61 / 140
99日目(2)
しおりを挟む
急に不安が強くなり、アランサの元へと走った。マッドの元から脱兎のごとく。
ノーツは必ず動く。狙われるのは、あの幼い占者なのだ。
丁度ギィがいてくれたお陰で、すんなりアランサへの目通りが叶った。自室で大人しく本を広げている姿を見て、ホッとする。
アランサは私を見るなり、満面の笑みを浮かべた。
無邪気だ。命を狙われている自覚は、あるのだろうか?
駆け寄って私の団服の裾を引っ張るアランサに、気持ちが緩む。何故、彼はこうも私に懐いたのだろう?茶色いキノコ頭をなでながら、ふと思う。
子供に好かれる方では、決してない。むしろ敬遠されるタイプだ。まあ、子供に限らず、人全般にと言えるかもしれないけれど。とにかく子供には不人気だ。
それなのに。どうなっている?
なにか面白いことを言うでも、遊んであげるわけでもない。ただ、たまに顔を出しては、一緒にいる主上やギィを交えて話すだけ。それだけの存在だ。
しいて理由を挙げるなら、初めにあげたあの折り鶴か。ここにはないもののようだったし。
占者、か。
あらざるものの見えるその目は、私のーー白雪の姿になにを見ているのだろう?もしかしたら彼は、私以上に私の存在意義を知っているのかもしれない。
不意に、服の裾を引く力が強まった。
思わず、体を傾ける。
「聞いてよ、シロ!塔から僕、一歩も外に出ちゃ駄目なんだって!」
見下ろすとアランサが頬を膨らませていた。不満いっぱいという様子。さて、困った。その不満に同意して、あわよくば連れ出してほしいと、顔に書いてある。
返事に窮する私の代わりに、扉の前に立ってこちらを見ていたギィが答えてくれた。
「駄目なものは駄目です」
ぴしゃりと、容赦ない。これでアランサが女の子だったなら、もっと違う言い方だったのだろうけど。
「ええ~~~っ!?」
更に不満を強めて、アランサが抗議の声を上げる。口がへの字に曲がり、今にも泣き出しそうになった。遊びたい盛りだ。同情はする。だけどそう、ギィの言う通り。駄目なものは駄目なのだ。
私は屈んでアランサと向き合い、黙って首を振った。
ごめんね。
「とにかく今は駄目です。解るでしょう?こうしてシロが急に来たのも、貴方を心配してだ。……だろう?」
ギィが視線を、アランサから私へ移しながら嗜める。
「ノーツの動きが、まったく掴めていませんからね」
その視線を、受け止めた。
「そうだな。…頼むぞ?ノーツの足取りは、お前の班で受け持っているんだ」
ギィが笑う。
「はい」
「後でフィルに、発破をかけておくとしよう」
何気に。
ギィの言葉は放たれた。そして、その言葉に戦慄している自分がいた。
ーー慎重の上にも慎重に。
ライトリィさんの言葉を反芻する。
それは、主上にとってそうであったように、私にとっても、実に都合のいい逃げ口上だった。
ノーツは必ず動く。狙われるのは、あの幼い占者なのだ。
丁度ギィがいてくれたお陰で、すんなりアランサへの目通りが叶った。自室で大人しく本を広げている姿を見て、ホッとする。
アランサは私を見るなり、満面の笑みを浮かべた。
無邪気だ。命を狙われている自覚は、あるのだろうか?
駆け寄って私の団服の裾を引っ張るアランサに、気持ちが緩む。何故、彼はこうも私に懐いたのだろう?茶色いキノコ頭をなでながら、ふと思う。
子供に好かれる方では、決してない。むしろ敬遠されるタイプだ。まあ、子供に限らず、人全般にと言えるかもしれないけれど。とにかく子供には不人気だ。
それなのに。どうなっている?
なにか面白いことを言うでも、遊んであげるわけでもない。ただ、たまに顔を出しては、一緒にいる主上やギィを交えて話すだけ。それだけの存在だ。
しいて理由を挙げるなら、初めにあげたあの折り鶴か。ここにはないもののようだったし。
占者、か。
あらざるものの見えるその目は、私のーー白雪の姿になにを見ているのだろう?もしかしたら彼は、私以上に私の存在意義を知っているのかもしれない。
不意に、服の裾を引く力が強まった。
思わず、体を傾ける。
「聞いてよ、シロ!塔から僕、一歩も外に出ちゃ駄目なんだって!」
見下ろすとアランサが頬を膨らませていた。不満いっぱいという様子。さて、困った。その不満に同意して、あわよくば連れ出してほしいと、顔に書いてある。
返事に窮する私の代わりに、扉の前に立ってこちらを見ていたギィが答えてくれた。
「駄目なものは駄目です」
ぴしゃりと、容赦ない。これでアランサが女の子だったなら、もっと違う言い方だったのだろうけど。
「ええ~~~っ!?」
更に不満を強めて、アランサが抗議の声を上げる。口がへの字に曲がり、今にも泣き出しそうになった。遊びたい盛りだ。同情はする。だけどそう、ギィの言う通り。駄目なものは駄目なのだ。
私は屈んでアランサと向き合い、黙って首を振った。
ごめんね。
「とにかく今は駄目です。解るでしょう?こうしてシロが急に来たのも、貴方を心配してだ。……だろう?」
ギィが視線を、アランサから私へ移しながら嗜める。
「ノーツの動きが、まったく掴めていませんからね」
その視線を、受け止めた。
「そうだな。…頼むぞ?ノーツの足取りは、お前の班で受け持っているんだ」
ギィが笑う。
「はい」
「後でフィルに、発破をかけておくとしよう」
何気に。
ギィの言葉は放たれた。そして、その言葉に戦慄している自分がいた。
ーー慎重の上にも慎重に。
ライトリィさんの言葉を反芻する。
それは、主上にとってそうであったように、私にとっても、実に都合のいい逃げ口上だった。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる