終わると黒い男は腕を組んで何か考えてる様子だ。
何を言い出すのか待っている間に傷のある男は黒い男を見る
頭にはバンダナというかターバンというか、なんなのかよくわからない布が巻かれ
どこで見つけたのかドクロの装飾があしらわれた趣味の悪い腕時計
それに、見てるだけで吸い込まれそうな程に真っ黒な上着を着ている
あまり趣味はよろしく見えないが、黙っていると本当にただの美麗な青年だ そこにあるだけで見入ってしまうような・・・まるで一つの芸術か何かという表現がよく当てはまり どんな服でも似合って見える。
観察をしていると考えがまとまったようで、もう一度黒い男は口を開く。
「そんなもんただの昔話だろ。今を生きてるオレ達にはなんもカンケーない!そんでもってオレは酔っ払いじゃねえから」
「数分考えてそれかよ」
傷の男はあきれてしまう
それを横目に黒い男はグラスを手に取り一気に飲み干すとニヤリと笑った。
「フフッ人間の人生は短かい・・・何もせずにいるのはもったいねえ、そう思わないかい?」
その笑みはまるで闇に包まれた崖の深淵をのぞいているかのような感覚を与える 不気味だ
だが、それに怯まず傷の男は言葉を返す。
「うるせえな、俺はもうすでに一度【死んでる】んだ、情けねぇことにもう戦うのが怖いのさ、剣を握るだけで ほら力が抜けてきちまう・・・」
そう言うと傷の男は椅子の下から護身用のための刃渡り60センチほどの剣を引っ張り出した。その手はカタカタと震えていて今にもその剣を落としてしまいそうだ。
だが、そんな情けない姿を見ても黒い男はその不気味な笑みを絶やさない。
「知ってるよ」
「どう言う事だ?」
「あんたがあの軍・・・確か ええと、そう、『頂正軍』だったかな?アレに参加してたのをオレは知っている」
「どういう事だ なぜ俺が『頂正軍』に参加していた事を知っている!!あの軍に参加した者は全員死んだとみなされて戸籍から名を消されているんだぞ!」
カタカタと手の震えは大きくなる、なぜだか分からないが、しかし感じるのだ
こいつは危険だと!
「どういう事だ、も何も『頂正軍』を全滅に追いやったのはこのオレ44代目魔王候補の1人だった男『レイヴン』だからな」
黒い男はそう言うと頭に巻いていた布を取り捨てた
露出させられたひたいには二本の角が・・・そして口の中にはどんな刃物よりも鋭い牙が奥までズラリと並んでいた。
「う......うおおおォォォォオオオ!!!!」
傷の男はまさに20年ぶりに刀をその鞘から抜き放つ 手からは震えが消え、代わりに熱した鉄のような殺意をもって目の前にいる魔族に斬りかかる。
その刹那に感じた「俺は恐怖に震えていたのではなかったのだ!悪を斃すため、その荒ぶる殺意を温存していたのだ」と、そう感じる。
その刃は・・・その殺意はレイヴンに届くのか・・・
その一閃こそがこの傷の男『ゼルク』の【始動】の時だった
To Be Continued→
そんな風に戦場の場というのは表現されるが、やはり表現と現実は違うようだ。
血の匂いも何かが焦げるような匂いもしない
ただただ「聴こえる」のだ。
悲鳴や怒号なんてちゃちなものなんかではなく、もっと確実でどんな者であろうと恐れる音・・・「死」の足音がはっきりと聴こえてくる。
そんな薄れた感覚でも戦う者の声がうっすらと拾い出せた。
『医療班!僧侶たちはどうしたんだ!?見当たらんぞ!』
『それが・・・魔物の最初の一発で大半の兵が命を落としました。』
『な...にぃ?』
そう聞こえた後「バスン!」という切断音を境に兵士たちの声が聞こえなくなった。
人間の決死の攻め込み・・・それは突撃から3分足らずで全滅の最後を迎え入れた。
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「ということがあったんだよ20年前に、どうだ 常識を知らねー酔っ払いにも理解できたか?」
聞き終わると黒い男は腕を組んで何か考えてる様子だ。
何を言い出すのか待っている間に傷のある男は黒い男を見る
頭にはバンダナというかターバンというか、なんなのかよくわからない布が巻かれ
どこで見つけたのかドクロの装飾があしらわれた趣味の悪い腕時計
それに、見てるだけで吸い込まれそうな程に真っ黒な上着を着ている
あまり趣味はよろしく見えないが、黙っていると本当にただの美麗な青年だ そこにあるだけで見入ってしまうような・・・まるで一つの芸術か何かという表現がよく当てはまり どんな服でも似合って見える。
観察をしていると考えがまとまったようで、もう一度黒い男は口を開く。
「そんなもんただの昔話だろ。今を生きてるオレ達にはなんもカンケーない!そんでもってオレは酔っ払いじゃねえから」
「数分考えてそれかよ」
傷の男はあきれてしまう
それを横目に黒い男はグラスを手に取り一気に飲み干すとニヤリと笑った。
「フフッ人間の人生は短かい・・・何もせずにいるのはもったいねえ、そう思わないかい?」
その笑みはまるで闇に包まれた崖の深淵をのぞいているかのような感覚を与える 不気味だ
だが、それに怯まず傷の男は言葉を返す。
「うるせえな、俺はもうすでに一度【死んでる】んだ、情けねぇことにもう戦うのが怖いのさ、剣を握るだけで ほら力が抜けてきちまう・・・」
そう言うと傷の男は椅子の下から護身用のための刃渡り60センチほどの剣を引っ張り出した。その手はカタカタと震えていて今にもその剣を落としてしまいそうだ。
だが、そんな情けない姿を見ても黒い男はその不気味な笑みを絶やさない。
「知ってるよ」
「どう言う事だ?」
「あんたがあの軍・・・確か ええと、そう、『頂正軍』だったかな?アレに参加してたのをオレは知っている」
「どういう事だ なぜ俺が『頂正軍』に参加していた事を知っている!!あの軍に参加した者は全員死んだとみなされて戸籍から名を消されているんだぞ!」
カタカタと手の震えは大きくなる、なぜだか分からないが、しかし感じるのだ
こいつは危険だと!
「どういう事だ、も何も『頂正軍』を全滅に追いやったのはこのオレ44代目魔王候補の1人だった男『レイヴン』だからな」
黒い男はそう言うと頭に巻いていた布を取り捨てた
露出させられたひたいには二本の角が・・・そして口の中にはどんな刃物よりも鋭い牙が奥までズラリと並んでいた。
「う......うおおおォォォォオオオ!!!!」
傷の男はまさに20年ぶりに刀をその鞘から抜き放つ 手からは震えが消え、代わりに熱した鉄のような殺意をもって目の前にいる魔族に斬りかかる。
その刹那に感じた「俺は恐怖に震えていたのではなかったのだ!悪を斃すため、その荒ぶる殺意を温存していたのだ」と、そう感じる。
その刃は・・・その殺意はレイヴンに届くのか・・・
その一閃こそがこの傷の男『ゼルク』の【始動】の時だった
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