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天宮紫雨斗

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序章

序章-プロローグ

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目の前が赤く染る。なんだろう。別に血が目にしみたわけでも無いのに。しかしもどかしくはなく、その目から見る世界はなんだか荒々しかった。僕の手には見たことの無い刀があって目の前には無数の人だかり。あぁ、と意味が分からずまた目を瞑る

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東雲晃也の朝は早い。ごく平凡な農村で暮らしている僕らにとって朝早くというのは当然なのだが晃也は皆が動き始める1時間前には既に起きて作業をしている。だが農作業ではなく、明後日の唯一の妹の誕生日に渡すつもりのマフラーを編んでいた。まだ12才の女の子には早起きはきついようで、妹は大体僕が起きて2時間程経ってから起きる。この農村には学校は無い。皆が近所の人とのコミュニティで生きていると言っても過言ではない。大体物々交換で生計を立てている。そんな今日に、
事件は起こった。
夕暮れ時、いつも通りに明日の準備をしていると、見慣れない人影が4人程こちらをじっと向いていた。村の人ではないし、一体誰だろうとなっていると背後から近づくものに咄嗟に気付き、それを避けた。彼は小型のナイフを持っており、それで斬りつけられていたのだと悟った。直後、先程までじっとこちらを向いていた4人がもう目先にいた。その4人全員の手に同様のナイフがあった。まずいな、と思いつつ、パニックになる心を抑え、
「何が目的なんだ!?」
と尋ねるが返答は全くない。農具は既に片付けた後であったので、応戦出来るような物は何一つない。そして、5人全員が一斉に襲いかかり、もうダメだ、そう思った。その瞬間、上空から謎の物体を持った青年?が現れ、その5人全員を一斉に吹き飛ばした。未だその事で晃也はパニックになっていると彼は、
「大丈夫かい?助けに来たよ
名前も知らぬその男はこちらを見ながらゆっくり穏やかにそう述べた。しかし、まだ5人は立ち上がる。それを先程と同じように追い返す。
「いやぁ、物騒だねぇこの子達も。そういえば名乗ってなかったね」
彼の名前は夜半(よわ)というらしい。苗字は無い。そして、彼が持っていたものはであった。盾なんかで戦えるのかと問うと、
「僕は戦いに来たんじゃないよ。君を助けに来た、ただそれだけさ」
と、答えでもなんでもないことを口にする。暫くして5人は逃げ出した。彼らは何者なのかを問うと、
「恐らく君を連れ去ろうとしてたんだろうね、でもそれだとナイフで斬りつけた理由が分からない」
僕を連れ去っても何にも無いのに?と答えると、
「いや、それはないよ。君は非常に重要な人間だよ。そう、このにとって、ね」
全く意味がわからなかった。
まあ今日はもう遅いからゆっくり寝な。そう言い残し彼は颯爽と消えていったが、あんな経験をしたものだから当然寝れるはずも無くただ時間が過ぎていった。マフラー作りは終えたが予想よりも遥かに長く続いた。やはり昨日のことが原因だろう。そして夕暮れ、用具の整理を終え、家に帰るとそこには、妹である明(あきら)の姿が無かった。

