白雪日記

ふたあい

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99日目(2)

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 急に不安が強くなり、アランサの元へと走った。マッドの元から脱兎のごとく。

 ノーツは必ず動く。狙われるのは、あの幼い占者なのだ。

 丁度ギィがいてくれたお陰で、すんなりアランサへの目通りが叶った。自室で大人しく本を広げている姿を見て、ホッとする。

 アランサは私を見るなり、満面の笑みを浮かべた。

 無邪気だ。命を狙われている自覚は、あるのだろうか?
 駆け寄って私の団服の裾を引っ張るアランサに、気持ちが緩む。何故、彼はこうも私に懐いたのだろう?茶色いキノコ頭をなでながら、ふと思う。
 子供に好かれる方では、決してない。むしろ敬遠されるタイプだ。まあ、子供に限らず、人全般にと言えるかもしれないけれど。とにかく子供には不人気だ。

 それなのに。どうなっている?

 なにか面白いことを言うでも、遊んであげるわけでもない。ただ、たまに顔を出しては、一緒にいる主上やギィを交えて話すだけ。それだけの存在だ。
 しいて理由を挙げるなら、初めにあげたあの折り鶴か。ここにはないもののようだったし。

 占者、か。

 あらざるものの見えるその目は、私のーー白雪の姿になにを見ているのだろう?もしかしたら彼は、私以上に私の存在意義を知っているのかもしれない。

 不意に、服の裾を引く力が強まった。

 思わず、体を傾ける。
「聞いてよ、シロ!塔から僕、一歩も外に出ちゃ駄目なんだって!」
 見下ろすとアランサが頬を膨らませていた。不満いっぱいという様子。さて、困った。その不満に同意して、あわよくば連れ出してほしいと、顔に書いてある。
 返事に窮する私の代わりに、扉の前に立ってこちらを見ていたギィが答えてくれた。
「駄目なものは駄目です」
 ぴしゃりと、容赦ない。これでアランサが女の子だったなら、もっと違う言い方だったのだろうけど。
「ええ~~~っ!?」
 更に不満を強めて、アランサが抗議の声を上げる。口がへの字に曲がり、今にも泣き出しそうになった。遊びたい盛りだ。同情はする。だけどそう、ギィの言う通り。駄目なものは駄目なのだ。
 私は屈んでアランサと向き合い、黙って首を振った。

 ごめんね。

「とにかく今は駄目です。解るでしょう?こうしてシロが急に来たのも、貴方を心配してだ。……だろう?」
 ギィが視線を、アランサから私へ移しながら嗜める。
「ノーツの動きが、まったく掴めていませんからね」
 その視線を、受け止めた。
「そうだな。…頼むぞ?ノーツの足取りは、お前の班で受け持っているんだ」
 ギィが笑う。
「はい」
「後でフィルに、発破をかけておくとしよう」

 何気に。

 ギィの言葉は放たれた。そして、その言葉に戦慄している自分がいた。

 ーー慎重の上にも慎重に。

 ライトリィさんの言葉を反芻する。
 それは、主上にとってそうであったように、私にとっても、実に都合のいい逃げ口上だった。
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