白雪日記

ふたあい

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54日目(2)

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 ど、どうしよう。

 城内を当てもなくウロウロしながら、途方に暮れた。
 夕べ私が吸収した光る綿あめ、あれが消失したと騒がれる『星の雫』であることは、火を見るよりも明らか。大変なことを、やらかしてしまったよう。
 お陰で確信を避けながらフィルを質問攻めにするという、とんちきなことをしなければならなかった。そのせいで勉強不足と、彼に呆れられた。
 そもそもノーツが悪い!奴のせいで、図書館に行きそこねたのだ!

 まったく。こっちは迂闊にものを尋ねられない立場だっていうのに。

 『雫』と簡略して称されることも多い『星の雫』とは、『式熱』と言われるものの元だった。
 では『式熱』とは?
 人の中にあるもの。溜め込むものーーそれは、式術を発動させるためのエネルギー。
 要は、車を走らせるのにガソリンを消費するように、式術を使うのに消費されるもの。資源。
 私たちが穴を掘ってそれを得ていたように、ここでは空から降ってくるのを拾い上げていたのだ。
 拙いことに、これが非常に貴重であるらしい。国に認められた術師にしか与えられない、量も細かく定められているというのだから、度合いが知れようというもの。
 闇ルートで取引なんかもされていて、雫に関する犯罪は後を絶たないとか。
 『陽月下ようげっか』と呼ばれる、国中に散らばって雫を集める回収部隊がいるらしく、夕べ私が見た所属不明の人たちがそれ。
 見つけた雫は召喚術で回収を行うらしいので、その人たちは皆、当然術師。同時に、雫絡みの犯罪者を取り締まり、撃退する必要もあるので、武芸者でもあるのだそう。だから一見文官、気配は武官だったのだ。

 納得である。

 それにしても召喚術というものは、ただ人や物を呼び出す以外にも、いろいろ応用が利くようだ。
 有形、無形を問わず、自らの定めた場所に望むものを移動させることができる。物質の強制瞬間移動法とでも言うべきか。
 アケイルさんに聞いた時、「召喚術師はエネルギーを所定の空間に留めるのが、主な役目」と言っていたのは、このことだったのだ。それで勝手に、物理的なものと解釈していた。

 とにかく。その貴重なエネルギーを、私は取り込んでしまった!

 悪いことに、一度体内に入り式熱へ転化すると取り出すことは不可能、式術として消費するしかないそうで、見事に無駄になっている。おまけに夕べのは大きかったなんて言われたら、もう口を噤むしかない。
 まいったなあ。捜しているものは目の前です、なんて言えやしない。
 フィルに一通りの説明をしてもらい、夕べの綿あめが捜す星の雫であると確信を得た私は、口をモゴモゴさせるしかなかった。

 主上を頼るしかない。

 雫捜しの任を遂行するふりをしながら散々考えた挙げ句、そう結論した。手に余る。もうそれしかないだろう。部屋にいるかどうかは、運次第だけど。
 向かう先へ、方向転換した。

 少し行ったところでギィと出くわした。城下で会った時も思ったけれど、やっぱり目立つ。良い意味で。彼とも久しぶりだ。
「よう、シロ。復帰したか」
 足踏みしながら挨拶をしてきたギィは、いつになく慌てている様子。
「はい。お陰様で。あの、どうかしたんですか?」
「ああ。どうしたもこうしたも、少し目を離した隙に占者がいなくなった…と、そうだ。お前も捜してくれ。城内には、いるはずだから」
「ええっ?あ、はい」
 慌てるわけだ。こっちが優先だな。もし占者になにかあったら大変だ。

 ん?でもいいのか?

 復帰したとはいえ、私の疑いはまだ晴れていない。その私に占者を捜せって。
「私は疑われている身ですが、それでもいいんですか?」
「構わん。正直、お前を信じているかと問われれば否だが、陛下が大丈夫と言うなら問題ない」
「……」
 すごいな。主上は信頼されている。だけど…
 その主上は、なにを根拠に私を大丈夫だと言うのだろう?
 どうにも底の知れない王様である。

「とにかく捜せ。いいか?占者は子供だ。七歳。男。茶色のおかっぱ頭!…ったく、あのガキが。チョロチョロしやがって…」

 私が返事しないでいると、ギィは焦りを露わに必要なことだけを言い放って、愚痴混じりに走り去っていった。

 思考が凍りついた。

 理解するのにしばしの間。

「え?えええええっ!?」
 絶叫する。

 占者が子供?茶色のおかっぱ頭?ア、アランサ~~!?
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