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No.13 都を去りて
しおりを挟む宇佐美は荒れる京子を横目に、畳の上に正座をした。両腕を組むと、珍しく考え事をしている様だ。
「‥‥確かに、四神に勝つ事は困難です♪ちょっとお時間を頂けますか?相談してみます♪」
しばらく沈黙が続くと、うさ耳が上下に揺れ始めた。
もしかして、こいつ‥‥(何という、胆力だ‥‥)
「‥‥っふーー♪少し眠ってしまいました♪」
「やっぱり寝てたかー‥‥」
(打つ手なし、という事か)
「いえいえ♪ちゃんと月の議会に相談しましたよ♪」
東を司る青龍。それは古の神”四神”の一人らしい。
青龍の他に、北を司る玄武、南を司る朱雀。そして西を司る白虎によって、カグヤは守りを固めているようだ。
「月の議会より提案された選択肢は2つです♪」
・神をも凌駕する力を手に入れる。
・カグヤに取り入り、寝首をかく。
「どっちも出来る気がしないんだけど!」
「どちらかしか選べないとしたら、どっちですか♪いずれにせよ、我々月の民は全力でサポートします♪」
(京子の性分からして、”力を手に入れる”しかなかろう。しかし、如何にして力を手に入れるのだ?)
「それには、勾玉が重要な意味を持ちます♪」
勾玉は行き場を失くした時越者の魂、成れの果ての姿だ。善悪はさておき、勾玉には不思議な力があるらしい。月の研究機関は、勾玉発生のメカニズム研究と並行して、勾玉を利用した”武器の開発”をしているようだ。
勾玉を集め、神をも凌駕する武器を開発。コレをもってして四神との戦いに挑む。それが、月の議会が導き出した提案の一つであった。
「ウロウロしてるうちに、またその青龍に出くわしたらどうすんのさ!!騙しの妖術も、次は効かないかもしれないんだよ!?」
(京子の言う通り、虎の子狩りを続けるのは困難であろう?)
「ここは東京都港区、カグヤ様の居城:竹取ビルは港区《虎ノ門》にあります♪都心を離れ、勾玉を集めて下さい♪虎の子はきっとお二人を追って来ます♪」
「だから、店から出たら虎の子図鑑で見つかっちゃうかも知れないじゃない!」
「我々が四神の注意を引きつけます♪」
(神を食い止められる力があるのなら、おぬしら月の民が、四神を討伐すれば良いではないか)
「倒すのは難しいですが、足止め程度ならできます♪虎の子図鑑による時越者捜索が可能な範囲は、半径3kmです♪四神から3.1kmも離れれば、見つかる事はほぼ無いでしょう♪」
「3km‥‥‥徒歩30分圏内ってとこか」
京子は顎に手を当てると、天井を見上げた。
「今回の遭遇はイレギュラーでしたが、基本的に四神が《虎ノ門》を離れる事はないです♪我々は常日頃、虎ノ門周辺に拠点を築き、カグヤ様の動向を監視していますので♪」
(ふむ‥‥遠征するのはよいが、虎の子はどれだけ現代におるのだ?)
「虎の子図鑑で登録者数(時越者数)を確認してみて下さい♪設定メニューから見れます♪」
京子はガラケーを開くと、設定メニューを確認した。
一、十、百、千、万、十万‥‥‥
「百万!?3百万人も虎の子がいるって事!?」
「月では《時越ツアー》が盛んに行われていますので、ほとんどは”観光時越者”の数でしょう♪その内、虎の子がどれだけいるかは不明ですが【お二人に因縁を吹きかけてくる時越者がいれば、”虎の子”と判断していいでしょう♪】」
「それでも”1万人くらい”は虎の子がいるんじゃないの‥‥?」
京子は頭から血の気が引くのを感じた。
「2022年の日本は歴史的な出来事は無いので、時越観光者は来ないはずです♪それに、時越出来る時代は時越装置が開発された西暦1000年頃~2030年までと幅広いですから♪お二人が時越者と出会ったら”虎の子”だと疑った方がいいですね♪」
(時越者は虎の子と思え、とな‥‥?)
