世界を半分やるから魔王を殺れ

KING

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第20話「ハイヴォルテージ」

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何度目かわからない衝突音が虚空に響いた
いや、響いてはいない
ぶつかり合った双方は光の速さで動き続けている
闘うこの二人にとって音速は遅すぎるのだ。
「『飛燕流...光一閃』!」
直線的なフォームで繰り出されたゼルクの斬撃はホークの首を狙う
「当たらねぇよ!」
ホークはその一閃を上に躱すとジェット噴射で方向転換して拳を向ける
だが、ゼルクの太刀筋は変化した
腕の直線を描く動きは湾曲してホークの拳を弾く
さらに太刀筋は二度目の変化を見せる 飛燕流の一撃は何度だろうと敵の喉元を掻っ切るまで止まらない
「チッ!」
寸でのところで首を引いて避けると更にフォームが変わって追撃の姿勢を取ったのでホークは『ジェット.ラグ』に魔力を送り込んで空高く舞い上がった
「休む暇はないぞ...ホーク!」
ゼルクも続いて地面を強く蹴り出し跳び上がると
ホークの懐に飛び込む。
「ぶっ飛ばせ!『ジェット.ラグ』」
ゼルクが飛び上がったと同時に魔力装甲は紫色の火花を上げて推進力を生む
流星の如きそのパワーとスピードでホークの体はゼルクに向かって突進して行った。
「ヌァアッ!!!」
しかし、『感覚夢双』によって強化されたゼルクの両腕はその最強のパワーを掴み 真正面から受け止めた。
「おぁぁああああああ!!!!!!」
そして、そのまま上空300m程の高さから地面へ投げつける
「クッソッ!!」
下に落ちる寸前ホークは地面に向かって魔力を噴出させる
そこで落下は止まり 体制を立て直すことができるようになった
ホークがそう思った瞬間
ゼルクがその驚異的脚力で大気を蹴る。
「隙だらけだぜ!」
剣を構えた姿勢で急降下し、ホークの腹を貫く
「ゲッ・・・」
装甲に亀裂が入り、勢いそのままで地面に叩きつけた
「ウッグオォオォオオ...!!」
十数tの圧力が掛かりホークの肺からは空気が漏れて妙に低い声が出た
しかし、それよりもホークに危機感を覚えさせたのはこの攻撃を受けて痛みを全く感じなかった事だ。
(し...しまった...これは...)
「『無感覚』」
ゼルクの劔はホークの体から感覚を奪っていく 中腹部からみぞおちにかけての感覚は完全にシャットアウトされている
このまま心臓の感覚を麻痺させて仕舞えば魔力の供給は止まり いくら魔族の王子でも心臓麻痺を起こして死ぬだろう
しかし、そこまでいくにはホークの抵抗を計算に入れると不可能に近かった
危機感に煽られた生物がまず取る行動はその危機から逃げる事だ
だが、魔族は違う その危機から逃げるのではなくその危険を自らの力で破壊する
「二度とその手には乗るか!」
自分の上にまたがるゼルクを感覚が薄れる右の拳で殴り飛ばした
「ぐ...!」
ジェット噴射と同時に殴ったパワーは普通に殴るのとはまた別格の破壊力だ
その力をまともにくらったゼルクはいくつもの建物にぶつかりながら吹っ飛んでいく。
「まだ体がちょっと痺れてるが...まぁいいさ『ジェット.ラグ』完全解放だ...!!」
ホークは屈み込み、装甲の至る所に配置されたターボエンジンに許容量限界ギリギリの魔力を送り込む
エンジンは爆発寸前の風船のように膨れ上がった
ギィィィ...と、鉄線を鉄の弦で弾いているような高い音が鳴り
魔力の稲光がその体を奮い立たせ 足が地面から離れた瞬間...

