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第24話「大混乱のチャイナから」
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廃墟と化した街並み そこは1秒前までは普通の無人街だった
小さな建物は跡形もなく、高層ビルも塔も元の大きさの半分以下にまで崩されていた
街全体がそうなるまでに要した時間は限りなくゼロに近い
それはというと、魔界切手のスピードキングのホークと今魔界で新たな脅威として数えられている通称『死神』のゼルクとの光速での闘いが原因だった。
「・・はぁはぁ・・・」
息を切らせながら美しい剣を杖にして、よろよろと街を歩く人影が一つ見えた
この崩れた灰色の街では少し目立つ燻んだ金髪をしている。
「はやくレイヴンに傷を『直』してもらわねねば・・・うっ・・体が限界を迎えちまう」
廃ビルに囲まれたゴーストタウンをゼルクはミミズが這うような速さで進んでいく
無数の亡霊に足を掴まれているように身が重く 休み休み行くがそれでも休んだような気がしなかった。
「ん?」
曲がり角を横に行くと突然目の前に人影が映った
その影の頭部からは角のような像が見受けられる。
「魔族か!」
すかさず反応し、手に持った鞘から刀身を抜き出す。
「って・・・なんだ?」
目の前の魔族はなんとゼルクと全く同じ動きをする
しかもよく見てみるとゼルクと顔、髭の生え方、傷の位地まで同じだ。
「ははは・・・なんだ鏡か、ははははは・・んんんん!?」
ゼルクは再度驚き、鏡にへばりつくようにそこに映る像を睨みつけた。
「か、鏡だ・・・ってことはこれは俺なのか?」
恐る恐る頭に手を伸ばす
こめかみに手を当てるとゴツゴツした骨っぽい角に手が当たった。
「うっ・・・本物だ・・・」
次に口の中を見ると犬歯だけが獣のような鋭い牙に変わっていた
「うおっ、歯の形までかわってやがる・・・ドラキュラみてぇだな」
頭部に生えた角、獣のような牙
このどちらともが魔族の特徴に通ずるものだった。
「いったい俺の体に何が?」
自らの体に起こった奇妙な変化はゼルクの心に言いようのない不快感をもたらせた
顔から骨の張った角ばりが無くなり、顎元がシュッとスマートになったように見える 肌にも張りが出てきて顔つきは若者のそれであった。
「これ・・・二十代の頃の顔そっくりだ」
鏡に映る自分をどこか他人事のように分析するが、見た目どころか歳まで若返っているときて流石のゼルクも顔を引きつらせてしまう。
「そういやさっきあいつ・・・」
ゼルクは先ほど打ち倒したホークの死ぬ間際に漏らした言葉を思い出した。
オレ達魔族みてぇな姿しやがって
「あの時からすでに変わってたのか」
どうせ悩んでも元には戻らない、むしろ前より強くなったじゃないか
そう自分の中で結論付けると再びレイヴンの魔力を頼りに道を歩く。
「あ~、ちくしょう40近いおっさんが無茶するなってことだ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コツーーン
コツーーン
コツーーン
(ううう・・・)
コツーーン
コツーーン
コツーーン
(なんだ・・・ここ)
レイヴンが目を開けるとそこはどこまでも続く闇の空間だった
体は動くのに動きたくない特異な倦怠感が身体に巻きついて離れない
周りからはどこから来るのか足音が、近いのか遠いのかすらよくわからない曖昧な音が響いている。
【初めまして】
(うおっ!びっくりした・・・誰だあんた)
シレッと現れた存在に仰け反って驚く
【おっとこれは失礼 ワタシは俗にいう死神というやつだ 魔族の君でも知っているだろう?】
その姿は皆が想像するに容易い黒衣に身を包み、肩に大鎌を据える骸骨の姿であった。
(へえ~本当にいるんだな・・・ってことは え、今なに、オレ臨死体験中?)
【臨死体験というよりあの世の一歩手前ってかんじかな】
意外と軽口を叩く死神を前に物怖じせず会話を続ける
(ふ~ん、まあいいやどうとでもなるさ)
軽い感じで頭の後ろに手を組んでぶらぶらとろくに足元を確かめもせずに歩く
大して自分の死を悲観していないのかそれとも自分の生に自信を持って蘇生の可能性を信じているのか どちらともわからないがこの危機的状況でもレイヴンはずいぶん余裕だ。
(それより死神ってやっぱ骨なんだな その割には声が若いし、性別とかあるのか?)
