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二年目
八年前の転寝月27日(1)
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白雪が笑ってる。ねえ白雪、私本当はーー
明るさを感じ、目覚めた。なにか夢を見ていたような…
ーー?
一瞬、「ここは何処だ?」と考える。やにわに、八年前、師匠の家、どうやら客室ーーと、次々単語が出てきた。
ああ、そうだった。
ついに私は過去へ来たのだ。死んで生を得たというだけでも驚きなのに、まさかタイムトラベルまでしてしまうとは。
ーー?
あれ?なんだろう?覚醒して起き上がってから、妙な違和感が消えない。
ーー??
ベッドから降り立ち上がると、益々違和感は強くなった。なんだろう?なにかが、どこかがおかしい。だけど、どこが変なのかさっぱり判らない。
部屋を見回した。夕べ暗闇で確認した通り。カーテンから朝日が漏れて、光の筋ができている。全開したい気持ちに駆られたが、それは拙いと思った。あくまで噂の幽霊らしく振る舞わねば。
それにしても。なんだというのだろう?この感覚は。
とりあえず、移動することにした。悠長にしている場合ではない。大切な任務で、過去にまで出向いてきたのだ。まずは街へ出て、情報を得なければ。
人が来ることはないだろうと思いつつ、用心して杖のケースをベッド下へ隠す。数日はここが拠点である。埃っぽいのには、目を瞑るしかない。まさか、掃除して回るわけにはいかないだろう。
そうしてリュックを引っ掴んで、部屋を出ようとした。
ーーあ、れ?
ふと、ドアノブを掴んだ己の手を見て、その異常に気付いた。
え?この手…いつもと違う。でも…。え?この手は、よく知っている?え?えーー
ーーそんな!
刹那、部屋を飛び出していた。そして片っ端から、扉という扉を順に開けていく。ない!ここも!どこだ!?
探していたモノは、四番目の扉を開けた先にあった。二階の一番手前、階段脇の部屋である。
恐る恐る、目的のモノへ近付く。それにはカバーが掛かっていた。
手が震える。まさか。まさかーー
ようやく見つけた姿見の、カバーを「えいっ」とはぐった。
「や…っぱ…り……」
声も、か。
なにが起こったのだろう?
鏡に映っていたのは、生前の私だった。
✢
聞き耳を立てる。街中を歩く。
すれ違う人々の会話に耳を傾けると、小一時間ほどで必要とする情報を得ることができた。
本当に便利な身体能力だ。恐ろしく耳が良いときている。
「…表面上だけか」
小さな呟きが漏れた。
八年前の城下は、私の知る街とは少し違って見えた。なんというか、活気が弱い。一見してたくさんの人、市、屋台など、景色に大きな差はない。
だけど、どこか荒涼とした空気が漂っている。拭いきれないでいる。そうだ。この時はまだ、三年しか経っていないのだ。例のパンデミックから。
それでも活気は戻ってきている。聞いていた惨状を思うと、たった三年でよくここまでと言えるほどに。
人とは逞しいものだ。はあ…。
腐ってはいけない。私の頭痛の種など、瑣末事にすぎないのだから。
凍りつきそうになる思考をなんとか回転させ、行動を開始していた。
私の姿は依然、今朝鏡で見たまま。生前のもの。つまり、可憐な白き少女ではなく、くたびれたアラフォー女だ。
起きぬけに覚えた違和感は、視点の違いによるもの。本来の私は白雪より、五センチほど身長が高かったのだ。身の丈に合わないアケイルさんのお古を、あいも変わらず着ていてよかった。まさか貧乏性が、こんな形で役に立とうとは。
これは、考えようによっては都合がいい。ある一点を除いて、平凡そのものであるこの姿は目立たない。この姿でなら知り合いにバッタリ出くわしても、なんら支障はないだろう。
現状を受け入れ、開き直るしかない。
大通りを抜け、一本裏道へ入った。そこは小さな商店街。順番に看板を見て歩く。靴、薬、金物、お茶、布、革製品、占、貴金属…ーーあった。
通りの中ほどにあった貴金属、宝石の店へ足を運び、持参していた宝石を換金してもらった。これで当面の仕事は終了。
明るさを感じ、目覚めた。なにか夢を見ていたような…
ーー?