「ウオアア!!」
ゼルクは転がりながらその勢いを止めるため『永命剣』を地面に突き刺した
絶対に壊れない不死身の剣だ
どんなに負荷を加えようとも傷一つつかない
地面をガリガリと削り取りながらやっと止まれた時には元の位置より700mは吹っ飛ばされていたようだ
腹に血が滲んでいる、骨も何箇所か折れているだろう それに全身傷だらけだ
それでも『感覚夢双』によって痛みを感じる事はない
それどころか傷がつけばつくほどその傷口から魔力が溢れ出てくる 力が漲ってくる
「このくらいじゃ俺の心は折れねえよ...」
誰に言ったわけでもなく自分に言い聞かせるように呟くと 足に相当量の魔力を送り込む
筋肉がはち切れそうなほどに膨れる
その膨張は筋肉に金属のような硬度と力を与え 光の世界に足を踏み入れる。
「『ジェッッッットォォォ...」
その時だった
ゼルクが脚に魔力を込めた瞬間 圧倒的魔力のパワーが瞬間移動とも言えるスピードで背後に回って来る
「こいつ...さっきより格段に速く...」
「ブラスタァァァァアア!!!』」
振り返った時には拳がもう眼前に来ていた
正当法では間に合わない
ならば、まともじゃないやり方でやるしかない
「うぐぁぁ...!」
身体をやや無茶な角度に捻り 向かって来る拳を掴み取る
ゼルクの全速力の腕の動きはホークのスピードをついに上回ることに成功したのだ
 しかし、ゼルクが冷や汗をかいているすぐ目の前でホークはその装甲のマスクの下で満面の笑みを浮かべていた。
「オレの勝ちだ!!!!」
瞬間 ゼルクの掴んでいる拳が開く
目の前には掌だ
しかも、そこには魔力がこれでもかという程に圧縮されていた 掌にはジェットエンジンの噴出口がある つまりそれを開いたという事は
「はっ!?おい、これは避けられな...」
次の瞬間掌から圧縮されたエネルギーが解放される
ゼルクはその力の波動に飲まれ 吹き飛んでいく
そのパワーはビルも壁も御構い無しに吹き飛ばしながら進行方向にあるものすべて破壊していく。
「ん...ぐぁあ...アアアアッ!!」
ゼルクは真っ白になった視界の中『ジェット.ブラスター』の破壊の渦の中 精一杯の力を絞り出し『永命剣』を振る。
「グゥゥゥ!あああ!!!」
全てを浄化するその聖なるエネルギーはモーゼが海を割ったように波動の波を真っ二つに切り裂いた。
「ハァ・・・ハァーハァー、ちくしょうめ」
だが、その切り裂いた波動の対岸にはホークが堂々と佇んでいた。
ゼルクが抵抗して『ジェット.ブラスター』を消し去ることを見越していたのか既に追撃の姿勢をとっている
「マズイ...体制を立て直す時間が無い」
その考えが頭を過るよりもさらに速く
ホークのスピードは動体視力を上回り、その一撃をゼルクの顔面に叩き込んだ
「『ジェット.ブラスター』!!!」
「ブッ......!」
今度は直撃だ、しかも拳からジェット噴射の魔力が発されてゼルクを再び飲み込んだ
「ああっははははははは!!!どうだ!!」
勝利を確信したホークは飛んでいく敵の姿を見ながら高笑いする
だがどうだ、その笑い声が止むよりも早く ブラスターのエネルギーは爆発を起こし、そこから打ち上げ終わった花火のように消えてしまった。
「ははは...あ?」
煙が上がっている
爆発があったのだ当然だろう
しかし、それはおかしいのだ
今はゼルクとホークの感覚は加速し過ぎて全てが停止しているようにしか見えない
だから、煙でも停止しているので上がる事はなく発煙元で止まっているはずだ。
なのに、爆発の起きた場所で絶えず煙は上がり続けている これは一体なんなのか?
それは...
