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重大な選択
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今年も秋尋様の秋がやってくる。
俺にとって彼の誕生日は毎年特別なものだけど、今年はいつもよりずっと特別。何しろ二十歳の誕生日だ。
去年は去年で、初めて迎える二人きりのささやかなバースデーパーティーをして俺のほうがプレゼントを貰ったような気分だった。
学生のうちに成人してしまう、というのはなんだか妙な感じがする。中学しかまともに通っていないから、よけいにそう思うんだろうか。
今年はさすがに、実家で盛大なパーティーを開くのかな。
それとも……また俺と、二人きりで過ごしてくれる?
そう、いつ予定を切り出されるのかドキドキと待っていたのに。
それが。まさか。こんな。過去最大級の爆弾を落とされることになるなんて──……。
「は? 今、なんと?」
「婚約することになるかもしれない」
寝耳に水。いや、きっと近衛家の家柄を考えたら、遅いくらいなのか? 俺がその可能性を考えていなかっただけ?
「やっぱり5年は、我儘だったか……」
「5年? なんの話だ?」
「いえ。なんでも……。ところで、いつそんな相手を作られたのです? かも、ということは、まだそんなに親しい相手ではなく、お見合いのような形ですか?」
ほぼ決めつけて訊く理由として、親しい女性もいたにはいたけど、どれも友人の域を出ていなかった気がするからだ。
それに一応俺と秋尋様は恋人同士。少なくともこの人に、二股なんて器用なことができるはずない。いざって時がくれば、きちん別れを切り出すはずで……つまり。今が、そのいざってこと……。
あああ、考えたくない!! 思考放棄したい。現実逃避も。
「確かにそこまで親しくはないが、お前もよく知る相手だ」
「そう、ですか……」
秋尋様の周りにいる女性は、調べたからある意味全員よく知ってるけど、そういうことじゃないよな、多分。
大学の友人には俺のことを、使用人兼ボディーガードだと正式に紹介してくれてるから、その程度のことを『知ってる』に入れるとしたら、本当に誰がくるのか予測がつかないぞ。
「誕生日の前日に喫茶店で待ち合わせをすることになっているんだが……。お前は来なくていい。ボディーガードは他の者に頼むから」
「その役まで俺から奪うのですか?」
「なら聞くが。冷静でいられるか? 飛び出してこない自信があるか?」
「……ありません」
「だろう?」
秋尋様が、どこか複雑な顔をしておられる。
本気……? 何かの冗談ではなくて? 秋尋様の誕生日なのに俺がサプライズされちゃったみたいな展開はきませんかね。
「あの。ふ……フられるんですかね、俺」
「そうだな。さすがに婚約となったら……」
「つまり、婚約が成立しない可能性もある……と?」
「お前はそれでいいのか?」
「え」
どういう意味かはかりかねていると、秋尋様が可愛らしく首を傾げた。
「上手くいけば別れる。上手くいかなければ、恋人を継続する。そんな都合のいい相手でいていいのか?」
「元々、そんな話だったじゃないですか。秋尋様が結婚するまでの間だけ、恋人でいると。結婚する時、俺はただの使用人に戻るって」
言いながら、ひたすら悲しくなってきた。
秋尋様は俺に彼女ができるのが嫌だという。婚約者ができて、その相手が可愛くなってきたら、俺のことなんてどうでもよくなるかもしれないけど、秋尋様がそう思うなら俺は一生、一人でいい。貴方の使用人でいられる、ただそれだけでいい。
「ハッ……!? もしかして、婚約中ならまだセーフですか? いつ別れるかもしれないし……それに、結婚後でも離婚したら、恋人に戻っていいんじゃない? 俺、どこまでも都合のいい相手で構いませんよ!!」
「お前……。そんなわけないだろう! そもそも、別れることを前提に話すな。縁起の悪い」
「……ですよね」
秋尋様はすっかり機嫌を悪くして、俺もしょんぼりしていた。でもこの日もセックスはきちんとした。
お見合いの予定があっても、俺としちゃうんだ、秋尋様。
まさかこのまま、前日までは抱かせてくれるのかな……。
たくさんする宣言からむこう、本当に毎日のようにしていたせいで、秋尋様はもう後ろじゃないとイケないくらいになってる。これで、どうやって結婚生活を送るつもりなんだろう。奥さんに弄ってもらうのかな。オモチャとか使うのかな。俺以外のモノを入れてほしくないな。もう結婚も俺とでよくないですか?
