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先輩視点の番外編
甘い昼食
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後輩が突然、弁当を作って来たからお昼を一緒に食べようと言い出した。
俺が今まで付き合ってきたのはそんなのしてくれるようなタイプじゃなかったから、なんだかびっくりした。
そもそもこの後輩、男だし。
男2人で弁当とかさ、さすがに戸惑ったさ。
もうそんなの関係ないくらい深い仲であっても、ある一定の境界線ってのは存在する。
例えば俺はお前と海辺で追いかけっこはしたくない。しかもきっと俺が追いかけられる側なんだ。何それ寒い。気候は暑いけど。
「実は生クリームたーっぷりのシュークリームをデザートに作ってきたんですけど」
そんなことを上目遣いで言ってくる。
ほわほわの髪質も手伝って後輩くんの外見がシュークリームみたいだ。甘ったるくて、可愛い。
「……仕方ないから、シュークリームにつられてやるよ。でもこの時期平気なのか? そんな菓子とか」
「はい、保冷剤に保冷バッグ、ドライアイス完璧です」
なんという後輩くんの本気。
「あまーい昼食にしましょうね。鐘が鳴ると同時に来て下さい。約束ですよ!」
そう言って可愛らしい足取りで自分のクラスへ駆けて行った。
シュークリーム楽しみだな。あいつ最近料理の腕上がってるし、弁当も。
ああ、それに……。なんだかんだ言って、可愛いんだよなー。俺のためにここまでしちゃうとこ。
俺、尽くされてる? 愛されてる?
なんか落ち着かない気分になってくる。
昼休みになったら作ってくれた弁当食って、デザート食って……。それから、甘いキスでもしてやろう。
鐘が鳴ると同時、いつも帰りに待ち合わせる校舎裏へ足を向けた。
夏休みも終わったけど残暑は厳しく、日差しはまだ強い。
どれだけ早く来たのか、後輩くんは日蔭に入ってバスケットを抱きしめながら座っていた。
……きっとあれにドライアイスとか保冷剤が入ってるんだな。
ぐでっとした顔しちゃってまあ。
「来たぜ」
声をかけると後輩くんはぱあっと顔を輝かせて背筋を伸ばした。
俺の前ではシャッキリしてみせようって努力するとこも、可愛くていい。
あー、夏の間色々されて、俺すっかりめろめろだ。だって可愛いんだもんな、後輩くん。
なのにあっちの方は手が早いとか、詐欺過ぎる。
「良かった。お弁当の方は簡単にサンドイッチなんですけどー。リンゴジャムにイチゴジャム、メープルスィート、バターシュガーにピーナッツ」
「見事に甘い物ばかりだな」
「好きでしょう?」
「ん……サンキュ」
俺は後輩くんの隣に座って、上からちゅっとキスをした。
「こういうこと自然にやるんだからなぁ、先輩……」
「ははっ」
少し照れて拗ねた感じがいい。
ぎゅーってしてやりたくなるんだよな。
「じゃ、早速いただきまーす」
「どうぞ!」
後輩くんお手製のサンドイッチは実に美味しかった。
一応ハムとか普通のもあるみたいで、後輩くんは甘いのとそれを交互に食べている。
「口唇の横、食べかす」
「んっ……。そこは、中です」
横を舐めてから、口唇に吸い付くと後輩くんが頬を染めて甘いと呟いた。
サンドイッチもこんなに美味くて後輩くんの口唇もイケてるのに、デザートにシュークリームまであるんだぜ?
俺って本当に幸せ者だよな。
「ご馳走様」
「お粗末様です。それじゃお待ちかね、シュークリーム!」
そう言って、後輩くんがバスケットを開ける。
すげぇ……輝いて見える。
「結構自信作なんですよ。美味しそうでしょ?」
「ああ、マジで美味そう。早速食べてもいいか?」
「はい、どうぞ」
俺はシュークリームにかぶりついた。ん、シューパイがふんわりさくさく。クリームの甘さ加減も絶妙。
できたてだったらもっと美味しいだろうな、残念だ。
「また休みの日にさ、これ作ってくれよ。すげー美味い」
「はい。気にいってもらえて嬉しいです」
後輩くんはにこにこ笑いながら、俺がシュークリームを食べるのを見ている。
「……お前は食べないのか?」
「ええ、見ているだけでお腹いっぱいです。甘いパンに甘いデザートだし」
後輩くんがクリームのついた俺の指を舐める。
視覚的に、なんかすげーエロイ。
「それに、おれの甘いデザートは先輩だからいいんです」
「え?」
「ほら、もっと食べて、先輩……」
口の中にシューが押し込まれる。
「……んむっ」
しかもその口の中を、後輩くんの舌が這っていく。
「瑞貴さん、美味しい……」
「あ、馬鹿っ……シャツを脱がすな、ファスナー下ろすな! こら!」
「だってデザートですから」
にっこりと、可愛い顔で後輩くんが笑う。
「な、なあ、お前どこまでする気だよこんなところで」
「安心してください。先輩のクリーム、飲ませてもらうくらいですから!」
「安心できるか! わあっ! ちょ、ストップ! やばいって、やば……ッ、ん、んんっ……」
甘い昼食に甘いデザート。
でも後輩くんは、見た目よりも甘くはない。
「瑞貴さん……美味しい」
「あっ、く……、この馬鹿ッ……」
そんな、生クリームでも舐めるみたいに、さあ。
……俺だって甘くはないんだぞ。
だから、今日だけ……、今日だけな、許してやるよ。
シュークリーム美味かったからな。
俺が今まで付き合ってきたのはそんなのしてくれるようなタイプじゃなかったから、なんだかびっくりした。
そもそもこの後輩、男だし。
男2人で弁当とかさ、さすがに戸惑ったさ。
もうそんなの関係ないくらい深い仲であっても、ある一定の境界線ってのは存在する。
例えば俺はお前と海辺で追いかけっこはしたくない。しかもきっと俺が追いかけられる側なんだ。何それ寒い。気候は暑いけど。
「実は生クリームたーっぷりのシュークリームをデザートに作ってきたんですけど」
そんなことを上目遣いで言ってくる。
ほわほわの髪質も手伝って後輩くんの外見がシュークリームみたいだ。甘ったるくて、可愛い。
「……仕方ないから、シュークリームにつられてやるよ。でもこの時期平気なのか? そんな菓子とか」
「はい、保冷剤に保冷バッグ、ドライアイス完璧です」
なんという後輩くんの本気。
「あまーい昼食にしましょうね。鐘が鳴ると同時に来て下さい。約束ですよ!」
そう言って可愛らしい足取りで自分のクラスへ駆けて行った。
シュークリーム楽しみだな。あいつ最近料理の腕上がってるし、弁当も。
ああ、それに……。なんだかんだ言って、可愛いんだよなー。俺のためにここまでしちゃうとこ。
俺、尽くされてる? 愛されてる?