【ふふふ、君中々面白いやつだな 死ぬまでの時間稼ぎのつもりかい?】
(そんなわけじゃないぜ、オレの生死はもう運命上では決まっちまってる だから後は流れに任せて遊んでるわけ 生か死かそのどちらか分かってないのはお前達も同じなようだしな 死が確定してんなら今すぐにでもオレをあっちの世界に連れて行きたいんだろ?)
【まあね、正直君の生命力には驚いているよ 心臓を潰され、なおかつ大量の瓦礫に押しつぶされてるにもかかわらずまだ完全に生命活動は停止していない まったく、ゴキブリかい?君は】
(褒め言葉として受け取っとくよ)
結構失礼な事を言われたが大して気にせず
体の具合を確かめるとその場座り込み、大きくあくびをした。
(運命からオレの生死の審判が下されるまでに時間があるだろう それまで暇だからさ~、死神の話を聞かせてくれよ)
【うん、いいよ】
快い言葉遣いでその骸骨の口元は笑うように歪んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「う~ん、何かあるはずなんだけど」
彼女は瓦礫の上を手探りで何かを探していた
この瓦礫の下に何かを感じ取ったリリィは足元を軽く蹴り、地面を触診するように探っている。
「あ、見つけた」
コンコンと地面をノックしているだけに見えるがリリィの聴覚はその些細な音の違いで埋まっている何かの存在を脳に知らせた。
「ねえ あんた手伝ってくれる?」
「ああ、力を少し・・・返してくれたらな」
「じゃあ決まりね」
崩れたコンクリートの山から下りると声をかけた相手に触れ、魔力を体の中に注入した
コンクリートの山は少し見上げるほど大きくちょっとやそっとでは動きそうになかったが
「じゃあいくわよ、相当量の瓦礫だから全力でブチ込むよ!シンッ!」
「ああ」
リリィの隣に立つのは魔王候補の一人であるシン、ついさっきまで命をかけて闘っていた魔族の男とリリィは二人して並び立っている。
「いくよッ!いっせーのー・・・」
「「でッ!」」
リリィの蹴り、そしてシンの魔力が山を貫き吹き飛ばす
まるで竜巻に飲まれたような衝撃だ 山は跡形もなく崩れ去った。
「ぃよしッ!」
握りこぶしを振って猛々しく声を上げる
「もう少し君は女の子らしい言動をした方がいいんじゃないか?」
「悪かったわね女らしくなくて」
憤慨しながら崩れた山のカスの上を歩いてその気になる存在に近づいていく。
「やっぱり いた」
瓦礫を持ち上げながらそれを見つけた
そこには横たわるは シンにも負けない程に漆黒を宿した姿があった。
「そいつ、生きてる?」
「半分・・・死んでるわね」
リリィは目の前の男に耳をすませて血液循環の音を聞く、幽けき音だがリリィはすぐ近くで聞いているようにしっかりと聞こえている。
「でも50%も生命が残ってるなら十分よ 残りはエネルギーのストックでなんとかまかなえる」
手を頭に添えるとそこから魔力を流し込んで人形のように動かないレイヴンに命を吹き込んだ。
「それにしても、心臓が停止してるのによくここまで命を保っていられるわ ゴキブリねこいつは、黒いし」
「俺も黒いんだがな」
人知れずシンが傷ついていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ふぅーん・・・死神社会も大変なんだな)
【そうなんだよ、長く生きてる魂ほどあの世に送る際 高賃金が貰えるんだけど 最近は地球上どこも魔族ばっかでさ なかなか死なないのよ そのせいで一つの魂を争っての喧嘩なんかしょっちゅうだし、だから魔族の魂を独り占めできるこのチャンスできれば逃したくないんだよね】
(おいおい、声がマジだぜ)
【大マジだよ】
身の上話を聞き、談笑している魔族と死神という奇妙な取り合わせ
その時暗い空間に光が射した。
【ありゃりゃ、どうやら君の命は助かったみたいだ】
(おっ、ラッキー あっち進めば出口かなんかか?)