「軽い...軽いんだよ、拳が!!!」
ゼルクだった 昇り続ける煙の正体はゼルクの魔力であった
突然ゼルクの体から発される魔力の総量が上がった 魔力のパワーが周りの全てを巻き込んで煙のようになっているのだ そのせいでゼルクの姿も見えない。
「な...テメェ なぜ生きていられる?直撃だったぞ!?」
思わずホークは足を止めてしまう ゼルクもそれに合わせて歩を止めた
それと同時に止まっていた時間は動き出し 辺りで無数の爆発や破壊音が響く
ここまでの攻防は限りなく0に近い時間の中で行われていた
全てが一瞬のうちにこなされていたのだ
その蓄積された時間の破壊力は辺り一面を魔力と衝撃波で包み込んだ。
「ああ、直撃だった...それにものすごく効いた」
街中が地震のような地響きを起こしている最中 それを起こした張本人達はそれを気にも留めず闘争本能剥き出しで向き合っている。
「だがな...お前は明らかにパワーダウンしている」
ホークは言葉を返さずに自分の拳を見つめる
その手は油をさしていない機械のように動きの調子が悪くなっていた。
「俺が感覚を奪っておいた お前の腕力はもう恐るに足らん!」
力が落ちているとはいえ『ジェット.ブラスター』の直撃は相当な威力だ
二発、さらにそのうち一発をまともにくらったゼルクの全身から血が止まらない
『感覚夢双』の限界も近づいている 限界を超える能力なのに限界というのもおかしいがとにかくもう魔力を保つのもやっとの状況だ。
「いくぜ・・・ホーク ラスト0秒付き合ってもうぞ」
だが、まだまだゼルクの闘志は収まらない
その身も心も剣になったように目つきも感覚も鋭く尖り研ぎ澄まされている。
「『ジェット.ラグ』ッ!!」
先手を取るのはホークだ
この男の思考は速さこそ正義という考え方だ
全てを置いてきぼりにするそのスピードと魔力装甲の空を飛ぶ特性から人々は彼を『光速の翼』と呼ぶ
それを見切り、ゼルクも手に持つ『永命剣』に魔力を注ぎ込む まるで煙のように立っていたエネルギーはこれまでにないほど剣の切れ味を上げる。
(遅い...?)
異変を感じる ゼルクの目から見たホークの動きが鈍ったように見えるのだ
これはドーパミンなどで起こるような錯覚ではない
かと言ってホークの感覚を奪っているのは上半身の一部のみで下半身には達してはいない
ならば何か?
(俺が速くなっているのか...?)
その事が頭の中に浮かんだ
確かにそれなら辻褄が合う
それならどうしてだ? いや、今は考えている時間は無い
「トドメをくれてやる!!」
向かってくるホークを視界に捉える 
正々堂々というか愚直というかホークは真っ直ぐに向かってくる
ゼルクも剣と拳を握り 構えた。
「こっからは...ケンカだな!」
迫るホークが拳を撃ち出す
ゼルクにはハッキリと見えている
身を引いてそれを躱し
上半身を深く沈ませ
懐に飛び込んでアッパーカットをくらわせる。
「バカな!こいつ、速くなってやがる!?」
強力な突きは魔力装甲『ジェット.ラグ』のマスクにヒビを入れた
「流石に頭部の装甲は一番硬い作りになっているな...ならば」
懐からゼルクは二発目の拳を放つ
今度の攻撃はホークの腹に撃ち込まれる
その攻撃はヒビではなく穴を開けることに成功した やはり特別硬いのは頭部だけで他の部分はゼルクのパワーがあれば破壊可能だ。
「やはり、強くなっている...俺の身体に何があったんだ?...まあいい、それは後だ今は全力を持ってこいつを負かす!!」
闘志と共に拳をぎゅっと握り込んだ。
「脳みそブチまけてやる!!!」
体勢を立て直したホークは再び攻めの姿勢を見せる
だが、ゼルクはいとも容易く
