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32日目
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制服には浪漫がある。
なんて。
馬鹿?と、我ながら思うのだけど、嬉しいものは嬉しい。
淡い、ラベンダー色の団服。近衛の皆が着用しているのがそれ。それができた。私のぶん。
近衛配属が決まった次の日、フィルに連れられ、初めて『技術塔』へ入った。
技術塔は様々な分野の技術士が籍を置き、各々が生活、文化向上のため、日々研鑽を重ね腕を磨くーーそんな場であると、その時聞いた。
服飾技術士のいる、被服工房もその一つである。衣食住というものは、どんな世界であっても欠かせないものということか。
そこで団服用に採寸してもらい、今日出来上がったとの知らせをもらったのだ。嬉しい。
嬉々として団服を受け取りに、技術塔へと向かった。
足を運ぶのは二度目。今回は一人でだ。自信たっぷりだった方向音痴は、白雪の方向感覚が渡り鳥のように良いため、鳴りをひそめている。
そして、少しずつではあったけれど、私の行動範囲は日々広がっている。怠け者で自主性のない性質を考えると画期的であると言えた。
技術塔敷地内に入ったところで、なにかが足元でチラついた。
鳥だった。
なんの鳥だろう?見た感じ、アレだ。あの鳥に似ている。アレはそう…キウイフルーツの名前の元となったヤツ。まんまだな、キウイ。アレとよく似ている。
実物を凝らして見たことがないので程度は定かではないが、記憶にあるフォルムとその鳥は、実に似通っていた。
キウイもどきは人を恐れる様子もなく、私の足元をひょこひょこと歩いている。そのコミカルな動きが可愛い。思わずしゃがみ込んで眺めていると、声をかけられた。
「可愛いだろ?そいつ」
見上げると熊が。…というのは失礼か。熊のような男が、私を見下ろしていた。大きいな。技術塔の人かな?
「はい。なんという鳥ですか?」
すごく興味があったので、尋ねてみる。
「なにって…?フンモコだよ」
フンモコ!?
恐ろしく気の抜ける名前だ。うわあ…フンモコ。フンモコ!あ、こっちに来た。
フンモコに興味津々の私。熊が顎に手を添える。少しの沈黙の後、呟くように口にした。
「ああ、誰かと思えば。アンタか。陛下が近衛にゴリ押ししたっていう、ホムンクルス。本当に白いんだな」
おっと。私ってば、いつの間にやら有名人。そりゃそうか。
それにしたって遠慮のない物言いだな。黙って足元のフンモコを抱き上げた私を見て、熊は言った。
「気に入ったか?どうだ?飼育場、見てみるか?」
「え?いいんですか?」
「おうよ。自慢のフンモコだ、是非見ていってくれ」
熊がニッと笑う。別に私を気味悪がっているわけではなさそう。なんだか豪快。察するに、裏表がないんだな。
熊に案内され、技術塔裏手より少し離れたその場所へ向かう。道すがら「そいつが逃げ出して探していたんだ。捕まえてくれてありがとうな」と、抱えたフンモコを指さされつつ、礼を言われた。
そこには、囲いの中にたくさんのフンモコがいた。
おお!フンモコの集団だ。
連れてきたフンモコを離してやると、仲間の元へえっちらおっちら歩いて行った。コロコロと丸い鳥が、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。見ているだけで癒やされる。
「どうだ?俺の育てたフンモコは?」
熊は自慢げだ。
「可愛いです。すごく」
和むなあ。
「そうだろ、そうだろ。味も絶品なんだぜ?」
……食用だったかフンモコよ。
なんて。
馬鹿?と、我ながら思うのだけど、嬉しいものは嬉しい。
淡い、ラベンダー色の団服。近衛の皆が着用しているのがそれ。それができた。私のぶん。
近衛配属が決まった次の日、フィルに連れられ、初めて『技術塔』へ入った。
技術塔は様々な分野の技術士が籍を置き、各々が生活、文化向上のため、日々研鑽を重ね腕を磨くーーそんな場であると、その時聞いた。
服飾技術士のいる、被服工房もその一つである。衣食住というものは、どんな世界であっても欠かせないものということか。
そこで団服用に採寸してもらい、今日出来上がったとの知らせをもらったのだ。嬉しい。
嬉々として団服を受け取りに、技術塔へと向かった。
足を運ぶのは二度目。今回は一人でだ。自信たっぷりだった方向音痴は、白雪の方向感覚が渡り鳥のように良いため、鳴りをひそめている。
そして、少しずつではあったけれど、私の行動範囲は日々広がっている。怠け者で自主性のない性質を考えると画期的であると言えた。
技術塔敷地内に入ったところで、なにかが足元でチラついた。
鳥だった。
なんの鳥だろう?見た感じ、アレだ。あの鳥に似ている。アレはそう…キウイフルーツの名前の元となったヤツ。まんまだな、キウイ。アレとよく似ている。
実物を凝らして見たことがないので程度は定かではないが、記憶にあるフォルムとその鳥は、実に似通っていた。
キウイもどきは人を恐れる様子もなく、私の足元をひょこひょこと歩いている。そのコミカルな動きが可愛い。思わずしゃがみ込んで眺めていると、声をかけられた。
「可愛いだろ?そいつ」
見上げると熊が。…というのは失礼か。熊のような男が、私を見下ろしていた。大きいな。技術塔の人かな?
「はい。なんという鳥ですか?」
すごく興味があったので、尋ねてみる。
「なにって…?フンモコだよ」
フンモコ!?
恐ろしく気の抜ける名前だ。うわあ…フンモコ。フンモコ!あ、こっちに来た。
フンモコに興味津々の私。熊が顎に手を添える。少しの沈黙の後、呟くように口にした。
「ああ、誰かと思えば。アンタか。陛下が近衛にゴリ押ししたっていう、ホムンクルス。本当に白いんだな」
おっと。私ってば、いつの間にやら有名人。そりゃそうか。
それにしたって遠慮のない物言いだな。黙って足元のフンモコを抱き上げた私を見て、熊は言った。
「気に入ったか?どうだ?飼育場、見てみるか?」
「え?いいんですか?」
「おうよ。自慢のフンモコだ、是非見ていってくれ」
熊がニッと笑う。別に私を気味悪がっているわけではなさそう。なんだか豪快。察するに、裏表がないんだな。
熊に案内され、技術塔裏手より少し離れたその場所へ向かう。道すがら「そいつが逃げ出して探していたんだ。捕まえてくれてありがとうな」と、抱えたフンモコを指さされつつ、礼を言われた。
そこには、囲いの中にたくさんのフンモコがいた。
おお!フンモコの集団だ。
連れてきたフンモコを離してやると、仲間の元へえっちらおっちら歩いて行った。コロコロと丸い鳥が、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。見ているだけで癒やされる。
「どうだ?俺の育てたフンモコは?」
熊は自慢げだ。
「可愛いです。すごく」
和むなあ。
「そうだろ、そうだろ。味も絶品なんだぜ?」
……食用だったかフンモコよ。
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