【チェー、こっちはアンラッキーだよ、200年近く生きてる君の魂ならあっちで高く取引できたはずだったのに~】
無表情の頭蓋骨がカラカラと音を立てて悔しがる
冗談で言っていたとしても、この見た目だと十分怖い
(はっはっはっ、悪いな、また今度死んだときはよろしく頼むわ)
そう言いながら光の射す方へ進む、目がくらみそうに眩しいその扉はすぐそこにある。
【せっかくだ!長生きしてその魂を熟成させてから死んでくれ!そん時はワタシがその命貰ってやるから!】
(おう!頼むわ!じゃね、バイビー!)
レイヴンは手を死神は鎌をブンブン振りながら別れを全く惜しまず世界を別とした
光の中扉のようなものから目を瞑り 外へと飛び出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はっ!」
「あ、目覚ました」
再び目を開けると目の前にはしゃがみこんでこちらを見つめる少女が映る。
「けっこうきわどいヤツ履いてんだな」
「目覚めて早々何行ってんのあんた、もっかい眠らすよ?」
視界に異常はなかった、なんならいつもより冴えているくらいだ 服の繊維一本一本までハッキリ分かる
動こうとして体が何かにつっかえた
自分の体を見るとウエストから下が地面と一体になっているのに気付く。
(そうだった、死ぬ寸前・・・地面に自分自身の体を『武装』しといたんだった)
レイヴンは自分自身を地面と一体することで 体の性質を地面と同じに書き換えた
つまり、血液循環による栄養や酸素の補給が不要になり適度な水分さえあれば腐敗が起こるまで死なない体となる 別な意味での『植物人間』となっていたのだ。
「オレを治してくれたのはお前か?」
『武装』を解いて地面から体を引き抜きつつリリィに質問をする
「まあね、感謝しなさい」
腰をかがめた状態から立ち上がると胸を張って反り返り得意げな表情で鼻をフンと鳴らした。
「ん?リリィ後ろにいるそいつ・・・」
「シンよ、あんたの弟でしょ?話は聞いたわ 悪いやつじゃなさそうだから友達になろうかと思って」
口元に笑みを浮かべながら何気なく、そしてとんでもないことを口にした
その言葉にレイヴンは眉間にしわを寄せる
「なんつー強気な女だ、特級魔族と友達になろうとは 何があったんだ」
驚きというより呆れてシンに対して戦意が湧かなかない
しかし、さっきまでグチャグチャに壊されていた心臓はドクドクと心拍数をあげていた。
「そうね・・・あんたと別行動を取ったところから話しましょうか」
視線を向けてもシンは反応を見せず目をつむって腕を組んで立っている 頭の角が折れている、これでは魔力出力が弱まって元のようには能力が使えないだろう
シンを一人で再起不能にした少女を前にしてレイヴンまたその娘を仲間に加えたい気持ちに駆られる
だが、そこをグッとこらえて話を聞くことにした
自分の野望のために一つの家族の意思を踏みにじることはできない、そんな行為は魔王と何も変わらないじゃないか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そうか・・・パニッシュとシンは負けたか」
苛立ちを孕んだノヴァの声は広い空間にこだました
止水に小石を投げ入れたように声の波紋はどこまでも広がりそうだ。
「なに、わたしの予想通りだよ ギリギリのところで二人は負ける そしてその疲弊した標的をわたしが難なく倒す」
電話の向こうからは余裕たっぷりの声が耳を通る
口ぶりからしてパニッシュとシンの後を付いていった魔王家の五男【アーミー】だろう
アーミーの声の後ろからは喧騒が聞こえる
すでに中国にて何かをしているのだろうか。
「期待しているよ 僕が中国に向かうことなく終わるようにな」
「ふふふ、怖いのは【ネクスト】と【ネメシス】兄さんだけで他は眼中にないってのか?」
不意に二人の名前が会話の中に出される
『次』と『天罰』
『新星』の名を持つ魔王家次男はその名を聞いて傲慢気味に笑った。
「フハハハッ!僕の眼中にあるのは魔王の座だけさ 他の兄弟はレイヴンだろうとただの前座、余興だよ」
不敵にそう言ってみせると携帯端末の通信切断ボタンに指をかける。
「健闘を祈るぞ『無勢の将軍』」
ピッ
ツーーー ツーーー
ツーーー ツーーー
ツーーー ツーーー
