不謹慎なブス令嬢を演じてきましたが、もうその必要はありません。今日ばっかりはクズ王子にはっきりと言ってやります!

幌あきら

文字の大きさ
3 / 9

【3.父は乗り気】

しおりを挟む
 ロスダン王子に妙なからまれ方をしてから数日後。

 家族で取っていた朝食時に、いきなり父カッチェス侯爵がアレリアに向かって、
「アレリア、明後日あさって、デザイナーのヘレン・ウィリアムズを呼んでいる。彼女は今、王都で一番人気のデザイナーなようだね。予定を開けておきなさい」
と言った。

「ヘレン・ウィリアムズ? ドレスでも新調するのですか? でも新しいドレスなど特に必要ありませんけど。それに、もしドレスを新調するにしても、わざわざヘレン・ウィリアムズに頼む必要はありませんわ。そこそこのデザイナーで結構です」
 アレリアは嫌な予感がして、ひとまず口答くちごたえした。

 カッチェス侯爵は、娘のその反応はいつものことで、特別どうと思うこともなく、
「もう金を積んで頼んだのだ。ドレスは数着作っておけ。いくつかの用途に合わせて」
有無うむを言わさぬ命令口調だ。

「急になんです、お父様」
とアレリアが不服ふふくそうに聞くと、
「ロスダン王子にお茶を申し込まれている。ロスダン王子はおまえにご執心しゅうしんだということだ。このままいけば婚約も申し込まれるかもしれない。そうであれば、新しいドレスの一つや二つ必要だろう」
とカッチェス侯爵は少し誇らしそうに言った。

 アレリアはぎょっとして息をんだ。
 一緒に食事をとっていた弟のウィーラーも、その妻のジェーンも驚いてスプーンと落した。

「何だね、おまえたち」
 3人が不自然なほど驚いていたので、カッチェス侯爵が不満そうに言う。

 アレリアは憤慨ふんがいしながら父に文句を言った。
「何だねじゃありません、お父様! そんな話に乗ろうというのですか? ウィーラーの件をお忘れですか!?」
 ウィーラーも無言のまま大きくうなずいている。

 するとカッチェス侯爵は、
「ウィーラーの件があるからこそではないか! カッチェス家はロスダン王子に誠意をもっておこたえしなければならん」
ともっともらしく高らかに宣言した。

 アレリアは父をたしなめた。
「いえ! ウィーラーの件があるからこそ、変だとは思わないのですか? なぜ急に王子が私に気をめることになったのでしょう? 私はこれまで何一つ王子と接点はなかったのですよ?」

 すると、カッチェス侯爵は首をすくめ、
「そんなのは私の知るよしもないよ。ウィーラーの件でロスダン王子はおまえの存在を知ったのではないかね。それできっとお前が気に入ったのだ。それでいいじゃないか」
と乱暴に言い放った。

「よくありません! そんな都合よく私を気に入りますか? というか、気に入られないように振舞ふるまってきたつもりですけど」

「じゃあ聞くがおまえは王子の何が気に入らない? 私が言うのも変だが、世の中の娘どもはみんなあの見てくれの良い王子に夢中だと聞くぞ。整った顔立ち、洗練された立ちい、女性に優しく品行方正、悪い噂は何も聞かん。王子にお茶を申し込まれたなど、喜びこそすれ嫌な顔をする娘など聞いたことない!」
 カッチェス侯爵は、おまえの方が変だとばかりにアレリアを問いめた。

 アレリアは反抗する。
「逆に、そんなより見取みどりの王子様がなんで私なんかを選びますか? 私は美しいわけでもなく、地味で、家柄こそ低くはありませんが同程度の家はたくさんあります。社交界だって付き合いの良い方ではありません。お父さんが王宮で活躍しているならまだしも、そうではないでしょう?」

 カッチェス侯爵は「活躍してない」と暗に言われ口をへの字に曲げた。
「言ってくれるね」

「王子が私を望むなんて変じゃないですか」
 アレリアは繰り返す。

 しかし、カッチェス侯爵の方は機嫌を悪くしていたので、
「おまえはうたぐり深いな。自分で王子に聞けばよかろう」
とだけ言って、ふいっと横を向いてしまった。

 アレリアとウィーラーとその妻は、心配そうに目を見合わせるばかりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されるはずが、婚約破棄してしまいました

