世界を半分やるから魔王を殺れ

KING

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第3話「剣術VS魔術」

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ガキン!と鉄同士を勢いよくぶつけたような歪んだ衝撃音がにぎわっている酒場を静まりかえらせた。
酒場の全員の視線は黒の男『レイヴン』と傷の男『ゼルク』に注がれている。
「て、てめぇぇぇ......!」
キレているのは刃を向けられたレイヴンではなく斬りかかった本人ゼルクであった。
「おいおい、いきなりだな」
レイヴンの体には刃が届いていなかった、代わりに刃を受け止めているのはレイヴンの左腕だ。
ギギギギと鉄がきしむ程のパワーで押し付けられているが肉体どころか衣服にすら傷をつけていない。
「刃が通らねえ・・・チッ、【魔力】で腕を護ってやがる」
そこでゼルクは剣を引き、体も数歩分 後ろに退く
突然の一撃にも怯えず逆に嬉しそうな顔をしているレイヴン、服をパンパンと払うと笑い出した。
「ハハハハハハハハハ!!ますます気に入った!!そうそう!これだよ、これこれ!はちきれそうなそのパワー!体躯に見合わないそのスピード!そして、芸術の域に達している剣の技術!オレが求めてる人間そのものだ」
手放しでレイヴンはゼルクの事を褒め称えるしかし、ゼルク本人は対話する気は無いようで、その刀を再度構える。
周りを見渡すと酒場の二階に避難した客たちが好奇の目を向け、「これで終わりか?」
「びびっちまったかぁー!?」などと煽っていて、どっちが勝つかの賭けなんかも始めているようだ。
「黙りやがれッ!」
酒場の客に言ったのかレイヴンに言ったのか分からないがゼルクはそう叫びながら剣を振り下ろす。
さっきの斬撃と寸分違わずまっすぐに素早く正確に刃がレイヴンの身体に降ろされていく。
「確かにすごいが、オレ程ではねえな」
レイヴンは手を刃に向けると手を広げて刃を片手で掴み取ろうとした。
だが、
「やはり引っかかったな、そして喰らえ 俺の剣術を!『飛燕』ッ!」
剣は突然軌道を変え、ヒラリと腕をかわすと鋭く腹部へ振り払われる。
「なんだ!?」
しかし、レイヴンは超速でそれに反応した
もう一方の出していない腕を使い、手で掴もうとする
だが、剣はまるで生きているかのような変則的な動きをしてまたもや腕をかわす。
そして、ゼルクはもう一歩踏み込み レイヴンの胸のあたりに刃を突き出した。
「うっおぉぉ!?」
思わず声を上げてバックステップを踏み      紙一重でその剣をかわす。
「フンッ!」
が、その一瞬を狙ってゼルクは近くのイスを数個レイヴンの方へ蹴り飛ばした。
「えげつないねぇ!好きだぜ そういうの ウシャアアアアア!!!!」
よく分からない叫び声とともにレイヴンは拳を連発する、イスを拳がとらえると木っ端微塵になりあたりに粉塵が舞う
その派手な展開にギャラリーは「おぉっ」と盛り上がった。 
(確かに視界は悪くなった、だが視界をわざわざ悪くしたってことは逆にその方向から突っ込んでくると言ってるも同然!)
そう思った矢先に目の前の粉塵に黒い影が映り込んだ。
「考え甘えんだよ!」
その影にパンチをくらわす、しかし、その感触は人間の感触ではなかった。
「コレは...酒ビンか!」
そこからいくつもの黒い影が見えるそれを律儀に全て拳で撃ち落とすがやはり全て酒ビンであった、足元や衣服を酒が濡らしていく。
すると、粉塵の向こうからシュボッというマッチを擦る音が聞こえる。
       酒     マッチ
「ハッ!?まさか‼︎」
「その......まさかだぜ」
レイヴンの周りの視界の悪さは火炎と共に
ぶっ飛んだ。
「ぬぁぁぁ!引火させやがったッ!」
レイヴンの周りにぶちまけた酒に入っているアルコールは引火性が高い
しかも、ゼルクが放り投げたのは特に引火しやすいと言われるワインだった。
「グゲガァアアッ!!」
一瞬にして火が燃え上がり中から火だるまになったレイヴンが飛び出した。
「どうだ、苦しいか?」
冷徹な視線を向けながらゼルクはレイヴンに近づいて行く
そして火だるまになっている黒い塊に剣を向ける。
20年前に行われたあの惨劇によって兵士達はゼルクのように奇跡的に一命を取り留めた者を除いて1500人全員の命が葬り去られたのだ、その中にはゼルクの友達や恋人なんかもいた。
それを失った年から感情がどんどん薄まってきている、まるで絶望から逃げるために更に深い穴に逃げて行くように。
そして、その敵の主犯者が目の前にいるのだ
何もしないはずがない。
「返してもらうぜ...この20年間の感情を!お前を殺したその瞬間、俺はッ!また歩き始められるんだ!」
向けた剣を上に振り上げる
「さらばだ......我が因縁......!」
ヒュンと剣が空を裂き炎の塊を一刀両断する
かと、思われた。
炎の中から手が飛び出し刃を掴む。
「やっと捕らえたぜぇぇーー!」
慌てて引っこ抜こうとするが、万力のような力で掴まれており、逆に剣の方が悲鳴を上げる様にきしんだ。
「なんだとぉ!?」
「一手上を行ったのはどうやらオレのようだな!!」
刃を掴む手とは逆の方の手を使いレイヴンはまるで服を脱ぐかのように、はたまた果物の皮を剥くかのように炎を体からズルリと引きはがした。
その白い肌には火傷ひとつなく代わりに角から電気のようなエネルギーが走っている、それこそが『魔力』の源であり正体。
「さあ、どうする?このまま無理矢理にでも言うことを聞かせることもできるが・・・オレはあんたの口から協力するって言葉を聞きたいんだ」
「クソ!誰が、誰が!お前みたいな非道なやつに力を貸すか!」
「非道・・・ねぇ、悪いことをしたが一応あれにも訳があるんだよ」
「知るかよ どんな理由があろうと貴様は俺の剣術『飛燕』によって斬り裂かれる運命からは逃れることはできねぇんだぜ!」
そう言ってゼルクは剣を真っ二つに折った。
強力な力で掴まれているので付け替えカッターの刃のように簡単に折ることができた。
そして、半分ほどの長さになった剣を構えてまた間合いを図る。
「たとえ剣を折ろうと俺の信念は曲げない・・・差し違えてでも貴様を葬る!」
「そうかよ、しょうがねーなぁぁ~~だったらこっちも実力行使でいかせてもらう」
レイヴンの体から闇よりドス黒いエネルギーが間欠泉のように溢れ出てくる
気に押され酒場全体が揺れ始めた。
二階にいる観客達はすぐさま何かにつかまりなんとか態勢を保っている状態だ。
「覚悟は済ませたか?おっさん!」
「後悔しても遅いからな?バケモン!」
一瞬の溜めがあったその後まるで合図があったかのように2人は同時に踏み出す。
そして、その瞬間に、また合図があったかのように何かが酒場の壁を突き破り入ってきた
「「なんだ!?」」
その音に驚き2人は自分の間合いの倍以上も
飛び退いた。
観客達も「なんだなんだ」とまたざわつき始める。
「フゥゥゥ、見つけたぜぇぇぇ第一王子
レイヴン【兄さん】よぉぉぉ!」

To Be Continued→
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