でも……。秋尋様の幸せを祈る俺に、お見合いの席をぶち壊すなんてこと、できるはずが……。
…………別に、婚約前なら構わないのでは? とか、考えてしまってるのが、もう、もうね。俺はダメな使用人です。恋人としては正しいんだろうけど。
恋人として、邪魔するか。使用人として見守るか。
俺は今重大な選択を迫られている。でも前者を選んだら傍にすら置いてもらえなくなるというリスクが。まさにハイリスクハイリターンなんですよ。どうすべきなんだろう。
さすがに人生を左右するかもしれない内容を人に相談する気にはなれなくて、ベッドで秋尋様の体温を感じながらひたすらに悶々としていた。
俺にとって彼の誕生日は毎年特別なものだけど、今年はいつもよりずっと特別。何しろ二十歳の誕生日だ。
去年は去年で、初めて迎える二人きりのささやかなバースデーパーティーをして俺のほうがプレゼントを貰ったような気分だった。
学生のうちに成人してしまう、というのはなんだか妙な感じがする。中学しかまともに通っていないから、よけいにそう思うんだろうか。
今年はさすがに、実家で盛大なパーティーを開くのかな。
それとも……また俺と、二人きりで過ごしてくれる?
そう、いつ予定を切り出されるのかドキドキと待っていたのに。
それが。まさか。こんな。過去最大級の爆弾を落とされることになるなんて──……。
「は? 今、なんと?」
「婚約することになるかもしれない」
寝耳に水。いや、きっと近衛家の家柄を考えたら、遅いくらいなのか? 俺がその可能性を考えていなかっただけ?
「やっぱり5年は、我儘だったか……」
「5年? なんの話だ?」
「いえ。なんでも……。ところで、いつそんな相手を作られたのです? かも、ということは、まだそんなに親しい相手ではなく、お見合いのような形ですか?」
ほぼ決めつけて訊く理由として、親しい女性もいたにはいたけど、どれも友人の域を出ていなかった気がするからだ。
それに一応俺と秋尋様は恋人同士。少なくともこの人に、二股なんて器用なことができるはずない。いざって時がくれば、きちん別れを切り出すはずで……つまり。今が、そのいざってこと……。
あああ、考えたくない!! 思考放棄したい。現実逃避も。
「確かにそこまで親しくはないが、お前もよく知る相手だ」
「そう、ですか……」
秋尋様の周りにいる女性は、調べたからある意味全員よく知ってるけど、そういうことじゃないよな、多分。
大学の友人には俺のことを、使用人兼ボディーガードだと正式に紹介してくれてるから、その程度のことを『知ってる』に入れるとしたら、本当に誰がくるのか予測がつかないぞ。
「誕生日の前日に喫茶店で待ち合わせをすることになっているんだが……。お前は来なくていい。ボディーガードは他の者に頼むから」
「その役まで俺から奪うのですか?」
「なら聞くが。冷静でいられるか? 飛び出してこない自信があるか?」
「……ありません」
「だろう?」
秋尋様が、どこか複雑な顔をしておられる。
本気……? 何かの冗談ではなくて? 秋尋様の誕生日なのに俺がサプライズされちゃったみたいな展開はきませんかね。
「あの。ふ……フられるんですかね、俺」
「そうだな。さすがに婚約となったら……」
「つまり、婚約が成立しない可能性もある……と?」
「お前はそれでいいのか?」
「え」
どういう意味かはかりかねていると、秋尋様が可愛らしく首を傾げた。
「上手くいけば別れる。上手くいかなければ、恋人を継続する。そんな都合のいい相手でいていいのか?」
「元々、そんな話だったじゃないですか。秋尋様が結婚するまでの間だけ、恋人でいると。結婚する時、俺はただの使用人に戻るって」
言いながら、ひたすら悲しくなってきた。
秋尋様は俺に彼女ができるのが嫌だという。婚約者ができて、その相手が可愛くなってきたら、俺のことなんてどうでもよくなるかもしれないけど、秋尋様がそう思うなら俺は一生、一人でいい。貴方の使用人でいられる、ただそれだけでいい。
「ハッ……!? もしかして、婚約中ならまだセーフですか? いつ別れるかもしれないし……それに、結婚後でも離婚したら、恋人に戻っていいんじゃない? 俺、どこまでも都合のいい相手で構いませんよ!!」
「お前……。そんなわけないだろう! そもそも、別れることを前提に話すな。縁起の悪い」
「……ですよね」
秋尋様はすっかり機嫌を悪くして、俺もしょんぼりしていた。でもこの日もセックスはきちんとした。
お見合いの予定があっても、俺としちゃうんだ、秋尋様。
まさかこのまま、前日までは抱かせてくれるのかな……。
たくさんする宣言からむこう、本当に毎日のようにしていたせいで、秋尋様はもう後ろじゃないとイケないくらいになってる。これで、どうやって結婚生活を送るつもりなんだろう。奥さんに弄ってもらうのかな。オモチャとか使うのかな。俺以外のモノを入れてほしくないな。もう結婚も俺とでよくないですか?
でも……。秋尋様の幸せを祈る俺に、お見合いの席をぶち壊すなんてこと、できるはずが……。
…………別に、婚約前なら構わないのでは? とか、考えてしまってるのが、もう、もうね。俺はダメな使用人です。恋人としては正しいんだろうけど。
恋人として、邪魔するか。使用人として見守るか。
俺は今重大な選択を迫られている。でも前者を選んだら傍にすら置いてもらえなくなるというリスクが。まさにハイリスクハイリターンなんですよ。どうすべきなんだろう。
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