17 / 140
30日目
しおりを挟む
人間、中身は大切だ。
中身は外見に表れる。可憐な美少女白雪は、気付けば三十日目にして、くすんでしまっていた。
私はお世辞にもお洒落とは言えなかった。機能性を重視する方だ。だから迷わず髪も切ったし、服だって楽で動きやすい男物ーー正確には物を捨てられない性質を持った、アケイルさんのお古を着ている。
それがマズかったのだろう。
綺麗なストレートだった白銀髪は、今やボサボサのねずみ色。近衛配属で得たあちこちの打ち身、擦り傷も手伝って、少女というより少年と化している。
まあ、素材の良さが変わるわけではないので、ちょっとした美少年と言えなくもないけれど。
ごめんね、白雪。せっかく器量良しに創ってもらったのにね。
鏡の前でため息をついた。
時間は真夜中、場所は脱衣所。風呂へ足を運ぶと、ご丁寧に姿見なんてかけてあるものだから、目に付いてしまったのだ。我が身の姿が。
「はあ…」
盛大に、ため息をもう一つ。
まいったなと思いつつ鏡から目を逸らす。すると、隅っこでなにかが動いているのが見えた。
なんだろう?と、近づいてみる。
その動く物体は人だった。
裸体を少しでも覆おうと手ぬぐいを精一杯広げ、隠れるように棚の陰でしゃがみこんでいるーー女の子。なにも身に着けていないせいか、首元の細い金の鎖がやけに目に付いた。
私の視線に気付き、女の子が俯けていた顔を上げる。
こわばった顔と目が合った。
「あの、どうしたの?」
私を恐れているのでは?そんな考えがよぎったが、声をかけてみた。なんとなく、放っておけない雰囲気があった。するとーー
「ふっ!…うう、う、ひっく…」
弾かれたように、その女の子は泣き出してしまった。
ど、どうしよう!?
無意味に周囲を見回す。もちろん、助け舟を出してくれる者などなく、女の子が泣き止んで落ち着くまでに、しばらくの時間を要した。
だけど、落ち着いてしまうと、彼女はそばでオロオロしていた私に話しかけてきた。
「急に泣いたりして、ごめんなさい。あの、あなたのせいじゃないから…」
え?そうなの?
自分が泣いた原因ではないと判って、胸をなでおろす。
「それを聞いて安心した。けど、なにがあったの?こんな時間に、そんな格好でいるなんて」
「え?あの…それは…」
言いよどむ彼女を見つめ、無言で促す。すると、ぽつりぽつりと重い口調ではあったけれど話してくれた。
彼女は嫌がらせにあっていたらしい。
そう、脱衣所の籠に入れてあった己の衣服をすべて持っていかれてしまい、出るに出られなくなっていたのだ。
まったく、嫌な話である。
幸いにも、私にそんな害は今もってない。周囲の人たちに陰でヒソヒソと、あれこれ言われているのは気付いている。良く思われていないことも。だけど彼らは、それを面と向かって言っては来ない。手も出さない。
そうか。主上が必要以上に、私に構う理由の一つがこれなのだ。
牽制してくれていたのだ。はあ。本当に世話になりっぱなしだな。深く息を吐く。それから目の前でうずくまる少女に、たどたどしくも笑顔を向けた。
「あの、ね?嫌でなければどうぞ」
彼女に、自分の着替えを差し出した。
中身は外見に表れる。可憐な美少女白雪は、気付けば三十日目にして、くすんでしまっていた。
私はお世辞にもお洒落とは言えなかった。機能性を重視する方だ。だから迷わず髪も切ったし、服だって楽で動きやすい男物ーー正確には物を捨てられない性質を持った、アケイルさんのお古を着ている。
それがマズかったのだろう。
綺麗なストレートだった白銀髪は、今やボサボサのねずみ色。近衛配属で得たあちこちの打ち身、擦り傷も手伝って、少女というより少年と化している。
まあ、素材の良さが変わるわけではないので、ちょっとした美少年と言えなくもないけれど。
ごめんね、白雪。せっかく器量良しに創ってもらったのにね。
鏡の前でため息をついた。
時間は真夜中、場所は脱衣所。風呂へ足を運ぶと、ご丁寧に姿見なんてかけてあるものだから、目に付いてしまったのだ。我が身の姿が。
「はあ…」
盛大に、ため息をもう一つ。
まいったなと思いつつ鏡から目を逸らす。すると、隅っこでなにかが動いているのが見えた。
なんだろう?と、近づいてみる。
その動く物体は人だった。
裸体を少しでも覆おうと手ぬぐいを精一杯広げ、隠れるように棚の陰でしゃがみこんでいるーー女の子。なにも身に着けていないせいか、首元の細い金の鎖がやけに目に付いた。
私の視線に気付き、女の子が俯けていた顔を上げる。
こわばった顔と目が合った。
「あの、どうしたの?」
私を恐れているのでは?そんな考えがよぎったが、声をかけてみた。なんとなく、放っておけない雰囲気があった。するとーー
「ふっ!…うう、う、ひっく…」
弾かれたように、その女の子は泣き出してしまった。
ど、どうしよう!?
無意味に周囲を見回す。もちろん、助け舟を出してくれる者などなく、女の子が泣き止んで落ち着くまでに、しばらくの時間を要した。
だけど、落ち着いてしまうと、彼女はそばでオロオロしていた私に話しかけてきた。
「急に泣いたりして、ごめんなさい。あの、あなたのせいじゃないから…」
え?そうなの?
自分が泣いた原因ではないと判って、胸をなでおろす。
「それを聞いて安心した。けど、なにがあったの?こんな時間に、そんな格好でいるなんて」
「え?あの…それは…」
言いよどむ彼女を見つめ、無言で促す。すると、ぽつりぽつりと重い口調ではあったけれど話してくれた。
彼女は嫌がらせにあっていたらしい。
そう、脱衣所の籠に入れてあった己の衣服をすべて持っていかれてしまい、出るに出られなくなっていたのだ。
まったく、嫌な話である。
幸いにも、私にそんな害は今もってない。周囲の人たちに陰でヒソヒソと、あれこれ言われているのは気付いている。良く思われていないことも。だけど彼らは、それを面と向かって言っては来ない。手も出さない。
そうか。主上が必要以上に、私に構う理由の一つがこれなのだ。
牽制してくれていたのだ。はあ。本当に世話になりっぱなしだな。深く息を吐く。それから目の前でうずくまる少女に、たどたどしくも笑顔を向けた。
「あの、ね?嫌でなければどうぞ」
彼女に、自分の着替えを差し出した。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる