白雪日記

ふたあい

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二年目

転寝月50日(1)

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 ようやく自室に戻れた。まだ外に出ることは、禁じられていたけれども。

 真夜中に物音がして目覚めた。なんだろうと、身を起こす。今夜はいやに周囲がザワついている、表に出られないながらそう感じていた。
 枕元の剣を震える手で取り、身構える。すっかり近衛としての、行動が染み付いてしまったようだ。そうして、ジッと音のした扉を見据えた。
 ややあって扉が開き、二人の人物が部屋に入ってきた。ご親切にも灯を手にして。だから、その入ってきた人物が誰なのかは、すぐに認識できたのだがーー

 目が点になった。あまりの意外さに。

 そこに立っていたのは、占者と筆頭召喚術師の二人。つまり、アランサ・ファンスランスと爺様のフルルクス・シンであった。
「え…ええっ!?」
 『何故』の二文字が、脳内を飛び交う。アランサはともかく、何故、爺様が?四十七年後のフルルクスが?

 現在と未来を繋ぐ術式は、もうないはずなのに…

 どうやって、今、ここに、現れたのだろう?爺様がいるということは…じっ様の方は?
「扉の前で鉢合わせた」
 爺様が、困ったように言った。
「え?」
「僕、驚いちゃったよ。僕とシロの二人しか、見えてなかったから」
 と、アランサ。
「はい?」
 話が見えない。爺様はどうして現在に?アランサは何故、こんな時間にここへ?なにを見たって?目を白黒させながら、二人を交互に見るしかできない。
 少し考える仕草を見せてから、爺様が問うた。
「占者は託宣により、シロに会いに来たのか?」

 あ…そういうこと?

 問われたアランサが、ニコリとして窓を指差し答えた。
「うん。見えたんだ。流星雨を一緒に見るの。あそこから、並んで。空を見てたの」
「そうか…。今夜は『夢現の夜』だったか。忘れていた…」
 爺様が呟く。

 ーーゆめうつつのよる?

「うん。だけどお祭りは止めようって、僕が言ったの。今年は陛下もシロも出られないから。その代わりに、星月のお祭りを三日間しようって」
 無邪気に笑うアランサ。
 お祭り?星月のお祭りなら知っているけれど…
「あの…『夢現の夜』というのは、なんですか?」
「ああ、お前は初めてだったか」
「お祭りだよっ!今夜はね、星がい~っぱい流れるの。それをお祝いするの。だけど、陛下とシロがいないんじゃ、つまらないから止めてもらっちゃった」
 …ええっと、つまり、今夜は星の雫が大量に流れ落ちるので、それを祝い、本来なら祭りが催されるはずだったのだが、アランサの一声で中止になった、ということか? 
 どうにも話が飲み込めず、爺様を見ると苦笑を返された。
「大体、七、八年周期でこの時期に起こる現象だ。眠りについているはずのユエ・ステラ・サンが起き出し、気まぐれに雫の恵みを落とすと云われている。占者が予言して、いつも国を挙げての祭りとなるんだが、今回はそれどころではなかったな」
 なるほど。それで夢現か。要は神様が寝ぼけて、無いことに居眠り月に大仕事をしてくれるから、有り難いという話である。そして、それは国を挙げての大騒ぎだから、事前に準備をする必要があったのだけれど、今回に限りそれは無理だった、と。王様が死にかけていたんだもんなあ…
「まさか生きてもう一度、流星雨を見られるとはな…」
 感慨深げに爺様が呟く。
「なっ!?爺様!なにを言うんですか?生きて、なんて…」
「なにを言うは、お前だ。俺を幾つだと思っている?次はもう無いと思っていた」
「な…」
 ご冗談を!それだけ、かくしゃくとしているというのに。殆ど仙人!百は余裕で大丈夫!軽く、あと二、三回は見られます!

 そうでしょう?爺様…

 恨みがましい目を向けると、爺様はくつくつと笑った。
「もう、十分生きた。満足している。これ以上の生は望まん。俺はな、自分の望まんことは、一切なにもしない主義だ」
「なにを言って…。やめてください!そんなことを言うのは!」
 馬鹿なことを言ってくれる。この…偏屈ジジイが!
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