再び懐へ潜り込むと、相手を腕を弾き上げて
二度目のボディーブローを撃ち込んだ
二撃目は装甲が砕けているので生身の肉体へのクリーンヒットだ
「ゲッ...」
感覚が無いので痛みは感じてはいないだろうが ホークの口からは血が吹き出る
内臓が破裂したのか、かなりの量流れ出していた。
「これはトドメのためにとっておいてやるよ」
そう言うとゼルクは『永命剣』を上に放り投げた
先ほど述べたようにこの世界はゼルクとホーク以外動く事ができない空間になっている『永命剣』も例外ではなく空中でピタリと停止した。
「テメー...オレの前で得物を捨てるとは 舐めた真似をッ!」
「この行為は油断でもなければ傲慢でもない 俺の予告でもあり...次の段階への試練だ!」
歯をくいしばるような表情を見せると
地を踏み切って、ホークよりも先に手を出した。
「うおおおお!!」
さっきのと合わせて三発目の拳がホークに突き刺さる
間髪入れずに四発目が
それと同時に五発目も
それが決まる頃には六発目が準備されている
止まることのない攻撃の嵐だ。
「どうした、抵抗しねぇのか?しないってんなら・・・」
装甲に穴を開けながら拳の調子を確かめるとニッと笑う
「俺のパンチで蜂の巣にしてやるぜ」
砕けた装甲が散っていく
「うっとーしい!!」
殴られながらもホークは目の前にいるゼルクに両手を向け、魔力を装填した。
「『ツイン.ブラスター』!!!」
両掌からエネルギーの爆風が吹き出る
拳の連打により全身を包む装甲がヒビ割れて視界が閉ざされているが、全てを吹き飛ばすつもりでの攻撃ならば見えていなくても攻撃は当たる
そう考えての両掌での全力射出 ホークから数km先までを巻き込む
片腕でも十分驚異的だった『ジェット.ブラスター』は両腕を合わせることによってさらに別次元の強さを見せた。
「う...ッ!オオオオオオァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!どこだ!?」
しかし、ホークはまだ掌から『ブラスター』を発射し続ける
「まだ、気配が消えてねぇぇぇぇ!!!どこにいやがるッ!」
建物どころか地面ごと...その光速の肉体は地球を削る勢いで暴れ回る。
「探し物は俺か?」
物凄い衝撃と共にホークは頭から地面にめり込み、クレーターを作った。
巨大なクレーターの上に立つのはゼルクだ...だが、様子がおかしい
身体からはこれまでにないほどの魔力が噴き出て、筋肉細胞が短時間のうちに崩壊と再生を繰り返し、まるで一つの生命体だ
これまでにない身体の軽さ強さ 魂でも抜けたような開放感に逆にゼルクは戸惑っていた。
「いつもなら既に体がおじゃんになっててもおかしくない頃合いだが...これは...まだまだ力が湧いて来る!!『覚醒』ってやつか!こいつは!?」
今なら何だろうとできる 光速ではこの停止の世界を突破することは出来ない
「これは光速を越えた・・・“神速”だ!」
「ゼルクッ!!!!!!!!!!!!」
その宣言と同時にホークはめり込んだ地面から飛び上がる
突然の動きに、強力かつ光速の拳がゼルクの頬に撃ち込まれた。
「ちっ......まだ、こんな力が残ってたか...」
「『ジェットオオオオオオオオ......」
その拳が輝く 魔力のドス黒い色に
「ブラスタァァァァァァァァ』!!!!」
その光に飲み込まれ再び吹き飛ぶ
「ぐおおおお...」
だが、ゼルクの異常な成長はそれを真正面で受けてなお踏みとどまっていた
凝縮された魔力の波をゼルクの力が搔き消す
それほどまでに圧倒的だ。
「こいつ...オレの渾身の一撃を受けたのに...なぜ倒れねぇ!!!」
一歩ホークは退いた...
