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54日目(3)
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気付くべきだったのだ。彼の言うお礼が、星の雫だったという時点で。
占者、アランサ・ファンスランス。私が池のほとりで出会った男の子。『砂糖の雫』のクッキーというヒントまであったというのに、至らなかった。我ながら鈍い。
権限縮小、常にこの意見が絶えない中、占者の地位が脅かされることのなかった理由がこれ。
星降る位置を視る力。
まさかそれを利用して、個人的なお礼として雫が送られる日が来ようとは、誰も予測しなかっただろう。
「まいった。やってくれたな、占者よ」
さすがの主上も、これには頭を抱えている。
「シロにお礼。これもらったの。ママにお礼は大事だって、言われてるよ?」
対するアランサはにっこり笑って、嬉しそうにポケットから折り鶴を取り出した。そして、それを主上に見せる。
「そいつは…よくできてるな」
「でしょう?すっごく、嬉しかったんだ」
「……そうか。良かったな」
複雑そうな顔をアランサに向け、それからこちらを見る。やはり表情が険しい。
本当に。申し訳ありません。
ギィと会った後、慌てた私はすぐさま主上の元へ向かった。そして幸運(?)にも、途中の池のほとりでアランサを見つけたのだ。どうやら王の私庭裏は、私だけでなく彼のお気に入りの場所であったらしい。
それからアランサを連れ、主上の居室ーーもちろん裏からーーへ。またまた幸運にも、主上は丁度、立ち寄ったところだった。私は驚く主上をひっ捕まえて一連の事情を話し、占者発見の報をギィ班に伝達してもらってーー
この状況。
「雫はお前の中か」
「すみません。軽率でした」
「ああ。まあ、気にするな。それは適当に処理しておく」
え?適当って…いいのか、それ?
「ま、高々、数年分だ。盗まれて闇市で捌かれるより始末がいい」
数年分!?それって、どの程度の規模に対して?もっと具体的に言ってください!
「シロ、お礼。嬉しい?」
焦る私の服の裾を、アランサが引っ張った。そんな目でみられるとなあ…。
「え?あ、うん。ありがとう」
そう答えるしか、ないではないか。
主上が私たちの様子を見て笑いだす。笑い事ではないだろうに。
さっきまで頭を抱えて、少し怖い顔をしていたのに、切り替えの早い。
そんな主上ではあったけれど、ちゃんとアランサにお小言を言うのを忘れたりはしなかった。
「占者よ。お前の決定だ、誰にもケチはつけられん。だがな。こんな無茶は駄目だ。星の雫は、この国の人々にとって大切な資源だ。個人のために、贈ったりするものじゃない。これっきりにしてくれよ。それと。今は一人で出歩くこともやめてくれ」
言われたアランサは、しばらくきょとんとしていたのだけど、おもむろに頬を膨らませた。
「ヤだ!つまんない!それに、あれはシロのだもん!皆の雫は他にあるもん!!」
「まあ、いまさらシロの中から、取り出すことはできないが…」
口答えするアランサに、困ったように主上が眉根を寄せる。まるで親子だな。
「だが、一人で出歩くのは禁止だ」
「じゃあ、シロと出る!」
え?あれ?
話の流れが、思わぬ方へ行ってないか?
占者、アランサ・ファンスランス。私が池のほとりで出会った男の子。『砂糖の雫』のクッキーというヒントまであったというのに、至らなかった。我ながら鈍い。
権限縮小、常にこの意見が絶えない中、占者の地位が脅かされることのなかった理由がこれ。
星降る位置を視る力。
まさかそれを利用して、個人的なお礼として雫が送られる日が来ようとは、誰も予測しなかっただろう。
「まいった。やってくれたな、占者よ」
さすがの主上も、これには頭を抱えている。
「シロにお礼。これもらったの。ママにお礼は大事だって、言われてるよ?」
対するアランサはにっこり笑って、嬉しそうにポケットから折り鶴を取り出した。そして、それを主上に見せる。
「そいつは…よくできてるな」
「でしょう?すっごく、嬉しかったんだ」
「……そうか。良かったな」
複雑そうな顔をアランサに向け、それからこちらを見る。やはり表情が険しい。
本当に。申し訳ありません。
ギィと会った後、慌てた私はすぐさま主上の元へ向かった。そして幸運(?)にも、途中の池のほとりでアランサを見つけたのだ。どうやら王の私庭裏は、私だけでなく彼のお気に入りの場所であったらしい。
それからアランサを連れ、主上の居室ーーもちろん裏からーーへ。またまた幸運にも、主上は丁度、立ち寄ったところだった。私は驚く主上をひっ捕まえて一連の事情を話し、占者発見の報をギィ班に伝達してもらってーー
この状況。
「雫はお前の中か」
「すみません。軽率でした」
「ああ。まあ、気にするな。それは適当に処理しておく」
え?適当って…いいのか、それ?
「ま、高々、数年分だ。盗まれて闇市で捌かれるより始末がいい」
数年分!?それって、どの程度の規模に対して?もっと具体的に言ってください!
「シロ、お礼。嬉しい?」
焦る私の服の裾を、アランサが引っ張った。そんな目でみられるとなあ…。
「え?あ、うん。ありがとう」
そう答えるしか、ないではないか。
主上が私たちの様子を見て笑いだす。笑い事ではないだろうに。
さっきまで頭を抱えて、少し怖い顔をしていたのに、切り替えの早い。
そんな主上ではあったけれど、ちゃんとアランサにお小言を言うのを忘れたりはしなかった。
「占者よ。お前の決定だ、誰にもケチはつけられん。だがな。こんな無茶は駄目だ。星の雫は、この国の人々にとって大切な資源だ。個人のために、贈ったりするものじゃない。これっきりにしてくれよ。それと。今は一人で出歩くこともやめてくれ」
言われたアランサは、しばらくきょとんとしていたのだけど、おもむろに頬を膨らませた。
「ヤだ!つまんない!それに、あれはシロのだもん!皆の雫は他にあるもん!!」
「まあ、いまさらシロの中から、取り出すことはできないが…」
口答えするアランサに、困ったように主上が眉根を寄せる。まるで親子だな。
「だが、一人で出歩くのは禁止だ」
「じゃあ、シロと出る!」
え?あれ?
話の流れが、思わぬ方へ行ってないか?
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