村中を探したが明の姿は無い。そこにまたも彼、夜半が現れ、
「伝え忘れていた事があってね。狙われているのは君だけじゃないかもしれない」
「・・・それって妹の事なのか?」
「そうだ、まあこの様子じゃあもう遅かったのかもしれないが」
「巫山戯るなよ!!!それを早く言っていれば明は!」
声を荒らげる晃也を差し置き、遠くを見るような目をしながら、
「君の妹を連れ去った奴の居場所を教えることが出来る。教えて欲しいかい?」
何を言ってるんだこいつは、
「分かってんだろ、教えて欲しいに決まってる!」
分かった、それだけを言い、無言で走ってどこかに向かっていった。それに追いつくように走った。彼が足を止めた場所は村外れの工場のような場所だった。入り、見上げてすぐのところに明の姿があった。僕はすぐに激昂し、
「お前らどこだ!!出てこい!!」
一瞬の静寂が起こった後、
「声は聞こえないけど近くにいるよ」
「どこにいる!?」
「具体的には、僕らのすぐ後ろだ!」
そういって2人で後ろを振り返り、飛んできたナイフを咄嗟に避ける。間一髪避けた瞬間に奥で闇に溶けていた2人が襲いかかってきた。その2人を夜半は盾で吹き飛ばす。すると、明の近くにいた敵が明の首筋にナイフの鋒を押し付け、
「こいつがどうなってもいいのか!!!」
と。腸が煮えくり返る。頭に血が上った瞬間、目の前が赤く染る。なんだろう。別に血が目にしみたわけでも無いのに。しかしもどかしくはなく、その目から見る世界はなんだか荒々しかった。僕の手には見たことの無い刀があって目の前には無数の人だかり。あぁ、と意味が分からずまた目を瞑る。
『久しぶりの高揚感だなぁ!こりゃ!』
夜半も驚いた表情で晃也を見る。夜半の目の前には先程のライトブルーの目をした美少年ではなくなり、眉間にしわを寄せた、赤がかった目になっていた。そして彼は、戦場を一瞬で駆け巡る。
『こんな事になる前に俺に分け渡していれば良かったものを・・・ああ、そうか、こいつは
晃也だった彼の手にはいつの間にかどこから手に入れたのかも分からない刀があって、数秒の内に、10人程を切り伏せていた。そして彼が気を失っている明の前に立つ。明に刃を当てて脅していたやつはもう恐怖で動くことが出来ていない。
『こいつを助けることがお前の目的なんだろ?』
そういい、脅していた相手の首に刀を振るう、
「もう、やめてくれ!」
目を見ると半分があのライトブルーに戻りかけていた。自我を取り戻したかのように持っていた刀を落とし、自分が殺した惨劇を目の当たりにする。すぐさま我に返り、明を起こす。明は一向に起きそうにないが、息をしていたのでひとまず安心した。すると夜半はまだ現状を把握出来ていないように、
「君は・・・大丈夫なのかい?」
「体はひとまず、でも自分が誰かに乗っ取られたことはほんとに今でも何が何だか、、、」
気を失っている脅していたやつを後目に晃也と夜半は明を抱えてそこから去った。
それから明は少しづつ回復していき、1週間後には晃也と共に農作業が出来るまでになった。それを見計らってなのかまた夜半が姿を見せていた。晃也は作業を一旦やめ、夜半の元へ行く。夜半は出会ってすぐに、
「実は、折り入って頼みがある。」
「なんですか?」
晃也にとって夜半は妹を助けてくれたようなものだったのであれから彼のことをまるで命の恩人のように接している。
「ここから出てみないか?」
「ここから出るって、この村をですか?」
晃也にとっては衝撃的だったが夜半は明がまた襲われる危険性があるかもしれないこと、今よりは裕福な生活が出来ること。そしてなによりも、仮にまた妹が襲われたとしてもそれを守れる場所に保護するということだった。とても好条件であったが流石に妹にも聞いてこないとということで、家に戻る。
「明~、ちょっと話したいことがあるんだけど~」
「な~に~?どんな用事~?」
明は呑気に言った。
「実は僕さ、明と2人でここを出ようと思ってて...」
そう言って、それから明に心配になるような事は言わずに少しの嘘を混ぜて話した。
「うーんと、ネハおばさんとかともう話せないの?」
「うん、多分もう話せないと思う」
「それなら今後悔しないように沢山はなしてくるね!」
そう言って颯爽とネハおばさん宅へ走っていった。と、思ったらまた駆け足で帰ってきて、
「私は引っ越すのネハおばさんとかと離れるし寂しいけど、それ以上に大好きなお兄ちゃんのお願いだもん。だから賛成だよ!」
そう言ってまた走っていった。
夜半の元へ帰り、
「どうだった?妹さんはOKしてくれた?」
「うん、まあ一応は」
「そうかい、それじゃあ手続きとか色々しないとね」
「そんな大掛かりなんですか?」
「ああ、そう言えば伝えてなかったね。君たち兄妹が行く場所は・・・」