一瞬、「ここは何処だ?」と考える。やにわに、八年前、師匠の家、どうやら客室ーーと、次々単語が出てきた。
ああ、そうだった。
ついに私は過去へ来たのだ。死んで生を得たというだけでも驚きなのに、まさかタイムトラベルまでしてしまうとは。
ーー?
あれ?なんだろう?覚醒して起き上がってから、妙な違和感が消えない。
ーー??
ベッドから降り立ち上がると、益々違和感は強くなった。なんだろう?なにかが、どこかがおかしい。だけど、どこが変なのかさっぱり判らない。
部屋を見回した。夕べ暗闇で確認した通り。カーテンから朝日が漏れて、光の筋ができている。全開したい気持ちに駆られたが、それは拙いと思った。あくまで噂の幽霊らしく振る舞わねば。
それにしても。なんだというのだろう?この感覚は。
とりあえず、移動することにした。悠長にしている場合ではない。大切な任務で、過去にまで出向いてきたのだ。まずは街へ出て、情報を得なければ。
人が来ることはないだろうと思いつつ、用心して杖のケースをベッド下へ隠す。数日はここが拠点である。埃っぽいのには、目を瞑るしかない。まさか、掃除して回るわけにはいかないだろう。
そうしてリュックを引っ掴んで、部屋を出ようとした。
ーーあ、れ?
ふと、ドアノブを掴んだ己の手を見て、その異常に気付いた。
え?この手…いつもと違う。でも…。え?この手は、よく知っている?え?えーー
ーーそんな!
刹那、部屋を飛び出していた。そして片っ端から、扉という扉を順に開けていく。ない!ここも!どこだ!?
探していたモノは、四番目の扉を開けた先にあった。二階の一番手前、階段脇の部屋である。
恐る恐る、目的のモノへ近付く。それにはカバーが掛かっていた。
手が震える。まさか。まさかーー
ようやく見つけた姿見の、カバーを「えいっ」とはぐった。
「や…っぱ…り……」
声も、か。
なにが起こったのだろう?
鏡に映っていたのは、生前の私だった。
✢
聞き耳を立てる。街中を歩く。
すれ違う人々の会話に耳を傾けると、小一時間ほどで必要とする情報を得ることができた。
本当に便利な身体能力だ。恐ろしく耳が良いときている。
「…表面上だけか」
小さな呟きが漏れた。
八年前の城下は、私の知る街とは少し違って見えた。なんというか、活気が弱い。一見してたくさんの人、市、屋台など、景色に大きな差はない。
だけど、どこか荒涼とした空気が漂っている。拭いきれないでいる。そうだ。この時はまだ、三年しか経っていないのだ。例のパンデミックから。
それでも活気は戻ってきている。聞いていた惨状を思うと、たった三年でよくここまでと言えるほどに。
人とは逞しいものだ。はあ…。
腐ってはいけない。私の頭痛の種など、瑣末事にすぎないのだから。
凍りつきそうになる思考をなんとか回転させ、行動を開始していた。
私の姿は依然、今朝鏡で見たまま。生前のもの。つまり、可憐な白き少女ではなく、くたびれたアラフォー女だ。
起きぬけに覚えた違和感は、視点の違いによるもの。本来の私は白雪より、五センチほど身長が高かったのだ。身の丈に合わないアケイルさんのお古を、あいも変わらず着ていてよかった。まさか貧乏性が、こんな形で役に立とうとは。
これは、考えようによっては都合がいい。ある一点を除いて、平凡そのものであるこの姿は目立たない。この姿でなら知り合いにバッタリ出くわしても、なんら支障はないだろう。
現状を受け入れ、開き直るしかない。
大通りを抜け、一本裏道へ入った。そこは小さな商店街。順番に看板を見て歩く。靴、薬、金物、お茶、布、革製品、占、貴金属…ーーあった。
通りの中ほどにあった貴金属、宝石の店へ足を運び、持参していた宝石を換金してもらった。これで当面の仕事は終了。
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