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二年目
八年前の転寝月26日
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深夜の鐘の音が聞こえる。
一瞬前まで、朝だったというのに。視界は真っ暗。そのまま身じろぎ一つせず、目が慣れるのを待った。
二階に位置する、小ぢんまりとした部屋。多分、来客用。うっすらと浮かぶ周囲の輪郭を見渡し、そう判断する。
ベッドと衣装箪笥が向かい合うように配置されたその中間、部屋のほぼ中央に立っていた。
ここが、術式の繋がる場所。すなわち、元の時に戻る道への扉。
白銀城へ忍び込み、壊れた杖を壊れる前の杖とすり替えて、再びここへ立たなければならない。
どれだけの時間を要するだろうか?今はこの過去と、現在が連動した状態である。何度も組み直せないため、式熱消費の激しい術は継続型が基本なのだ。だからここで過ごした時間の分だけ、現在でも時間は進行する。
召喚術と、いわゆるタイムマシンの違うところ。旅立った直後の時間には戻れない。したがって、できる限り無駄なく任務を遂行しなければならない。
杖の破損設定を、解除する時間を確保するために。
しかし、である。
ここが予定通り八年前として、よりによって真夜中の到着となるとは。さっきの鐘の音は、風呂へ向かう道すがら毎夜聞いている音。間違いない。
さて、どうしたものか。行動を起こす前に、まず情報収集が必要なのだけれど、こんな時間に私のような小娘(あくまで見た目)が出歩くなどもっての外である。目立って仕様がないだろう。
しばらく考えて、ここで大人しく時間を潰すことにした。
焦ることはない。早めの日時に、召喚されているはずなのだから。場所も間違いなく、師匠の家になる予定の空き家だとする。ここはじっ様を、全面的に信用しよう。
だけど、そうなると暇だった。
本の一冊でも、持ってくればよかったと思う。でもここでは、文庫本なんてお手軽サイズのものは存在しない。鞄の隅に忍ばせておくこともままならないのが現状だった。それに、どのみち暗くて読めないだろう。
そこまで考えて、ため息をつきーー
そうだ、と思いつく。
抱えていた杖の収納ケースをそっと床に置き、背負ってきたリュックの中身を漁った。暗闇の中、カチッと爪に目当てのモノが当たる小さな音。にんまり。持ってきておいてよかった。
すかさず掴み、取り出す。
それはカリメラからもらった飴の瓶。最初にもらったリンゴモドキ味の、赤い飴玉入りのものだ。
あれから二、三個、摘んだきりになっていた。その後にいろんな試作品をもらったため、食べきれなかったのだ。他の味も同様に残っていたけれど、一番初めにもらったこれが一番のお気に入りで、荷物に忍ばせておいたのだ。
飴玉を一つ、ポイと口へ放り込む。甘酸っぱい…美味しい~。
これはまた、カリメラに作ってもらおう。
コロコロと口の中で飴を転がす。そうやってしばらく気を紛らわせていると、なんだか眠くなってきた。
そういえば…夕べはあまり眠れなったのだ。それに付け加え、身体が急速に時差に対応を始めたようでもある。さすがは高性能。
もういいや。寝てしまおう。
朝までまだ時間はある。私は基本、ものぐさだ。ちょうどベッドもあるではないか。
「というわけで…おやすみ白雪」
空を見上げるでもなく呟くと、部屋のベッドに突っ伏した。埃っぽいけれど、まあ、大丈夫。
なにが「というわけで」なの?ーーと、白雪が苦笑している姿が、ぼやける脳裏に思い浮かぶ。
夢でもいいから、会いたいものだ。
一瞬前まで、朝だったというのに。視界は真っ暗。そのまま身じろぎ一つせず、目が慣れるのを待った。
二階に位置する、小ぢんまりとした部屋。多分、来客用。うっすらと浮かぶ周囲の輪郭を見渡し、そう判断する。
ベッドと衣装箪笥が向かい合うように配置されたその中間、部屋のほぼ中央に立っていた。
ここが、術式の繋がる場所。すなわち、元の時に戻る道への扉。
白銀城へ忍び込み、壊れた杖を壊れる前の杖とすり替えて、再びここへ立たなければならない。
どれだけの時間を要するだろうか?今はこの過去と、現在が連動した状態である。何度も組み直せないため、式熱消費の激しい術は継続型が基本なのだ。だからここで過ごした時間の分だけ、現在でも時間は進行する。
召喚術と、いわゆるタイムマシンの違うところ。旅立った直後の時間には戻れない。したがって、できる限り無駄なく任務を遂行しなければならない。
杖の破損設定を、解除する時間を確保するために。
しかし、である。
ここが予定通り八年前として、よりによって真夜中の到着となるとは。さっきの鐘の音は、風呂へ向かう道すがら毎夜聞いている音。間違いない。
さて、どうしたものか。行動を起こす前に、まず情報収集が必要なのだけれど、こんな時間に私のような小娘(あくまで見た目)が出歩くなどもっての外である。目立って仕様がないだろう。
しばらく考えて、ここで大人しく時間を潰すことにした。
焦ることはない。早めの日時に、召喚されているはずなのだから。場所も間違いなく、師匠の家になる予定の空き家だとする。ここはじっ様を、全面的に信用しよう。
だけど、そうなると暇だった。
本の一冊でも、持ってくればよかったと思う。でもここでは、文庫本なんてお手軽サイズのものは存在しない。鞄の隅に忍ばせておくこともままならないのが現状だった。それに、どのみち暗くて読めないだろう。
そこまで考えて、ため息をつきーー
そうだ、と思いつく。
抱えていた杖の収納ケースをそっと床に置き、背負ってきたリュックの中身を漁った。暗闇の中、カチッと爪に目当てのモノが当たる小さな音。にんまり。持ってきておいてよかった。
すかさず掴み、取り出す。
それはカリメラからもらった飴の瓶。最初にもらったリンゴモドキ味の、赤い飴玉入りのものだ。
あれから二、三個、摘んだきりになっていた。その後にいろんな試作品をもらったため、食べきれなかったのだ。他の味も同様に残っていたけれど、一番初めにもらったこれが一番のお気に入りで、荷物に忍ばせておいたのだ。
飴玉を一つ、ポイと口へ放り込む。甘酸っぱい…美味しい~。
これはまた、カリメラに作ってもらおう。
コロコロと口の中で飴を転がす。そうやってしばらく気を紛らわせていると、なんだか眠くなってきた。
そういえば…夕べはあまり眠れなったのだ。それに付け加え、身体が急速に時差に対応を始めたようでもある。さすがは高性能。
もういいや。寝てしまおう。
朝までまだ時間はある。私は基本、ものぐさだ。ちょうどベッドもあるではないか。
「というわけで…おやすみ白雪」
空を見上げるでもなく呟くと、部屋のベッドに突っ伏した。埃っぽいけれど、まあ、大丈夫。
なにが「というわけで」なの?ーーと、白雪が苦笑している姿が、ぼやける脳裏に思い浮かぶ。
夢でもいいから、会いたいものだ。
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