ツーーー ツーーー
To Be Continued→
小さな建物は跡形もなく、高層ビルも塔も元の大きさの半分以下にまで崩されていた
街全体がそうなるまでに要した時間は限りなくゼロに近い
それはというと、魔界切手のスピードキングのホークと今魔界で新たな脅威として数えられている通称『死神』のゼルクとの光速での闘いが原因だった。
「・・はぁはぁ・・・」
息を切らせながら美しい剣を杖にして、よろよろと街を歩く人影が一つ見えた
この崩れた灰色の街では少し目立つ燻んだ金髪をしている。
「はやくレイヴンに傷を『直』してもらわねねば・・・うっ・・体が限界を迎えちまう」
廃ビルに囲まれたゴーストタウンをゼルクはミミズが這うような速さで進んでいく
無数の亡霊に足を掴まれているように身が重く 休み休み行くがそれでも休んだような気がしなかった。
「ん?」
曲がり角を横に行くと突然目の前に人影が映った
その影の頭部からは角のような像が見受けられる。
「魔族か!」
すかさず反応し、手に持った鞘から刀身を抜き出す。
「って・・・なんだ?」
目の前の魔族はなんとゼルクと全く同じ動きをする
しかもよく見てみるとゼルクと顔、髭の生え方、傷の位地まで同じだ。
「ははは・・・なんだ鏡か、ははははは・・んんんん!?」
ゼルクは再度驚き、鏡にへばりつくようにそこに映る像を睨みつけた。
「か、鏡だ・・・ってことはこれは俺なのか?」
恐る恐る頭に手を伸ばす
こめかみに手を当てるとゴツゴツした骨っぽい角に手が当たった。
「うっ・・・本物だ・・・」
次に口の中を見ると犬歯だけが獣のような鋭い牙に変わっていた
「うおっ、歯の形までかわってやがる・・・ドラキュラみてぇだな」
頭部に生えた角、獣のような牙
このどちらともが魔族の特徴に通ずるものだった。
「いったい俺の体に何が?」
自らの体に起こった奇妙な変化はゼルクの心に言いようのない不快感をもたらせた
顔から骨の張った角ばりが無くなり、顎元がシュッとスマートになったように見える 肌にも張りが出てきて顔つきは若者のそれであった。
「これ・・・二十代の頃の顔そっくりだ」
鏡に映る自分をどこか他人事のように分析するが、見た目どころか歳まで若返っているときて流石のゼルクも顔を引きつらせてしまう。
「そういやさっきあいつ・・・」
ゼルクは先ほど打ち倒したホークの死ぬ間際に漏らした言葉を思い出した。
オレ達魔族みてぇな姿しやがって
「あの時からすでに変わってたのか」
どうせ悩んでも元には戻らない、むしろ前より強くなったじゃないか
そう自分の中で結論付けると再びレイヴンの魔力を頼りに道を歩く。
「あ~、ちくしょう40近いおっさんが無茶するなってことだ・・・」
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コツーーン
コツーーン
コツーーン
(ううう・・・)
コツーーン
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コツーーン
(なんだ・・・ここ)
レイヴンが目を開けるとそこはどこまでも続く闇の空間だった
体は動くのに動きたくない特異な倦怠感が身体に巻きついて離れない
周りからはどこから来るのか足音が、近いのか遠いのかすらよくわからない曖昧な音が響いている。
【初めまして】
(うおっ!びっくりした・・・誰だあんた)
シレッと現れた存在に仰け反って驚く
【おっとこれは失礼 ワタシは俗にいう死神というやつだ 魔族の君でも知っているだろう?】
その姿は皆が想像するに容易い黒衣に身を包み、肩に大鎌を据える骸骨の姿であった。
(へえ~本当にいるんだな・・・ってことは え、今なに、オレ臨死体験中?)
【臨死体験というよりあの世の一歩手前ってかんじかな】
意外と軽口を叩く死神を前に物怖じせず会話を続ける
(ふ~ん、まあいいやどうとでもなるさ)
軽い感じで頭の後ろに手を組んでぶらぶらとろくに足元を確かめもせずに歩く
大して自分の死を悲観していないのかそれとも自分の生に自信を持って蘇生の可能性を信じているのか どちらともわからないがこの危機的状況でもレイヴンはずいぶん余裕だ。
(それより死神ってやっぱ骨なんだな その割には声が若いし、性別とかあるのか?)
