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「君は、エルリーンの?」
「は、はい。エルリーン・デロリアスの姉、クリスティーナと申します」
「クリスティーナ……そうか。俺はヴァンニール・ルズウェアー」

 やはりそうなのね。
 包帯でお顔は拝見できないが、彼を包むオーラが普通の方と違う。
 私は緊張感を増し体を硬直させて、こちらに歩みよるヴァンニール様のお姿を見つめていた。

「エルリーンの代わりに来た……ということらしいが、どういうことだ?」
「い、妹は調子が優れないらしく、暇をしている私が代わりにヴァンニール様のお世話を……」
「…………」

 目の前に立つヴァンニール様。
 背は高く、鋭い眼光。
 威圧感が凄まじく、彼の前に立っているだけで息が浅くなる。

「すまない。君を怖がらせるようなつもりはなかった」

 私の様子に気づいたヴァンニール様は私から視線を逸らす。
 そしてそのままの状態で話をしだした。

「……こんな姿になってしまった私をどう思う?」
「えーと……可哀想だなと、思います」
「…………」

 変なことを言ってしまった!
 正直な感想を口にしてしまい、私は大慌てし、身振り手振りで言い訳がましいことを話す。

「あ、あの……悪気はないのです! 元々は端正なお方だと聞いていましたし、その容姿を失われたのと、そしてとても痛いだろうなと、そう思いまして……」

 ドギマギしながら彼の姿を見て、火傷の痛みを想像し、私は目の端に涙をためる。
 私は本当に心の底から可哀想だと感じていた。

「……なぜ君が泣きそうになっているんだ?」
「いいえ……純粋に可哀想だと思いまして」
「……クリスティーナ。君は家族からはどう呼ばれているのだ?」
「クリスです」
「クリス……今日から俺のことは、ヴァンと呼んでくれ」
「え?」

 キョトンとする私。
 ヴァンニール様は少し優しそうに笑い、こちらを見つめているようだった。

「私の世話をしに来てくれたのだろう? 今日からよろしく頼むよ」
「は、はい……」

 どうやら私は受け入れられたようだ。
 そんなバカなと思いながら、これから先はどうせ上手くいくわけがないとも達観していた。

 ヴァン様は踵を返し、部屋を出て行こうとした。
 杖をついている姿を見て、私は彼の体を横から支える。

「……いきなりどうしたんだ?」
「お世話をしにまいりましたので……差し出がましかったでしょうか?」
「いや、ありがとう。助かる」

 低い声ではあるが、優しさが含まれており、私はなぜかホッとする。
 威圧感のせいか、怖い方だと感じていたが……想っていたより優しいお方なんだ。
 ヴァン様に肩を貸している間に、私の緊張はほどけていた。
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