なんか落ち着かない気分になってくる。
昼休みになったら作ってくれた弁当食って、デザート食って……。それから、甘いキスでもしてやろう。
鐘が鳴ると同時、いつも帰りに待ち合わせる校舎裏へ足を向けた。
夏休みも終わったけど残暑は厳しく、日差しはまだ強い。
どれだけ早く来たのか、後輩くんは日蔭に入ってバスケットを抱きしめながら座っていた。
……きっとあれにドライアイスとか保冷剤が入ってるんだな。
ぐでっとした顔しちゃってまあ。
「来たぜ」
声をかけると後輩くんはぱあっと顔を輝かせて背筋を伸ばした。
俺の前ではシャッキリしてみせようって努力するとこも、可愛くていい。
あー、夏の間色々されて、俺すっかりめろめろだ。だって可愛いんだもんな、後輩くん。
なのにあっちの方は手が早いとか、詐欺過ぎる。
「良かった。お弁当の方は簡単にサンドイッチなんですけどー。リンゴジャムにイチゴジャム、メープルスィート、バターシュガーにピーナッツ」
「見事に甘い物ばかりだな」
「好きでしょう?」
「ん……サンキュ」
俺は後輩くんの隣に座って、上からちゅっとキスをした。
「こういうこと自然にやるんだからなぁ、先輩……」
「ははっ」
少し照れて拗ねた感じがいい。
ぎゅーってしてやりたくなるんだよな。
「じゃ、早速いただきまーす」
「どうぞ!」
後輩くんお手製のサンドイッチは実に美味しかった。
一応ハムとか普通のもあるみたいで、後輩くんは甘いのとそれを交互に食べている。
「口唇の横、食べかす」
「んっ……。そこは、中です」
横を舐めてから、口唇に吸い付くと後輩くんが頬を染めて甘いと呟いた。
サンドイッチもこんなに美味くて後輩くんの口唇もイケてるのに、デザートにシュークリームまであるんだぜ?
俺って本当に幸せ者だよな。
「ご馳走様」
「お粗末様です。それじゃお待ちかね、シュークリーム!」
そう言って、後輩くんがバスケットを開ける。
すげぇ……輝いて見える。
「結構自信作なんですよ。美味しそうでしょ?」
「ああ、マジで美味そう。早速食べてもいいか?」
「はい、どうぞ」
俺はシュークリームにかぶりついた。ん、シューパイがふんわりさくさく。クリームの甘さ加減も絶妙。
できたてだったらもっと美味しいだろうな、残念だ。
「また休みの日にさ、これ作ってくれよ。すげー美味い」
「はい。気にいってもらえて嬉しいです」
後輩くんはにこにこ笑いながら、俺がシュークリームを食べるのを見ている。
「……お前は食べないのか?」
「ええ、見ているだけでお腹いっぱいです。甘いパンに甘いデザートだし」
後輩くんがクリームのついた俺の指を舐める。
視覚的に、なんかすげーエロイ。
「それに、おれの甘いデザートは先輩だからいいんです」
「え?」
「ほら、もっと食べて、先輩……」
口の中にシューが押し込まれる。
「……んむっ」
しかもその口の中を、後輩くんの舌が這っていく。
「瑞貴さん、美味しい……」
「あ、馬鹿っ……シャツを脱がすな、ファスナー下ろすな! こら!」
「だってデザートですから」
にっこりと、可愛い顔で後輩くんが笑う。
「な、なあ、お前どこまでする気だよこんなところで」
「安心してください。先輩のクリーム、飲ませてもらうくらいですから!」
「安心できるか! わあっ! ちょ、ストップ! やばいって、やば……ッ、ん、んんっ……」
甘い昼食に甘いデザート。
でも後輩くんは、見た目よりも甘くはない。
「瑞貴さん……美味しい」
「あっ、く……、この馬鹿ッ……」
そんな、生クリームでも舐めるみたいに、さあ。
……俺だって甘くはないんだぞ。
だから、今日だけ……、今日だけな、許してやるよ。
シュークリーム美味かったからな。
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