虎の威を狩れ!木常! 〜虎の子狩りで修練を積み、世界を救え〜の巻

真昼間イル

文字の大きさ
13 / 16

No.13 都を去りて

しおりを挟む


 宇佐美は荒れる京子を横目に、畳の上に正座をした。両腕を組むと、珍しく考え事をしている様だ。

「‥‥確かに、四神に勝つ事は困難です♪ちょっとお時間を頂けますか?相談してみます♪」

しばらく沈黙が続くと、うさ耳が上下に揺れ始めた。

 もしかして、こいつ‥‥(何という、胆力だ‥‥)

「‥‥っふーー♪少し眠ってしまいました♪」

「やっぱり寝てたかー‥‥」
(打つ手なし、という事か)

「いえいえ♪ちゃんと月の議会に相談しましたよ♪」

 東を司る青龍。それは古の神”四神”の一人らしい。
青龍の他に、北を司る玄武、南を司る朱雀。そして西を司る白虎によって、カグヤは守りを固めているようだ。

「月の議会より提案された選択肢は2つです♪」
・神をも凌駕する力を手に入れる。
・カグヤに取り入り、寝首をかく。

「どっちも出来る気がしないんだけど!」

「どちらかしか選べないとしたら、どっちですか♪いずれにせよ、我々月の民は全力でサポートします♪」

(京子の性分からして、”力を手に入れる”しかなかろう。しかし、如何にして力を手に入れるのだ?)

「それには、勾玉が重要な意味を持ちます♪」 

 勾玉は行き場を失くした時越者の魂、成れの果ての姿だ。善悪はさておき、勾玉には不思議な力があるらしい。月の研究機関は、勾玉発生のメカニズム研究と並行して、勾玉を利用した”武器の開発”をしているようだ。

 勾玉を集め、神をも凌駕する武器を開発。コレをもってして四神との戦いに挑む。それが、月の議会が導き出した提案の一つであった。

「ウロウロしてるうちに、またその青龍に出くわしたらどうすんのさ!!騙しの妖術も、次は効かないかもしれないんだよ!?」

(京子の言う通り、虎の子狩りを続けるのは困難であろう?)

「ここは東京都港区、カグヤ様の居城:竹取ビルは港区《虎ノ門》にあります♪都心を離れ、勾玉を集めて下さい♪虎の子はきっとお二人を追って来ます♪」

「だから、店から出たら虎の子図鑑で見つかっちゃうかも知れないじゃない!」

「我々が四神の注意を引きつけます♪」

(神を食い止められる力があるのなら、おぬしら月の民が、四神を討伐すれば良いではないか)

「倒すのは難しいですが、足止め程度ならできます♪虎の子図鑑による時越者捜索が可能な範囲は、半径3kmです♪四神から3.1kmも離れれば、見つかる事はほぼ無いでしょう♪」

「3km‥‥‥徒歩30分圏内ってとこか」
京子は顎に手を当てると、天井を見上げた。

「今回の遭遇はイレギュラーでしたが、基本的に四神が《虎ノ門》を離れる事はないです♪我々は常日頃、虎ノ門周辺に拠点を築き、カグヤ様の動向を監視していますので♪」

(ふむ‥‥遠征するのはよいが、虎の子はどれだけ現代ここにおるのだ?)

「虎の子図鑑で登録者数(時越者数)を確認してみて下さい♪設定メニューから見れます♪」

京子はガラケーを開くと、設定メニューを確認した。
一、十、百、千、万、十万‥‥‥
「百万!?3百万人も虎の子がいるって事!?」

「月では《時越ツアー》が盛んに行われていますので、ほとんどは”観光時越者”の数でしょう♪その内、虎の子がどれだけいるかは不明ですが【お二人に因縁を吹きかけてくる時越者がいれば、”虎の子”と判断していいでしょう♪】」

「それでも”1万人くらい”は虎の子がいるんじゃないの‥‥?」
京子は頭から血の気が引くのを感じた。

「2022年の日本は歴史的な出来事は無いので、時越観光者は来ないはずです♪それに、時越出来る時代は時越装置が開発された西暦1000年頃~2030年までと幅広いですから♪お二人が時越者と出会ったら”虎の子”だと疑った方がいいですね♪」

 (時越者は虎の子と思え、とな‥‥?)

