世界を半分やるから魔王を殺れ

KING

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第22話「白夜の処刑人」

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刃の形をした光がレイヴンの肩を抉った
「ぐっ...」
斬られた痛みに、低く呻き声を上げる
それを見てパニッシュはニヤリと笑い さらに何度も短剣で空中を斬りまくった。
「『フラッシュパニッシャー』!!」
短剣が空を斬る度に刃の形をした光が発生してレイヴンに襲いかかった。
「『武装壁(ウォール)』!」
足元に魔力を流し込んで壁を作り攻撃を凌ぐ
だが、すぐに壁に亀裂が入り破壊される
「逃げてばかりではつまらんぞ!正面から来い!」
「負け戦はやらないタチでね」
レイヴンが両手を地面に添えると超巨大な壁が本体を中心に全方向に展開された。
「『武装超壁(アトランティス)』!!」
壁は大きくなっていくと同時に丸まっていき ちょうどレイヴンを包む半円状のドームの形になる。
「なんだ、また亀のようにこもるつもりか?無駄だ!」
閃光の斬撃が壁を滅多打ちにしていく
そのうち壁が薄くなり、3mほどの穴が開いた
パニッシュはそこに踏み入ると輝いた
「自らを密室に閉じ込めるとは...愚かな 背水の陣を気取るつもりか?」
パニッシュの輝きが全身を包み込んでいく
「そうかな、その背水が氾濫を起こして敵を一掃するかもしれねぇぜ?」
レイヴンが親指を下に向けると天井の形がグニャっと歪んだ。
「『武装針山(クレイモア)』!」
太さ30cmほどの針が壁から伸びて来る
だが、パニッシュの反応速度はそれを捉え
さらにはレイヴンの背後に光そのものとなって襲いかかった。
「判決を下す!」
体を包む光が解かれ中からパニッシュが顔を覗かせる その手に握られている処刑剣が審判と共にレイヴンの首に振り下ろされた。
「死刑!!!」
「それはお前だ!」
だが、高速の剣の一閃をレイヴンは躱した
攻撃が外れ、体制が不十分なパニッシュは まずい...と思い、体を光で包んでいく
「オラァァ!!!」
だが、それよりも速くレイヴンの拳がパニッシュを捉え
強烈なパンチ力はその体をドームの壁に叩きつけた。
「ば...バカな...」
驚愕の表情を見せるパニッシュにレイヴンは笑いながら近づいていく
「フッフッフッ...分かったのよ、お前の能力の弱点が」
「なんだと?」
「お前の能力『閃光』はあらゆるものを光の中に閉じ込めることができる能力だな?ナイフの斬れ味を光の中に閉じ込めて飛ばしたり自分の体を光の粒子に閉じ込めて光速移動したりとなかなか便利な能力じゃねぇか」
「......」
講釈をパニッシュは黙って聞いている 傷の治癒を図っているのだろうか
「だが、その能力の性質上体を光の中に閉じ込めた場合動きはどうしても直線的になってしまう、しかも一度光の外に体を出さないと攻撃ができないらしいな そうならばお前の攻撃は光速でなくただの高速になる違うか?それだったらオレでも簡単に防御できるぜ」
ここでレイヴンは言わなかったがドームに相手を閉じ込めたのも戦略だった
光が遮断され薄暗くなっているドームの中ではパニッシュが発する光はとてもよく目立つ 一瞬で移動されてもそれを感覚で追えばすぐに反撃に移ることができる。
「ならば、近づかなければいいだけだろう」
パニッシュはそう言って光に身を隠し 光粒子の波に乗ってドームの中を横切った
「近づくさ お前はオレからは逃げられない」
「ぬかせ、『フラッシュパニッシャー』!」
パニッシュが短剣を振り下ろす
(見える...ッ!)
