白雪日記

ふたあい

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二年目

生命月7日

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 湯に浸かって一息ついた。

 ふああ。今日も一日無事終えた、そんな気分。やっぱりお風呂はいい。この城のお風呂は大きくて、本当に快適だ。脱衣所が備え付けてあって、まるで銭湯。実に、日本人の気質に合っていると思う。
 あ~極楽、極楽。

「シロ」

 リセルさんが私を呼んだ。真夜中お風呂で女子トークは健在だ。一人、メンバーが減ってしまったのが寂しい。少し前に新天地からの手紙をもらったけれど、彼女は元気だろうか…
「なんです?改まって」
 なんだかいつもと様子の違うリセルさんに、首を傾げる。まあ、なにを言わんとしているのかは、大体予想がつくが。
「お見合いの話なんだけどね…シロの好きにしたらいいのよ?」
「ああ、はい」
 予想通りである。
 リセルさんは少し考え込んだ後、言いにくそうに話を続けた。
「先生がなにも言わないのは、少し複雑に考えているからね」
 両手で湯をすくいながら、苦笑している。
「そうなんですか?」
「ええ。先生は貴女が近衛に居続けていいのか、迷ってる。……実は、私も」
「リセルさん…。でも、私はあそこを気に入ってます。他のところでは、あんな居心地の良さは得られないと思います」
「それは解っているの。でも…危険の付きまとう仕事でしょう?それに…城の外なら、シロの出自を知る者はいなくなる。普通の人として、接してもらえる」
 近衛に女は私だけ。左右軍にも、数えるほどしかいないと聞いている。女というだけで肩身が狭いのは確かだ。
 それに出自に関しては、城外では箝口令が厳しく敷かれている。
 一見すると、城の外での方が働きやすそうである。
「でも…」
 湯に映る自分の顔を見た。白い髪、白い肌、淡い瞳…。造り物のように綺麗な顔。どこに行っても、人目を引かずにはいられない。本当に造り物だと知られている城内では、尚更にと言える。

 だけど。

「外に出でも悪目立ちすることに、変わりはありませんよ」
 自嘲の笑みが浮かんだ。
「……そうね。ごめんなさい、分かっていることなのに。話が逸れてしまったわね。とにかく、先生や私に気を使わないで返事をしてと、言いたかったのよ。まったく、これでは早く結婚して出ていきなさいと言っているみたいだわ」
 リセルさんがごめんねという表情を、こちらに向ける。それから、何故かいきなりその顔を湯に浸けた。
 パシャンッと、湯が跳ねる。

 え?

 ブクブクブク。おおい、リセルさーん?顔を湯に浸けて考え事ですか?
 さて、困った。あまりに突飛な見合い話。どうしたものやらーー

「シロッ」

 ザバンと、これまた急にリセルさんが顔を上げた。ビックリである。いつも落ち着いている我が養母の、こんな様子は初めて見る。
 リセルさんに、真っ直ぐな目で見つめられる。どうやらなにか、思いつめた様子。

 なんだろう?なにを、言われる?

「はい」
「あのねっ。先生は鈍くてまったく気付いていないけど、私はちゃんと解っているから!私は応援するから!いつでも相談して!」
「は?……はい」
 返事をしたものの、リセルさんの言った言葉の意味が解らない。
 益々、困った。
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