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74日目(3)
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「夜になると、若返る?」
「阿呆。そんなわけねえだろ。昼間のジジイは、四十七年後の俺だ」
「ああ、未来のフルルクスさん。……って、どういうことです?」
「単純な話だ。『現在の俺』が『未来の俺』を召喚した。それだけのことだ。死んだところを喚ばれて来た奴が、ケチつけんなよ?」
「……それがありなら、これもあり、ですか?」
荒唐無稽な話になってきたぞ?
「胡散臭えって、顔してやがんな。だが紛れもない事実だ」
「いえ、疑っているわけでは……そうか!爺様の言っていた、私たちは『境界上の者』ってこのこと?」
「そうだ。俺たちは神の領域一歩手前に立っていると言える。だがな、ここが限界だ。その先へは進めねえ。だから俺はジジイがいる間ここに存在できねえし、お前はこの世界の者じゃなく、ホムンクルスに魂は宿らねえ」
ーーえ?
「は…い?」
「知らねえと思ってたのか?お前は、この世界の者じゃないだろう?」
「あ…知って…え、皆?」
「いや。これに関しては、珍しくジジイが示唆したらしいが…他に知っているのは、ヘボ王と変態白魔術師だけだ」
なんだって?え?
「ヘボ?変態?……え、と、王は主上として、白魔術師というと?」
「筆頭白魔術師、ライトリィ・イーウィー。今日もジジイといたらしいな?今頃、王と雁首揃えて酒でも飲んでいるだろうよ」
「なんだか…親しそうな口ぶりですね?同年代のようですし」
「三人、同じ歳だ。学友と言えば聞こえは良いが、要は悪ガキ仲間だ」
「良いですね、そういうの」
フルルクスは、なんともいえない顔をした。
察するに、少し照れている?クスリと笑うと、やたらとガラの悪い男はバツが悪いのか視線を逸した。
「ふん」
なるほど。ふむ。
「…それで?爺様がいる間ここに存在できないというのは、どういうことですか?」
「…爺様、ねえ。そのまんまだ。ジジイがこちら側にいる間、俺は時空の狭間に閉じ込められる。同時に二人は存在できないってことだ」
あ、さっきから爺様って口に出してた。まあ、いいか。
「入れ替わって、四十七年後に行くわけではない?」
「ジジイにとって、四十七年前は存在する。だが俺にとって、四十七年後はまだ存在していない。踏み込めないんだよ、それこそ境界向こうだ」
ここまでの話を噛み砕く。これは式術の限界の話、なのだろう。
一つの結論に辿り着いた。
「それは、私がこの世界の者ではないことと、同じ?」
フルルクスが口の端を上げた。
「解ってきたな。そうだ。一見、同じ非常識だが、その非常識にも制限がある。死んだ奴は戻らねえ。どれほど手を尽くそうがな。お前の魂は、この世界の理から外れた存在だ。だから召喚可能だった。本当はそれだって、あっちゃならねえことだがな」
「…確かに。私の場合、『戻った』ではなく『やって来た』ですね。それがーー」
境界上には立つことはできても、その先は超えられないーーということ。
……だけど。
「今の言いようだと、境界上に立つことを良しとしていないようですが…だったら何故?」
「俺が立っている、か?」
「そうです。時空の狭間に閉じ込められるって、あまり楽しそうには聞こえませんし。理由を聞かせてもらえますか?」
フルルクスの眉間に皺が寄った。あー、爺様そっくりだ。……同じ人でした。
「賭け、だったんだよ。可能か不可能かは」
「イチかバチかの状況に追い込まれた?」
「ああ。十年前にな」
「十年?……ひょっとして、疫病の一件ですか?」
「知っていたか。急激に広がっちまってな。当時、治療法も発見されていなかったところでーー知識が必要だった」
ーーまさか?
「それは…つまり、四十七年後の自分から得た?」
「四十七年後ってのは、偶々だ。とにかく先に当たるだろう時間軸から、引き寄せた」
「それ、境界をすでに超えてません?未来から病気の知識を得るなんて」
「だから賭け、だ。それが境界上になるのか、超えることになるのかは、神の意志次第ってな。更に被害を広めるか、ここで止めるつもりなのか。結果はこの通り。俺は境界上に立つこととなった」
「そんな賭け…」
「これも、王とライトリィだけが知ることだ。アイツらは元々境界を認識していた。だからこそあのヘボ王は、俺に話を持ちかけやがったんだ。未来の俺なら知っているだろうから喚び寄せろ、とな」
「…え?主上が持ちかけた?」
「当時俺は、時空間の召喚研究をしていた。王の奴は、それを知っていたからな」
「それで試したら、できてしまったと?」
「試すもなにも、藁にも縋る思いだ。拙いのは解っていたが、三人で国庫に眠っている雫を大量に盗み出して実行した」
「え?盗む!?」
「時空間の召喚舐めんな。どれほど複雑な術式が必要となると思っている?膨大な式熱を消費すんだよ」
「……大罪、ですよね?」
「だから、三人だけの秘密だ」
「露見しなかったんですか?」
「政務がまともに機能しないほど、混乱していたからな。城内でも多数の感染者が出ていた。それで、後はライトリィとジジイが陣頭に立って治療を進め、王が混乱を抑えたって形だ。まあ、そこまでは良かったんだが…」
「なにか不都合が?」
「阿呆。今の状態を見れば解るだろ?アレが王で、ジジイと変態が筆頭術師だぞ?他の奴は騙せても、占者は騙せなかった。三人まとめて指名してきやがった」
ーーまさか。
ここでこんな真相が出てこようとは。これが主上が王に選ばれた経緯。
この話、アールクレイさんに話すべきなの?