【ふふふ、君中々面白いやつだな 死ぬまでの時間稼ぎのつもりかい?】
(そんなわけじゃないぜ、オレの生死はもう運命上では決まっちまってる だから後は流れに任せて遊んでるわけ 生か死かそのどちらか分かってないのはお前達も同じなようだしな 死が確定してんなら今すぐにでもオレをあっちの世界に連れて行きたいんだろ?)
【まあね、正直君の生命力には驚いているよ 心臓を潰され、なおかつ大量の瓦礫に押しつぶされてるにもかかわらずまだ完全に生命活動は停止していない まったく、ゴキブリかい?君は】
(褒め言葉として受け取っとくよ)
結構失礼な事を言われたが大して気にせず
体の具合を確かめるとその場座り込み、大きくあくびをした。
(運命からオレの生死の審判が下されるまでに時間があるだろう それまで暇だからさ~、死神の話を聞かせてくれよ)
【うん、いいよ】
快い言葉遣いでその骸骨の口元は笑うように歪んだ。
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「う~ん、何かあるはずなんだけど」
彼女は瓦礫の上を手探りで何かを探していた
この瓦礫の下に何かを感じ取ったリリィは足元を軽く蹴り、地面を触診するように探っている。
「あ、見つけた」
コンコンと地面をノックしているだけに見えるがリリィの聴覚はその些細な音の違いで埋まっている何かの存在を脳に知らせた。
「ねえ あんた手伝ってくれる?」
「ああ、力を少し・・・返してくれたらな」
「じゃあ決まりね」
崩れたコンクリートの山から下りると声をかけた相手に触れ、魔力を体の中に注入した
コンクリートの山は少し見上げるほど大きくちょっとやそっとでは動きそうになかったが
「じゃあいくわよ、相当量の瓦礫だから全力でブチ込むよ!シンッ!」
「ああ」
リリィの隣に立つのは魔王候補の一人であるシン、ついさっきまで命をかけて闘っていた魔族の男とリリィは二人して並び立っている。
「いくよッ!いっせーのー・・・」
「「でッ!」」
リリィの蹴り、そしてシンの魔力が山を貫き吹き飛ばす
まるで竜巻に飲まれたような衝撃だ 山は跡形もなく崩れ去った。
「ぃよしッ!」
握りこぶしを振って猛々しく声を上げる
「もう少し君は女の子らしい言動をした方がいいんじゃないか?」
「悪かったわね女らしくなくて」
憤慨しながら崩れた山のカスの上を歩いてその気になる存在に近づいていく。
「やっぱり いた」
瓦礫を持ち上げながらそれを見つけた
そこには横たわるは シンにも負けない程に漆黒を宿した姿があった。
「そいつ、生きてる?」
「半分・・・死んでるわね」
リリィは目の前の男に耳をすませて血液循環の音を聞く、幽けき音だがリリィはすぐ近くで聞いているようにしっかりと聞こえている。
「でも50%も生命が残ってるなら十分よ 残りはエネルギーのストックでなんとかまかなえる」
手を頭に添えるとそこから魔力を流し込んで人形のように動かないレイヴンに命を吹き込んだ。
「それにしても、心臓が停止してるのによくここまで命を保っていられるわ ゴキブリねこいつは、黒いし」
「俺も黒いんだがな」
人知れずシンが傷ついていた。
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(ふぅーん・・・死神社会も大変なんだな)
【そうなんだよ、長く生きてる魂ほどあの世に送る際 高賃金が貰えるんだけど 最近は地球上どこも魔族ばっかでさ なかなか死なないのよ そのせいで一つの魂を争っての喧嘩なんかしょっちゅうだし、だから魔族の魂を独り占めできるこのチャンスできれば逃したくないんだよね】
(おいおい、声がマジだぜ)
【大マジだよ】
身の上話を聞き、談笑している魔族と死神という奇妙な取り合わせ
その時暗い空間に光が射した。
【ありゃりゃ、どうやら君の命は助かったみたいだ】
(おっ、ラッキー あっち進めば出口かなんかか?)