誇り高い魔王家の血筋であるそのホークが退いた これは相当な異常事態だ
人間が単純な力比べで特級魔族を超えたその決定的瞬間である
「これはもう『感覚夢双』ではなくなった新しい『感覚』だ」
ゼルクは走り込むと一瞬ホークの視界から消えた
「!?」
そして、ホークが辺りを見回してゼルクの姿を確認しようとしているその時間
もう既にホークの体は自らの血と共に宙を舞っていた。
「『神感覚』」
その時 ゼルクの肉体は時間の概念を追い抜いた。
「.........あぐあ...ぁぁ」
装甲は砕け、骨も砕け...しかし、ホークの心は、闘志だけは砕けていない
空中でボロボロの体を一回転させると着地して折れた足で地を踏みしめ 痛めた腕を前に構える。
「負けるわけには...」
そう呟くが体力は もう爪の先の垢程も残っておらず 何かを口に出すだけで意識がトんでしまいそうだ
二人の足が止まり時が動き出すと また、街中に地響きが広がった。
「そうか...だが、人を幾人も殺したお前は許すことは出来ない 人間としてな」
そうしているとゼルクの頭上に何か細長いものが落ちてきた
それを見ずに掴み取るとホークに向けて言葉を続ける。
「人間の反撃開始だ...!」
その手に持たれるのは世にも美しき『永命剣』それだった
ゼルクは剣を投げてからここに至るまでのホークの動きを予測し
殴り合っているうちに元の場所へと知らず知らずの内に誘導する
そう、これまでの行動全てがゼルクの手のひらの上での出来事だったのだ。
「は...ははは...何言ってやがる オレ達魔族みてぇな姿しやがって」
破損した装甲の隙間からホークの血走ったいかにも追い詰められた獣のような眼が覗いた。
「なんだと?」
話している内にホークの魔力装甲が元の形に戻っていく
「最後まで気をぬくな...最期まで生を諦めるな最後の最期まで相手を睨み続けろ...親父がオレに言ってくれた言葉のうちで一番気に入ってる言葉...」
ビュウウウゥゥゥ...っと二人が居るところまで衝撃と暴風が届いてきた 破壊と衝撃までの間隔に時差がある まさに光速の時差『ジェット.ラグ』
その自らが起こした風に打たれながら双方は西部劇のガンマンのように自らの最速最強の技を抜き放つ。
「『ジェット.ラグ』!!!!」
「『飛燕流・奥義・零戦燕』!!!」
二人との間にある距離、5mはあってないようなものだった
超絶の速度で二人の距離はせめぎ合いながら縮む。
光速と神速が交わり魔力の赤黒い火花が飛び散り
そして、決着を告げるゴングのように重々しい音が鳴った
砂吹雪が舞い、二人の姿を隠してしまう
そこに影が立っていた
立っているのは勝者の影、敗者はそこに影を落とすことを許されはしないのだ。
「手応え・・・あったぜ」
息を切らすことなくそう言った
声に熱はこもっておらずいつもの油をさしていない機械のような冷たく不器用な言葉だ。
「ば・・・嘘だろ!?」
身を包む硬質の魔力が崩壊していく
ホークは地面に膝をついたままもう立ち上がれない
胸には深く消し飛ばされたような傷が入っており硝煙が立っている
「オレがやられるだと!?」
胸の傷が光を放って燃え始める
魔力が滅っされて熱を放っているのだ。
「うおおおお!!」
なんとか立ち上がり、ゼルクに手を伸ばすが
もう遅かった
脚が灰になって崩れ
腕もボロボロと崩壊していく
「くそぉ!!くそぉ!!ちくしょうッ!」
断末魔とも言えるセリフを叫ぶ
ホークの灰になった体は風に乗って消えていく
もう、逆転は不可能だ
それなのに必死に手を伸ばし、殺意ある眼差しを向けてくる様は狂人の域だ。
「もう楽になれ」
ゼルクの一振りがホークの首から上を切り裂き、吹っ飛ばした
呆気なく、静かに
陽に当てられた吸血鬼のようにホークは聖の力に包まれ
影も残さずこの世から消滅した。
「ふぅ~・・・」
ため息をつく
この闘いの勝利者はゼルクで決着がついた。
いくら激戦を繰り広げても最後は虚しく殺し合いに友情などは芽生えない ただそこには死があるのみ。
「あ...俺も もうダメだ...体が重い、1mmたりとも動きたくねえ...レイヴン見つけて早く直してしてもらわねば」
内臓が全て鉛にでも変わったかのように重い体を『永命剣』を杖にして前に進ませる
満身創痍の体力の極限状態の中
まだ、闘いの興奮冷めやらぬその時
すでに魔王の血筋達はこの崩壊の地に足を踏み入れていた。

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