親友ポジション

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ステージ3

バイト初日

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 次の日、やっぱり寝起きの悪い真山くんをたたき起こし、昨日と同じように二人で大学へ行って、ついにバイト初日。
 店長は優しい感じの男性で少しホッとした。
 俺は案の定上手く笑えなくて、真山くんにも店長にもたくさん迷惑をかけた。そんな俺と違ってなんでもそつなくこなす真山くん……さすがだ。
 でも幸い、ユカがコンビニへ来る様子はない。女性客は真山くん見てきゃあきゃあ黄色い声を上げてたけど。
 
 長いようで短い3時間、終わりが近づき真美さんが21時少し前に店へきた。缶コーヒーを2本店で買って、俺たちに差し出した。
 店長が、僕の分は? と物欲しそうにするのを華麗にスルーしてた。
 
「二人とも、お疲れー! 慣れてきたら0時までとかよろしくね」
「ハイ。オレは経験者なんで、早めに長く入れてくれると助かります」
「オッケー。シフト作ってるの真美だからご希望通りに」
「ところで真美さん、恋人とかいるんですか?」
 
 唐突すぎる! 俺が昨日あんなことを言ってしまったせいか。
 
「ん、今はいないよ。彼氏も彼女も絶賛募集中。基本的に来る者拒まず遊びまくるけど、恋人できたら一途なタイプ」
 
 昨日真山くんに、第一印象で決めるのはよくないと言ったけど……。なんというか、第一印象通りだったな、ここは……。
 
「何、千里クン、真美に興味あるの?」
「いえ、別に」
「アハハ。だと思ったぁ!」
 
 聞いておいて素っ気なく返す真山くんに、明るく笑う真美さん。ついていけない空気だ。と思っていたら、真美さんは俺の肩に手を回した。
 
「真美、冬夜クンのが好みだなぁ。どぅ? おねーさんと付きあわない? 優しくしてあげる!」
 
 腕に思いきりおっぱいが……あたって、るんだけど……。
 真山くんは複雑そうな顔をしながら、何も言わずに俺と真美さんを見てる。
 助け船を出してこないのは、きっと俺が真美さんに興味を持っていると思い込んでいるからだ。
 
「あ、あの、あの、俺……。付きあってる人が、いるんで」
 
 画面の中に。
 
「そうなの? 残念だなー」
 
 元よりからかっていただけだろう真美さんは、アッサリ肩に回した腕をといた。柔らかいふにっとした感触が腕から消えて、少し寂しいというか物足りない気分になる。 
 そんなことを考えていると真山くんがニヤニヤしながら俺に耳打ちをしてきた。
 
「むっつり」
 
 なっ……! 男なら正常な範囲じゃないか。俺は別にそんな……。
 
「それじゃ、オレと冬夜帰還しまーす。お先に失礼します!」
「お、お先に失礼します」
 
 真山くんに背中を軽く叩かれて、俺も慌てて挨拶した。
 
「うん、裏にシフトあるから見てってね。ちょうど人いなかったから、千里くんは基本プラス3時間ずつよろしく。あ、土は手前にプラス1、後ろに2時間延長。冬夜くんは書いてある通りでいいよ」
 
 着替えは裏の事務所ですることになっている。とはいっても着てきた服の上から大きめな制服を軽く羽織るだけだから、そう時間はかからない。
 着替え終わって言われた通りシフトを見てみる。俺は基本3時間で土曜だけ4時間だ。
 真山くんが俺の横からシフト表を覗き込んで低く唸った。
 
「真美さん、シフト全部暗記してんのかな? 頭も軽そうなのに」
「真山くん、それは失礼すぎ」
「千里!」
「ち、千里……」
「よしっ!」
 
 何がよしなんだか。
 それにしても、義理の妹だの母だのをターゲットにすると言ってたくせに、単に軽い女性はダメとかどんな分け方なんだか……。やっぱり真山くんの好みで選んでるだけなんじゃないか?
 
「軽そうに見えて実は頭いいとかちょっとカッコイイよなという意味で言っただけで、別に陰口って訳じゃねーよ。むしろ褒めてる。まあ、遊んでるのは見た目通りっぽかったけど」
「そうだね」
 
 さすがにそこは否定できない。でもそのあたりは真美さん本人が気にしてなさそうだから構わないだろう。
 
「でもお前、彼女のこと気に入ってるみたいだし、恋人候補にしとこうかな」
「しなくていいよ!」
 
 と、俺が言ったところで、真山くんは勝手に加えてるんだろうけどさ。
 真山くんもホント、これさえなければな……。
 
「ほら、もう帰ろう。寒いから肉まんでも食べながら行く? 奢るから」
「おっ、マジで? 冬夜くん優しい! でもオレ、カレーまんがいい」
「了解」
 
 たかが中華まんひとつでここまで嬉しそうにしてくれると悪い気はしない。
 それに……強引に始めさせられたバイトは思ったより楽しくできそうだから、中華まんのひとつを奢るくらい安いものだと思う。
 カレーまんを2個買って、食べながら駅まで歩く。
 今キスしたらお互いカレー味ーとかふざけたことを言ってきたので、奢るのやめとけばよかったと少し後悔した。 
 
 
 
 
 バイトが終わって家へ帰って、昨日と同じように一緒のベッドで眠りにつく。
 来週にはこの温もりも、なくなってしまうんだろうか。
 ずっといてもらう訳にはいかないし、最初に追い出そうとしていたのは俺。
 それでもこの部屋から真山くんがいなくなることを考えると、少し寂しい。
 
「物件探さなきゃなあ。オレがあー、一人暮らし始めたら、冬夜が泊まりに来たりして、みんなで騒いでー」
「みんなって……。大学の……友達とか?」
「そ。それとも二人きりがいいか?」
「別に……。ただ、俺は、あんまり……人付き合いは」
「オレとはこうしてんのに?」
 
 それはきっと……真山くんが俺にとって居心地のいい空間を作り出してくれているからだ。
 今日はもう一緒のベッドで寝るのが嫌じゃなくなってるってのいうのもどうかと思うけど。
 俺って本当に、押しに弱いっていうか、流されやすいっていうか……順応性高かったのかな。
 
「んー。もっと冬夜と話していたいのにな。眠い」
「昨日も今日も俺より遅くまで寝てたくせに」
「でも、お前も眠いだろ? 今日は凄く」
 
 言われてみれば、そうだ。昨日も緊張で身体が疲れて眠かったけど、今日はそれ以上に疲れてる。初バイトだったもんなあ。精神面だけじゃなく、身体自体疲れてる感じ。
 真山くんは慣れているふうだからあまり気にしてなかったけど……。それこそ、違う世界へ来ているようなものなんだ。俺以上に疲れてたっておかしくはない。
 
「それとも、今夜は寝かせないぜ……とか言い出す? 千里困っちゃう……」
「寝ろ」
 
 本ッ当にそんなふうには見えないんだけどな。
 その言葉を最後に静かになった真山くんを見やると、もう寝ていた。
 あ、相変わらず早過ぎる……。
 それでいて、明日もきっと寝起きが悪いんだろうな……。
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