その時レイヴンはすでに避けていた
いくら天才的な反応速度をもってしても相手は光だ普通は避けられないのでむしろ攻撃が完了するよりも速く避ける
「hey!そんなもんか?」
「生意気なぁッ!」
さらに何度も光の刃が飛んで来るがレイヴンの戦闘のカンはそれを物の見事にかわす 逆に刃がレイヴンを避けているようにも見えるくらいだ
躱し続けてレイヴンはパニッシュの元に走り抜ける
「『フラッシュ...」
「逃さねぇよ!」
パニッシュの体を光が包むその瞬間それを囲むように壁が発生して動きに制限をかけた。
「くそ...!どこかに逃げ場は...」
「『武装拳』!」
レイヴンの肥大した拳が壁ごとパニッシュを撃ち抜く
その体からはボキボキっと嫌な音が響いた
「ぶ......」
何度も転がりながらパニッシュは血を撒き散らすように吐き出す
「...ヴン...がはっ...レイ...ヴンンンン...」
「睨むなよ怖いじゃねえか」
吹き飛び転がるパニッシュに追いつき、その腹に丸太打ちのような蹴りをくらわせる
「......ゲボッ...!」
内臓に折れた骨が刺さったのだろうか、吐血の量が尋常ではないくらいに増えた
「な~んか、虐めてるみてえで気分が悪いけど...オレの夢のためだ恨んでくれるなよ?」
その冷たい眼を向けたままトドメの『硫炎』を右手に集め、突き出す。
「夢......だと?」
ピクリと反応するパニッシュ
レイヴンはその反応に気づかず『硫酸』を発射した
だが、その瞬間レイヴンの腕の辺りで強烈な光が見えたかと思うと右腕が弾け飛ぶ。
「世迷言を...言ってるんじゃないぞ!!」
パニッシュが血と気力を振り絞るように立ち上がるとレイヴンの体に再度謎の爆発が襲いかかる。
「ぐおおおお...オオッ!」
その爆発に押されてレイヴンはやむなく後退 パニッシュと距離を取る形になった。
「人間との共生...我らの父がそれを望んでおらず そもそも無理だということは...いくら貴様でも知っているだろう!?」
薄汚れた白髪を振り乱し低い声でレイヴンに話しかける その問いの返答を聞く前にパニッシュは光を発した。
「まあ、どうでもいい...これから死ぬのだからな...貴様は...!」
「はっ...グッ!」
爆発に身を爆ぜられ転がりながらレイヴンは血を流している
一気に形成逆転となったか、今度はパニッシュが見下ろしレイヴンが地に伏すことになってしまう。
「ハァーハァーハァー...お、惜しかったぜ」
「千載一遇の...チャンスだったのにな...だが、最後に立っているものが勝者だ...最後に輝いている者だけが支配者なのだ...!」
パニッシュの周りにフワフワと光る球体が浮かんでいる、レイヴンの体に炸裂した光と同じ形状だ
その光は中にあらゆる物を閉じ込める事ができる...
「その中身...爆弾か!?」
「今更知ったところで...」
口元に笑いを浮かべるとパニッシュはレイヴンを指差す
「もう遅い!!」
光の球はまさしく光速でレイヴンの四肢を吹き飛ばし腹をえぐり返して肉片を地面にばら撒いた
ポケットの中から爆発を閉じ込めた球体が無尽蔵に湧き出てレイヴンをその原型が残らない程に幾度となく破壊していく。
「まだ息は残しておいてやる...苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで...苦しみ抜いてから死ぬがいい」
「...嗜虐...しゅ...主義者...が...」
弾けて少ししか残らなかった声帯を使ってパニッシュを罵るがその声は逆にその心に火をつけただけだった
大の字に倒れて動かないレイヴンを見てパニッシュはニヤリとした
「幾らでも言え 貴様に残された抵抗はそれくらいしか残ってはいないのだからな」
動くことのできないレイヴンに近付くと屈み込み 短剣を剥き出しになった内臓に突き立てる
「グッッッッ!!!」
フォークでショートケーキを切るように短剣で内臓をちぎり取った
痛いという感覚はもう無くなっていて何か大切な物が消えていったという感覚がレイヴンにダメージを与える。
「貴様の内臓を順番に切り取って目の前に並べていってやる...普段は見られない物だ冥土の土産にしっかりその目に焼き付けて逝け」
そう言って笑顔で腹に短剣を突き刺す
その白い服と髪と角が血の紅に染まっていく
レイヴンの目の前に肉の質感を残した内臓が並べられていく
肝臓を地面に置き 腸を引きずり 膵臓に手をかける
まだ血管が体内と繋がっているので一命はとりとめているが 肺か心臓又は脳このどれかが体外に取り出されたら流石に魔族といえども生存は不可能だ
レイヴンの目には楽しげに鼻歌を歌うパニッシュの狂気が広がっていた
(ちくしょう...何が処刑人だ、こいつの方がよっぽど罪人だぜ)
声も出なくなり霞んだ視界の中で笑む狂気を前にしてもレイヴンは服従しないが 命が今 消されようとしている
どうすることもできない状況...
(だが、もう手は打ってある...!)