チンアナゴ🐬
恋愛
「お前みたいなビッチとは結婚できない!!お前とは婚約を破棄する!!」 私の婚約者であるマドラー・アドリード様は、両家の家族全員が集まった部屋でそう叫びました。自分の横に令嬢を従えて。

『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』

佐伯かなた
恋愛
 卒業後の社交界の場で、フォーリア・レーズワースは一方的に婚約破棄を宣告された。  理由は伯爵令嬢リリシアを“旧西校舎の階段から突き落とした”という虚偽の罪。  すでに場は整えられ、誰もが彼女を断罪するために招かれ、驚いた姿を演じていた──最初から結果だけが決まっている出来レース。  家名にも傷がつき、貴族社会からは牽制を受けるが、フォーリアは怯むことなく、王国の中央都市に存在する全寮制のコンバシオ学園へ。  しかし、そこでは婚約破棄の噂すら曖昧にぼかされ、国外から来た生徒は興味を向けるだけで侮蔑の視線はない。  ──情報が統制されている? 彼らは、何を隠したいの?  静かに観察する中で、フォーリアは気づく。  “婚約破棄を急いで既成事実にしたかった誰か”が必ずいると。  歪んだ陰謀の糸は、学園の中にも外にも伸びていた。  そしてフォーリアは決意する。  あなた方が“嘘”を事実にしたいのなら──私は“真実”で全てを焼き払う、と。  

婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」  婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。  婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。  私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。  もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

幸運の女神である妹を選び婚約破棄するようですが、彼女は貧乏神ですよ?

亜綺羅もも
恋愛
サラ・コリンズにはレイア・コリンズいう双子の妹がいた。 ある日のこと、彼女たちは未来を見通す占い師から、どちらかが幸運の女神でどちらかが貧乏神だと告げられた。 両親はいつからか、幸運の女神はレイアだと信じ始め、サラは貧乏神だと虐げられ始められる。 そんな日々が続き、サラが十八歳になった時、ジーク・バージリアンという男と婚約関係を結ぶ。 両親は貧乏神を追い出すチャンスだと考え、ジークに何も言わずにサラとジークとの婚約をさせていた。 しかし、ジークのことを手に入れたくなったレイアは、その事実をジークに伝え、サラから彼を奪い取ってしまう。 ジークに婚約破棄を言い渡されるサラ。 しかしジークもレイアもサラの両親も知らない。 本当の幸運の女神はサラだと言うことに。 家族に見捨てられたサラであったが、エリオ・ルトナークという男性と出逢い、幸せに向かって運命が動き出すのであった。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

(完)婚約破棄された私は・・・・・・なんですけれど

青空一夏
恋愛
魔女の末裔が建国したといわれるアイザアス国では、女性は17歳でなにがしかの魔法の力に目覚める。クリスティアーナ・コーディ伯爵令嬢は特にその容姿と家柄で最強の魔女の力が目覚めると期待されていた。しかし双子の妹は火属性の魔力に目覚めたのに、クリスティアーナはなんの魔力もないと判定されたのだった。 それが原因で婚約破棄されたクリスティアーナは・・・・・・ ゆるふわ設定ご都合主義。

婚約破棄?本当によろしいのですか?――いいでしょう、特に異論はありません。~初めて恋を願った彼女の前に現れたのは――~

銀灰
恋愛
令嬢ウィスタリアは、ある日伯爵のレーゼマンから婚約破棄の宣告を受ける。 レーゼマンは、ウィスタリアの妹オリーブに誑かされ、彼女と連れ添うつもりらしい。 この婚約破棄を受ければ、彼に破滅が訪れることを、ウィスタリアは理解していた。 しかし彼女は――その婚約破棄を受け入れる。 見限ったという自覚。 その婚約破棄を受け入れたことで思うところがあり、ウィスタリアは生まれて初めて、無垢な恋を願う。 そして、そこに現れたのが――。

処理中です...