白雪日記

ふたあい

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30日目

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 人間、中身は大切だ。

 中身は外見に表れる。可憐な美少女白雪は、気付けば三十日目にして、くすんでしまっていた。
 私はお世辞にもお洒落とは言えなかった。機能性を重視する方だ。だから迷わず髪も切ったし、服だって楽で動きやすい男物ーー正確には物を捨てられない性質を持った、アケイルさんのお古を着ている。

 それがマズかったのだろう。

 綺麗なストレートだった白銀髪は、今やボサボサのねずみ色。近衛配属で得たあちこちの打ち身、擦り傷も手伝って、少女というより少年と化している。
 まあ、素材の良さが変わるわけではないので、ちょっとした美少年と言えなくもないけれど。

 ごめんね、白雪。せっかく器量良しに創ってもらったのにね。

 鏡の前でため息をついた。
 時間は真夜中、場所は脱衣所。風呂へ足を運ぶと、ご丁寧に姿見なんてかけてあるものだから、目に付いてしまったのだ。我が身の姿が。

「はあ…」

 盛大に、ため息をもう一つ。
 まいったなと思いつつ鏡から目を逸らす。すると、隅っこでなにかが動いているのが見えた。
 なんだろう?と、近づいてみる。

 その動く物体は人だった。

 裸体を少しでも覆おうと手ぬぐいを精一杯広げ、隠れるように棚の陰でしゃがみこんでいるーー女の子。なにも身に着けていないせいか、首元の細い金の鎖がやけに目に付いた。
 私の視線に気付き、女の子が俯けていた顔を上げる。

 こわばった顔と目が合った。

「あの、どうしたの?」
 私を恐れているのでは?そんな考えがよぎったが、声をかけてみた。なんとなく、放っておけない雰囲気があった。するとーー

「ふっ!…うう、う、ひっく…」

 弾かれたように、その女の子は泣き出してしまった。

 ど、どうしよう!?

 無意味に周囲を見回す。もちろん、助け舟を出してくれる者などなく、女の子が泣き止んで落ち着くまでに、しばらくの時間を要した。
 だけど、落ち着いてしまうと、彼女はそばでオロオロしていた私に話しかけてきた。
「急に泣いたりして、ごめんなさい。あの、あなたのせいじゃないから…」
 え?そうなの?
 自分が泣いた原因ではないと判って、胸をなでおろす。
「それを聞いて安心した。けど、なにがあったの?こんな時間に、そんな格好でいるなんて」
「え?あの…それは…」
 言いよどむ彼女を見つめ、無言で促す。すると、ぽつりぽつりと重い口調ではあったけれど話してくれた。

 彼女は嫌がらせにあっていたらしい。

 そう、脱衣所の籠に入れてあった己の衣服をすべて持っていかれてしまい、出るに出られなくなっていたのだ。
 まったく、嫌な話である。
 幸いにも、私にそんな害は今もってない。周囲の人たちに陰でヒソヒソと、あれこれ言われているのは気付いている。良く思われていないことも。だけど彼らは、それを面と向かって言っては来ない。手も出さない。

 そうか。主上が必要以上に、私に構う理由の一つがこれなのだ。

 牽制してくれていたのだ。はあ。本当に世話になりっぱなしだな。深く息を吐く。それから目の前でうずくまる少女に、たどたどしくも笑顔を向けた。

「あの、ね?嫌でなければどうぞ」
 彼女に、自分の着替えを差し出した。
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