「さあ!内臓はほぼほぼくり抜いた お前の腹のなかには今何も残ってはいない 苦しんでいるか?ならば次はお待ちかねの処刑タイムだ どこを潰してほしい?脳をくり出すか?心臓を貫くか?肺を切り裂くか? 脳なら1回心臓なら2回肺なら3回 まばたきをしろ 光の速度をもってその部位を潰して そこでこの処刑タイムも終わりだ」
理不尽に物を言うと優越的な表情で短剣を頭、胸、肺の順に向けた
その処刑の提案にレイヴンは目を瞑る
パニッシュはそれを見ると肩透かしをくらったような顔になり 次の瞬間ナイフを握りしめた
「つまらん!!絶望の表情を見せないと言うのなら貴様の最期の表情を僕の光に閉じ込め 父への土産にしてくれる!!!」
光が暗いドームの中に広がると血と戦慄の光景を照らし出す
光は闇を駆け巡り突き抜けた穴から出て行く
しかし、その時
「うぐお!?」
パニッシュの振り上げた右腕が崩れて空気に流されていった
「これは!」
短剣も砂のように細かく分解されたようにパラパラと空に舞って崩れていく 手の方も手首からだんだんと心臓に上り詰めるように崩壊する。
「なんだ!!く、腐っていっているのか!?いったいいつの間に!!」
悲鳴のような声を上げながらパニックになるが すぐにその目に冷静な白色が戻ってきた。
「...っそうだ、切り落とせばこの崩壊の進行は止まる 大概の毒やウイルスはそうじゃないか 発生元を壊すか患部を切り取ればいい!」
その考えは光の速度で残った左腕を動かした 日本刀のような手刀が右腕に触れる
しかし...
「ううっ!」
(気付いた時にはもう遅せぇかな)
パニッシュが悶える最中レイヴンはそこらに飛び散った肉片に魔力を地面媒体で伝わらせ 自分の体の中に取り込み再生を図る
「こ...こんなことがぁぁ......!」
両腕を失ったパニッシュは地面にヘタリ込む
一方のレイヴンは再生不可能なほどバラバラになった部分以外はほぼ元の形に戻っていた ツギハギでまるでゾンビだが その立ち姿には気品があった。
「痛てて...まだズキズキするぜ 色々吹っ飛ばしやがってよぉ~」
皮膚はただれていて唇も半分ほど欠損しており喋り辛そうだ 右腕は手首より少し上からは無くなってしまっている
だが、それと引き換えにパニッシュに与えたダメージは大きい
ハイリスクハイリターンの駆け引きでレイヴンは巧みに勝利を絡め取った。
「貴様ッ!これは...何を!」
「お前なら薄々分かってるんだろ えぇ!?優等生くんよ!!」
「やかましい!もういい、もう一度貴様を爆破してやる 今度は苦しみを与えることなく一瞬で...壊し尽くす!」
ポケットの中身が光に包まれて宙に浮かぶ
魔族の最新鋭の技術により作られた超小型爆弾その名は『MB4000』
大きさは1cm程だが、物体に魔力を込める技術により少量の火薬でもその威力を増幅させられる さらにこの爆弾の使用者がその爆発に魔力を込めればまた威力は倍増する
その爆弾が無数に今 光に包まれ、ただ一人に狙いを定めていた。
「避けてみるか?ただし今度の僕に隙はない い この爆弾をカーテンのように隙間なく放ってやる いいな!?」
「早くしなよオレは長話は嫌いでね...半分くらいしか聞いてなかったぜ」
「こいつ...ぬけぬけと...」
そう言って魔力を体に漲らせた
「『フラッシュパニッシャー』!!!」
漆黒の体が爆弾に囲まれてしまう
そこは、光速の世界 最大瞬発力でマッハ1のレイヴンでは到底及ばない
「起爆...ッ!」
パニッシュは手に持った起爆ボタンを押す
『フラッシュパニッシャー』は様々な物を光の中に閉じ込めることができるが 光そのものの硬度は無いも同じ、何かにぶつかるだけですぐに中身が飛び出す
斬れ味や爆発も同じ、爆弾は何に触れなくとも内部から爆破するだけでそのパワーが弾ける
「.........なんだ?爆発...しない!?」
だが、何度もボタンを押すのに何も起こらず空虚にレイヴンが立ちすくむだけ
「...だろうな」
「何!?」
レイヴンは光の球を手に取るとグッと握る
すると、パラパラと崩れてカスになる
「『八咫烏』」
レイヴンの背中から魔力の翼が出現する
光を飲み込む漆黒の翼だ
手を一振りするだけで周りの爆弾の数々が灰塵になって舞っていく
「さて、形成逆転といきますか」
一歩踏み出した
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!『フラッシュパニッシャー』!!!!」
パニッシュの絶叫と同時に輝く爆弾が波のように押し寄せる