【チェー、こっちはアンラッキーだよ、200年近く生きてる君の魂ならあっちで高く取引できたはずだったのに~】
無表情の頭蓋骨がカラカラと音を立てて悔しがる
冗談で言っていたとしても、この見た目だと十分怖い
(はっはっはっ、悪いな、また今度死んだときはよろしく頼むわ)
そう言いながら光の射す方へ進む、目がくらみそうに眩しいその扉はすぐそこにある。
【せっかくだ!長生きしてその魂を熟成させてから死んでくれ!そん時はワタシがその命貰ってやるから!】
(おう!頼むわ!じゃね、バイビー!)
レイヴンは手を死神は鎌をブンブン振りながら別れを全く惜しまず世界を別とした
光の中扉のようなものから目を瞑り 外へと飛び出す。
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「はっ!」
「あ、目覚ました」
再び目を開けると目の前にはしゃがみこんでこちらを見つめる少女が映る。
「けっこうきわどいヤツ履いてんだな」
「目覚めて早々何行ってんのあんた、もっかい眠らすよ?」
視界に異常はなかった、なんならいつもより冴えているくらいだ 服の繊維一本一本までハッキリ分かる
動こうとして体が何かにつっかえた
自分の体を見るとウエストから下が地面と一体になっているのに気付く。
(そうだった、死ぬ寸前・・・地面に自分自身の体を『武装』しといたんだった)
レイヴンは自分自身を地面と一体することで 体の性質を地面と同じに書き換えた
つまり、血液循環による栄養や酸素の補給が不要になり適度な水分さえあれば腐敗が起こるまで死なない体となる 別な意味での『植物人間』となっていたのだ。
「オレを治してくれたのはお前か?」
『武装』を解いて地面から体を引き抜きつつリリィに質問をする
「まあね、感謝しなさい」
腰をかがめた状態から立ち上がると胸を張って反り返り得意げな表情で鼻をフンと鳴らした。
「ん?リリィ後ろにいるそいつ・・・」
「シンよ、あんたの弟でしょ?話は聞いたわ 悪いやつじゃなさそうだから友達になろうかと思って」
口元に笑みを浮かべながら何気なく、そしてとんでもないことを口にした
その言葉にレイヴンは眉間にしわを寄せる
「なんつー強気な女だ、特級魔族と友達になろうとは 何があったんだ」
驚きというより呆れてシンに対して戦意が湧かなかない
しかし、さっきまでグチャグチャに壊されていた心臓はドクドクと心拍数をあげていた。
「そうね・・・あんたと別行動を取ったところから話しましょうか」
視線を向けてもシンは反応を見せず目をつむって腕を組んで立っている 頭の角が折れている、これでは魔力出力が弱まって元のようには能力が使えないだろう
シンを一人で再起不能にした少女を前にしてレイヴンまたその娘を仲間に加えたい気持ちに駆られる
だが、そこをグッとこらえて話を聞くことにした
自分の野望のために一つの家族の意思を踏みにじることはできない、そんな行為は魔王と何も変わらないじゃないか。
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「そうか・・・パニッシュとシンは負けたか」
苛立ちを孕んだノヴァの声は広い空間にこだました
止水に小石を投げ入れたように声の波紋はどこまでも広がりそうだ。
「なに、わたしの予想通りだよ ギリギリのところで二人は負ける そしてその疲弊した標的をわたしが難なく倒す」
電話の向こうからは余裕たっぷりの声が耳を通る
口ぶりからしてパニッシュとシンの後を付いていった魔王家の五男【アーミー】だろう
アーミーの声の後ろからは喧騒が聞こえる
すでに中国にて何かをしているのだろうか。
「期待しているよ 僕が中国に向かうことなく終わるようにな」
「ふふふ、怖いのは【ネクスト】と【ネメシス】兄さんだけで他は眼中にないってのか?」
不意に二人の名前が会話の中に出される
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『新星』の名を持つ魔王家次男はその名を聞いて傲慢気味に笑った。
「フハハハッ!僕の眼中にあるのは魔王の座だけさ 他の兄弟はレイヴンだろうとただの前座、余興だよ」
不敵にそう言ってみせると携帯端末の通信切断ボタンに指をかける。
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しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
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