判断は主上に委ねよう。
「阿呆。そんなわけねえだろ。昼間のジジイは、四十七年後の俺だ」
「ああ、未来のフルルクスさん。……って、どういうことです?」
「単純な話だ。『現在の俺』が『未来の俺』を召喚した。それだけのことだ。死んだところを喚ばれて来た奴が、ケチつけんなよ?」
「……それがありなら、これもあり、ですか?」
荒唐無稽な話になってきたぞ?
「胡散臭えって、顔してやがんな。だが紛れもない事実だ」
「いえ、疑っているわけでは……そうか!爺様の言っていた、私たちは『境界上の者』ってこのこと?」
「そうだ。俺たちは神の領域一歩手前に立っていると言える。だがな、ここが限界だ。その先へは進めねえ。だから俺はジジイがいる間ここに存在できねえし、お前はこの世界の者じゃなく、ホムンクルスに魂は宿らねえ」
ーーえ?
「は…い?」
「知らねえと思ってたのか?お前は、この世界の者じゃないだろう?」
「あ…知って…え、皆?」
「いや。これに関しては、珍しくジジイが示唆したらしいが…他に知っているのは、ヘボ王と変態白魔術師だけだ」
なんだって?え?
「ヘボ?変態?……え、と、王は主上として、白魔術師というと?」
「筆頭白魔術師、ライトリィ・イーウィー。今日もジジイといたらしいな?今頃、王と雁首揃えて酒でも飲んでいるだろうよ」
「なんだか…親しそうな口ぶりですね?同年代のようですし」
「三人、同じ歳だ。学友と言えば聞こえは良いが、要は悪ガキ仲間だ」
「良いですね、そういうの」
フルルクスは、なんともいえない顔をした。
察するに、少し照れている?クスリと笑うと、やたらとガラの悪い男はバツが悪いのか視線を逸した。
「ふん」
なるほど。ふむ。
「…それで?爺様がいる間ここに存在できないというのは、どういうことですか?」
「…爺様、ねえ。そのまんまだ。ジジイがこちら側にいる間、俺は時空の狭間に閉じ込められる。同時に二人は存在できないってことだ」
あ、さっきから爺様って口に出してた。まあ、いいか。
「入れ替わって、四十七年後に行くわけではない?」
「ジジイにとって、四十七年前は存在する。だが俺にとって、四十七年後はまだ存在していない。踏み込めないんだよ、それこそ境界向こうだ」
ここまでの話を噛み砕く。これは式術の限界の話、なのだろう。
一つの結論に辿り着いた。
「それは、私がこの世界の者ではないことと、同じ?」
フルルクスが口の端を上げた。
「解ってきたな。そうだ。一見、同じ非常識だが、その非常識にも制限がある。死んだ奴は戻らねえ。どれほど手を尽くそうがな。お前の魂は、この世界の理から外れた存在だ。だから召喚可能だった。本当はそれだって、あっちゃならねえことだがな」
「…確かに。私の場合、『戻った』ではなく『やって来た』ですね。それがーー」
境界上には立つことはできても、その先は超えられないーーということ。
……だけど。
「今の言いようだと、境界上に立つことを良しとしていないようですが…だったら何故?」
「俺が立っている、か?」
「そうです。時空の狭間に閉じ込められるって、あまり楽しそうには聞こえませんし。理由を聞かせてもらえますか?」
フルルクスの眉間に皺が寄った。あー、爺様そっくりだ。……同じ人でした。
「賭け、だったんだよ。可能か不可能かは」
「イチかバチかの状況に追い込まれた?」
「ああ。十年前にな」
「十年?……ひょっとして、疫病の一件ですか?」
「知っていたか。急激に広がっちまってな。当時、治療法も発見されていなかったところでーー知識が必要だった」
ーーまさか?
「それは…つまり、四十七年後の自分から得た?」
「四十七年後ってのは、偶々だ。とにかく先に当たるだろう時間軸から、引き寄せた」
「それ、境界をすでに超えてません?未来から病気の知識を得るなんて」
「だから賭け、だ。それが境界上になるのか、超えることになるのかは、神の意志次第ってな。更に被害を広めるか、ここで止めるつもりなのか。結果はこの通り。俺は境界上に立つこととなった」
「そんな賭け…」
「これも、王とライトリィだけが知ることだ。アイツらは元々境界を認識していた。だからこそあのヘボ王は、俺に話を持ちかけやがったんだ。未来の俺なら知っているだろうから喚び寄せろ、とな」
「…え?主上が持ちかけた?」
「当時俺は、時空間の召喚研究をしていた。王の奴は、それを知っていたからな」
「それで試したら、できてしまったと?」
「試すもなにも、藁にも縋る思いだ。拙いのは解っていたが、三人で国庫に眠っている雫を大量に盗み出して実行した」
「え?盗む!?」
「時空間の召喚舐めんな。どれほど複雑な術式が必要となると思っている?膨大な式熱を消費すんだよ」
「……大罪、ですよね?」
「だから、三人だけの秘密だ」
「露見しなかったんですか?」
「政務がまともに機能しないほど、混乱していたからな。城内でも多数の感染者が出ていた。それで、後はライトリィとジジイが陣頭に立って治療を進め、王が混乱を抑えたって形だ。まあ、そこまでは良かったんだが…」
「なにか不都合が?」
「阿呆。今の状態を見れば解るだろ?アレが王で、ジジイと変態が筆頭術師だぞ?他の奴は騙せても、占者は騙せなかった。三人まとめて指名してきやがった」
ーーまさか。
ここでこんな真相が出てこようとは。これが主上が王に選ばれた経緯。
この話、アールクレイさんに話すべきなの?
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