しかし、レイヴンの体に到達する頃にはその光は燻み黒く『腐敗』した。
「無駄だ、もうお前はオレの術中にはまっている」
一歩また一歩と光に近づいていく
「どうした?逃げないのか?」
見下す目つきでパニッシュに近づくレイヴンはそう語りかけた
明らかに貶している口調だ
「まあ、逃げられないだろうな 弱いくせに無駄に大きいプライドが邪魔をする 違うか?」
そうしてまた一歩と歩を進める
「貴様なんぞに...」
唇をかみしめて猛獣を前にした子供のような表情をしている
体が動かない レイヴンの圧倒的有利のムードに飲まれてしまって身がすくんでいるのだ
そして、またレイヴンと一歩距離が縮まった
「そんな親の仇みたいな表情で見るなよ ってかその親はオレの親でもあるんだがな...」
「こんなふざけたやつに僕は...ぼくは...」
足がガタガタ震える 恐怖というものを久しぶりに感じていた
「あんなやつの息子である事実を消すには何が一番有効かわかるか?」
「ぼくは...負けるのか...殺されるのか」
目に涙を浮かべる 血も涙もないというがこいつら魔族は涙も血も出るただ少し強いだけの もともと脆い生物
「オレと魔王の関係を知る者全員をぶっ殺せばいいんだ!つまり魔族の根絶やしだ」
「ぼくは...いや、負けない!オレはッ!負けたくない!」
追い詰められた獣ほど狩りづらく厄介な相手はいないという話がある
ならば獣のさらに上の人間...をさらに上回り支配下に置く魔族が追い詰められ今まさに反撃に出ようとすればどうなる?
これまでの魔族もそうだった...
「残念だが!正義はオレにある!!!」
「正義だとか悪だとかそんな愚かな人間的な考えをするな!!」
追い込まれれば 必ず 隠し球 奥の手 秘密兵器と、一撃必死の技を放つ
「『処刑権限』!!発令!!!」
「っ!このエネルギーは!!」
何かまずい事が起きる、そう予感したレイヴンは今ある魔力の半分を足に込め 加速した
「悪も正義も人間も魔族もどんな者だろうと このオレに逆らう奴は全員処刑する!!!それが『処刑権限』だ!その理不尽さこそが魔王なのだ!!!」
レイヴンの手が届こうとした時それは発動する。
「んな!?」
パニッシュが光ったと思うと がくんと首が垂れる 魂が抜けたようになり目からも生気が消えた。
「死んだか?」
恐る恐る近づいて足でつつくとサラッと崩れて土に混ざった。
「やっぱり『腐敗ウイルス』が効いてたか」
『腐敗ウイルス』彼はそう口にした
そう、このドームの中はウイルスに侵されていたのだ
レイヴンがクロウを『武装』して手に入れた『腐敗』の能力、それは元々の威力と比べると明らかに劣化しており感染力も拡散速度もクロウの時よりも見劣りしていた
そこでレイヴンは工夫を凝らす
まずは拡散速度が遅くても相手に感染するようにドームの中に閉じ込める
そうすると少しずつ空気中から体内へ取り込み 崩れていく
パニッシュは知らぬ間に体内から破壊されていたのだ。
「ふ~~、パニッシュお前はこのドームに足を踏み入れた時点で負けていたのさ」
してやった達成感を感じながらレイヴンはうんと背伸びをした
「さて...」
そして振り返りドームの外へ出ようとしたその時
ドス!!
「...んな!?」
背中から光る剣が貫通し心臓を貫いていた
ぐわんと頭が揺れる、体が限界を迎えて頭を支えきれなくなったからだ
もう血を出し尽くしてカラカラになった体からはほとんど出血が見られない
貫く その剣の持ち主は...
「お迎えだ 地獄からのな」
その声はトンネルの中で反響する音のように響いた
神々たる光が視界の外から覆い被さりこの広いドームを照らし尽くす。
「なに...が」
光る剣が胸から抜かれる
そして血が地面に垂れるのを待たずして二撃目の剣が振り下ろされた。
「がアッ!!」
地面を転がりながら刹那の寸前でそれを躱す
「ククク...ハハハハハハハ!残念だな!この場に足を踏み入れた時点で負けが確定していたのはレイヴン貴様の方だ!!いや、勝負そのものは闘いが始まったと同時に決まっていたも同然だな」
霞む目でその姿を捉える
目の前には光る人型の何かが立っていた
その姿はマネキンのようなシンプルなデザインだが片手に1mはありそうな処刑刀が握られ 頭には光り輝く角がある。
「へ...へぇ...も、盛り上がってきたじゃね...えかよ...」
ニヤリと笑いながらそうは言うものの内心
(おいおいおいおいおいおい!!!嘘だろこんなの こちとらとっくの昔に限界迎えてんだよ なのに今更復活!?ゲームバランス崩してんじゃねぇっての!!)