「それはそうと、何で2030年までしか時越出来ないの?」
「2030年に月は破壊され、我々月の民は滅亡するからです♪」
「え!?」
8年後って、思ったよりすぐの話じゃないか‥‥
(呑気にしておれんな。手早く虎の子を狩れる場は無いものか‥‥)
「レベル上げってヤツですね~♪候補地ならあります♪7ヶ月程前、殺生石が割れた話はご存知ですか♪」
伝承の1ページに記載がある。
《平安時代末期》
上皇の病の原因として疑われ、都から姿を消した玉藻前だったが、追手によって討伐された。玉藻前は殺生石へと姿を変えると、毒を発して人々や生き物の命を奪い続けた。後に高徳な和尚によって石は砕かれ、そのかけらは各地へ飛散したという。
《2022年3月》
かけらの一部である”那須の殺生石”が突然割れた。その出来事は様々な憶測を呼び、世間のニュースを騒がせたが、今日に至るまで特異な出来事は起こっていない。「というニュースは嘘です♪」
「割れた殺傷石の周辺で、不可解な現象が増えているという情報が出ています♪」
(その原因が”虎の子”だと言うのか)
「確証は、ございませんがね♪」
「伝承ね~‥‥」
京子は仏間の隅に置かれていた日本酒セットで、一杯始めていた。
「【割れた殺生石】‥‥遠い昔、玉藻前は備前村で生存していました♪お二人のルーツに繋がる旅にもなるかもしれませんよ♪」
「那須‥‥栃木県か~‥‥」
京子はお猪口に注いだ酒を一息で飲み干すと玄次郎を見た。玄次郎は仏間の壁に飾られた子孫の写真を見ているようだった。
「お爺ちゃん、いつもより笑って見えるね~」
(飲みすぎるでないぞ。今宵、発つとしよう)
「いや、せっかち過ぎでしょ、あんた‥‥」
「おっ♪決心してくれましたか♪脱区の際、万が一に備えて、私たちも臨戦体制に入ります♪」
目指すは”栃木県那須郡”
京子は最寄り駅をスマホで検索していた。
「ノンノンノン♪電車はノ~ン♪歩いて下さい♪」
「はぁ!?ここから栃木まで歩いて行けって!?」
(デンシャとは、鉄の乗物の事を言っておるのか?歩け京子。おぬしは酒の飲み過ぎだ)
玄次郎は、京子の腰についた肉を突いた。
「あのね~。現代社会は戦国時代と違って、誘惑が多いのよ」
(それを甘えというのだ)
京子と玄次郎が小競り合いを始めると、宇佐美は靴を持ち、仏間の窓を開けた。
「『天の羽衣』は置いていって下さいね♪玄次郎の妖術で、今や木常骨董店は”秘密基地”と化しました♪」
そう言うと、宇佐美は窓から外へ飛び出した。
《御武運を~♪》
宇佐美の声が、空高くから聞こえた気がした。
‥‥‥
‥‥‥‥
時刻は深夜2時。開発が進む建設現場も暗闇に包まれ、働く人々を迎え入れていた飲食店も、軒並み閉店していた。京子はリュックを背負い、玄次郎と共に北へ向かって歩いていた。
二人は歓楽街を抜けると、月の灯りと道路灯に導かれ、国道へと続くトンネルに差し掛かった。
(強い妖気‥‥‥京子、来るぞ)
玄次郎の耳が釣り上がった。
「あの~、木常さん!!ですかにゃ?」
呼び止める声の方を振り向くと、トンネルの入り口にパーカーのフードを被った少女が立っていた。
後をつけられてたみたいね‥‥
京子はリュックを肩から下ろすと、”ガラケー”をしまい込んだ。
「そうだよ~!あたしは木常京子。あんた何者?」
『名乗る程の者では無いにゃ』
少女はトンネル内へと歩を進めながら、フードを脱いだ。トンネル灯に照らされたのは、頭から”猫耳”を生やした少女だ。
『君に恨みはにゃいけど‥‥ここで死んでもらうにゃーー!』
猫耳少女はパーカーを腕まくりすると、ファイティングポーズをとった。黄色く丸い目は、自信で満ち溢れている。
「物騒なコだね~、嫌いじゃないよ」
トンネルの中で良かった‥‥
ここなら、遠慮なく、笑えるからね!!
「アッハッハーー!アーーハッハッハ!!」
京子の雄叫びのような笑い声がトンネル内に響き渡ると、猫耳少女はたじろいだ。
『にゃんだ、こいつ‥‥絶対、強いにゃ!』
猫耳少女は後退りすると、手に汗を握った。
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