「それはそうと、何で2030年までしか時越出来ないの?」

「2030年に月は破壊され、我々月の民は滅亡するからです♪」

「え!?」
8年後って、思ったよりすぐの話じゃないか‥‥

(呑気にしておれんな。手早く虎の子を狩れる場は無いものか‥‥)

「レベル上げってヤツですね~♪候補地ならあります♪7ヶ月程前、殺生石が割れた話はご存知ですか♪」

伝承の1ページに記載がある。
 《平安時代末期》
上皇の病の原因として疑われ、都から姿を消した玉藻前だったが、追手によって討伐された。玉藻前は殺生石へと姿を変えると、毒を発して人々や生き物の命を奪い続けた。後に高徳な和尚によって石は砕かれ、そのかけらは各地へ飛散したという。

 《2022年3月》
かけらの一部である”那須の殺生石”が突然割れた。その出来事は様々な憶測を呼び、世間のニュースを騒がせたが、今日に至るまで特異な出来事は起こっていない。「というニュースは嘘です♪」

「割れた殺傷石の周辺で、不可解な現象が増えているという情報が出ています♪」

(その原因が”虎の子”だと言うのか)
「確証は、ございませんがね♪」

「伝承ね~‥‥」
京子は仏間の隅に置かれていた日本酒セットで、一杯始めていた。

「【割れた殺生石】‥‥遠い昔、玉藻前は備前村で生存していました♪お二人のルーツに繋がる旅にもなるかもしれませんよ♪」 

  「那須‥‥栃木県か~‥‥」

 京子はお猪口に注いだ酒を一息で飲み干すと玄次郎を見た。玄次郎は仏間の壁に飾られた子孫の写真を見ているようだった。

「お爺ちゃん、いつもより笑って見えるね~」

(飲みすぎるでないぞ。今宵、発つとしよう)
「いや、せっかち過ぎでしょ、あんた‥‥」

「おっ♪決心してくれましたか♪脱区の際、万が一に備えて、私たちも臨戦体制に入ります♪」

 目指すは”栃木県那須郡”
京子は最寄り駅をスマホで検索していた。

「ノンノンノン♪電車はノ~ン♪歩いて下さい♪」

「はぁ!?ここから栃木まで歩いて行けって!?」

(デンシャとは、鉄の乗物の事を言っておるのか?歩け京子。おぬしは酒の飲み過ぎだ)
玄次郎は、京子の腰についた肉を突いた。

「あのね~。現代社会は戦国時代と違って、誘惑が多いのよ」

(それを甘えというのだ)

京子と玄次郎が小競り合いを始めると、宇佐美は靴を持ち、仏間の窓を開けた。

「『天の羽衣』は置いていって下さいね♪玄次郎の妖術で、今や木常骨董店は”秘密基地”と化しました♪」
そう言うと、宇佐美は窓から外へ飛び出した。

《御武運を~♪》
宇佐美の声が、空高くから聞こえた気がした。

‥‥‥
‥‥‥‥

 時刻は深夜2時。開発が進む建設現場も暗闇に包まれ、働く人々を迎え入れていた飲食店も、軒並み閉店していた。京子はリュックを背負い、玄次郎と共に北へ向かって歩いていた。

 二人は歓楽街を抜けると、月の灯りと道路灯に導かれ、国道へと続くトンネルに差し掛かった。

(強い妖気‥‥‥京子、来るぞ)
玄次郎の耳が釣り上がった。

「あの~、木常さん!!ですかにゃ?」
呼び止める声の方を振り向くと、トンネルの入り口にパーカーのフードを被った少女が立っていた。

 後をつけられてたみたいね‥‥

京子はリュックを肩から下ろすと、”ガラケー”をしまい込んだ。

「そうだよ~!あたしは木常京子。あんた何者?」

『名乗る程の者では無いにゃ』
 少女はトンネル内へと歩を進めながら、フードを脱いだ。トンネル灯に照らされたのは、頭から”猫耳”を生やした少女だ。

『君に恨みはにゃいけど‥‥ここで死んでもらうにゃーー!』
猫耳少女はパーカーを腕まくりすると、ファイティングポーズをとった。黄色く丸い目は、自信で満ち溢れている。

「物騒なコだね~、嫌いじゃないよ」

 トンネルの中で良かった‥‥
 ここなら、遠慮なく、笑えるからね!!

「アッハッハーー!アーーハッハッハ!!」
京子の雄叫びのような笑い声がトンネル内に響き渡ると、猫耳少女はたじろいだ。

『にゃんだ、こいつ‥‥絶対、強いにゃ!』
猫耳少女は後退りすると、手に汗を握った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...