と、焦っていた
すでに限界の魔力 しかもその魔力の源である心臓も潰れている
(あ、やべえ...寒い)
レイヴンの脳内にコツーーンコツーーンと死神が忍び寄る音が聞こえてきた
確実な死の実感 体の末端から順に感覚が薄れてきて暗い世界に意識が登っていく
もう死神の鎌が喉元に差し掛かっているところのようだ。
「どうだ?素晴らしいだろう これがオレの奥の手『処刑権限』だ 自分の魂を光の中に閉じ込めて自分自身を光そのものとする 美の極致だ さて、首をはねさせていただこうか!」
空気が薄く卸されたような音がした
パニッシュは長剣を肩に構えるとマネキンの虚空の瞳でレイヴンを見下ろした
「...なら、オレは隠し球使っちゃおうかな...」
剣が迫る一瞬レイヴンはうわごとのようにそう呟いた
それを全く意に止めず パニッシュは刃を振り下ろす。
「『解放』」
レイヴンが何か小さく呟く
「あれ?」
振り下ろされた剣は地面に突き刺さり深く抉った
しかし、そこにはレイヴンはいない
「...?どこに」
周りを見渡すと2時の方向に血に染まった漆黒が立っていた
その立ち姿は地震に揺らされているようにグラグラと不安定だ
「ウブっ...ハァー...ハァー...」
血を吐き 止まった心臓に手を当ててレイヴンは立ち止まっていた。
「どうやって逃げたのかは知らんが無駄なあがきだ もう動けないだろうが言っておくぞ、動くな」
「.........力を...抑えて...最低限で...」
地面に大穴ができると同時にレイヴンの姿が視界から消える
「またか!?」
ドンッ!ドンッ!と巨大な鉄球をぶつけているような重厚な音が木霊し、レイヴンが履いている靴の形に地面がへこむ
ドームの中をその圧倒的パワーが駆け巡りパニッシュを翻弄する。
「くそ...奴のどこにここまでのパワーが?」
衝撃音だけが耳に響く
視界にはレイヴンが移動した後の砂埃だけ 
「...そこだ!」
しかし、パニッシュの反応がレイヴンの脚を貫いた
レイヴンは勢いを止められ体が浮く
「フンッ!」
「な......自ら...脚を...!?」
なんのためらいもなく貫かれた脚を手刀で切断し、攻撃から体を放した
もう、まともな精神での行動だとは思えない
「うがおおおおおおおおおおおおおお!」
地面に手を触れると同時に衝撃が走る
その衝撃は、巨人が大陸を鷲掴みにして振り回しているんじゃないかと思わせ
平衡感覚も上下感覚も・・・脳みその全てを狂わせる。
「ほんのすこしだけ...見せてやるよ オレの隠し球を...ッ!」
気付いた時には背後に漆黒が立っていた。
「こいつ...」
「『武装解放(1/1000000000000000)』」
レイヴンと『処刑権限』
圧倒的に凝縮されたエネルギーが打ち込まれ、
「何を...しやがッ・・・!」
振り返りレイヴンを見る頃にはパニッシュの体は大きく餅のように膨らんでいた
内部から膨大なエネルギーが光の殻を押し広げていく
「ぶがあっ!あぐああ!こ、れは?」
膨れ上がるパワーが外壁を崩壊させていき その隙間からパニッシュの魂が抜け出ていく
「ああ、死ね」
グッと拳を握りこみ 真っ青な顔で力強くニッと笑うと崩れかけている光人形にトドメの一撃を放つ
「やめろおおおおお!!!」
「『武装拳』...!」
光の魔力は紙を破るようにたやすく吹き飛び 崩壊と同時に爆発して辺りをやたらと輝かせた。
「ヒュー・・・ヒュー・・・」
呼吸も心音も停止し 魔力と気力のみで立ち上がっていたレイヴンにも死が訪れる
(く・・・も、もう・・・息もできねぇな)
目から光が消えていき頭の中にはこれまでの人生が走馬灯のように走り抜けていった。
(おっさん...悪りぃ...オレ死んだわ...)
頭の中にはいつも無愛想なゼルクの姿
それと自らの父親魔王の姿だった
ドームが崩れ
彼の死に蓋をするように覆い被さった。

To Be Continued→
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