その場所はどうやらここから東に約6000km先にある違う国(?)にあるそうで、かなり複雑な工程を踏まないと入国さえ厳しいらしい。僕と明はそこへ1ヶ月後行くことになった。
そして1ヶ月後。僕らは日本というところに着いた。異郷の地だが、環境はしっかりと整えられていて、そしてなにより農作業をしなくてよいことにとても驚いた。今では農作業は全自動という全てが機械という人の手で動かさなくても勝手にやってくれるものに頼っているせいか、誰も農作業をしていないらしい。そして新しい住居に引越した時にまた家に夜半が訪れて、
「そういえば東雲くん、君に来て欲しいところがある。時間がある時でいいから来てくれないかい?」
と誘われた。その場所にすぐに赴くと、そこには大きな城が立っていた。中に入ると、
「夜半様!お勤めご苦労様です!!!」
と複数人の兵士がこぞって僕の前にいる夜半にお辞儀をする。どうやら夜半はかなり地位が高いらしい。すると夜半が口を開く。
「そういえば君と明くんはちゃんと言葉遣いとかなってるけどそれはご両親の影響なのかな?あの村、学校とか無いだろうし」
「ああ、いえそれは両親が他界してから家にある本を僕達が読み漁ってたんですよ。結構勉強は好きな方で、そういうのを勉強するのが役に立っててよかったです」
夜半は若干驚いた表情をしていた。
「そうか、それは勉強熱心なことで何よりだ...ああ、もうすぐ着くぞ」
目の前には4つに分岐した道があってそこの真っ直ぐの道へ進む。進むと玉座がありそこには少し老けた老人が座っていてその左右には、兵士に見えるもの達が頭を垂れるいる。
「夜半、よく連れてきた」
ご老人が口を開く。
「はい、彼が、例の」
それだけをいい夜半は僕をそのご老人の方へ進ませる。
「そうか、彼がダジャの・・・いや、なんでもない」
「は、はい?」
ご老人は咳払いをして、
「君に頼みがあってここに呼んだのだ」
「その頼みとはなんでしょう」
「それはな、我が軍に入って頂きたい」
いきなりそんなことを口にした。軍という言葉は僕も知っている。ただ、軍と言うのは戦うものだ。軍というのは1歩間違えれば死んでしまうようなものだ。だからこそ、
「お断りさせて頂きます」
「訳を聞こう」
左右にいる兵士達がざわつく。この感じから察することは出来た。恐らくこのご老人はこの国の王様でその人のお願いを断った僕はとても失礼なことをしてしまったのだろう。だが僕は敢えて言った。
「僕が自分の生涯で望むものはただ1つ。僕は平穏で、安全に、妹と暮らしたいんです。わざわざ戦火までいって万が一死ぬことがあればそんな悲しいことはないでしょう。それに、戦火に赴くこと自体平穏に暮らせていませんし」
「しかしそれが、平穏に暮らせぬ原因であるとするなら?」
「それは一体どういうことですか?」
「どういうこともなにも、自分で経験しただろう。君の妹が襲われるところを」
「!あれには理由があるのか!!!どうなんだ!!」
「落ち着け、そういう意味で言った訳では無いはずだ」
夜半が僕を諭した。少し落ち着き、
「・・・取り乱してしまって、すいません。」
「いいや、大丈夫だ。大切なものが襲われて何も感じない方がおかしい。それでな、今後もあるかもしれない。もしあった時、君の周りでまた力のある人がいればいい。でも毎回いるとは限らない。だから君自身が強くなれば自分で妹を助け、自分の力で自分たちの平穏を勝ち取れる。そう思わないか?」
確かに、実際、明は1度襲われている。それは揺るがない事実だった。それに自分が強くなれば妹が仮に襲われても助けられる。当然ではある。
「君は無一文だ。学歴などもなにもない君を雇ってくれる場所はないだろう。軍に入ればそれさえも解決出来る。どうかね?」
胡散臭いとは思った。だがそれしか方法が無いのなら答えはひとつだろう。
「わかりました。あなた方の軍に入ります。入らせていただきます。」
そんなことがあって今日は疲れた。軍の仕事は明日からあるそうだ。妹にはちゃんと事情を話すと、
「お兄ちゃんがちゃんと帰ってくるならなんにも心配しないよ。だってお兄ちゃん、一度も私に嘘ついたことないもん!」
妹はいいな、とても純粋で。でも嘘は一度だけついた。明が襲われた日、あの日だけは。今日は疲れた。ベッドに横になり、目を閉じた瞬間眠りについたような気がした。

     ーーーーーーーーーー

「はい、そうです」
夜半が口を開く。相手はあのご老人だ。
「これが先日の戦闘で彼が出現させた刀です」
「やはりか...」
「はい、これは・・・」
事実を受け入れられないように、史実を疑うかのように言った。
「これは百年前の戦争で破壊されたの刀です」
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